更新日:2024/09/10
この記事のまとめ
ITエンジニアへの転職を検討しているものの、「SES」と「SIer」という言葉の違いや意味がよく分からないという方もいるのではないでしょうか。両者はしばしば混同されがちですが、違いを理解せずに転職してしまうとミスマッチにつながりかねないため、注意が必要です。
この記事では、SESとSIerの特徴と違いについて詳しく解説します。SESとSIerで働くメリット・デメリットについても紹介しているため、ぜひ参考にしてみてください。
目次
ITエンジニアへの転職を検討している際に、「SES」という言葉を目にしたことがある方は多いでしょう。ITエンジニア未経験者の場合は、転職後のミスマッチを防ぐためにもSESの意味をしっかりと理解してから転職活動に臨むことが大切です。ここではSESの意味や派遣との違い、SESで働くメリット・デメリットを解説します。
SESとは「System Engineering Service(システムエンジニアリングサービス)」の略称で、ソフトウェアやシステムの開発・運用のためにITエンジニアを派遣して技術を提供する委託契約の一種です。SES契約は準委任契約と同じ意味合いを持ち、指揮命令権がベンダー側(サービスを提供する側)にあり、「ITエンジニアの労働・技術を提供して報酬を受け取る」というものです。成果物を納品する義務はありません。
クライアントにITエンジニアを派遣するといった点では、SES契約と派遣契約は非常に似ています。また、SES契約と派遣契約はどちらも成果物の納品義務がありません。
両者の大きな違いは、「指揮命令権がどこにあるか」という点にあります。SES契約は指揮命令権がベンダー側にあるのに対して、派遣契約の場合はクライアント側に指揮命令権があるのが特徴です。
SESで働く主なメリットは以下のとおりです。
SESはさまざまなクライアント企業のもとで仕事をします。そのため幅広い知識やノウハウを得られ、経験値を上げるには最適な環境といえるでしょう。プロジェクトごとに職場は変わってしまいますが、多くの企業とコネクションを得られるメリットもあります。
SESで働く主なデメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
SESを行う企業は下請けとして案件を受注することが多いため、上流工程を担う企業のITエンジニアと比べると収入が低くなりがちです。また、プロジェクトの下流部分を任されることから「何の目的で開発しているのか」といった部分を把握しにくく、人によってはやりがいを感じられない可能性があります。
SESと混同されがちな言葉に「SIer」があります。SIerもITエンジニアへの転職を目指すのであれば知っておきたい言葉であるため、きちんと押さえておきましょう。ここではSIerの意味や種類、SIerとして働くメリット・デメリットを解説します。
SIerのSIは「System Integration(システムインテグレーション)」の略称です。システムインテグレーションはシステムの開発・運用などを請け負うサービスのことを指し、erは「〜する人」という意味があります。
システムの開発・運用を行う点はSESと似ていますが、SESは契約を指し、SIerはシステム開発を請け負う企業を指す点が大きな違いです。SIerはシステム開発を委託するクライアントの要望に応じて、システムの開発だけでなく、コンサルティングやシステム構築後の運用・保守まで請け負います。
一口にSIerといっても、事業内容や企業の成り立ちによって主に以下の5種類に分けられます。
SIerの種類によって特徴や強みが異なるため、SIerへ転職したい場合は自分の興味のある分野や得意分野を活かせる企業を探すとよいでしょう。
SIerとして働くメリットとして、主に以下の3つが挙げられます。
SIerはプロジェクトの元請けとして上流工程を担うケースが多く、給料や待遇がよい点が魅力です。またシステム開発を一貫して行うことから、クライアント企業へのコンサルティングなど、ITスキル以外のコミュニケーションスキルやビジネススキルも身につけられます。
SIerとして働くデメリットは、主に以下の2点です。
SIerは上流工程を担当し、開発を含む下流工程は外注するケースが多い傾向にあります。開発現場から離れることから、ITエンジニアとしての高い実装スキルは身につきにくいといえるでしょう。また、規模の大きいプロジェクトほど多くのITエンジニアが関わるため、個々の行う業務範囲は狭くなりがちです。業務範囲が狭くなれば、最新の技術・知識を学ぶ機会も少なくなる場合があります。
SESとSIerの特徴を知ったうえで、具体的な違いについても確認しておきましょう。SESを行う企業とSIerとでは、働き方が大きく異なります。ITエンジニアとして転職を成功させたい場合は、自分に合った働き方ができる転職先を選びましょう。ここでは、SESとSIerの違いを詳しく解説します。
SESとSIerでは企業間の取引関係が異なるため、働き方も大きく変わります。SESはSIerの「下請け」になることが多く、SIerは一次請けや二次請けとしてプロジェクトを担当することが多い傾向にあります。下請けであるSESはプロジェクトの開発・実装・テストといった下流工程、一次請けのSIerは要件定義・設計といった上流工程を担うことがほとんどです。
SESはクライアント企業に労働力を提供する「準委任契約(SES契約)」が一般的です。納品物の完成義務はなく、ITエンジニアの稼働時間によって報酬が支払われます。
一方のSIerはシステム開発から保守運用まで一括して請け負う「請負契約」が一般的です。労働力ではなく成果物の納品に対して報酬が支払われます。決められた納期までに仕事を完遂しなければなりません。
SESとSIerは企業間の取引関係が異なることから、給料や待遇面でも違いがあります。システム開発のプロジェクトは多重下請け構造となっているケースが多く、クライアントから元請け企業、二次請け、三次請けと何層にもわたって再委託されます。
下請け企業になるほど受け取る利益は少なくなりがちです。SIerは一次請けや二次請けであることから必然的に給料や待遇面がよくなりやすく、下請けになりやすいSES企業は給料が低くなる傾向にあります。
SESは下流工程であるシステムの開発・実装・テストを主に担当するため、ITエンジニアとしての技術力が求められます。一方、SIerはプロジェクトを統括する立場であるため、システム開発の知識に加えて成果物をスムーズに納品できるよう管理するマネジメントスキルが欠かせません。また、要件定義やコンサルティングも行うため、コミュニケーションスキルも求められます。
SESとSIerの特徴や違いが分かっても、どちらが自分に合った働き方ができるのかは実際に働いてみないと判断しにくいものです。転職後のミスマッチを防ぐためにも、SESとSIerのどちらに適性があるのかを確認しておきましょう。ここではITエンジニア未経験者に向けて、SESとSIerのどちらが向いているのかについて解説します。
SIerは要件定義や設計など、上流工程を担当したい人に向いています。しかし求められるスキルは高く、転職するのは容易ではありません。ただし、ITスキルよりも営業経験やマネジメントスキルを求められることがあるため、自身の経験・スキルによっては転職が有利に働くこともあります。大手のSIerに転職できれば給与や待遇がよいことから、安定して働けるといえるでしょう。
未経験からITエンジニアを目指す場合はSESがおすすめです。SESは未経験者にも幅広く門戸を開いており、SIerと比べると転職しやすいといえるでしょう。また、業務内容は開発・実装・テストがメインであるため、ITエンジニアとしてのベースをつかむには最適といえます。
プロジェクトごとに派遣先が異なり、さまざまな企業で経験を積める点も魅力です。残業も比較的少ないため、ワークライフバランスを重視したい方にも向いています。
SESはシステム開発における委託契約の一種で、SIerはシステム開発・運用を一括して請け負う企業を指します。ITエンジニアを目指す際はSESとSIerの違いをしっかりと理解したうえで、SESとSIerのどちらが自分に向いているかを確認することが大切です。
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