更新日:2025/04/18
この記事のまとめ
SIer(システムインテグレーター)は、クライアント企業のコンサルティングから、システムの設計・開発、運用・保守までを請け負う企業です。SIerへ転職して経験を積むと、高収入を目指せたり、専門性の高い職業へのキャリアアップできたりと、多くのメリットが得られます。
しかし、「未経験でもSIerへ転職できるのか」と不安な方も多いのではないでしょうか。SIerはITの専門知識が必要な職業ですが、未経験でも転職は可能です。
この記事では、IT業界未経験者に向けて、SIerの仕事内容や平均年収、将来性、転職を成功させるポイントを解説します。
目次
IT業界は急成長しているものの、人材不足が深刻化しているのが現状です。そのため、経験や学歴を不問とするSIerの求人も多く、異業種からの転職も十分可能です。SIerで働くにはITの知識やスキルが必要ですが、未経験者向けの研修や教育制度が整っている企業も多く、働きながらITスキルを身につけることも可能です。
とはいえ、ITに関する基礎的な知識を身につけておいたほうが転職を有利に進められます。SIer企業の業務内容やシステム・ソフトウェア開発の流れなどは、転職活動を始める前に学んでおくとよいでしょう。
SIerへの転職を検討しているものの、業界のことがよく分からずに悩んでいる方も多いのではないでしょうか。ここでは、SIerのキャリアパスや平均年収、将来性を紹介します。SIerは将来性が高く、転職して実績を積めば高収入も狙えます。安定したキャリアを築きたいのであれば、前向きにSIerへの転職を考えることをおすすめします。
SIerに転職した場合、新人エンジニアとして経験を重ねて、クライアントとの交渉といった業務を経験します。その後、プロジェクトマネージャーへ昇格するのが一般的です。これ以降のキャリアパスは、将来のビジョンによって変わります。より大きな仕事を求める場合は大規模のSIerへ、エンジニアとしてキャリアアップを目指すのであればSEや社内SEが主なキャリアアップ先です。
マイナビエージェントの「業種別平均年収ランキング【2020年版】」によると、SIerの平均年収は展開している事業に応じて以下のように異なります。
SIer・ソフトハウス(ユーザー系)は、金融、商社、鉄道などの一般企業の情報システム部門が独立した開発会社です。親会社のシステム開発・運用を主な業務とするため、安定した経営基盤を持っているのが特徴です。親会社以外の外部企業からの案件も請け負う場合があります。
SIer・ソフトハウス(メーカー系)は、ハードウェアやソフトウェアを開発するメーカー(親会社)から、独立した開発会社です。自社のハードウェアやソフトウェアと組み合わせた開発に加え、他業界の開発も請け負うことがあります。
SIer・ソフトハウス(独立系)は、特定の親会社を持たない独立したSIerです。幅広い業種の企業と取り引きし、多様なシステム開発に携わります。
SIer業界の将来性は高いです。その理由のひとつが、DX(デジタルトランスフォーメーション)需要の拡大です。多くの企業が業務効率化やデジタル化を進める中で、SIerが果たす役割はますます重要になっています。クラウドサービスの導入や、AI・IoTを活用したシステム開発など、SIerへのニーズは増加傾向にあります。
また、SIerは大型案件に携われる点も将来性が高い理由のひとつです。金融や医療、製造、官公庁など、幅広い業界のITシステムを手がけるため、スケールの大きいプロジェクトに関われるチャンスがあります。大型案件に携われれば、エンジニアとしての経験値を高められます。
SIerの業務内容にはさまざまなものがあり、企業には分類があります。また、SEやSES、自社開発企業と比較されやすいため、特に未経験者は業務や職種への深い理解が必要です。ここでは、SIerの仕事内容と企業分類、SEやSESとの違いを紹介します。
SIerの業務内容は、大きく分けると「ヒアリング」「企画」「設計」「開発」「運用」「サポート」です。日本では、規模の大きなSIer企業が受注し、下請け企業と協力して仕事を進めるのが一般的です。
そのため、どの工程を担当するかは自分の能力や立ち位置、元請けや下請けによって異なります。企業により「コンサルタントに強い」「エンジニアリングで優れている」とそれぞれ特徴があります。
SIerは、主に企業を拠点とする「ユーザー系」、ハードウェアメーカーを拠点とする「メーカー系」、拠点を持たない「独立系」の3つに分類されます。ほかに、海外企業を資本とした「外資系」、経営戦略やコスト削減のための提案をする「コンサル系」が加わり、5つとなるケースもあります。
得意な分野や企業の成り立ちで分けられるため、希望する企業がどれに該当するのかをしっかりと把握しておきましょう。
SIerとSEは、どちらもシステム開発をすることに関しては変わりありません。ただし、SIerはシステム導入を請け負う「企業」であるのに対し、SEは「人(エンジニア)」を指します。
また、SESもSIerと比べられることが多い職種です。SESはシステム開発や運用、保守といった特定の工程に対して「人を派遣するサービス」を指します。SIerやSEよりも部分的な仕事が多いため、専門性が高いことが特徴です。
SIerは顧客から受注したシステムを開発する企業ですが、自社開発企業は自社で取り扱うシステムを開発する企業を指します。即戦力を求めている企業が多いため、未経験からの転職は狭き門となるでしょう。また、関わるシステム開発が自社のものに限定されるため、幅広くスキルを身につけたい人には向いていない場合があります。
SIerに限らず、仕事への理解が不十分なままの転職は、失敗や後悔につながりかねません。特に、仕事内容が多岐にわたるSIerへの転職には注意が必要です。ここでは、SIer未経験者に向けて、転職で失敗しやすい原因を2つピックアップして紹介します。
SIer企業は、ユーザー系、メーカー系、独立系といった分類があり、元請けか下請けかによっても業務内容が大きく異なります。主な取引先にIT企業が多い場合は元請けがメインで、非IT企業が多い場合は下請けであることが特徴です。
転職先を検討する際は、まずはSIerに対する理解を深めましょう。理解度が低いことにより「思っていた仕事と違った」と後悔する場合があります。自分がどのような仕事をしたいのかによって選ぶ求人が変わるため、希望する企業の業務内容も事前に把握しておきましょう。
SIer未経験で転職する場合、スキル不足により思うように転職活動が進まないこともあります。スキルが不足していることは仕方ない部分もありますが、転職活動しながらでもスキル習得や資格取得は可能です。
たとえば、「プログラミングスクールへ通う」「プログラミング教材を活用する」といった方法でプログラミングを学びつつ、転職活動を進める人もいます。実務経験がなくてもスキルがあることをアピールできれば、目標に向けて努力していると面接時の評価も上がるでしょう。
SIerに未経験で転職する場合、エンジニアスキル以外をアピールポイントにしましょう。そのためには、企業がどのような人材を求めているのか、事前の情報収集が必要です。ここでは、SIer未経験でも転職に成功するコツや近道を紹介します。
業務に携わるうえで最低限必要な知識は身につけておきましょう。SIerの場合、どの企業を選ぶとしてもITに関する知識は必須となるため、転職活動中にITスキルや知識、資格の取得を目指すのが成功への近道です。
IT関連の資格は、民間を含めると相当な数があります。やみくもに取得するのではなく、やりたい仕事や事業内容に適した資格を選びましょう。
ITスキルも必要ですが、正しく情報を伝達できるコミュニケーション能力も重要です。「システムを提案する」「プロジェクトメンバーと協力する」といった場面で必要となるスキルです。
正しい情報を伝達する「伝える力」以外に「聞く力」も必要です。人は自分の話を聞いてくれる人を信頼しやすくなります。聞く力を磨くことで、「クライアントの要望を理解する」「悩みや問題を聞き出す」といった場面で役立ちます。
伝える力・聞く力は、どちらもコミュニケーションにおいて重要であるため、転職前にスキルを磨いておきましょう。
志望する企業の職場環境や待遇といった情報をできるだけ多く集めることも、転職を成功させるコツです。企業のホームページや口コミを徹底的に調べましょう。情報量が多いほど、自分と企業の相性や業務に必要な資格・スキルが把握できます。また、労働環境が大きく変わる場合、今後の働き方をイメージする際にも役立ちます。
自分で調べるほか、転職エージェントからより詳細な情報を得る方法もあります。自分に合ったやり方を模索してみましょう。
未経験でも、仕事につながる過去の経験をアピールすれば転職活動を有利に進められます。SIerは幅広い業界のシステム開発に携わるため、異業界の経験やスキルが役に立つ場合もあるでしょう。
また、SIerにはクライアントとの折衝やプロジェクト管理といったマネジメントスキルが求められることもあり、マネジメント業務や営業を経験したことがあれば、しっかりアピールすると効果的です。
年齢によってSIer企業が求めるスキルや適性は異なります。そのため、40代が20代と同じように将来性をアピールするのは効果的ではありません。20代には20代の、40代には40代の強みがあります。ここでは、未経験者がSIerへの転職でアピールしたい、年齢別の強みを解説します。
20代の転職における大きな強みは「若さ」と「将来性」です。未経験であっても、企業は長期的な成長を見越してポテンシャル採用をするケースが多いため、学習意欲や業界への熱意をしっかり伝えることが重要です。
特に、入社後にどのようなキャリアを築きたいか、キャリアプランを具体的に伝えるとよいでしょう。例として、「最初の3年間は開発業務に集中し、5年後にはプロジェクトリーダーを目指したい」といったビジョンを示すと、企業側も成長のイメージを持ちやすくなります。
30代は20代と異なり「ポテンシャル採用」には期待できませんが、ある程度キャリアを積んでいる点が強みです。これまでの社会人経験やスキルを評価してもらうために、異業種からの転職であっても活かせる「ポータブルスキル(汎用的なスキル)」をアピールするのがポイントです。
たとえば、「社内プロジェクトでタスク管理を担当し、スケジュール調整やリスク管理を行ってきた」といった実績を伝えれば、SIerのプロジェクトマネジメントにも適応できることを示せます。また、「顧客の要望をヒアリングし、適切な提案をして業務改善につなげた」といったエピソードがあれば、コミュニケーション能力をアピールできます。
40代はチームリーダーや管理職を経験しているケースが多いため、「マネジメント力」や「リーダーシップ」をアピールするのがポイントです。たとえば、「部下10名のチームを統括し、目標達成に向けた施策を実施した」といった具体的な事例を示すと、組織運営のスキルが伝わります。
また、40代は豊富な社会人経験があり、転職ではそれが強みでもある反面、「40代で未経験の分野に挑戦できるのか」「新しい職場へ適応できるのか」などと懸念されることがあります。そのため、40代で未経験のSIerへの転職を成功させるには、新しい仕事への適応力や柔軟性、学習意欲を伝えることが大切です。
未経験からSIerへの転職は可能とはいえ、簡単な道のりではありません。選考に通過して内定を得るには、適切な準備と対策が必要です。選考対策が不十分だと、自分の強みを伝えられないだけでなく、入社意欲の低さを疑われる場合もあります。ここでは、選考対策のポイントを解説します。
履歴書は、応募者の基本的な情報や志望動機を確認するための書類です。採用担当者は、履歴書から応募者の熱意や適性を判断します。
履歴書の志望動機を記載する際は、「志望先企業でなければならない理由」を明確にすることが大切です。企業の強みや特徴(例:自社開発が多い、特定業界に強い、研修制度が充実しているなど)を調査し、自分のキャリアビジョンとひもづけて説明しましょう。
また、入社後に取り組みたいことを具体的に書くのもポイントです。未経験でも学習意欲や将来のビジョンが明確であれば評価されやすくなります。「入社後は基本情報技術者試験に合格し、2年以内にクラウドエンジニアとしてプロジェクトに貢献したい」など、具体的な目標を記載しましょう。
職務経歴書は、応募者の過去の職務経歴や実績、身につけたスキルなどを詳細に記載する書類です。職務経歴書では、未経験ながらもIT業界で活躍できるポテンシャルを示すことが重要です。
たとえば、PCスキル、英語力・マネジメントスキル、SIerで役立つ資格、習得したプログラミング言語などがあれば、「基本情報技術者試験合格」などと具体的に記載します。
実績は、数字や具体的なエピソードを交えて伝えることが大切です。「売り上げ20%向上」「コスト30%削減」などの実績を示すと、採用担当者は応募者の実力を評価しやすくなります。また、職務経歴書は履歴書と違って決まったフォーマットはないため、レイアウトを工夫して見やすくするのもポイントです。
面接対策のポイントは以下の3つです。
定番の質問には、「なぜSIerを志望するのか」「なぜ未経験でIT業界に転職しようと思ったのか」「前職での経験をどのように活かせるか」などが考えられます。こういった定番の質問にスムーズに答えられないと、準備不足や入社意欲の低さを疑われる場合があります。
面接の最後に「何か質問はありますか」と聞かれる逆質問では、志望先企業のホームページや求人情報などを調べても分からない質問を用意することが大切です。逆質問は入社意欲をアピールするチャンスでもあるため、2個~3個は用意しておくとよいでしょう。
入退室マナーは、社会人としての常識を問われる要素です。「ノックは3回」「面接官の指示があるまで着席しない」などの基本をしっかり押さえておきましょう。
SIer未経験でも、取得することでIT知識があると証明できる資格があります。少しでも転職を有利にしたいのであれば、転職前に取得することを検討してみましょう。ここでは、数あるIT関連資格の中から「ITパスポート」「基本情報技術者試験」「情報セキュリティマネジメント試験」の3つの資格を解説します。
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が主催する国家試験のひとつです。IPAの試験の中でも基礎的な資格で、難易度はレベル1です。ITに関する基礎知識が問われるため、IT技術者の登竜門とも呼ばれています。IT関連の企業で働く者として取得しておきたい資格といえます。
ITパスポートと同じく、IPAが主催する国家試験です。IPAの試験の中での難易度はレベル3で、基本的なIT知識があることを証明できます。ITエンジニアに必要な基礎内容からマネジメント、ビジネスといった問題が出題されるため、広範囲にわたる知識を習得できるでしょう。
IPAが主催する国家試験のひとつで、合格すると情報セキュリティの基礎知識を習得していることを証明できます。IT業界におけるセキュリティの重要性が高まる中、企業側から高い評価を得やすい資格といえます。試験の難易度はレベル2で、IT未経験者でも比較的取り組みやすいといえるでしょう。
試験勉強を通じて、情報セキュリティの基本概念やリスク管理、法規制(個人情報保護法や不正アクセス禁止法など)などの知識を身につけられます。
参照:情報セキュリティマネジメント試験|独立行政法人情報処理推進機構
IT業界は人手不足であり、未経験者を積極的に採用するSIerは多くあります。とはいえ、転職を有利に進めるためには、SIerの仕事内容やITの基礎知識は身につけておいたほうがよいでしょう。そのためにも、ITパスポートや情報セキュリティマネジメントなどの資格を取得するのがおすすめです。
また、転職エージェントを活用することで、選考対策を万全にできます。マイナビITエージェントでは、IT分野の転職ノウハウに精通したキャリアアドバイザーが在籍しており、求人の紹介や模擬面接、条件交渉など、
転職活動を無料でサポートしています。相談だけの利用も可能なので、お気軽にお問い合わせください。
関連記事:マイナビITエージェント
IT業界
インフラエンジニアの6つのやりがい|厳しさや適性を判断するポイントも紹介
IT業界
インフラエンジニアになるには?担当分野や必要なスキル、転職のコツを紹介
IT業界
インフラエンジニアが「きつい」といわれる理由|向いている人の特徴3選