更新日:2025/05/09
この記事のまとめ
現代は事業の規模を問わず、多くの会社がIT技術の導入やDX化の推進に力を入れています。しかし、ITやDX化には専門的な知識や技術を要するため、思うように環境整備が進まない悩む企業も少なくありません。SIerはそのような企業の悩みを解決するサポート役として近年注目を集めている職業で、転職を検討する方も増えてきています。
本記事では、SIerの基礎知識やSES、SEとの違い、SIerとして働く魅力とやりがい、SIerを目指すきっかけ、SIerとして楽しく働くコツを分かりやすく解説します。
目次
SIerという言葉が生まれたのは1987年のことで、当時の通商産業省(現在の経済産業省)がシステムインテグレーション認定制度を創設したのがきっかけとされています。
同制度に登録した人はSIerと呼ばれるようになりましたが、そもそもSIerとはどのような役割を持っているのか。SESやSEとはどう違うのかを説明します。
SIer(エスアイヤー)とは、システムインテグレーター(System Integrator)の略称です。
システムの開発や運用を請け負う事業またはサービスを指すシステムインテグレーション(System Integration)をSIと略称し、その事業やサービスを提供する会社をSIerと呼びます。
SIerは顧客ごとに業務内容を分析し、課題や問題を洗い出したうえで、問題解決に必要なコンサルティングを行ったり、システムの設計や開発、運用、保守を請け負ったりすることを主な業務としています。
SESとはシステムエンジニアリングサービス(System Engineering Service)の頭文字を取った略称で、顧客の要望に応じてインフラ環境の構築やシステム開発などのエンジニアの技術を提供するサービスのことです。
SESを利用すると、SES業者から派遣されたエンジニアが契約内容に基づいてサービスを提供する仕組みになっています。
SIerとの違いは、顧客と交わす契約の種類や報酬の支払対象です。SESの場合、顧客とは準委任契約を締結し、派遣されたエンジニアの稼働時間に応じた報酬が支払われます。一方のSIerは顧客との間に請負契約を締結し、報酬は成果物に対して支払われるところが大きな違いです。
SEとはシステムエンジニア(System Engineer)の頭文字を取った略称で、その名のとおり、システム開発に携わるエンジニアのことです。
顧客から聞き出した要望を基に、システムの基本設計・詳細設計、プログラミング、テスト、そして運用や保守に至るまで、システム開発のプロセスを一貫して担います。
SIerはシステム開発全体の統括や管理を任される企業、SEはシステム設計・開発などの技術的作業を担う個人の職業という違いがあるほか、SIerは要件定義から保守まで幅広く対応するのに対し、SEは主に技術的な部分に特化しているのが特徴です。
SIerは大きく分けると以下4つに分類されます。
メーカー系はハードウェアメーカーから独立あるいは分社したタイプです。メーカーから受注してシステム開発を行ったり、メーカーのハードウェアと組み合わせたソリューションを提案したりします。
ユーザー系は商社や金融、製造などの企業を親会社としたタイプです。親会社の業界に向けてソリューションの提案やシステム開発を行います。
独立系は親会社を持たないタイプです。メーカーやベンダーにとらわれず、幅広い業界や企業に向けてシステム開発を行います。
外資系は海外に拠点を置くタイプです。グローバル市場で活躍する大企業が主なターゲットで、本国で展開するソリューションサービスを日本で展開させる業務などを担います。
このように、同じSIerでも分類によって特徴が大きく異なるため、SIerへの転職を検討する場合はどのタイプのSIerなのかしっかり確認が必要です。
業種や業態を問わず、幅広い企業にニーズのあるSIerは、IT業界の中でも特に注目を集めている企業です。待遇の良さもさることながら、働くことへの意欲ややりがいを感じやすい職場としても知られており、特に向上心の強い方や、キャリアアップを目指す方に人気です。
ここではSIerで働く魅力とやりがいを5つのポイントにまとめました。
元請けSIerの場合、国や地方自治体、大手金融会社や医療機関などから受注するケースが多数あります。中には数千万円単位や億単位の大がかりな一大プロジェクトや、社会インフラを支える貢献度の高いプロジェクトも少なくありません。
たとえば、税金や社会保険料の管理システムや、自治体が運営する図書館の貸出システム、福祉関連のシステムなど、公共性の高い施設やサービスのシステム開発および運用・保守を請け負うこともあります。
このような大規模プロジェクトのメンバーの一員として仕事に携われることや、開発したシステムが多くの人の生活に役立てられていることに大きなやりがいを感じる方は多いでしょう。
SIerは基本的にプロジェクト単位で所属する仕組みになっています。プロジェクトの内容は顧客によって大きく異なるため、多くのプロジェクトに携わるほど、新しい技術に触れる機会も増えていきます。
多彩な技術に触れることで、新たな知見を得たり、技術を身につけたりできるため、自身のスキルアップにつながるのが大きな利点です。特にユーザー系のように、特定の業界や分野に特化したタイプのSIerは、より専門的な技術に触れる機会が多くなります。
「業界のトレンドとなっている技術をもっと詳しく知りたい」「先進的なシステム開発に携わりたい」という思いがある方は、SIerで働くことでニーズを満たせるでしょう。
SIerが請け負う仕事はシステム開発だけでなく、顧客が抱える潜在的な課題の洗い出しや、システムの企画立案、導入サポートなど多岐にわたります。
これらの業務には顧客やチームとのコミュニケーションスキル、プロジェクトを計画通りに進めるためのスケジュール管理スキルやマネジメントスキルなどが必要になるため、IT以外のスキルや技術も磨くことができるでしょう。
また、SIerはプロジェクト全体を統括するケースのほかに、要件定義やシステム設計などの上流工程だけを担当するパターンもあります。その場合、SIerは企画立案やプロジェクトの人員・スケジュール計画の策定、進捗状況の確認、問題点や課題の解決策の提案、プロジェクト完了後の評価などの業務を担うことになります。
これらの業務で磨かれるスキルは今後プロジェクトマネージャーとしてキャリアアップする際の大きな糧になるでしょう。
SIerが顧客の要望に応じたシステムの開発・運用を実現した場合、その会社が抱えている課題や問題が解消されます。
たとえば、業務効率化システムの開発により社員一人あたりの労働生産性がアップした、医療システムの開発によって医療サービスの質が向上したなどが挙げられます。
これらの成果のほとんどは、人件費◯%カット、顧客満足度◯%向上といった形で具体的に数値化されるため、自分が携わった仕事によってどれだけ社会貢献できたかを実感することが可能です。成果や結果が可視化されると、「次もがんばろう」「もっと人の役に立ちたい」などモチベーションの向上にもつながるため、より仕事にやりがいを感じられるでしょう。
SIerは国や自治体、大手企業などが顧客になるケースも多いため、経営が安定しているのが特徴です。経営基盤がしっかりしている会社に所属していれば、賃金カットやリストラなどにあうリスクが少なく、生活基盤も安定させやすいでしょう。
また、国や自治体がDX化を推進している今、SIerの需要は年々増加しています。大企業は既にDX化に着手しているケースがほとんどですが、中小企業は未着手のところも多く、今後SIerにシステムの開発や運用・保守を一任したいと考えるところも増えてくると予想されます。
将来性の高いSIerで働いていれば、安定した将来設計を描きやすくなるでしょう。
実際にSIerで働いている人が、SIerに就職・転職しようと思ったきっかけはさまざまで、ものづくりへの興味から入社した人もいれば、IT業界の将来性に目をつけてSIerを希望した人もいます。
ここでは参考までに、SIerで働くことを目指した主なきっかけや理由を4つご紹介します。
SIerはシステム開発を主な業務とするため、元々開発やものづくりに興味・関心があった方がSIerを目指すというケースは多いようです。
中には、子どもの頃から工作が好きだったため、大学で機械工学を専攻したところ、機械制御に関する研究に取り組む過程でIT技術の大切さを学び、SIerに関心を寄せるようになった方もいます。
工作に限らず、自ら物を作り上げる作業、たとえば料理や手芸、絵画なども立派なものづくりの一つであり、これらを趣味として楽しんでいる方は、SIerで働くと大きなやりがいを感じられるかもしれません。
SIerは案件定義からシステム設計、プログラミング、テスト、運用・保守など幅広い業務を担うため、IT分野の知識・技術は必須です。
そのため、これまでIT業界で働いた経験がある方が「自分の知識やスキルを発揮できる場所で働きたい」と思ったとき、真っ先にSIerを思い浮かべる方は多いでしょう。また、IT関連の学部・学科卒の人が、一度は畑違いの業種に就職したものの、「学んだことを活かして働きたい」と考え直してSIerへの転職を目指すケースもあります。
現代社会において、IT技術は日常・ビジネスの両面で必要不可欠です。
AIやIoTなど新たな技術も次々に生み出されていることから、IT業界はさらなる成長・発展が見込まれています。安定した企業で腰を据えて働きたいと思っている方の多くは、業界の将来性や成長の可能性を重視するため、今後ますます発展していくであろうIT業界に興味・関心を抱く人は少なくありません。
その中でも、官公庁や大手金融機関のような安定した組織からの受注を期待できるSIerは魅力的な職場であり、IT業界の将来性を見越してSIerで働くことを検討する方も多いようです。
SIerは顧客の要望や課題に合わせてシステム設計やプログラミングを行うことを主な業務としています。そのため、趣味でプログラミングを楽しんでいた方が「好きなことを仕事にしたい」と考えて求人を探した結果、SIerに辿り着くケースもたくさんあります。
また、ゲーム好きの方が「このゲームはどうやって動かしているんだろう」という疑問からプログラミングに興味を持ったのをきっかけに、SIerの存在を知ることもあるようです。
SIerはやりがいを感じられる職場と説明しましたが、ただ入社しただけでは、十分な働きがいやモチベーションアップを感じられない可能性があります。
よりイキイキと働けるよう、SIerでは以下3つのポイントを心掛けて仕事に取り組みましょう。
SIerが携わるプロジェクトにはたくさんのメンバーが関わっており、全員でプロジェクト達成を目指すことになります。プロジェクトを円滑に進めるためには、顧客やメンバーと協力し、チーム一丸となってタスクをこなしていかなければなりません。
そのためには周囲と力を合わせる協調性が必須であり、助け合い、支え合いの精神で仕事に取り組むことが大切です。
周囲のことに気を配りながら仕事を進めていくのは容易なことではありませんが、チームが一体となって働く環境では仲間意識も芽生えやすく、プロジェクトを達成したときに感じる喜びも大きくなるでしょう。
長時間労働の慢性化や、休日出勤の常態化などによって仕事とプライベートのバランスが崩れると、心身が疲れて楽しく働けなくなってしまいます。
仕事とプライベートのメリハリをつければ、日常生活を充実させられるのはもちろん、仕事に対するモチベーションもアップし、よりイキイキと働けるようになるでしょう。
SIerはリモートワークやテレワークに対応しやすいため比較的ワークライフバランスを確保しやすい職場といわれていますが、中でも元請けSIerは要件定義や設計などの上流工程のみを担当することが多く、プライベートとのバランスが取りやすい傾向にあります。
SIerはさまざまなプロジェクトに携わる関係上、幅広いスキルが身につけやすい環境にあります。
プログラミングスキルはもちろん、プロジェクトマネジメントスキルやコミュニケーションスキル、課題解決スキルなど、多種多様なスキルを習得すれば、それだけキャリアパスの選択肢も増え、将来のビジョンや夢も広がっていきます。
また、スキルアップは自信にもつながるため、モチベーションや自己肯定感が向上し、毎日楽しく働けるようになるでしょう。
SIerは顧客の要望や課題に沿ってシステム開発や運用・保守を請け負うことを主な業務としています。
顧客には国や自治体、大手金融機関なども多く、大きなプロジェクトに参加できること。新しい技術に触れ、幅広いスキルを習得できること、社会貢献度が高いことなどから、やりがいや働きがいのある仕事です。「今の仕事にやりがいを感じない」「ITのスキルを生かしてもっと意欲的に働きたい」と考えている方は、SIerへの転職を考えてみてはいかがでしょうか。
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