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【「Synspective」その後】SAR衛星「StriX-α」の打上げに成功、次の目標は30機の衛星のコンステレーション構築

株式会社Synspective
代表取締役 新井元行

【「Synspective」その後】SAR衛星「StriX-α」の打上げに成功、次の目標は30機の衛星のコンステレーション構築 【「Synspective」その後】SAR衛星「StriX-α」の打上げに成功、次の目標は30機の衛星のコンステレーション構築
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住 所 東京都江東区三好3丁目10-3
URL https://synspective.com/
株式会社Synspective代表取締役 新井元行
米系コンサルティングファームにて、5年間で15を超えるグローバル企業の新事業/技術戦略策定、企業統治・内部統制強化などに従事。その後、東京大学での開発途上国の経済成長に寄与するエネルギーシステム構築の研究を経て、サウジアラビア、バングラデシュ、ラオス、カンボジア、ケニア、タンザニア、そして日本の被災地等のエネルギー、水・衛生、農業、リサイクルにおける社会課題を解決するビジネスを開発、展開。衛星からの新たな情報によるイノベーションで持続可能な未来を作ることを目指し、2018年に株式会社Synspectiveを創業。東京大学大学院 工学系研究科 技術経営戦略学専攻 博士(工学)。

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自社でSAR衛星の開発・運用を行うソリューションプロバイダー

私たちシンスペクティブは、SAR衛星の開発・運用することで地球観測データを取得し、その膨大な地球観測データを、データサイエンス・機械学習を用いて解析し、政府や企業にソリューションとして提供しています。2020年12月15日には、自社で開発したSAR衛星「StriX-α」を、Rocket Lab社のElectronロケットに搭載し、ニュージーランドの発射場から 打ち上げました。その後の詳細については、弊社ホームページなどで随時発信をしています。

SAR衛星(合成開口レーダー衛星)は、マイクロ波を使って地形や構造物の形を観測します。マイクロ波は波長が長く、雲を透過するため、雲の下にある地表も観測することができます。また自らアクティブに電波を放射するため、日中・夜間によらず観測可能です。つまり、地上を「いつでも、どこでも」観測する能力を有します。

例えば、台風の被害を今まさに受けている地域を観測して、どこが水没をしているのか、冠水をして不通になっている道路はどこなのかを調べることができます。すでにシンスペクティブでは、災害対応のための浸水被害(浸水域、浸水深、被害道路、被害建物)を評価するサービス「Flood Damage Assessment」ソリューションを提供しています。SAR衛星は、そういったソリューション提供をするために宇宙空間に設置されたセンサーなのです。

前回もお話ししましたが、主要な事業は2つです。ひとつはSAR衛星に関わる衛星開発・運用事業。そして、その衛星から得られた観測データをデータサイエンスや機械学習などを使って解析し、顧客企業、組織が求める形で提供するソリューション事業の2つです。

私たちの衛星データサービスは、各国政府、自治体、デベロッパー、資源開発企業、保険会社など幅広い業界から関心を持っていただいています。その中で、まずはインフラに関わるAEC(アーキテクチャ・エンジニアリング・コンストラクション)業界、 都市開発、浸水被害などの防災リスク管理に焦点を合わせて事業を組み立てています。私たちシンスペクティブの技術段階が進むのに合わせて、さらにマーケットを広げていく計画です。

道路や鉄道、ダムなどのインフラ開発は、大きく3つのステップで行われます。「計画」「施工」「保守運用」の3つです。そのすべてのステップで、シンスペクティブの衛星データが活用できます。

計画の段階では、どこにインフラに敷設するのかを決定します。それには、国土の地形・土地利用等がどうなっているのかを把握しなければなりません。これは衛星データの広域性が活きるところです。さらに、他のデータと重ね合わせることでさまざまなインサイトが得られます。例えば、人口分布やスマートフォンから得られる人の移動情報を重ね合わせることで、人の流れが見えてきます。これらの情報は重要インフラ施設の最適化、必要資金の概算などを効率的に行なうことにつながります。

また、ある地点を1日1回程度の頻度で観測できるようになると、都市の構造物の日次変化も把握できるようになります。そうすると、道路や施設が新設されたから人の流れがこう変わったということが日々わかるようになります。さらに、リスクマネジメント=災害が起きた場合の対策を考慮した建設計画を立案できるようになります。

自動車業界では、その設計において「デジタルツイン」という概念が使われはじめています。自動車部品のCADデータを設計図としてだけ使うのではなく、3D物理モデルを作成し、仮想空間の中で自動車を組み立てしまい、さまざまな検証を行う手法です。現実世界の本物と寸分違わない精密なコピーを仮想空間の中に作る。だから、デジタルの双子と呼ばれています。

衛星で世界の無数のインフラを観測し、次のインフラ計画に活かす

東京やシンガポールではすでに都市のデジタルツイン作成の計画が進められていますが都市をまるごと仮想空間の中に作り、どのようなインフラを構築すべきなのか、災害が起きた時にはどのような被害を受けるのか、軽減するにはどのような対策を取るべきなのか、仮想空間の中で実験をすることにより、さまざまなインサイトが得られます。

第2の施工の段階では、衛星を使ったプロジェクトマネジメントができるようになります。ものの形が観測できるので、工事の進捗や現場の資材の把握ができるようになります。途上国・新興国で問題になるような不正の早期発見もできるようになります。1つの工事現場を観測するのではなく、衛星が地球を周回しながら、世界数千ヶ所の工事現場を観測することができます。計画情報を設定しておけば、その差分解析から、問題のある現場のアラートがあがってくるようになり、極端に言えば、1人のプロジェクトマネージャーが 、世界中の数千ヶ所の現場を監督できるようになります。

最後の「保守運用」でも衛星が活躍します。私たちシンスペクティブでは、すでに地盤変動を時系列観測し、解析をし、情報提供する「Land Displacement Monitoring」ソリューションを提供しています。ダムなどは地盤変動の影響を受けやすいので、地盤が変化したことにより、ダムに想定外の応力がかかって変形していることを早期発見できます。同じように、港湾や滑走路などの大規模な構造物の歪みも把握できます。

シンスペクティブのサービスは、インフラ開発のすべての段階で、従来の手法では得られなかったデータや、より効率を高めるための新たな情報を提供できます。

重要なのは、衛星は1つのインフラだけでなく、地球周回軌道を回りながら、世界の無数のインフラをモニタリングできるということです。つまり、 世界中のインフラ開発のプロセスや運用を比較し、グローバルに学びを共有することができる。その学びを次世代のインフラ開発に活かすことができるようになります。計画、施工、保守運用、のサイクルを回しながら、継続的に学びを蓄積していくことができるようになります。

私たちのミッションは、新しいデータを生み出し、それを理解することで、人の可能性を広げ、着実に進歩する社会を実現することです。それに資するシステム構築と人材の輩出ができる企業になりたい。この学びのサイクルによる、学習する世界 。それがシンスペクティブが目指す世界です。

「衛星を活用し、インフラ構築のすべての段階で従来の手法では得られなかった知見を提供可能に」

新井社長は、「SAR衛星で新しいデータを生み出し、それを理解することで、人の可能性を広げたい」と話す。

衛星を活用し、インフラ構築のすべての段階で従来の手法では得られなかった知見を提供可能に

さまざまな経験を経て、社会問題の解決のためにはビジネス化が必要と気づく

あらためて私の経歴をお話ししますと、私はもともと大学時代に工学を専攻しておりロケットエンジニアを目指していました。当時の宇宙開発は国の予算ベースでプロジェクトが進んでいましたが、マーケットのニーズと紐づくものではなかったので、継続性やスケーラビリティがなかった。私が工学系を専攻していたのは、世の中の最先端技術を使って、SFのような世界を作ることに興味があったから。『このままエンジニアとして技術を磨いても、宇宙工学をベースに社会を変える機会は限られるだろう』と考え、ビジネスを知るためにコンサルティングファームに入社しました。

次の私の中の課題は、テクノロジーを社会実装するにはどうしたらいいかというものです。これを研究するために大学に戻りました。東大では途上国のエネルギー問題を解決するための研究を行っており、サウジアラビアやバングラデシュ、ラオスやカンボジアなどの社会課題を解決するプロジェクトにも参加していました。そこで学んだのは、社会問題を解決するには、継続的な資金の流れを生み出すビジネス化が必須であるということです。

例えば、世界中から公的資金を集めて、途上国に太陽光発電のプラントを建設し、地域に電力を供給する。しかし、数年経つと、劣化したバッテリーを交換する手段が現地にないために、廃墟同然になっているという例を見てきました。どんなに素晴らしい事業であっても、現地でのオペレーションがビジネス化されていないと維持されないのです。

このような経験を通じて、いかに素晴らしいテクノロジーであっても、世の中のトレンドにマッチすること、素晴らしいチームが結成できること、ニーズに即したものであることなど様々な条件がそろわないと、社会実装はできないということ学びました。そして、そのポテンシャルのあるテクノロジーを探していました。

そんな中で 、内閣府の革新的研究開発推進プログラム(ImPACTプログラム)に関わっておられた白坂成功先生との出会いがありました。白坂先生は、後にシンスペクティブの共同創業者になっていただけるのですが、当時はImPACTプログラムで、小型SAR衛星の開発をしておられました。使用目的は防災でしたが、この素晴らしい技術を、もっと世の中を進歩させるものに活用できないか、そのためには衛星データとデータサイエンス、機械学習を組み合わせていこうという話になり、シンスペクティブの創業につながっていきます。ロケット技術、衛星技術、データサイエンス、社会の要求など、さまざまな要素の歯車がガチっとうまく組み合った瞬間です。

創業するまでに半年間の準備時間をかけました。成功の鍵は広範にわたるテクノロジーとビジネスの専門性、そして使命感を持つチームの実現なので、それを丁寧に行なっていったのです。その結果、想定以上に素晴らしいメンバーが集まってくれました。高いレベルで社会貢献や自分の使命という意識を持っていて、同時に高いレベルのスキルをもっている。そういう人たちがたくさん集まってくれたのです。

私たちシンスペクティブは、ネットワーク型の組織でありたいということを創業時から言い続けていて 、応募される方にも必ずその話をします。ネットワーク型組織を構成する人とは、自分のやりたいこととそれを達成するスキルをもっている方です。すなわち、自分のやりたいこととシンスペクティブのビジョンに重なる部分があるので、私はシンスペクティブで働きたい、そして貢献ができる、という考え方をする方です。

そして、5、6年経つと、個人も会社も成長をします。やりたいことの重なりがずれていくかもしれません。そうしたら、シンスペクティブで学んだノウハウを持っていって別の会社に移ったり、自分で会社を起こしたりして、次の社会課題の解決に挑戦してほしい。これにより、社会全体が得る効用が高くなる。そういう社会全体からの視点を持ち、自分のキャリアをデザインし、行動できる人にチームに参加してほしいです。

シンスペクティブは、ネットワーク型組織でありたい。そういうメンバーが集まってくれると、それぞれのネットワークやスキル、ノウハウを持ち寄ってくれるので、シンスペクティブの中でも高いパフォーマンスが発揮できる。そして、これから直面する様々なリスクを共に解決していくことができる。シンスペクティブが欲しい人材とは、この考え方に共感していただける方です。

現在、社員数は約100名。衛星開発のエンジニアが1/3強、データサイエンス、ソリューション開発エンジニアが1/3強です。

当面の目標は30機の衛星コンステレーション構築、どこで災害が起きても2時間以内に少なくとも1機の衛星で観測可能に

当面のマイルストーンは、30機の衛星によるコンステレーションの構築で、2020年代半ばの確立を目指しています。この頃になると、現在の3倍以上の300名規模の会社になっています。

30機の衛星コンステレーションが完成すると、世界のどこで災害が起きようとも、約2時間以内に最低1機の衛星が観測できるようになります。さらに+1時間でデータ解析が可能になり、待機している救急活動チームや病院にどう行動すべきかというサジェスションを含めた解析結果を提供できるようになります。これが世界規模で行えるようになれば、重要な社会インフラのひとつになります。

この目標に向かって、衛星開発は研究開発の段階から量産開発の段階に移行し始めています。研究開発の段階では、衛星開発の経験があるエンジニアが必要でしたが、量産の段階に入ると、むしろ自動車や電機などの量産機開発・プロセス設計の経験があるエンジニアが必要になってきます。新たな視点を持つ人が加わり、うまくミックスされた開発チームを構築する必要があります。

ソリューションのソフトウェア開発チームは、データサイエンス、機械学習といったスキルが必要なので、若い人が多いチーム構成になっています。経験や実績も大事ですが先進的なアプローチをチームの中で学びあう姿勢をもっている方が活躍しやすいと思います。とは言っても、大学で機械学習の講義を聞きました程度ではチーム内での議論についていくことができないので難しいと思います。当然、ある程度の実務経験は期待されます。もちろん、その辺はケースバイケースで、実際、博士課程修了後にすぐにシンスペクティブに入社し、活躍しているデータサイエンティストもいます。

そういった 現実的な条件はありますが、基本は社会貢献や自分の使命感を持たれている方を歓迎します。自分が仕事を通じて、社会にどんな貢献をしたいかということを明快に言葉にできる方はそう多くないと思いますが、その意識を持ち続け、考え続けていることが大事です。そして、私たちシンスペクティブのネットワーク型組織という考え方に共感していただける方。そういった 方々に、シンスペクティブに加わっていただき、シンスペクティブの組織づくりや社会課題の解決に貢献をしていただければと思います。

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