メーカーエンジニアの職種図鑑

樹脂設計

樹脂(プラスチック)を成形するための金型や、樹脂を用いた部品の設計を行います。

樹脂設計の女性

「樹脂設計とはどんな仕事?」「金属設計と何が違うの?」など、
樹脂設計の仕事内容に興味や疑問を抱いていませんか?

樹脂設計は、近年ニーズが高まっているプラスチック部品を設計する仕事で、
部品だけでなく成型に必要な金型の設計にも携わります。

今回は、樹脂設計の仕事内容や将来性、やりがい、
年収、将来性などを解説します。

ものづくりに興味がある未経験者から、
すでに何らかの技術職に就いていて転職を検討している人まで、
ぜひ最後までご覧ください。

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この記事のまとめ

  • 樹脂設計とは、プラスチック部品の製造と、加熱し液体化した樹脂からプラスチック部品に成形するための金型を設計する仕事。

  • 樹脂設計者の平均年収は420万円。ただし、地域によって差があるため、幅広いエリアで求人をリサーチするのがおすすめ。

  • 樹脂設計の仕事は業界・職種未経験からでもスタート可能だが、スキルアップの努力は必須。

プラスチックの性質

樹脂設計とは

まずは樹脂設計の仕事を理解するため、プラスチックの基本的な性質や工業製品への応用についてご紹介します。

昔のプラスチックは剛性や強度の面で金属に劣っていました。また、燃えやすい、経年劣化が早いなどが弱点とされてきました。しかし、近年の技術革新によって、プラスチックの性能は大幅に進歩し、弱点を克服することに成功。いまでは、多くの機械部品が金属からプラスチックに置き換えられています。

以下に、プラスチックが金属よりも優れている点をご紹介します。

  • 靭性(粘り強さ)が高いので割れにくい

  • 絶縁性が高い

  • 光を通す

  • 塗装ではなく、素材そのものに着色しやすい

  • 耐摩耗性が高い

  • 可塑性が高く、成形加工がしやすい

  • 絶縁性が高い

  • 軽い

  • いろいろな薬品を添加することで付加価値をつけることができる

  • 極小、極薄といった形状の成形も可能

  • 分子構造を変えたり、炭素繊維などを加えたりすることによって、熱耐性を高めたり引張強度を高めたりすることが容易にできる

  • 低温で加工できる(金属のほとんどは、数百℃から数千℃といった高温でなくては溶けないのでコストがかかり、精密・超小型の部品などは作りにくいといった問題がありました。これに対しプラスチックは、100~200℃の比較的低温で流体の状態にすることが可能)

以上のようなメリットがありますが、金属とプラスチックは力学的な特性の違いがあり、同じ用途の部品でも、安易に「同じ形状で素材だけを変える」というわけにはいきません。素材の肉厚や形状を変える必要があるのです。

もちろん、機械部品をすべて金属からプラスチックに置き換えることはできませんが、このようなプラスチック素材の進化から、機械部品に占めるプラスチックの割合は、年々高まっています。そこで注目されるようになったのが樹脂設計です。

樹脂設計とは?

樹脂設計とは、プラスチック部品そのものや、プラスチック部品を成型するために用いる金型を設計する職種です。

樹脂設計の作業工程を大まかに分けると、以下の5工程となります。

①商品企画

②製品設計・金型設計

③金型制作

④試作・評価

⑤量産

プラスチックの最大の特徴は、自由自在に形を変えられるところです。その自由度の高さから幅広い場面で重宝されており、数多くの機械部品に使用され、金属部品に取って代わる存在となっています。しかし同時に、自由度が高いからこそ設計や加工の難易度も高まります。

そのため、樹脂特有の性質を理解すると同時に、金型での成型を見据えた製品設計を行うことが必要です。多角的な視点で方向性を探り、最善の設計を完成させることが、樹脂設計の仕事です。

樹脂設計の仕事内容

樹脂設計の仕事は、成形に適した形状、扱える素材、長所・短所、工程数、製造コストなどを鑑みてベストな素材や加工方法などを選択し、設計していくことです。

たとえば、強度には「圧縮強度」「引張強度」「曲げ強度」などさまざまな種類がありますし、耐熱性や耐摩耗性、耐薬品性なども同時に考慮しなくてはなりません。

また、成形技術にも次のような選択肢があります。

  • プラスチックを熱して溶かし金型に流し込む「射出成形」

  • ホースやパイプなどの長い部品を成形するのに適した「押出成形」

  • 溶けたプラスチックの中に空気を吹き込んで中空の部品を作る「ブロー成形」や「インフレーション成形」

  • プラスチックを金型で挟み圧力をかけながら熱することで成形する「圧縮成形」

  • 型の中を真空にすることで、プラスチックを型に密着させて成形する「真空成形」

樹脂設計職の現状や将来性

「軽い・丈夫・低価格」というメリットが三拍子揃うプラスチック部品は、今や私たちの身近な工業製品のほとんどに使用されています。金属素材に取って代わる現状を踏まえても、この先プラスチック部品の需要が一気に衰えることは想定しづらく、樹脂設計職のニーズも高い水準を推移することが想定されます。したがって、樹脂設計職は業界、業種の違いを越えて幅広く活躍の場を求めていけるでしょう。

また、プラスチックの汎用性の高さを見据えると、将来的に新たな活用方法や付加価値が見出され進化していくことも考えられますが、技術革新が進めばそれに適応するための知識や技術の習得が避けて通れません。その過程に楽しみを感じて積極的にスキルを吸収し、技術者としての成長を目指せる人材であれば、樹脂設計職として末永く活躍できるでしょう。

樹脂設計の魅力ややりがい

樹脂設計の魅力ややりがいの一つは、多くの人の生活に欠かせない製品づくりの根幹に携われる点です。

樹脂設計職は、大多数の人から認知されている仕事とは言い難いものです。しかし実際は、プラスチック部品なくしてモノづくりは成立しないといっても過言ではないほど、数々の製品にプラスチック部品が使用されています。決して脚光を浴びる華やかなポジションではないものの、人々の豊かで便利な生活に一役買っていることを実感できる魅力的な仕事です。また、困難な設計を実現し製品として形になった時にも大きなやりがいや達成感が得られるでしょう。

さまざまな人が関わっている以上、設計の完成は一筋縄とはいかないケースもあります。また製品特性上、設計に高度な知識や技術を要する場面もあるでしょう。それらのハードルを越えて完成を目の当たりにした時には、樹脂設計者として誇らしい気持ちが味わえるはずです。

樹脂設計の難しさや大変さ

前項ではプラスチックのメリットをご紹介してきましたが、一方、プラスチックの性質によって設計が難しくなる点もあります。その性質が「熱による膨張」です。

機械部品の設計には寸法精度が重要ですが、プラスチックの熱膨張率は非常に高く、熱を加える加工の際には寸法の狂いが生じやすいという問題があります。また、プラスチックに配合された薬剤などによっても熱膨張率は微妙に変化するため、精密部品を作る際には作業場の気温も気にしなければなりません。さらには、経時変化によるプラスチックの変形や歪みなどが発生する場合もあるため、単純に「金型どおりの精度で部品を仕上げる」といったことができません。

樹脂設計ではこのようなさまざまな条件を念頭に置き、緻密な計算によって部品の仕上がり精度を高めていく必要があります。プラスチックという材料の特性を熟知したうえで仕様通りの部品を完成させる。さらに、加工時の工数を最小限にして作業時間とコストを圧縮する。樹脂設計には常にそういったことが要求されます。

樹脂設計者の年収はどれくらい?

令和3年度の厚生労働省による統計では、樹脂設計職を含むプラスチック製品製造工の年収はおおよそ420万円でした。ただ地域によっても差が見られ、東京都の平均年収が345万円程度であるのに対し、北海道は平均を上回る約426万円、福岡県は約490万円と、東京都と大きく差がついています。

樹脂設計者の年収に地域差が生じる背景には複合的な要因であると想像できますが、主に樹脂設計者の人数やプラスチック部品の市場規模が関係していると考えられます。

樹脂設計に必要なスキルや知識

樹脂設計者として活躍するためには、ある程度のスキルや知識が求められます。以下の3点はその中でもぜひ習得しておきたいものです。

プラスチック設計の知識

樹脂設計の仕事に就くうえでは、プラスチック設計の知識があることが大前提となります。たとえ金属設計の経験があっても、素材の性質がまったく異なるため、プラスチックならではの特性や扱い方を学ぶ必要があります。

部品設計・金型設計の知識

樹脂設計は金属設計とは異なり、対象の部品を生産するために必要な金型の設計も担います。金型設計に狂いが生じるとプラスチック部品の仕上がりにも影響が及ぶため、部品・金型双方の知識をバランスよく習得することが重要です。

CADに関する知識や操作スキル

近年、設計図の作成にはCADが用いられています。2次元で表現される従来のCADに加え、3次元で立体的な表現を可能とする3DCADを取り扱うスキルも必要です。

樹脂設計者に向いている人の特徴

樹脂設計者として向いている人には一定の特徴が見られます。以下の3点に該当する場合は、樹脂設計者として比較的スピーディーな成長が期待できます。

細かい作業が好きな人

樹脂設計は、多角的な視点から部品と金型の兼ね合いを見極め、設計を進める必要があります。ちょっとしたズレがやり直しや不良品を生み出すことにつながるため、細かい作業を地道に続けられる人に向いています。

機械を触るのが好きな人

設計者のため、自ら手を動かし整形作業をすることは基本的にありません。ただ、機械に馴染みがあったほうが自ら提案しやすく、想像力や機転を利かせた設計の作成にも役立ちます。そのため、機械いじりが好きな人にも向いているでしょう。

モノづくりが好きな人

樹脂設計者はモノづくりの根幹を担う存在です。そのため、純粋にモノづくりが好きという人も樹脂設計者に向いています。人は自分が好きなものに多くの情熱や労力をかけることをいとわないものです。自ら率先して学び技術を習得し、成長を遂げられるでしょう。

樹脂設計に必要な資格

樹脂設計職に転職する際に有利になるキャリアや資格をご紹介します。

プラスチック成形技能士

樹脂設計の仕事に活かせる国家資格としては「プラスチック成形技能士」があります。3級・2級・1級・特級があり、3級は実務経験がなくても受験可能です。また、学歴などの受験資格も特に設けられていないため、原則として誰でも取得できる資格となっています。

CAD利用技術者試験

「CAD利用技術者試験」は、樹脂設計図の作成で使用するCADシステムの取り扱い方法や製図方法などのスキルを証明する資格です。2次元と3次元の試験が複数階級別に設けられています。CAD未経験の場合は、最も難易度が優しい「2次元CAD利用技術者試験基礎」から目指すのがおすすめです。

樹脂設計者の転職先やキャリアプラン

樹脂設計者を目指すうえでは転職先やキャリアプランも気になるポイントでしょう。それぞれのポイントをご紹介します。

転職先

樹脂設計者の代表的な転職先としては、プラスチック製品のメーカーが挙げられます。また、家電・玩具・自動車・自転車・精密機器・医療機器などの各メーカーにも樹脂設計者のニーズがあります。

キャリアプラン

樹脂設計の仕事は未経験から挑戦可能です。ただ、知識や技術を身につけ周囲から認められる樹脂設計者となるためには、資格取得を検討しても良いでしょう。

将来的には現場のスペシャリストを目指す人もいる一方、より製造業に精通しキャリアアップを目指すためにマネジメント職を目指す人もいます。いずれの道に進むにしても、知識や経験を地道に積む下積み時代をいかに有意義に過ごせるかが重要です。

樹脂設計への転職を成功させるポイント

樹脂設計への転職では、機械系エンジニアとしての実務経験者が最優遇されています。前職でその経験がある場合は、実績と共に樹脂設計の仕事でどのように貢献できるかアピールしましょう。

また、職歴として経験はなくても、機械系や電気系学部出身者であれば、高い評価を得られる可能性があります。樹脂設計に関連する基礎知識があり業界に対する熱意が評価されれば、転職成功に近づくでしょう。

一方、職歴・学歴共に樹脂設計には馴染みがない人でも、決して諦める必要はありません。樹脂設計職は人材不足の傾向にあり、モノづくりに意欲を持つ真面目で根気強い人材なら経験ゼロからでも育てたいという企業も多数見受けられます。

したがって、求人数も比較的豊富です。なかには「学歴・経験・年齢不問」とする募集も少なくないため、未経験から転職を成功させることも十分可能です。

ただし、もちろん未経験者が最初から高度な仕事を任されるわけではありません。設計補助としてアシスタント業務をこなしながら研修やOJTで実務スキルを身につけていくことになるでしょう。それを理解したうえで、モノづくりに携わりたい、技術職を一生の仕事にしたいと思えるならば、ぜひ樹脂設計の仕事にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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よくあるご質問

  • 樹脂設計とは?

    Answer

    樹脂(プラスチック)を成形するための金型や、樹脂を用いた部品の設計を行います。

  • 樹脂設計への転職に有利なキャリア・資格は?

    Answer

    機械系エンジニアとしての実務経験者が最優遇さる傾向があり、プラスチック成形技能士を持っていると転職に役立つでしょう。