更新日:2024/03/07
この記事のまとめ
IoTやAIなど先端技術の発展に半導体は欠かせません。世界での半導体需要は拡大しており、日本の半導体業界も事業拡大を急いでいます。将来性ある半導体業界に魅力を感じ、転職を希望する方もいるのではないでしょうか。
この記事では、半導体業界の基本的な知識に加え、未経験者が転職を成功させるために必要な情報を解説します。未経験者が半導体業界でどのような働き方ができるのか、知りたい方はぜひ参考にしてください。
目次
半導体業界へ未経験で転職する前に、まず業界の概要を理解しましょう。私たちの生活を取り囲む多くのものに半導体が使われています。半導体業界は、半導体を製造・流通させる企業で成り立っています。半導体業界へ未経験者が転職した場合、どのような未来が予測できるのか把握しておきましょう。
半導体業界とは、電子機器を動かすために必要な半導体を製造・販売する業界です。
大きく半導体を製造する企業、流通販売を行う企業、製造から販売まで一貫して行う企業に分かれます。
半導体が搭載される電子機器は、自動車やスマートフォン、パソコン、事務機、家電製品が挙げられます。半導体はこれらの電子機器を制御するために必要です。当然、電子機器の需要が下がれば半導体の生産需要も落ち込みます。
デジタル化推進のために不可欠な半導体の必要性は以前から高く、今後も半導体業界は発展することが予想できます。
半導体の発展に伴い、私たちの生活の質は豊かになるでしょう。たとえば、大容量・高速・低遅延の5G通信を活用したIoTの広まり・医療分野でのVRの活用・AIを用いた画像認識、自動ブレーキや追従機能などの自動運転技術の発展です。
スマートフォンやパソコンをはじめ、半導体が使われている製品は私たちの生活を支えています。デジタル化が進むこれからも、半導体関係の業界は高い人気が続くでしょう。
半導体業界全体の平均年収は約524万円です。年代別では20代が461万円、30代が584万円です。そのほかのメーカー業種と比べると、2位に位置する平均年収の高さです。
30代からの年収の伸びが顕著で、全体の平均年収を押し上げています。近年、IoTや自動運転技術の発展などに必要な半導体技術に注目が集まっているため、業界全体の展望は明るいといえるでしょう。
転職した場合は、年収アップ率は約40%と決して高くありません。未来の展望が明るい業界ですが、転職で年収アップを目指すにはキャリアアップも必要です。
半導体業界の基本的なイメージがついたら、次はビジネスモデルを理解しましょう。半導体業界は「半導体メーカー」「半導体製造機器メーカー」「半導体商社」「各産業機器メーカー」で成り立っており、どれも半導体業界には欠かせません。それぞれの役割について順番に解説します。
半導体メーカーとは、半導体の研究開発および製造を行う企業です。円柱状のシリコンの塊から半導体の基盤となる「ウエハー」を切り出し、平坦化させて半導体を製造します。この際、次に解説する半導体製造装置メーカーの装置を使用します。
半導体製造機器メーカーとは、半導体を製造するための専用機器を作る企業です。半導体を製造するためには、基盤となる「ウエハー」に細かい集積回路を焼きつける工程で使用される露光装置や、電気を通さない膜を作る装置などが必要です。これらの精密装置が半導体製造機器メーカーで作られています。
半導体商社とは、半導体メーカーで作られた半導体を仕入れ、電子部品や精密機器メーカーなど各産業機器メーカーに販売する卸売業です。高度な技術を用いる半導体は代理店販売が困難なため、半導体商社は重要な役割を担っています。
品質管理や技術サポートなども行うため、半導体に関する高い技術をもった専門商社といえるでしょう。
各産業機器メーカーは、半導体の開発や製造は行いません。仕入れた半導体を自社製品に搭載し製品化しています。自社製品に合う半導体メーカーはどこなのかを考え、半導体商社から自社製品に適した機能を持つ半導体を仕入れています。
ここでは、未経験者でも転職できる5つの職種を紹介します。いずれも半導体業界には欠かせない職種です。職種によって生かせる経験やスキルが異なります。自分の能力を踏まえ、興味のある職種について理解しておきましょう。
研究職は半導体に関する新技術や知識を生み出し、製品に生かす方法を研究します。企業により異なりますが、製品単位・回路や材料などの項目単位にそれぞれ分かれます。研究職ということから、活躍する多くの方が理系出身です。
現在、研究職は人材不足の問題を抱えています。高度な知識が求められるだけでなく、新たなアイデアや技術を生み出す必要もあり、今後も人材不足が続くと予想されている職種です。
設計職は、半導体の集積回路や半導体製造装置、ハードウェア(コンピューターを構成する製品など)の設計を行います。
半導体設計は、製品がどのような処理を行うのか、顧客の目的を把握しどのような半導体を作るかを検討するシステム設計のあと、実際に落とし込む処理ロジックを設計します。レイアウト設計にて、処理ロジックをどのようなレイアウトでチップに組み込むかを決めます。
プロセスエンジニアは、半導体や半導体製造装置の評価・プロセス評価・検証を行います。生産にかかるコストを最小限に抑えるための原料の選定や、量産化できる生産工程を作り上げます。
ものづくりにはトラブルや不具合が避けられません。それらを改善点として生かすのも大事な役割です。プロセスエンジニアは多くの工程に携わる職種といえます。
物理・電気・化学などの知見がある方が活躍している職種ですが、未経験者でも転職しやすい職種です。コスト面から生産工程を考えられる人材が求められているためです。
営業は、自社製品を求める会社へ営業・販売する職種です。営業先は半導体メーカーであれば半導体商社に、半導体製造装置メーカーであれば半導体メーカーに自社製品を提案します。
営業職は、顧客の要望に確実かつ素早い提案をしなければなりません。ほかの業界の営業職とも共通しますが、顧客とのコミュニケーションを重ねて信頼関係を築くことが大切です。日本だけではなく海外へ事業展開する企業もあるため、グローバルに働ける職種といえます。
資材調達は、半導体や半導体製造装置に必要な資材や道具を調達します。製品には顧客の要望を取り入れることから、高品質な資材や低コストの資材の調達が要求される場合もあります。
資材が変われば性能に影響するため、資材調達はニーズに沿った製品を作るうえで重要な役割です。英語など語学に秀でていると海外取引の際に重宝されるでしょう。
ここからは、未経験者が転職する際に持っておくと有利なスキルと資格を解説します。求められるスキルや資格は「コミュニケーションスキルと語学力」「半導体技術者検定(SECC)」「ディジタル技術検定」「CAD利用技術者試験」です。これらは半導体業界の中でも分野や職種、事業規模によって有利になるものが異なります。
半導体業界ではコミュニケーションスキルが必要です。黙々と仕事をするイメージのある研究・設計職も、関係部署との調整や問題解決をする場面があるためです。
また、英語によるビジネスコミュニケーション能力も重宝されます。企業によって必要とされる能力は異なりますが、目安は英語能力テストTOEICで600点以上の結果を得ていると評価されやすいです。
元は「半導体テスト技術者検定」と呼ばれていましたが、2019年から「半導体技術者検定(SECC)」へ名称が変わりました。試験では半導体の基礎をはじめ、品質保証までの知識レベルを見極められます。半導体の作り手と使い手、双方の知識を客観的に評価できる資格です。
資格は1級・2級・3級に分けられ、希望する分野・職種にかかわらず半導体業界に転職するために適した知識を習得できます。
参考:『SECC:半導体技術者検定|一般社団法人パワーデバイス・イネーブリング協会』
ディジタル技術検定は、情報処理や通信、回路理論など総合的なITの知識を証明できる試験です。このITの知識は、半導体をはじめものづくりに必要な基本的な知識です。
検定試験は1級から4級までに分けられます。資格を取得しておくと、半導体設計エンジニアとしての基礎知識を習得していることを証明できるでしょう。
参考:『ディジタル技術検定|公益社団法人 国際文化カレッジ』
CAD利用技術者試験は、CADシステムの知識や作図スキルを明確化できる試験です。資格を取得していると、実践業務レベルのCADスキルがあることを証明できます。
半導体の設計に利用するCADは操作スキルが重要です。そのため設計職などを志望する場合、CAD利用技術者試験の資格があれば、半導体の設計スキルがあることを伝えられます。
参考:『CAD利用技術者検定|一般社団法人コンピュータ教育振興協会』
未経験者が転職を成功させるために、未経験者なりの志望動機の書き方と求人情報の探し方を理解しておきましょう。未経験者でもポイントを知っておけば、採用担当者にアピールできる志望動機に近づけます。
求人情報で見る「未経験者可」には、応募者を増やす目的の企業もあるのが実情です。そこで、以下では転職成功に近づく求人情報の探し方も紹介します。
志望動機を明確にして、アピールにつなげることが最も重要です。過去の経験やスキルが半導体業界・志望する企業にどのように関連づけられるか、具体的に伝えられるようポイントを押さえましょう。
半導体業界は実技を身につける必要があるため、取得した資格はすべて詳細に書きます。たとえば、CADであれば使用できるツール名を明記しましょう。
ほかにも、プロジェクトメンバーやほかのメンバーとの連携が必要になる場合もあるため、コミュニケーションスキルもアピールできます。半導体業界が未経験でも、開発実績や営業実績があればはっきりと伝えましょう。
未経験可の求人情報には「業界未経験可」「職種未経験可」「業界/職種未経験可」の3種類の求人があります。この中でも「業界未経験可」の求人件数が多い傾向です。
半導体業界未経験者が企業を選ぶ場合は、過去に業界未経験者や職種未経験者の採用実績があるかの見極めが大切です。自分だけでは判断がつかない人は、転職エージェントの活用をおすすめします。
半導体業界は未経験でも転職できる業界です。未経験者が半導体業界への転職を成功させるためには業界理解はもとより、いままで習得したスキル・経験をどのように生かせるかを知る必要があります。
転職活動の戦略や転職先選びに苦戦した場合は、マイナビメーカーエージェントへご相談ください。半導体業界を熟知したキャリアアドバイザーがあなたのスキルや経験を踏まえ、転職活動を全力でサポートします。
メーカー
機械設計の転職先とは?転職で失敗するパターンと成功の5つのポイント
メーカー
機械設計の年収水準は?年収アップに必要なスキルや転職のコツも
メーカー
【例文つき】機械系エンジニア(機械設計)の志望動機の書き方やポイントを紹介