更新日:2024/01/29
この記事のまとめ
IT業界で活躍する企業のひとつが「SIer」です。SIerへの転職を検討していて、どのような企業なのか詳しく知りたいと考えている方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、SIerに含まれる5つのタイプとそれぞれの特徴を紹介します。SIerが自分に合った転職先なのか、どの企業を選ぶとよいのかを判断するためにも、転職活動を始める前にチェックしておくとよいでしょう。
SIerの特徴を知ることは、自分のキャリアパスを実現できそうな企業を探す助けになります。
目次
IT業界への転職を検討する中で、「SIerとはどのような企業なのか」と疑問を抱いている方もいるのではないでしょうか。
SIerは「System Integrator」の略称で、ICTシステムの受託開発を手掛ける企業のことです。具体的なビジネスモデルは、事業会社からICTシステムの開発案件を受注して開発を行い、完成したシステムを納品することで収益を上げます。携わる業務の具体例は以下のとおりです。
完成したシステムを納品したら終わりというわけではなく、その後の運用・保守・アップデートに携わるケースも多いでしょう。一口にSIerといっても、具体的な仕事内容は多岐にわたります。
SIerはシステムの受託開発を手掛ける企業のことですが、担当する分野や親会社の有無によって主に「メーカー系」「ユーザー系」「独立系」「コンサル系」「外資系」の5系統に分類できます。
系統ごとに特徴があるため、転職するときには自分が目指している分野に近いものや思い描いているキャリアパスを実現できそうな分野を選ぶことが大切です。ここでは、それぞれのSIerがメインとしている業務を紹介します。
PCやサーバー、ネットワーク機器をはじめとしたハードウェア企業の子会社としてシステム開発に携わっているSIerを「メーカー系」と呼びます。ハードウェアメーカーでシステム開発に携わっていたチームを分社化して独立させた企業が多く、親会社と協力して業務を遂行する案件が多いのが特徴です。
具体的には、親会社が開発しているハードウェアで動作するシステムを開発したり、ITインフラを提供したりする傾向にあるといえるでしょう。親会社からの案件だけではなく、通常のSIerと同様に外部企業からの開発案件も受注します。
金融業や卸売業、不動産業など、本業がIT業界とは関係ない企業でも、自社で使用するシステムを開発・運用するチームを編成しているケースがあります。IT業界とは関係のない業種の企業が保有しているシステム開発チームを子会社化して誕生したSIerを、「ユーザー系」と呼びます。
ユーザー系は、親会社が使用するシステムの開発をメインに手掛けるケースもあれば、培ったノウハウを活かして外販をメインとしているケースもあるのが特徴です。外販メインであれば独立系と業務内容に差がないことも多いので、ミスマッチを防ぐためにも転職先のビジネススタイルをよくリサーチするとよいでしょう。
独立系とは親会社を持たず、単独でシステムの開発案件を受注することで収益を上げているSIerです。独立系SIerでは、外部の事業会社から案件を受注して開発業務に携わります。
親会社との兼ね合いがなく、クライアントが求めているものに応じてさまざまなハードウェア・ソフトウェアを使用できるのが特徴といえるでしょう。
事業会社が抱える経営課題をIT面でサポートすることで解決を目指す「ITコンサルティングファーム」と呼ばれる企業が存在します。ITコンサルティングファーム内でシステム開発に携わるのが、コンサル系SIerです。
経営課題の解決という目的があるため、開発の前段階として経営戦略の立案をはじめとしたコンサルティングに携わるのが特徴といえるでしょう。
グローバル企業が日本市場での売り上げを伸ばすために現地法人を設置し、システム開発業務を請け負うケースがあります。
この流れで設置された現地法人を外資系SIerと呼び、親会社が販売したいシステムの導入を推し進めるのが主な役割です。グローバルな環境でシステム開発に携わりたいと考えている方におすすめの系統といえるでしょう。
ここからは、メーカー系SIerの特徴についてさらに詳しく見ていきましょう。メーカー系への転職を検討している方は、ここで紹介する2つの特徴が自分に合っているか吟味することをおすすめします。
メーカー系SIerは、基本的に自社で積極的に開発案件を受注するのではなく、親会社と協働するケースが多いのが特徴です。ただし企業によって親会社との関係には違いがあるため、特定の企業に応募する際にはしっかりと調査することをおすすめします。
メーカー系SIerは、ハードウェアメーカーである親会社が製造しているハードウェアを活用した案件に携わるのが特徴です。親会社が製造するハードウェア上で動作するシステムを開発するケースが想定できるでしょう。
ほかにも、親会社が契約したプロジェクトに参加することもあります。親会社が大規模な開発案件を受注した場合は、複数のSIerが参加した混合チームを編成することもあるでしょう。企業によって差があるものの、親会社との関係性が強いといえます。
メーカー系SIerは、親会社の取引先が手掛ける開発案件に携わることが多い点も特徴です。メーカーは大企業が多いため、多くの人員が参加する大規模なプロジェクトに携わるケースもあります。
大規模なプロジェクトへの参加を繰り返すことで、さまざまな開発経験を積めるところがメリットです。開発経験を通じてスキルアップしやすく、エンジニアリングスキルを高めてさらなるキャリアアップを目指す方にも向いています。
ただし、開発案件によっては細部まで分業化されていて、特定の分野にしか携わらないケースがある点に注意が必要です。そのような環境ではスキルアップするのが難しいため、転職先を注意深く選ぶ必要があります。
IT業界以外の事業会社を母体とするユーザー系SIerにも、いくつかの特徴があります。ユーザー系SIerの求人に応募しようか迷っている方は、ここで紹介する2つの特徴を確認しておくことをおすすめします。ユーザー系SIerの特徴が自分にとって魅力的に感じるのであれば、転職を検討するとよいでしょう。
システム開発の進め方は、大きく「自社内での開発」と「クライアント企業に常駐しての開発」の2つに分けられます。この2つのうち、ユーザー系SIerは自社内での開発に携わることが多い点が特徴です。親会社が使用するシステム開発がメインの企業では、特にその傾向が強いといえるでしょう。
ただし、ユーザー系SIerの中には外販をメインとしている企業もあります。外販メインの企業に就職した場合は、常駐案件が増える可能性がある点に注意しましょう。
ユーザー系SIer企業の親会社は大企業であることが多く、親会社に準じる福利厚生が整っていることがあります。そのような企業に入社できれば、ワークライフバランスを保ちやすいでしょう。
社員が利用できる施設が充実していたり、休暇制度が整っていたりするとメリハリをつけて働けます。大企業はコンプライアンス意識が高く、人員がそろっているところも多いため、激務に陥る可能性は低いでしょう。
ただし、具体的な状況は企業によって大きく異なります。ワークライフバランスの改善を目的として転職を検討している場合は、応募したい企業の具体的な情報を集めることが大切です。
親会社を持たない独立系SIerも数多く存在するため、SIerへの転職を検討していると独立系が候補となるケースも多いでしょう。ここでは、数あるSIerの中で独立系を選ぶときに知っておきたい2つのポイントを解説します。さまざまな開発経験を積んでスキルアップし、ITエンジニアとしてさらなるキャリアアップを目指す方におすすめです。
自社でクライアントからシステム開発案件を獲得し、開発の全段階に携わるのが独立系SIerの基本です。そのため、多種多様なプロジェクトを通じてさまざまな経験を積める点が特徴といえるでしょう。
最初は開発業務や運用・保守業務から始まった場合でも、経験を積めば要件定義や設計に携われる可能性もあります。積極的にチャレンジすればさまざまな工程で必要とされるスキルを複合的に習得できるため、キャリアアップを目指す方向けともいえるでしょう。
独立系SIerは、多くの企業からシステム開発案件を受注することで収益を上げています。クライアントとなる企業・機関は小売業・金融業・通信業・官公庁などさまざまです。そのため、日々の開発業務ではさまざまなICTシステムに携わることになるでしょう。
業界・業種を問わず多くの開発経験を積めるため、実践的かつ応用的なエンジニアリングスキルを習得できるのがメリットです。習得した経験やスキルは転職市場でも高く評価されやすいことを考えると、自身の技術レベルを高めたい方は独立系SIerを選ぶとよいでしょう。
コンサル系のSIerに転職すると、ほかのタイプではあまり経験できないコンサルティング業務に携われる可能性があります。将来的にコンサルティング職を目指している方や企業の経営に携わりたいと考えている方におすすめです。
ここでは、コンサル系SIerに転職するときに覚えておきたい2つの要素をまとめました。これらの特徴が思い描いているキャリアパスに合致しているのであれば、転職を検討してもよいでしょう。
ITコンサルティングファームは、ICTシステムの開発ではなく経営課題を解決するための策を導き出すコンサルティング業務をメインとしています。そのため、ITコンサルティングファームに転職すると、クライアントの要望のヒアリングや課題を発見するためのデータ分析、提案などに携わることが多いでしょう。
そのうえで要件定義や基本設計に進むため、上流工程に携わる機会が多い点が特徴です。マネジメント層などを目指すにあたって上流工程の経験を積みたい方に向いています。
コンサル系SIerではコンサルティング業務がメインとなることから、ほかのSIerと比較して開発業務のボリュームが少ない点がデメリットです。そのため、次々に開発案件をこなしてスキルアップしたいと考えている方には不向きといえるでしょう。
コンサル系のSIerは、エンジニアリングスキルを磨いてスペシャリストを目指そうと考えている方より、マネジメント層として活躍したいと考えている方におすすめの選択肢です。
SIerには外国企業を親会社としているところもあり、外資系SIerが転職候補に入っている方もいるのではないでしょうか。外資系企業も検討対象に含めている方は、以下で紹介する2つのポイントをチェックしておくことをおすすめします。外資系企業は国内企業と掲げているミッションが異なるケースもあるため、詳しく確認しておきましょう。
外資系SIerは、本国にある親会社が開発しているICTサービスやシステムの国内展開をミッションとしていることがあります。そのため、親会社が提供しているハードウェアやプラットフォーム、インフラなどのリソースを活用したシステム開発がメインです。
企業によっては、コンサルティングをはじめとした上流工程から携わる場合もあります。外資系企業への転職を検討している方は、入社後に携わる具体的な仕事内容と実現可能なキャリアパスを詳しく確認することが大切です。
各国に現地法人を展開している外資系SIerであれば、国境を越えて大規模なプロジェクトを展開することもあります。そのため、大規模なプロジェクトに携わりたいと考えている方やグローバル志向の方にもおすすめです。
ただし、大規模なプロジェクトは大勢のエンジニアが参加していて細かく分業化されている傾向にあります。自分が携わる部分が全体から見るとごくわずかにすぎず、全体像が見えてこなかったり自分が有しているスキルを十分に発揮できなかったりする可能性がある点に注意が必要です。
SIerは5つの系統に分けられ、それぞれ傾向や具体的な仕事内容、求められるスキルが異なります。しかし、どの系統のSIerにも共通して必要なスキルもあります。
ここでは、SIerへの転職を実現するために欠かせないスキルとして「開発スキル」「マネジメントスキル」「ポータブルスキル」の3つを詳しくチェックしていきましょう。
ITエンジニアとして働く以上、プログラミングスキルをはじめとした開発スキル(エンジニアリングスキル)は欠かせません。IT業界では以下のプログラミング言語がよく用いられているため、新しい言語を学習するとよいでしょう。
さらに、LinuxをはじめとしたOSに関するスキルやハードウェア・ソフトウェアに関する知識を習得しておくのがおすすめです。スキルレベルを高めることで、SIerのITエンジニアとしてより有用な人材になれます。
SIerでITエンジニアとして働いていると、ヒアリングや要件定義、基本設計、詳細設計などの上流工程に携わります。必要に応じてリソースを調達したり、人材配置を考えたりすることもあるでしょう。
上記の業務をスムーズに進めるには、マネジメントスキルが欠かせません。具体的に培うとよいマネジメントスキルの例は以下のとおりです。
特にコンサル系SIerなど、経営に関するコンサルティングに携わる場合は上記のスキルが重要です。上流工程を担当したいのであれば、マネジメントスキルを磨くように努力しましょう。
ビジネス全般に求められるポータブルスキルもSIerのITエンジニアとして欠かせません。ポータブルスキルはどのようなビジネスにも活用できる汎用的なスキルを指し、具体的には以下のものが含まれます。
エンジニアとして働いていると開発チーム内のメンバーと協力したり、一部の業務をアウトソーシングしたりする機会があるでしょう。そのようなときには、意思疎通をスムーズにするために上記のスキルが求められます。
SIerはクライアントからICTシステムの開発業務を請け負うことで収益を上げる企業です。一口にSIerといっても主に5つの系統に分けられ、それぞれ特徴が異なります。そのため、SIerへの転職を検討している方は、自分が目指すキャリアパスを明確にしたうえでそれを実現できそうな企業を選ぶことが大切です。
自分だけで転職活動を進めるのが難しいと感じている方は、IT業界の転職に強いキャリアアドバイザーの力を活用するとよいでしょう。
マイナビITエージェントでは、IT業界の実情を詳しく知った経験豊富なキャリアアドバイザーが転職をサポートいたします。あなたの経験やスキルレベル、キャリアパスを踏まえて最適な求人をご紹介しますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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