EMC
Electromagnetic Compatibilityの略語で、電磁波の影響を受けずに動作する性能を指す「電磁両立性」と訳されます。
電磁波による機器の異常な動作は見過ごせない問題です。自動運転車やドローンなど、
正常に動かなければ命に関わるようなトラブルも起こりうる機器も普及していく中、
電磁波を制御するための「EMC」に注目が集まっています。
ここでは、EMCの重要性やEMC試験について詳しく解説していきます。
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この記事のまとめ
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EMCとは、機器が発する電磁波を、周囲の機器に影響を与えず、また他からの電磁波の影響を受けずに動作する性能のこと。
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5GやIoTの普及などIT技術の進化や発展にともない、EMCの需要は今後も高まることが予想されている。
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EMCエンジニアになるためにはEMCを専門に扱う技術者としてキャリアを重ねることが一般的。
EMCとは?EMCの基礎知識や重要性について
EMCとは、Electromagnetic Compatibilityの略語で、「電磁両立性」と訳されます。
私たちの身の回りにある機器は、常に電磁波を発しています。電磁両立性とは、機器が発する電磁波が周囲の機器に影響を与えず、ほかからの電磁波の影響も受けずに動作する性能のことです。
EMCの重要性や求められるようになった背景
私たちの身の周りにある機器は、EMC対策が施され販売されています。しかし、使用条件によっては電磁波によるノイズが発生してしまう可能性があります。
身近な例では、電子レンジの使用中に近くでBluetooth接続のイヤホンで音楽を聴くと音が飛んだり、テレビの近くでヘアードライヤーを使うと音や画面が乱れたりするような現象のことです。
生活上の小さな問題であれば見過ごせるかもしれませんが、今後普及が見込まれる自動運転車やドローンがノイズによって誤作動を起こしたり制御不能に陥ったりしてしまうと、人命にも関わる重大な事故を引き起こしかねません。最近でも、工場設備でノイズが原因の動作不良によって損害が出たり、人身事故が発生したりしています。
EMCの規制に関して
EMCは前述のように対策を施さなければ重大な事故を起こすことがあるため、規格や規制が存在します。
たとえば、国際機関としてはIEC(国際電気標準会議)やCISPR(国際無線障害特別委員会)などの各国際機関が各国際規格を、日本ではJIS(日本産業規格)が国内の規格を定めています。EMC規格は随時改正されるため、改正動向を把握しておく必要があります。
EMC対策にはEMI対策とEMS対策がある
EMCは、「電磁妨害」と訳される「EMI(Electromagnetic Interference)」=通称エミッションと、「電磁感受性」と訳される「EMS(Electromagnetic Susceptibility)」=通称イミュニティの2つの要素に分けられます。
EMC対策とは、EMI(エミッション)とEMS(イミュニティ)の2つを両立させた設計を実現することであり、「EMC設計」または「ノイズ対策」とも呼ばれています。
EMI(エミッション)対策とは
電子機器から発生する電磁波は、ほかの機器に影響を与えないよう所定レベル以下であることが求められます。ノイズを抑えるための対策を「EMI対策」または「エミッション対策」と呼びます。
EMS(イミュニティ)対策とは
電子機器は、ほかの電子機器から発せられる電磁波による妨害を受けたとき、その影響を限定的にして正常に動作しなければなりません。そのための対策を「EMS対策」または「イミュニティ対策」と呼びます。
このようにEMCには比較的高度な知識が必要であり、取り扱うための専門的な職種が存在しています。
EMCの重要性は今後も高まっていく
従来、電子機器は「※スタンドアロン」として個別に動作していましたが、現代ではインターネット経由で機器同士が通信し合ってつながる機能が備わりました。IoTデバイスの増加や5Gの普及など、IT技術の発展や成長にともない、EMCの重要性は今後も高まっていくことが予想されます。
※システムや機器が単独で機能すること。
EMC対策を担うエンジニアの活躍の場は広がっていく
EMC設計を行うエンジニアが機器開発で担う役割の範囲は限定的ですが、EMC対策は身の回りの多くの製品に関わるものであり、今後も必要とされる職種です。最近では、家電製品など幅広い商品に通信機能が備わることで取り扱うプロダクトの幅や電磁波の種類が変化しており、活躍の場が増えていくと思われます。
EMC対策では、設計段階でシールド材で覆うなど対策部品を使用することでノイズを減らしていきますが、EMC試験の結果からノイズの原因を見極め、どのような部品を採用するのが最適かを検討するなどの重要な役割を担っています。
EMCエンジニアになるには?
EMC設計を行うエンジニアは、電気電子機器に関する設計全体の中では特殊な立場で開発に関わります。そのためEMCを専門に扱う技術者としてキャリアを重ねることが多い職種ですが、半導体エンジニアへの転身や、その逆のキャリアチェンジも見られます。また、EMC試験を行うエンジニアは未経験者歓迎の求人もあり、挑戦しやすくなっています。
電気電子製品に欠かせないEMC試験
電磁波のノイズによる機器トラブルを防ぐため、定められた基準をクリアしていることを確認し、認証を受けることが求められます。そのために行われるのが「EMC試験」です。基準には国際的な統一規格が設けられており、それを参照する形で各国の規格が定められているのが一般的です。
日本では、国が定めたJIS(日本工業規格)に合格する必要があり、JISの対象となっていない機器のうち、情報処理関連機器についてはメーカーが加盟する一般財団法人VCCI協会(旧、情報処理装置等電波障害自主規制協議会)が団体規格を設けて自主規制を行っています。また、これ以外にも、メーカー各社が自主的に規定する社内規格が存在します。
EMC試験ではレポートが作成される
EMC試験は電気電子機器の開発段階で実施されることがほとんどで、EMCエンジニアが試験を実施しレポートにまとめます。
試験は、機器から発せられる妨害波を測定するEMI試験と、実際の使用環境を想定した電磁波の中で正常に動作する耐性があるかを確認するEMS試験の2つに大別できます。試験方法は電磁波の伝送経路などによってバリエーションがあり、さらに落雷の影響なども加味されます。
EMC試験はEMC試験サイトで行われる
EMC試験は、「EMC試験サイト」と呼ばれる施設内で行われます。施設は大掛かりで特殊な設備が必要なため、EMC試験を行う専門企業や電子機器メーカーが運営しています。検査したい機器に対応する規格や設備の内容に応じた適切なEMC試験サイトを選びます。
EMC試験サイトは、テレビや携帯電話などから発せられる電磁波の影響を受けることはなく、試験で発生した電磁波が漏れて周辺に影響しないよう配慮された施設です。さまざまなケースを想定した屋内外の試験サイトで機器を動作させ、アンテナなどを使ってノイズを測定します。
EMCエンジニアの国際資格「iNARTE」
EMC設計エンジニアについては、転職市場では実務経験者が対象となるのが一般的です。また、電気電子機器のエンジニアに転身する場合にも、EMC設計の経験があればエンジニアとしての価値が高まります。そのため、専門的な経験と知識を客観的に証明できる資格を取得しておけば、転職が有利になる可能性があります。新卒採用もあって比較的門戸が広いといわれるEMC試験エンジニアについても、やはり同様でしょう。
そこで紹介するEMC業界で最も知られた資格が、国際的な資格制度「iNARTE」です。アメリカにある国際無線通信電磁気協会(iNARTE)が認定する技術資格ですが、日本国内で日本語による受験が可能です。 「iNARTE EMC Engineer(技術者)」と「iNARTE EMC Technician(技能者)」の2種類の資格が用意されていますが、受験にはEMCに従事した年数などの条件が設けられています。
実務経験者にとっても難度は高く、iNARTE EMC Engineerの合格率は高くても3割程度です。有資格者は国内で1,188人(2022年4月時点)、全世界資格者数は約26ケ国でも2,300人(2018年4月時点)と少ないため、優れた技術者であることを示して差別化できる資格であるといえるでしょう。
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