半導体設計
あらゆる電気電子機器に組み込まれている、半導体集積回路の設計を行います。
私たちの生活に欠かせないあらゆる製品に活用されている半導体技術は、
近年ますます需要が高まっています。
そのため、「半導体に携わる仕事がしたい」「半導体設計に興味がある」など、
導体業界に進むキャリアを思い描いている人もいるかもしれません。
そこで今回は、半導体設計者の仕事内容や将来性、
必要なスキルや知識、キャリアパスなどを解説します。
半導体設計に興味がある人や、今まさに転職活動をはじめようとしている人は、
ぜひ参考にしてみてください。
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この記事のまとめ
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半導体とは、導体と絶縁体の中間の特性をもつ材料・物質で、主にシリコンが用いられる。
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半導体設計の年収は、400万円~1,000万円程と幅が見られる。
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半導体設計者に必要な知識・スキルとしては、「電気工学・電子工学の知識」や「数学や物理の知識」、「EMCの知識」などが挙げられる。
そもそも半導体とは?
半導体とは、電気を通す「導体」と、電気を通さない「絶縁体」の中間の特性をもつ材料・物質です。具体的には、導体は金属、絶縁体はガラスなどの素材、半導体はシリコンやゲルマニウム、カーボンなどの素材が挙げられます。
半導体は、導体・絶縁体いずれの役割にも成り代われることから、さまざまな製品に活用されています。
半導体設計の仕事内容
半導体設計とは、導体を用いた集積回路を設計することです。
前述したように、半導体とはもともと特定の物質を示す言葉でしたが、いまは半導体物質を利用した電子部品「半導体集積回路」を略して半導体と呼ぶようになっています。さまざまな機器の中でも中心的な役割を担い、あらゆる製品開発で必要とされている部品です。半導体にはデジタル信号やアナログ信号を処理するものがありますが、ここではデジタル処理を行う半導体設計について解説します。
半導体設計のエンジニアは、家電製品メーカーや半導体メーカーのほか、自動車業界などにも活躍の場があります。半導体設計に必要な仕事は複数に分かれており、個人ではなく専門性を持ち寄ったチームで開発を進めていきます。
企画から図面作成まで幅広くチームで開発
半導体の設計職は、よくコンピューターの「頭脳」にたとえられるCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)やMPU(Micro Processing Unit:超小型演算処理装置)、メモリーなどのコンピューターを構成する製品の開発を担当します。また、汎用的な製品のみならず、カスタマイズした開発を行う企業もあります。
いずれにせよ、共通する大まかなプロセスとしては、まずはどのような処理を行う製品なのか仕様を検討することから始まり、それを実現するための処理ロジックに落とし込み、実際にチップに素子を組み込むレイアウトを設計する流れとなります。
CADで設計した半導体の図面を紙に展開すると運動場や街ほどの広さになるため、プロジェクトによっては数十人が携わって一つの半導体を設計します。顧客からの受注生産であれば仕様を決めるために対外的なコミュニケーションも必要となりますが、ほとんどがプロジェクト内のエンジニアだけで仕事を進めます。
半導体設計の主な流れ
半導体設計はおおむね次のようなフローで進められます。
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仕様検討
顧客や製品開発部門が必要としている仕様を把握し、それを実現するために半導体をどう作るのかを検討します。機能や性能のほかに、コストや技術などの多面的な検討を行い、最終的に仕様書を作成します。仕様はハードウェアのみならずソフトウェアも組み合わせ、どのように目的を果たすかを考えます。
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論理設計
仕様書を基に、VHDLやVerilog-HDLなどのハードウェア記述言語で処理を記述します。記述したら、プログラムに誤りがないか動作確認を行います。
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論理合成
論理設計した内容を実現するため、実際に半導体で使う部品に変換します。これには「EDAツール」と呼ばれる専用の自動化ツールを使用します。半導体にもよりますが、部品の数は数千万個にもおよびます。
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レイアウト設計
論理合成して使用する部品が導き出されると、それをどのように配置し配線するかを設計します。基本的にはEDAツールで行われますが、エンジニアの腕が試される工程でもあります。
半導体設計の現状や将来性
半導体技術の進展は目覚ましく、まさに日進月歩の世界です。限界だといわれていた課題も次々と克服され、高性能化や小型化、省電力化も実現してきました。
経済産業省の「半導体戦略」は、半導体技術の重要性を以下のように唱えています。
「半導体は、5G・ビッグデータ・AI・IoT・自動運転・ロボティクス・スマートシティ・DXなどのデジタル社会を支える重要基盤であり、安全保障にも直結する死活的に重要な戦略技術。」
しかしながら、1990年代を境に日本の半導体産業の地位は下降の一途をたどっており、遠くない将来に日本のシェアが消滅することも危惧されています。このような状況を踏まえ政府は、既存の半導体工場の改修や新設を進めるなどの国家事業を打ち出しました。
AIやIoTなどの技術革新が目覚ましい中、国が主導で半導体産業の回復を図る動きもあることから、半導体設計の活躍の場は今後ますます増えていくことが予想されます。
半導体設計の魅力ややりがい
半導体設計の魅力ややりがいは、自分たちが手がけたものによって多くの人の人生を豊かにできるという点にあります。
半導体は、私たちが毎日当たり前のように活用している家電製品や乗り物など、あらゆる製品に用いられています。半導体そのものや半導体設計の仕事は決して人目につくものではありませんが、半導体の恩恵を受けていない人はいないといっても過言ではありません。
営業や接客、サービス業のように、エンドユーザーから直接感謝されたり笑顔を見られたりすることはありませんが、チーム一丸となって設計を仕上げた先には大きな達成感が待っています。
半導体設計の難しさや大変さ
半導体設計の難しさや大変さは、常に技最新技術を追いかけて学び続けなければならない点にあります。近年はAIやIoTの技術革新が目覚ましく、少しの油断であっという間に技術や情報に追いつけなくなってしまいます。
情報や技術力は、学生の頃のように与えてもらうものではありません。ビジネスパーソンとして、また半導体設計者として、いかに自主的に情報を取り、技術をものにできるかが問われます。
半導体設計者の年収はどれくらい?
マイナビエージェントの半導体設計者の年収を見てみると、400万円~1,000万円程度と幅広く設定されています。これほどまでに年収額に幅があるのは、個々の知識や技術力によって半導体設計者の評価が大きく左右されるためです。
視点を変えると、たとえ入社時の年収が希望額に到達しなかったとしても、日々の業務を地道にこなし半導体設計者としての実績を積み重ねていけば、年収アップも不可能ではないことを意味します。いわゆる実力主義であり、本人の頑張りに対する正当な対価が受け取れる業界であるため、未経験から高年収を狙うことも十分可能です。
半導体設計に必要なスキルや知識
半導体設計には専門的なスキルや知識が求められます。未経験から半導体設計を目指す場合は、以下の6点を身につけていきましょう。
電気工学・電子工学の知識
電気工学・電子工学の知識は、高度な専門スキルが求められる半導体設計は非常に重要です。実際、大学院まで進学し学んだ人も数多く活躍しています。
数学や物理の知識
電気・電子工学の知識が乏しい場合でも、数学や物理学の知識があれば、転職できる可能性があります。電気・電子工学の知識を必須としない企業は、自社研修で必要なスキルを教育する前提で採用を行っている場合もあります。
語学力
半導体設計者には、日々進化する技術を継続的にキャッチアップする能力も求められます。しかし、最新情報は米国など英語圏発のケースが多いため、英語のニュースやドキュメントを読み解ける能力があることが望まれます。日本語ではアクセスできる情報量が少なく、翻訳されたころには情報が古くなっている可能性が高い分野といえます。
EMCの知識
EMC(Electromagnetic Compatibility:電磁両立性)の知識も持ち合わせていれば、半導体設計者としての価値はいっそう高まります。EMCとは、機器が発する電磁波がほかの機器に悪影響を与えず、同時に周囲の電磁波によって機器の動作に不具合が起きない性質を指します。試作機の試験で問題を見つけることもできますが、あらかじめ設計段階で対策することができれば、開発スピードを速めることにもつながります。
ソフトウェアの操作スキル
設計者にとって必須スキルといっても過言ではないのが、ソフトウェアの操作スキルです。通常、製図作業はCADやCAMなどの設計支援ソフトウェアを用いるケースが多いため、操作スキルを身につけておく必要があります。
ハードウェア記述言語
論理回路をプログラムで表現する際には、VHDLなどのハードウェア記述言語を用いることになります。したがって、半導体設計者においては必須スキルといえるでしょう。
半導体設計者に向いている人の特徴
半導体設計者に向いているとされる人には、ある特徴が見られます。以下の3つのポイントに該当する場合は半導体設計者向きだといえるでしょう。
情報収集するのが好きな人
半導体技術は日々進化を遂げており、一般的に見れば「つい最近」に起こった出来事、見つかった技術でも、一瞬で過去のものと化してしまいます。したがって、誰に言われなくても進んで情報を収集できるタイプの人が適しています。
協調性のある人
半導体設計の工程では、顧客や開発部門などと連携し、チーム単位で業務を進めていきます。そのため、周囲の動きを見つつ協力して仕事を進められる人ほど半導体設計者に向いている可能性が高いです。
多角的な思考ができる人
技術者は専門分野のみ担えば良い訳ではなく、複合的な判断ができてこそ一人前と認められるものです。半導体設計では、半導体そのものの性能・機能を決定するだけでなく、開発コストや作業工程など経営的な観点に目を配ることも必要となります。
半導体設計エンジニアにおすすめの資格
半導体設計を担ううえで役立つおすすめの資格を3種類ご紹介します。必須資格ではないものの、自らの知識の証明にもなるため、いずれ取得を目指してみてはいかがでしょうか。
ディジタル技術検定
ディジタル技術検定試験とは、半導体の仕組みから回路理論、通信まで、幅広い知識を証明する資格です。等級は中学生レベルの4級から実務指導レベルの1級まであるので、自分のスキルや学びのペースに合わせて受験しやすいメリットがあります。
なお、2級・1級はより高度な専門性を問われるため情報部門・制御部門の2つが設けられており、同級でも別の資格となります。4級・3級はあくまで基礎的な内容であり、設計に関しては2級以上で問われる内容となるので、半導体設計の実務に活かしたいという場合は、2級・1級を目指すのがおすすめです。
CAD利用技術者試験
CAD利用技術者試験とは、半導体設計には欠かせないCADシステムの取り扱いスキルを問う資格です。合格すると、CADの操作スキル並びに製図スキルの証明となるため、半導体設計者にとって取得しておいて損はありません。
試験は、平面の製図スキルを問う2次元CAD利用技術者、立体の製図スキルを問う3次元CAD利用技術者の2種類が用意されています。2次元は基礎・2級・1級、3次元は2級・準1級・1級と、それぞれ異なる等級が設定されています。さらに、2次元の1級は機械・建築・トレースの3分野に分かれています。取得できれば半導体設計者としてのキャリアによりプラスになるでしょう。
半導体技術者検定
半導体技術者検定は、半導体技術者として求められる知識の保有を証明する資格です。半導体の品質保持に必要な知識が問われるため、半導体設計者にとってまさに役立つ内容となっています。
等級は、エレクトロニクス3級・エレクトロニクス2級・エレクトロニクス1級の3区分あり、3級は学生や若手エンジニア、2級は中堅エンジニア、1級は指導的立場のエンジニアをターゲットとしています。2級は「設計と製造」「応用と品質」「パワーエレクトロニクス」と分野別に試験が設けられており、科目ごとに資格認定されます。したがって、いままで半導体に触れる機会がなかった初心者は3級を目指し、ある程度知識や経験を積んだ後、2級の「設計と製造」を取得するのが良いでしょう。
半導体設計者の転職先やキャリアパス
半導体設計者を目指すうえで気になるのは、就職後に必要となるスキルや資格だけはないはずです。数年後の未来にどのような転職先が考えられ、どのようなキャリアパスが描けるのかも重要でしょう。ここでは、そのそれぞれのポイントについてご紹介します。
転職先
半導体設計者の最もポピュラーな転職先は、半導体メーカーや半導体設計を専門に提供する企業です。半導体をメインに取り扱う企業であれば、より深い専門知識を身につけられる環境に身を置くことができます。
ただし、半導体は今やあらゆる製品に活用されているため、パソコンや家電、通信機器、自動車、医療機器など、幅広いメーカーが自社で半導体設計者を募集しています。昨今の社会情勢の変化により多方面で内製化の動きが活発化していることから、半導体設計者に関して今後採用枠を新設する企業もあるでしょう。
キャリアパス
半導体設計を志す時点では必ずしも半導体を熟知している必要はありませんが、理系の素養は必要です。研修制度などを通してスキルと知識を身につけていきます。また、中途入社の場合は実務経験者の求人が中心となりますが、募集のケースにもよります。
半導体設計は、デジタル、アナログ、ソフトウェア、テストなど、多岐にわたる要素で成り立っています。チームで挑む仕事なので、マネジメントに長けていればマネージャーとして活躍することもできます。EDAツールなど半導体設計に必要な環境を整える仕事もあります。
半導体はハードウェアのイメージが強いかもしれませんが、組み込むファームウェアも必要ですし、最近ではFPGA(Field Programmable Gate Array)と呼ばれる、ソフトウェアで書き換え可能な半導体の利用も盛んになっており、ソフトウェア技術者の需要も高まっている業界です。
すでにご紹介したように、仕様検討ではソフトウェアの知識も必須ですし、論理設計ではハードウェア記述言語を使って必要な機能を記述するスキルが必要です。一括りに半導体といってもさまざまな分野のエンジニアを必要としています。自分には関係ないと思っていても、具体的に検討してみると意外にスキルを活かせる場面は多いかもしれません。
半導体設計への転職を成功させるポイント
半導体設計への転職を成功に導くために最も基本的なポイントとなるのが、志望動機やアピールポイントの構成です。たとえ半導体に対するスキルがあったとしても、やる気や熱意が感じられないようであれば、企業側は採用に踏み切らないでしょう。したがって、自分を採用するメリットを感じてもらえるような工夫が必要です。具体的には、以下内容を盛り込むようにしましょう。
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半導体業界、半導体設計者の道に進もうと決意した理由
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同業他社ではなく応募先企業を選んだ理由
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職歴の中で半導体設計者に活かせる経験や実績、具体的なエピソード
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結論から述べて端的な内容に仕上げる
しかし、未経験から半導体設計へ挑戦する場合は特に「自分のやり方で本当に内定が獲得できるのだろうか」と不安を抱くはず。そんな場合は、転職業界のプロフェッショナルである転職エージェントの力を借りるのも賢い方法です。
数あるエージェントの中でもマイナビエージェントは、豊富な求人数と手厚いサポートによって、特に若手の求職者から大きな支持を獲得しています。求職者には専任のキャリアアドバイザーがつくので、業界・企業選びから、履歴書・職務経歴書などの選考書類の作成まで、ワンストップでのサポートが受けられます。別途営業担当もおり、半導体業界や取引先企業の旬でリアルな情報も入手できるので、より効率的に転職活動を進められるでしょう。
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