アナログ回路設計
コンピューターを始めとする電子機器や家電に代表される電気製品の電源、アナログ信号を司る電子回路を設計を行います。
「アナログ回路設計ってどんな仕事?」「デジタル回路設計と何が違うんだろう」と、
「アナログ回路設計について興味関心を抱いている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
アナログ回路設計と聞くと、「アナログ」と言う言葉から
古い技術というイメージもあるかもしれません。
しかし実際は、デジタル回路設計の安定稼働にも欠かせない存在であり、
近年アナログ回路設計者の需要は高まっています。
こで今回は、アナログ回路設計の仕事内容、魅力や難しさ、
必要なスキルや知識、おすすめの資格などを解説します。
アナログ回路設計という仕事の全貌を知りたい方は、
ぜひ最後までご覧ください。
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この記事のまとめ
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アナログ回路設計とは、電子回路基板を設計すること。
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アナログ回路設計に必要なスキル・知識は、「論理的思考力」「柔軟な考え・発想力」「電子回路の知識」「EMCの知識」「オペアンプの基礎知識」の5つ。
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アナログ回路設計は、デジタル回路設計と比べて経験者が優遇される傾向にある。
アナログ回路設計とは?
アナログ回路設計とは、トランジスタ・コンデンサ・コイル・抵抗などの部品が用いられた電子回路基板の設計のことです。
アナログ回路は、短時間で大量の情報を伝達できたり、アナログ回路でしか実現できない機能があったりと、デジタル回路にはない特有のメリットがあります。また、デジタル回路を安定的に稼働させることにも貢献します。
アナログ回路設計の仕事内容
家電製品ではデジタル化が顕著ですが、そこにはデジタル回路とアナログ回路が共存しています。デジタル回路は電源を必要としますが、コンセントのAC(交流)電源をDC(直流)電源に変換するのはアナログ回路です。また、デジタル回路が安定的にデジタル信号の0と1を認識する際には、アナログ回路がノイズ除去を行っています。多くの部分にアナログ回路が組み込まれているからこそ、デジタル回路は動作することができているのです。
次に、アナログ回路設計者の役割についてご紹介します。
顧客ニーズの調査・仕様書の作成
まずは、顧客などからのニーズをもとに、どのような機能を実現するかを仕様書に明記していきます。顧客の要望を汲み取り、特性や機能を細かく決めていくのが基本です。この初期段階によって製品の方向性が決定づけられることになるので、慎重に進めていく必要があります。
回路の分割・分担
仕様書が完成したら、回路の分割・分担を行います。
大きな回路では、回路をいくつかに分割し、分担して設計を進めることがあります。分割・分担する場合は、それぞれの回路が目指す性能を決めてから設計に移ることになります。
シミュレーターによる動作確認・修正
回路が設計できたら、いったんシミュレーターを使って目標の結果が得られるかチェックします。思ったような特性になっていなければ設計を修正し、想定している結果が得られるまで試行錯誤します。
配置や配線の設計から調整から製品化
続けて、基板にどう配置するかを考え、配線も設計していきます。少しの違いで特性が変わるため、引き続きシミュレーターで確認しながら調整を行います。
デジタル回路との違いは?
デジタル回路は、0と1で表現されるデジタル信号を入出力して機能を実現させるための電子回路です。一方アナログ回路は、電圧や高周波、音など、連続した信号(アナログ信号)を取り扱う電子回路です。電力や電波といった物理的な動きの調整を担い、デジタル回路が動作するために必要な環境を整えます。
回路設計技術者を目指すのであれば、どちらかをコアスキルとして身につける必要がありますが、デジタル回路設計をコアにするとしてもアナログ回路の知識は必要ですので、しっかり押さえておきましょう。
アナログ回路設計の魅力ややりがい
アナログ回路設計の魅力ややりがいは、世界を影で支えるような重要な技術に携われる、その充実感を得られる点にあります。
最近では、これまで電子機器ではなかった製品にもデジタル回路が組み込まれるようになりました。それは、アナログ回路が活躍する製品が増えてきているということも意味しています。日々進化する知識のアップデート、実務への応用にかける労力は決して軽いものではありませんが、刺激的で飽きることのない環境で働けるでしょう。
回路設計は製品の内部に関わるものなので、一般消費者にはアナログ回路設計者の仕事ぶりをダイレクトに感じてもらえる機会は少ないかもしれません。しかし、製品が消費者の手元に渡り使用してもらえているということは、大多数の人がその製品を「良い」と評価していることであり、その製品の根幹は紛れもなくアナログ回路設計者が構築したものです。その事実に誇りをもち、モチベーションに変えられる人は、よりいっそうアナログ回路設計の仕事に魅力ややりがいを感じられるでしょう。
アナログ回路設計の難しさや大変さ
アナログ回路設計の難しさは、求められる知識が幅広い点にあります。知識を定着させて実務に応用し、一人前のアナログ回路設計者になるためには、学びに対する相応の労力と実務での場数が必要です。学びや仕事の手法には人により向き不向きがありますが、アナログ回路設計においては、いかに自分に合った方法を見つけて実践できるかが重要でしょう。
また、アナログ回路設計は基本的に論理的思考力が求められる分野ですが、論理だけではうまく解消できない事象にぶつかることもあるかもしれません。その際には、1から10まで完璧に理論を理解しようとするだけでなく、感覚や直感を利用することで、アナログ回路設計の習得と実践がスムーズになる場合もあります。大多数においては「A」の方法が常識だとしても、自分にとっての答えは「B」かもしれないという思考の柔軟さも、アナログ回路設計者には大切です。
アナログ回路設計者の年収はどれくらい?
マイナビエージェントで現在掲載中の求人情報をもとに算出すると、アナログ回路設計者の年収は350万円~650万円程度です。20代後半の平均年収が350万円台であることから、決して低水準というわけではありません。月収に換算するとおよそ29万円~54万円となります。
なお、企業によっては、具体的な金額は提示せず「経験・年齢・能力を考慮する」などの記載にとどまっているケースも見受けられます。上記のケースの場合、一人ひとりの能力にふさわしい年収額を査定するという企業の姿勢が表れていると捉えられます。その場合、未経験からアナログ回路設計者になってもすぐに高年収を狙うことは難しいと思いますが、努力次第で年収アップの実現も可能となるでしょう。
資格取得によって年収の査定が有利になるケースもあるので、「アナログ回路設計におすすめの資格」の項目も参考にしてみてください。
アナログ回路設計に必要なスキルや知識
アナログ回路設計に従事するにあたっては、相応のスキルや知識が求められます。ここでは特に重要となる5つのポイントを解説します。
論理的思考力
仕様書通りの回路設計を行うためには、散らばっていたり複雑化したりしている要素を整理し、道筋を立てて先々を思考することが必要になってきます。そのため、アナログ回路設計には論理的思考が必須です。
柔軟な考え・発想力
柔軟な考えや発想力もアナログ回路設計には必要なスキルです。仕様書の内容を実現するのがアナログ回路設計の共通目的ですが、達成に至るまでの過程・アプローチ方法は一つではありません。そのため、「こうに違いない」「こうであるはずだ」という固定観念を持っていると、気づきのチャンスを失ってしまいます。当たり前を疑い自由に物事を考えられる柔軟性と発想力こそが、アナログ回路設計の業務を後押しすることになります。
電子回路の知識
アナログ回路設計者には、当然ながら電子回路の知識が必要となります。ただし、適用領域が広いこともあり、トランジスターの仕組みといった基本的な電子回路の知識はもちろん、機械・電気回路・制御・ソフトウェアなど、多岐にわたる知識と技術が必要とされます。まずは回路の交流解析や回路素子、インピーダンスなどの概念を学ぶと良いでしょう。
EMCの知識
アナログ回路設計において、「EMC(Electromagnetic Compatibility:電磁両立性)」は必要不可欠な知識の一つです。機器が正しく動作するよう設計するためには、電磁波がほかの機器に悪影響を与えないか考慮する必要があります。その対策を施すために、EMCの技術が活用されています。
オペアンプの基礎知識
オペアンプ(Operational Amplifier)の基礎知識も、デジタル回路設計で必ず押さえておきたい知識です。「OPアンプ」と表現されることもあり、日本語では「演算増幅器」を意味します。出力を安定させるなど、アナログ回路の性能を向上させるために幅広く用いられています。
上記5種類以外にも、アナログ回路設計者は多岐にわたる知識や技術が求められる仕事です。そのため、四力学・機械・電気回路・制御・ソフトウェア・プリグラミングの知識などを押さえておくと良いでしょう。
アナログ回路設計者に向いている人の特徴
アナログ回路設計者に向いている人の多くには共通した特徴が見られます。以下の3点のポイントに該当している場合は、アナログ回路設計者に向いている人材かもしれません。
モノを作るのが好きな人
モノ作りが好きな人は、アナログ回路設計向きの人といえます。アナログ回路設計は決して華やかな仕事ではありませんが、あらゆる製品の根幹を担う重要な役割です。「学んだ技術で新しいモノを作りたい」と純粋な思いを抱いている人なら末永く活躍できるでしょう。
チャレンジ精神のある人
チャレンジ精神がある人は、アナログ回路設計者として大きく成長できる人です。
回路設計の過程では、思い通りにいかないことや予期せぬ事態に遭遇することも多々あるでしょう。その際にネガティブになったり諦めたりするのではなく、「絶対に解決策を見つけて乗り越えてみせる」と奮起できれば、アナログ回路設計者として大きく成長できるでしょう。
コミュニケーション能力が高い人
アナログ回路設計者のような技術職においても、コミュニケーション能力がある人は仕事の幅が広がります。黙々と作業に取り組む時間はあるものの、デジタル回路設計者をはじめとしたほかの技術職との連携も重要です。したがって、相手の立場に配慮したコミュニケーションが取れる人はアナログ回路設計者として向いている人といえるでしょう。
アナログ回路設計におすすめの資格
アナログ回路設計におすすめの資格を3種類ご紹介します。それぞれ実務に活かせる実践的な資格なので、参考にしてみてください。
CAD利用技術者試験
アナログ回路設計に大いに役立つ資格の一つが、CAD利用技術者試験です。CADを取り扱う職種の人にとって登竜門と認識されており、毎回多くの人が挑戦しています。合格すると、CADの操作や製図スキルが一定以上あることの証明となるので、アナログ回路設計者としての信頼にもつながるでしょう。
CAD利用技術者試験には、2種類の試験と3段階の階級が用意されています。2次元CAD利用技術者試験は2次元図面に関するスキルを問うもので、階級は基礎・2級・1級です。1級はさらに機械・建築・トレースの3分野に細分化されており、より高度なスキルを問われます。
一方の3次元CAD利用技術者試験は、3次元図面に関するスキルを問うもので、階級は2級・準1級・1級です。
EMC設計技術者資格
EMC設計技術者資格(EMC Design Engineer資格)とは、アメリカの非営利団体と日本の一般社団法人が共同で創設したEMCに関する資格試験です。EMC設計の技術力を証明するもので、原理原則の理解はもちろん、回路・基本設計や機器・システム設計など、上流工程に関する内容になっています。受験資格は学士以上、または実務経験5年以上と定められています。
電気電子回路などの設計技術者をターゲットにしている世界共通試験のため、取得すると転職時にも有利に働く可能性があります。
情報処理技術者試験
情報処理技術者として一定の技術・技能を持ち合わせていることを証明するのが、情報処理技術者試験です。ITに携わるあらゆる業種・職種の人を対象にした国家資格で、全11種類の試験区分が存在します。
まずは、情報処理技術に関する基礎知識の証明となる「基本情報処理技術者試験」から挑戦するのがおすすめです。その後はその上位資格にあたる「応用情報技術者試験」の取得を目指す人が多いです。
アナログ回路設計においては、幅広い知識を取り入れて柔軟かつバリエーション豊富な思考をもつことが重要です。EMC設計技術者資格と異なり厳しい受験資格も設けられていないので、挑戦しておいて損はない資格といえるでしょう。
アナログ回路設計者の転職先やキャリアパス
アナログ回路設計者としての就職が決定したからといって、キャリアはそこで終わりではありません。状況によっては転職することになるかもしれませんし、キャリアパスが不透明では目標を見失う恐れもあります。ここでは、アナログ回路設計者に考えられる転職先やキャリアパスの一例をご紹介します。
転職先
アナログ回路設計者の転職先としては、AIやIoT事業を展開する企業などがあります。
転職では経験者が中心に求められるため、現職でいかに実績やスキルを積めるかが勝負です。日々コツコツ学びや実践を繰り返し、アナログ回路設計者としての強みを構築できれば、自分が求めている条件の企業への転職も実現します。
キャリアパス
電気工学、電子工学、情報工学といった学科で回路や制御について学んできた経験は有利に働きます。専門学校や高等専門学校、大学、大学院を卒業後に半導体や電機を手掛けるメーカーに就職するのが一般的です。
デジタル回路はコンピュータを使ってある程度自動的に設計できるのに対して、アナログ回路は経験や感覚を必要とする面があります。そのため。ナログ回路の設計ではデジタル回路に比べて経験の差が生じやすく、作成する回路の専門性を有した経験者が優遇される傾向が強いようです。
幅広い知識だけでなく経験値も求められる難しさに加え、デジタル回路や通信機能を持つプロダクトが増え続けている情勢もあり、アナログ回路設計を担える人材は慢性的に不足しています。近年はアナログ回路設計をサポートする設計支援ツールの開発も進み、経験の浅い設計者でも最適なアナログ設計が行えるようになってきていますが、いまだ経験を積んだエンジニアが重宝されていることに変わりはありません。
一定の実績を積んだアナログ回路設計者は、引き続きプレーヤーとしてさらなる専門性を追求するか、管理職としてキャリアアップを目指すかという選択に迫られるタイミングがやってくるでしょう。新しいスキルを身につけたり、別のモノづくりに携わったりしたいのであれば、転職も有力な選択肢になります。
アナログ回路設計への転職を成功させるポイント
アナログ回路設計への転職は、未経験者から経験者まで広く門戸が開かれています。ただ、デジタル回路設計よりも難易度が高い、経験値が技術力に如実に表れる、といわれているのも現実であり、「誰でも簡単に転職できる」とは言いにくいです。
もし、より確実にアナログ回路設計への転職を成功させたい場合は、一人で活動するのではなく転職エージェントを活用しましょう。多数の求人を取り扱うマイナビエージェントなら、求職者の理想に限りなく近い転職が実現可能です。一般の転職サイトには出回らないレアな仕事、大手企業などの求人情報も多数取り扱っています。専任のキャリアアドバイザーが求職者の転職活動をワンストップでサポートしているので、選考書類の作成や面接などの不安や疑問も都度解消が可能です。
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