更新日:2024/09/05
この記事のまとめ
「SES業界って働きやすい?」「報酬は低いの?」といった疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。これからエンジニアとしてSES業界に転職したいと考えている方は、SESがどのような契約なのか、メリット・デメリットはあるのか知っておくことが大切です。
そこで今回は、SES業界で働くメリット・デメリットをご紹介します。またSESに向いているのはどのようなタイプの方かについても解説しているため、転職を考えている方はぜひ参考にしてください。
目次
SESは、「System Engineering Service(システムエンジニアリングサービス)」の略称で、IT業界における契約形態を指します。SESは、SEの能力を契約の対象とし、クライアント先にエンジニアを派遣して労働を提供するサービスです。IT分野における準委任契約をSESと呼ぶこともあります。
SESと間違えやすい用語に、「SIer」と「SE」がありますが、この2つとは意味が異なるため注意しましょう。ここでは、SIerとSEがどのような意味なのか解説します。
SIer(エスアイヤー)は、「System Integrator(システムインテグレーター)」の略称で、システムの開発や運用などを請け負う事業やサービスを行っている企業のことを指します。一方のSESは契約形態を示すものであるため、間違えないように注意しましょう。
SE(システムエンジニア)は、システムの設計図を作る職種のことです。クライアントから要望をヒアリングし、顧客のニーズに応えられるようなシステムを作り上げます。SESは契約形態を示すものであるため、SEとは意味が異なります。
SES契約は準委任契約とも呼ばれ、クライアント先に労働を提供する契約形態です。指揮命令権はSES企業にあり、働いた時間に対して報酬をもらいます。
契約形態にはSES契約のほかにも、請負契約・派遣契約・委任契約などがありますが、それぞれ特徴が異なる点に注意しましょう。ここでは、SES契約と他契約の違いについて解説します。
請負契約とは、請負人が仕事やサービスの完成を約束し、その成果に対して報酬が支払われる形式の契約です。つまり、仕事が完成しなければ報酬を受け取れません。SESはエンジニアの労働力に対して報酬が支払われるため、意味合いは異なります。
仕事において指揮命令権があるのはクライアント企業ではなく受託者であるのは、請負契約もSES契約も同じです。
派遣契約とは、派遣会社と労働者が雇用契約を結び、派遣先企業で働く契約のことです。請負契約とは異なり、成果物の納品で報酬を受け取るのではなく、労働を提供して報酬を受け取ります。
SESとの大きな違いは、指揮命令権がクライアント(派遣先)企業にあることです。派遣契約では、業務や勤怠についての指示はクライアント(派遣先)企業が行えます。SESの場合、SES企業に指揮命令権があるため、派遣先企業は業務や勤怠に関する指示が行えません。
委任契約は、法律行為の遂行や遂行による成果を委託する契約です。一方の準委任契約は、非法律行為の業務遂行を委託する契約となります。委任契約と準委任契約は似ていますが、大きな違いとして、委託内容が法律行為か否かという点です。
委任契約の場合、税理士や弁護士など、契約や法律に関わる業務に対して使われるケースが多いといえるでしょう。準委任契約ではSESを含め、セミナーの講演やコンサルティングなど、法的行為ではない業務になります。
SES業界は「報酬が低い」「案件のアンマッチがある」「偽装請負のケースがある」などの理由から敬遠されることがあります。案件のアンマッチや偽装請負はそこまで多くないものの、報酬に関しては決して高いとはいえません。
SES企業はSIer企業の下請けとして案件を受注するため、SIer企業のITエンジニアと比べても報酬は低くなりがちです。ここでは、SES業界が敬遠される理由について、詳しく解説します。
SES企業はSIer企業の下請けとして案件を受注するケースが多くあります。そのため、SIer企業のエンジニアと比較すると、報酬が低くなるでしょう。また多重請負構造になっているプロジェクトに当たれば、下請けのSESはさらに報酬が低くなってしまう可能性もあります。
多重請負構造とは、プロジェクトを受注したA社のエンジニアが不足している場合にB社に委託し、B社もエンジニアが不足していた場合はC社に委託するといったケースです。このような多重請負構造のプロジェクトでは、下流企業は利益が少なくなります。
自分がどのようなプロジェクトに配属されるかは、実際に請け負ってみないと分からないことがあります。そのため、「得意分野とプロジェクトの内容がマッチしない」といった、望んでいない業務に当たる可能性も少なくありません。
多くのSES企業では、エンジニアと定期的に面談し、得意分野を生かしたプロジェクトに派遣してくれます。しかし、自分の得意分野や志向性などがきちんと伝わっていないと、案件のアンマッチが発生しやすくなる点に注意しなくてはいけません。
働き方が準委任契約ではなく、偽装請負ではないかと問題になっているケースがあります。偽装請負は契約違反ですが、そのことに気づかないエンジニアも多いため、注意しなくてはいけません。
偽装請負の可能性があるのは、以下のようなケースです。
SESの場合、指揮命令権はSES企業にあります。そのことをエンジニアが知らずに、クライアントから残業や休日出勤などを命じられ、応じてしまうケースも少なくありません。上記のようなケースでは、偽装請負の可能性があるため注意しましょう。
SES業界を敬遠する人もいますが、SESのエンジニアとして働くメリットも多くあります。それは、未経験からIT業界を目指しやすいことや勤務時間が明確に決まっていることなどです。ここでは、SES契約で働くメリットを4つ詳しく紹介します。
経験や学歴を不問とし、人材募集をしているSES企業が多くあります。そのため、未経験でもIT業界を目指しやすいのがメリットです。ただし、経験はなくとも、一定の知識や技術は必要になります。
またIT人材が不足している企業は多いため、複数の応募先から選べるのもメリットです。「IT業界で安定して働きたい」「すぐに働きたい」といった方は、SES契約で働くとよいでしょう。
大手SIer企業の案件に携われるケースがあるため、業務を通してさまざまなエンジニアや企業の人たちとの人脈を築けるのがメリットです。
また自分のスキルをクライアントや他企業にアピールできれば、希望するプロジェクトや転職についての相談もできます。大規模な案件に携わることで、自身の実績やスキルアップにもつながるでしょう。
SES契約では、「勤務時間が明確に決められている」といったメリットがあります。エンジニアは「納期に追われて残業が多くなる」といったイメージを持っている方も多いでしょう。
SES契約では、事前にクライアントと労働時間について取り決めをしているため、契約で決められた以上の労働は原則的にできません。そのため、急な残業が発生することもなく、エンジニアの中でも残業が少ない傾向にあります。
SESのエンジニアは、プロジェクトによって勤務先が変わるため、さまざまな環境で働けるのがメリットです。自分の得意分野だけでなく、気になるプロジェクトにも積極的に参加することで、幅広い知識と技術が身につけられるでしょう。
また大型案件にも携わる機会があるため、実績や経験値を積むのにも適しています。SES企業へ転職する場合は、どのような案件に携われるのか確認しておくとよいでしょう。
SES契約で働くメリットもたくさんありますが、デメリットもいくつかあります。それは、労働環境が案件に依存することや下流工程がメインになることなどです。ここでは、SES契約で働くデメリットを3つ紹介します。
労働環境は派遣先によって異なる点に注意が必要です。ある程度プロジェクトの詳細についての事前情報は共有されますが、職場の人間関係や雰囲気などは実際に携わってみないと分かりません。
そのため、派遣先によっては人間関係や雰囲気が自分と合わない可能性があります。派遣先の雰囲気や人間関係が良かった場合でも、プロジェクトが変われば、再び新しい派遣先の環境に慣れなくてはいけません。
SESはプロジェクトの下流工程をメインに任せられることが多いため、「上流工程を経験したい」といった方にとっては、SESはあまり向いていません。プロジェクトには、テスト・コーティング・システム開発・設計・要件定義などさまざまな工程があります。下流工程とは、テストやコーディングなどの作業のことです。
下流工程ばかり経験を積んでも、エンジニアとしての必要な上流工程の知識や経験は得にくいでしょう。そのため、キャリアを積みたい方にとってはデメリットになります。
SES企業の指揮命令により、勤務期間が事前に定められているため、最後までプロジェクトに携われないケースもあります。そのため、自分が携わったプロジェクトの結果や、詳細がよく分からないといった点がデメリットです。
これからSESで働きたいと考えている場合、SESは自分に向いているか知っておくことが大切です。「自分に向いていない」と感じた場合、働き続けるのが苦痛に感じ、長く働くことは難しいでしょう。ここでは、SESに向いている人、向いていない人を紹介します。
SESが向いているのは以下のような人です。
SES企業は、業界未経験者でも積極的に採用しているため、未経験者でもIT業界で働けるチャンスがあります。また案件の内容もさまざまで、幅広い知識や経験が得られるのもメリットです。
SES契約は事前に勤務時間を定めているため、突発的な残業をしたくない人にとっても、向いているといえるでしょう。
SESが向いていないのは以下のような人です。
SES企業は、SIer企業の下請けとして派遣されることが多く、収入は低くなりがちです。そのため、多く稼ぎたい人は向いていないでしょう。
また案件ごとに常駐先が変わるため、環境の変化も激しくなります。やっと慣れてきても、プロジェクトが終われば別の常駐先へと変わるため、環境の変化がストレスになる人もいるでしょう。
エンジニアとして、どのような職場が働きやすいか知っておくことが大切です。SES企業に転職する場合、適正な報酬が支払われるか、評価制度があるかなどをきちんと確認しておきましょう。ここでは、エンジニアとして働きやすい職場の探し方を4つ紹介します。
プライム案件とは、顧客と直接契約することです。プライム案件を受注できれば、より多く稼げたり、上流工程に携われたりするメリットがあります。
SESでは基本的にSIer企業の下請けとして派遣されるため、単価が低くなってしまいがちです。しかし、プライム案件を獲得できれば元請け企業のエンジニアとして働くため、報酬は高くなります。
適正な報酬を支払う企業に勤めることで、報酬面での不安を回避することが可能です。報酬が仕事内容に見合っていなければ、モチベーションは下がってしまうでしょう。
適正な報酬を支払う企業であれば、エンジニアを大切にしている企業といえます。報酬額は職場を選ぶ際の重要な指標になるため、きちんと確認しておくことが大切です。
「自社開発製品があるか」「自社サービスを積極的に行っているか」といった点も確認しておきたいポイントです。自社開発製品があり、利益を出していれば、企業としての将来性も期待できます。
自社開発製品の売れ行きが順調であれば、その分人件費や設備開発などにも注力できるでしょう。
評価制度やキャリアパスは、優良企業を見分ける指標のひとつです。クライアント先に常駐して働くスタイルは、SES企業からの評価が曖昧になってしまうケースが多くあります。
評価制度をチェックするポイントとしては、定期的に面談があるか、社内表彰があるかなどを確認するとよいでしょう。
SES業界は報酬が低かったり、案件のアンマッチが起こりやすかったりするなどの理由から、敬遠されがちです。しかし、業界未経験でも転職しやすいことや多様な案件に携われるなどのメリットも多くあります。SES企業へ転職を考えている場合は、報酬額が適正か、評価制度がきちんとしているかなどをチェックしておきましょう。
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