メーカーエンジニアの職種図鑑

EMCエンジニア

EMCエンジニアとは、電子機器の開発に携わる一員として、EMC(電磁両立性)に関する専門知識を身に付けた技術者のことです。

EMCエンジニアの男性

「EMCエンジニアとして手に職をつけたい」「EMCの仕事に携わってみたい」など、
「EMCエンジニア」の仕事や働き方に興味を抱き、
今このページにたどり着いたという人もいらっしゃるのではないでしょうか。

EMCエンジニアとは電子機器が放出する電磁波をコントロールする仕事で、
製品の開発段階に携わるエンジニア職です。

今回は、EMCエンジニアの仕事内容、魅力、難しさ、年収、
必要なスキルや知識、向いている人、キャリアパスなどを解説します。

EMCエンジニアは最新技術を駆使して日本のモノづくりに貢献できる魅力的な仕事です。
興味のある方は、ぜひ最後までご覧ください。

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この記事のまとめ

  • EMCエンジニアとは、電磁波の影響を受けずに稼働できる電子機器、周囲に電磁波の悪影響を与えない電子機器を作るため、試験を実施したり対策を講じたりする仕事。

  • EMCエンジニアは、未経験からでも目指せる仕事。特にEMC試験業務は、第二新卒や未経験者を歓迎する求人も多数見られる。

  • EMCエンジニアの仕事をするうえで取得しなければならない資格はない。

EMCとは

EMCとは

EMCとは、Electromagnetic Compatibilityの略語で、日本語では「電磁両立性」という意味です。電磁波の影響を受けない機器・システムのことを指します。

私たちの身近にある機器類は電磁波を発しており、対策を講じないとノイズが放出されてしまいます。ノイズの放出はそのほかの周辺機器に悪影響を及ぼし、時に致命的な誤作動を誘発することもあるため、かねてより対策が講じられてきました。

放出したノイズが周辺機器に悪影響を及ぼさないための対策を「EMI(Electromagnetic Interference)」ほかの周辺機器の悪影響を受けないための対策を「EMS(Electromagnetic Susceptibility)」と言い、それらの両立を図るのがEMC設計といわれています。

EMCについて詳しくは下記記事をご覧ください。

EMCエンジニアの仕事内容

EMCエンジニアの仕事は大きく2つに分かれます。それぞれの仕事内容について以下で解説します。

EMC試験の実施

試験は電磁波の影響を受けない環境下で実施しなければならないため、専門施設にて行われます。専門施設では、EMCエンジニアが計測機器を用いてあらゆる状況下におけるノイズの状態を測定します。

測定にあたっては、正確な結果を取得するため、あらかじめ定められた測定ルールを遵守しなければなりません。また、測定機器の取り扱いについても熟知している必要があります。

試験終了後、測定結果をレポートにまとめて報告するのもEMCエンジニアの仕事です。

EMC対策

EMC対策にはいくつかの進め方が存在します。

たとえば、設計段階で作成した図面を見ながら専門家としてノイズ対策を検討する場合です。また、試作品をEMC試験にかけてから明らかになった問題に対して、原因調査と改修を行う場合などもあります。

そのほか、適宜状況によって周囲と連携を取りながら対策を講じていきます。

EMCエンジニアの魅力ややりがい

EMCエンジニアの魅力の一つは、まだ世に出る前の製品、これから人々の生活に良い変化をもたらすであろう製品の存在をいち早く知ることができる点です。自分の担当した製品が消費者の手に渡ることで、多くの人の役に立てている実感が湧いてくるでしょう。

また、EMC試験を経験する中ではなかなか合格に至らない困難な案件と遭遇する場合もあります。顧客と話し合いながら試行錯誤を繰り返す工程は果てしなく感じるかもしれません。しかし、苦労や努力を重ねて合格に至った時には、この上ない達成感や開放感、EMCエンジニアとしてのやりがいを実感できるはずです。

EMCエンジニアの難しさや大変さ

EMCエンジニアの難しさや大変さは、その都度最適な方法を模索して判断していかなければならない点にあるでしょう。

たとえば試験に関しては、遵守しなければならないラインはあるものの、手順や手段は自ら検討する必要があります。EMCエンジニアの数だけ答えがあるともいえますが、自由で柔軟な発想力を活かせることを楽しめる方であれば、やりがいやモチベーションをもって働けるでしょう。

ただ、EMCエンジニアの力量が試される部分でもあるので、必要以上にプレッシャーを背負ってしまう可能性もあります。

EMCエンジニアの年収はどれくらい?

実際に掲載されている求人情報をもとに算出したEMCエンジニアの年収は、およそ300〜500万円です。しかし年収の幅は広く、低いものでは300万円台から、高いものでは約1,000万円の求人も存在するため、企業規模や詳細な仕事内容によって大きな差が生じていることがわかります。また、能力の程度が年収査定に大きく影響をおよぼしている可能性も考えられるでしょう。

EMCエンジニアは、専門性の高さから、決して従事者が多くない状況もあります。そのため、初心者のうちは低水準でも、努力次第で実績に伴った正当な評価を受けられるでしょう。

EMCエンジニアに必要なスキルや知識

EMCエンジニアの仕事に就くうえでは、EMCに関する専門知識がもちろん必要です。しかし、専門知識のみで一人前のEMCエンジニアになれるかというと、必ずしもそうではありません。以下4点はビジネスパーソン全般に該当する重要なスキルや知識でもあるので、徐々に身につけられるようにしましょう。

課題解決力

EMCエンジニアにとって課題解決力は必須です。目の前の事象や結果に対して仮説検証を行い、課題解決の方法を導き出すことが求められます。

広い視野と柔軟な発想力

前述の課題解決にあっては、広い視野と柔軟な発想力を持ち合わせていることが重要となります。EMCエンジニアの「こうであるはずだ」という固定観念は、真実を曇らせ、可能性を狭めることになってしまいます。

コミュニケーション能力

EMC試験は顧客と連携しながら進めるケースが多いため、コミュニケーション能力も必須です。実施計画を一緒に決定したり、テスト結果を報告したりする機会もあり、プロジェクトの遂行のために円滑なコミュニケーションを取ることが求められます。

語学力

製品規格の記載が英語の場合があるので、EMCエンジニアにはある程度の語学力も求められます。ネイティブレベルを目指す必要はありませんが、業務上で関わりが深い単語や文面に関しては理解しておくとよいでしょう。

異業種や未経験でもEMCエンジニアになれる?

異業種や未経験からでもEMCエンジニアになることは可能です。第二新卒や未経験者を歓迎する求人も存在します。一方、EMC対策を行う業務の場合、EMC対策や対策支援の経験、あるいは基板や電源を設計した経験が優遇されます。

いずれも電気、電子、品質管理などの知識があれば優遇されるものの、初心者からの育成に対応したり研修制度を設けている企業もあるため、専門性が高いからといって必ずしも門戸が狭いということではありません。

EMCエンジニアに向いている人の特徴

EMCエンジニアの仕事で活躍している人には、ある共通点が見られます。以下の3点に該当する場合は、EMCエンジニアに向いている人である可能性が高いでしょう。

モノづくりが好きな人

モノづくりが好きな人はEMCエンジニアに向いている可能性が高いです。メーカーの製品を世に流通できる状態へ導くEMCエンジニアは、モノづくりの一端を担う重要な存在です。製品の完成に貢献できたという体験は、仕事やスキルアップのモチベーションにつながるでしょう。

最後まで諦めずに追求できる人

試験や対策の工程では、思うような結果が得られず試行錯誤が続くことがあります。また、製品によってルールが異なるため、その都度新しく覚えなければならないこともあります。そうした状況に置かれても諦めずにやり遂げられる人の場合、EMCエンジニアとして活躍することもできるでしょう。

臨機応変な対応ができる人

ワンランク上のEMCエンジニアを目指すには、いかに臨機応変な対応ができるかが鍵です。EMCエンジニアの仕事には一つとして同じ案件はないため、固定観念や自分の中の常識が問題解決を妨げるケースも多々あります。当たり前を疑う姿勢や柔軟な思考力を備えていれば、多くの場面で重宝される存在になれるでしょう

EMC試験とは?

EMCには、国際規格や地域における規格と規制があります。日本の場合、電気用品安全法によって対象となる機器は規格を満たす必要があります。対象外の機器であっても自主規制が行われており、情報処理関連の場合は、一般財団法人VCCI協会(旧、情報処理装置等電波障害自主規制協議会)が加盟しているメーカーに要求を満たすよう求めています。

このような規制などに、EMCに適合しているのかを確認するのがEMC試験です。国際規格や規制などの枠組みの中で、対象機器が発する電磁波のノイズがほかに影響を及ぼさず、かつ影響を受けても動作に影響がないかを試験します。

EMC試験を実施できる環境は限られており、専門の施設が必要です。テレビや携帯電話などから発せられる電磁波の影響を受けることなく、試験で発生した電磁波がもれて周辺に影響しないよう配慮が施された「EMC試験サイト」と呼ばれる施設で行います。さまざまなケースを想定した屋内外のEMC試験サイトで機器を動作させ、アンテナなどを使ってノイズを測定します。当然ながら、EMC試験サイトを有する企業などが求人を募集している場合があります。

EMCエンジニアにおすすめの資格

EMCにおける国家資格は日本にありません。しかし、業界内でEMCエンジニアの能力を示す資格として知られているのが「iNARTE EMC Engineer(技術者)」「iNARTE EMC Technician(技能者)」です。これは、アメリカにある国際無線通信電磁気協会(iNARTE)が認定するグローバルな技術資格で、現在は日本国内で日本語による受験が可能です。

いずれも受験資格として、「EMCに従事していること」「経験年数」「推薦者」が必要となっていますので、EMCエンジニアとして経験を積んでから能力を示すために受験する資格です。暗記力ではなく、判断力や応用力を問うものなので、計算用具や参考資料、オフラインのパソコンを持ち込むことができるのが特徴です。人数の多いiNARTE EMC Engineerの合格率は、実務経験者を対象にしながらも、よくて3割程度と難度は高く、有資格者は国内で1,188人(2022年4月時点)、世界全体でも2,300人(2018年4月時点)となっています。すべてのEMCエンジニアが資格を取得しているわけではないものの、EMCエンジニアが国際的に見ても貴重な存在であることがうかがい知れます。

EMCエンジニアの転職先やキャリアパス

EMCエンジニアの将来的なキャリアとしてはどのようなものが考えられるのでしょうか。ここでは、主な転職先やキャリアパスをご紹介します。

転職先

EMCエンジニアの転職先としては、電子機器を手掛ける企業内の部門や、EMC試験と対策を請け負う専門企業が挙げられます。

企業の一部門に転職したEMCエンジニアは、自社製品の試験や対策を手掛けることになるでしょう。一方、EMCの専門企業の場合は、持ち込まれる他社製品を取り扱うことになるため、幅広く経験を積んでいくことになります。

EMCエンジニアは担う業務範囲は狭いものの、電子機器の設計に関わる現場から常に求められる存在です。したがって、電子機器のエンジニアとして一括りに扱われるのではなく、あくまでもEMCエンジニアと限定的に募集されるのが、現時点における求人の傾向となっています。

キャリアパス

EMCエンジニアのキャリアは、電子機器メーカーなどに就職し試験所に配属されるケース、基板などの設計を通してEMCに興味を持ち転属や転職をするケース、異業種から関心を持ってEMC専門企業に挑戦するケースなどがスタートになります。

自社の製品だけではなく、より幅広いジャンルの製品を扱いたいという動機から転職するエンジニアもいます。反対に、EMCの経験を身につけてから電子機器の開発エンジニアへと転身する人もいます。試作品の段階でEMC対策を行うよりも設計段階でEMCを意識したほうが効率的に製品化できるため、価値の高いエンジニアになれるのです。

未経験でも始めやすいのがEMC試験を担当するエンジニアで、スキルや経験を積んでステップアップしていきます。企業によっては、社内資格を設けることで段階的に目標を立てやすくなっています。試験対象や結果は変化するものであり、新しい規格ができた場合にはその規格に対応した試験環境を整えるなど、時代や新製品への対応力も必要ですが、それを楽しみながらスペシャリストとして極めたいという思いを持つエンジニアが少なくありません。電子などの知識が身につけば、EMC対策を行うエンジニアへの道も開けていくでしょう。

また、EMC試験で10年程度の経験を積んだ後に試験施設のマネージャーになる道もあります。

EMCエンジニアへの転職を成功させるポイント

EMCエンジニアの仕事は、営業職や事務職などと比べると求人数は決して多くありません。その中で、より自分の希望に近い企業への転職を実現するためには、戦略的に転職活動を進めていくことが重要です。

そこでおすすめしたいのが、転職エージェントの活用です。転職エージェントは、求職者の転職活動を成功に導く、いわば専門家集団といえます。数ある転職エージェントの中でもマイナビエージェントは、若手や転職経験が浅い求職者から大きな支持を得ています。

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限られたチャンスを確実に獲得するためにも、マイナビエージェントを活用し、納得できる転職を実現しましょう。

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よくあるご質問

  • EMCエンジニアとは?

    Answer

    EMCエンジニアとは、電子機器の開発に携わる一員として、EMC(電磁両立性)に関する専門知識を身に付けた技術者のことです。

  • EMCエンジニアの仕事内容は?

    Answer

    EMC試験を実施や電子回路設計のEMC対策などを行います。専門性が高く、電子機器の設計に関わる現場から常に求められる存在です。