更新日:2024/04/17
この記事のまとめ
半導体は、私たちの便利な暮らしを支えるために不可欠な存在です。テレビや新聞といったメディアでもAIやIoTのような半導体に関わる情報を扱っていますが、半導体業界の仕事についてイメージしづらい方もいるのではないでしょうか。
この記事では、半導体業界の職種や転職に向いている人を、半導体業界の現状と将来性を交えながら解説します。半導体業界の概要を知りたい方は参考にしてみてください。
目次
半導体は身近な製品に使われていますが、実際に姿を見る機会は少なくイメージしづらい存在です。目に見えない部分で製品を支えており、私たちの手に届くまでには多くの企業が携わっています。ここでは、半導体業界の概要を解説します。
半導体とは、電子機器に囲まれた私たちの生活に欠かせないものです。たとえば、冷蔵庫やテレビ、家庭用ゲーム機に使われています。半導体には記憶するメモリーや計算するロジックが存在します。半導体業界は、さまざまな製品を動かすために必要な半導体の設計から販売まで携わる業界です。
半導体は使用される製品がないと成り立たたない業界であるため、製品の需要が落ちれば半導体の需要も下がります。景気や製品の市場状況に左右される業界といえるでしょう。
半導体業界は「半導体メーカー」「半導体製造装置メーカー」「半導体商社」の3つで成り立っています。半導体メーカーは半導体を製造する企業です。原料であるケイ素を形成・スライスした「ウエハー」と呼ばれる半導体の基盤材料を作ります。
ウエハーを作るには専用の精密装置が必要です。半導体の製造に必要な装置は、半導体製造装置メーカーから購入します。半導体商社は半導体メーカーから半導体を仕入れ、産業メーカーをはじめとする顧客に販売します。
半導体業界の職種は「研究開発・設計」「検証・評価」「営業」「資材・ツール調達」の主に4つです。ここでは、それぞれの業務内容や特徴を紹介します。どの職種も半導体業界には欠かせない存在であることを理解しましょう。
半導体メーカーや半導体製造装置メーカーで、半導体や半導体製造装置の設計・研究開発をします。半導体は日々進化しているため、後工程まで見越したり顧客のニーズに合わせた材質の選択やトレンドを取り入れたりしなければなりません。新たな技術やトレンドへ常にアンテナを張っておく必要がある職種です。
最先端技術を用いて、世に出る前の新たな半導体製品の開発・設計に関われることから、大きなやりがいがある仕事といえるでしょう。
半導体や半導体製造装置に関するハード評価、プロセス評価や検証だけでなく、フローを明確にし、改善点を洗い出す作業をする職種です。評価と検証によって製造した半導体に不具合がないか判断し、半導体製造装置の場合、「正常に使用できるか」「顧客の求める製品を正確に製造できるか」を確認します。
フローを明確にするのは、製造工程で不具合が発生したときの対策を考えるためです。このように、幅広い業務内容が検証・評価の特徴です。
半導体業界には、業種にかかわらず営業職が存在します。半導体を製造するメーカーは、半導体を卸売りする半導体商社が営業相手です。一方、半導体商社は顧客である電子・精密機器メーカーや産業機械メーカーへ製品を売り込みます。
どのような営業先でも、相手が求める商品を提供することが重要です。また、販売後にはアフターフォローをして、顧客満足度の向上に努めなければなりません。海外に営業先がある企業であれば、グローバルな活躍を目指せます。
資材やツールの調達は、半導体メーカーの職種です。半導体の材料だけでなく、半導体を作るうえで必要な装置も調達します。
顧客が求める半導体を作るには、ニーズに合った資材が必要です。場合によっては、より高品質な資材や低コストの資材を調達しなければなりません。国内だけでなく、海外で資材を調達する場合もあります。
近年半導体の需要が急激に高まる中、製造に必要な物質が手に入らないことや製造工場の閉鎖により供給が追いつかず、世界中で半導体不足に悩まされています。ここでは、半導体業界の現状と併せて、将来的にどのような発展が予想されているか解説します。
2020年以降、半導体の需要と供給のバランスが崩れ、世界で半導体不足が起きています。新型コロナウイルス感染症拡大により在宅勤務やオンライン通販、タブレット学習が普及し、半導体の需要が増加した一方、工場閉鎖や物流停止の影響で供給が追いつかなくなりました。
半導体の製造には約半年のリードタイムを要するため、2022年前半まで半導体不足が続くと予測されています。ただし、半導体メーカーの生産能力と生産性の強化・向上の取り組みにより2022年末までには正常化し、2023年には供給力が上回るでしょう。
IoTとはInternet of thingsの略で、「モノのインターネット化」を意味します。スマートフォンやタブレット端末からインターネットを通じて、家電製品や自動車を操作するシステムです。
IoTはセンサーや通信装置といったあらゆる部分に半導体を使用します。今後さらにIoTが普及することで半導体の需要も高まるでしょう。
1988年、世界における半導体のシェア率は、日本が50.3%、アメリカは36.8%、アジア諸国は3.3%でした。その後、アメリカの日本市場拡大や台湾・韓国の市場参入により、2019年の日本のシェア率は10%まで落ちました。一方、アメリカは50.7%に伸び、3.3%だったアジア諸国も25.2%と急成長を遂げています。
国内の半導体産業を伸ばすには、国家事業として半導体工場の新設が必要です。2021年6月、経済産業省は日本の半導体産業を復活させるための「半導体・デジタル産業戦略」を公表しました。
具体的な施策として、海外の最先端ファウンドリ(生産工場)の誘致を通じた国内企業との共同開発や生産、ほかの国に引けを取らない支援措置を行い、半導体の供給力を高める必要があると考えられています。
半導体の取引需要の伸びが見込める主な分野は、自動車関連・産業用ロボット・遠隔医療・仮想空間技術(ARやVR)・次世代通信規格5G・ディープラーニングの6つです。
自動車関連では、半導体を用いた構成部品を作ることで自動運転技術をさらに発展させ、完全自動運転を目指します。製造業で活躍する産業用ロボットは、半導体により安全かつ確実で効率のよい作業が実現可能です。製造企業の設備自動化の流れから、産業用ロボットの需要は高まっています。
住む場所に関係なく、平等に医療を受けられるのが遠隔医療です。仮想空間技術では、VRゴーグルを利用した際に傾きや動きを判断するために半導体が使われます。自動運転や遠隔医療には超高速通信・低遅延が求められるため、5Gを利用できる半導体を用いたデバイスが必要です。
ディープラーニングはAIの機械学習の中でも深層学習と呼ばれ、画像認識に応用されます。
新型コロナウイルス感染症の影響により半導体の需要は変化しました。また、日本の市場規模縮小も採用ニーズに変化をもたらしています。ここでは、半導体業界の採用ニーズについて解説します。これまでに得たスキルが半導体業界でどのように生かせるか理解しましょう。
新型コロナウイルス感染症拡大によりリモートワークや外出自粛の傾向が強くなるとともに、自宅でインターネットを利用する方が増えました。通信負荷も高まっており、安定した通信網を整備するために半導体製造装置メーカーの受注数は増えています。新型コロナウイルス感染症による影響で、安定した採用ニーズをもたらしたといえるでしょう。
海外の半導体メーカーへ転職する方も増えています。日本と比べて海外の半導体市場は拡大傾向である一方、国内では市場の縮小により半導体企業の合併が進んでいるためです。ただし、海外へ人材が流れていることや国内の半導体ニーズの高まりから、半導体エンジニアの需要は高まっているといえます。
半導体そのものに関する技術職では、異業種で培った技術が応用できません。半導体とほかで使われる回路設計は大きく異なるためです。異業種のスキルを生かしにくいことから、半導体企業は高い採用ニーズを維持しています。
ただし、半導体を製造する機械の設計・開発であれば、異業種の技術が応用可能です。半導体製造工場の場合、あらかじめ決められた手順や項目に沿って業務をこなすため、業界未経験でも転職ができます。
業界未経験者でも転職のチャンスがある半導体業界は、向いている人の特徴があります。具体的には「精神的に強い人」「責任感があり最後までやり抜く人」「半導体業界を理解している人」です。自己分析をし、半導体業界に向いているか判断する材料にするとよいでしょう。
半導体に関わる業務は非常に緻密です。異物が半導体の誤作動を招くため、半導体のシリコンウエハーは、わずかなちりも許されません。ミスしないように、高い集中力と根気が求められます。また、半導体が完成するまでにはさまざまな工程があり、同じような作業の繰り返しに耐えられる忍耐力も必要です。
半導体工場のクリーンルームでは、専用の顕微鏡を使い外観見本と違いがないか検査します。異常を見逃さないよう常に集中力を保ちながら、1日に検査しなければならない目標もクリアしなければなりません。異常の見逃しや目標の未達は企業に損失を与えるため、精度を下げず最後までやり抜く責任感のある人が求められます。
半導体業界は、ビジネスモデルや職種によって業務が大きく異なります。また、新型コロナウイルス感染症による打撃はあったものの、今後のデジタル社会を支える大きな期待が寄せられています。転職を成功させるには、半導体業界について正しく理解することが大切です。
半導体業界や志望する企業に対する理解を深めることで、採用担当者に伝わる志望動機に近づけます。
私たちの便利な生活に欠かせない半導体は、日本だけでなく海外でも需要があります。世界を支える半導体業界は今後も需要の伸びが期待でき、どのような職種や業務内容でもやりがいを感じられるでしょう。
半導体業界への転職に興味がある方は、マイナビメーカーエージェントにご相談ください。半導体業界を熟知した専任のキャリアアドバイザーが、前職までのスキルや経験を生かせるように転職活動をサポートします。
メーカー
機械設計の転職先とは?転職で失敗するパターンと成功の5つのポイント
メーカー
機械設計の年収水準は?年収アップに必要なスキルや転職のコツも
メーカー
【例文つき】機械系エンジニア(機械設計)の志望動機の書き方やポイントを紹介