株式会社オミカレ
代表取締役社長 下永田 真人
住 所 | 東京都杉並区高円寺北2-6-2 高円寺センタービル7F |
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URL | https://party-calendar.net/ |
――まずは下永田社長のこれまでのキャリアについて教えてください。
私は大学卒業後、2006年にリクルートに入社して、そこで約4年半にわたって求人広告の事業企画に携わりました。その後、商品企画のマネージャーとして、転職情報サイトに実装されるスカウト型サービスのグロースを手がけたほか、新規事業開発や営業企画なども手がけた後に同社を退職しました。
その後、新たなフィールドへチャレンジしようと、機械系工業部品メーカーに入社し、マーケティングを手がけました。その会社ではデジタルマーケティング戦略をリードしていくというチャレンジングな仕事を経験し、非常に大きなやりがいを感じることができました。
その中で、大学時代からお世話になっていた先輩であり、あるベンチャーキャピタルのパートナーを務める方とお話する機会がありました。
その際、「失敗も成功もすべて自分の責任でビジネスを創っていくならスタートアップはかなり面白い」と教えていただき、仕事や組織にフルコミットすることへの興味が強く沸き起こりました。
私は以前から「ビジネスを通じて社会をよりよい方向へ変えたい」という思いを強く持っており、大企業の強力な資産を活用して社会を変えようという思いがありました。
ですが、その先輩の話を聞き、「スタートアップにフルコミットすることでどれだけ社会の変革を実現できるかチャレンジしてみたい」と一気に気持ちが傾き、2019年7月にEdTech系ベンチャーに入社。社長室配属というかたちで経営企画やマーケティングを通じた教育サービスの創出・推進に携わりました。ここでは最終的に取締役COOとして経営をリードしていく立場を担いました。
――その会社では、どんな仕事をしたのですか?
その会社は当時20人弱くらいの組織で、組織としての基盤が固まる前の段階でした。社長室に配属された私の役割も、経営企画やマーケティング推進など事業サイドの仕事を手がけつつ、今後の成長に向けた組織づくり・基盤づくりの一翼を担うことにありました。
そこからビジネスサイドの事業責任者というかたちで新規営業のフィールドセールスやカスタマーサクセス立ち上げなどを手がけていくことになるのですが、2020年に新型コロナウイルスの感染が拡大。政府主導による「GIGAスクール構想」推進も重なり、ITが学校教育内に入っていくタイミングで、「紙」中心の教育サービスからデジタルテクノロジーを用いた教育サービスへの転換が求められるようになり、そこに深く関わりました。
その結果、私が在籍した4年半でデジタルサービスが主流になる形に置き換えることができました。サービスがデジタル化するとプロダクトの在り方、顧客へのサービスの届け方、顧客フォローの仕方、社内ケイパビリティと全てが大きく変化する中でグロースに携われたことは非常に刺激的でした。
――そこからオミカレに関わっていったのはどういった経緯からでしょう。
オミカレは、婚活ポータルサイトやマッチングアプリをはじめとしたサービスを通じて出会いの場を創出し、婚活プラットフォーマーへと発展してきた会社です。
ベンチャーキャピタルのJAFCO(ジャフコ)さんからお声がけをいただいたのですが、実は前任の代表と私はリクルートで同期入社の関係で、前任は同社の人事、私は求人広告の事業企画に携わっていました。前任はコーポレートサイド、私は事業サイドということで一緒に仕事をしたことはなかったのですが、同期入社のよしみでお互い顔見知りではありました。
ジャフコさんからは私が以前から懇意にさせていただいているエージェントさん経由で、オミカレに関するお話を伺う機会があり、いろいろと説明を受けるうちに「この会社はもしかしてリクルート時代の同期が社長を務めている会社では?」と気づき(笑)、もう少し突っ込んだ話をしてみましょうということで前任と直接お話することになり、久しぶりにお会いすることになったのです。
――前任からはどんな話があったのでしょうか。
当時私は教育事業で大きなやりがいを感じていており、「婚活」という、これまでの自分のキャリアとはやや離れた事業領域に関わることに少し戸惑いを感じていました。
しかし、あらためて話を聞くと、「婚活」や「出会い」は、未婚率の増加や少子化という、日本の社会課題と向き合う上で極めて重要だということを再認識し、そしてその解決に重要な「リアル」な出会いにオミカレは深く関与できており、一転してオミカレに強い魅力や可能性を感じるようになったのです。
また、世の中の価値観がそれまで大きな力を発揮してきた「金融資本」から、人と人との関係をアセットとする「関係性資本」へとシフトしていきつつあることに教育ビジネスを通じて強く実感していましたので、関係性資本を豊かにしていくために、「パートナーと出会う」「パートナーを選ぶ」ということがこれまで以上に大切になっていくと感じました。
オミカレのビジネスは、マクロとミクロの両面から日本が直面する社会課題にアプローチできる極めて有意義で社会から求められているもので、「自分のビジネスパーソンとしてのキャリアを、ここに賭けてみてもいいのではないか」と考えるに至り、オミカレの経営のバトンを前任から受け取ることを決めたのです。
――下永田社長は、ご自身のどういった部分が評価されてオミカレの経営を任されたとお考えですか?
前任は、人事領域でキャリアを築いてきた方ということで、「守りに強い経営者」ではないかと思っています。コロナ禍という、日本はもちろん世界経済全体に深刻な影響を与えた厳しい状況の中、的確な舵取りとリーダーシップをもって盤石な経営基盤を築き上げ、しっかりとオミカレを守り抜いてくださった。
一方、私はリクルート時代から一貫して事業サイドで事業開発やマーケティングで実績を積み重ねてきたキャリアがあり、どちらかと言えば「攻めに強い」タイプの人間ではないかと自負しています。
コロナ禍という未曾有の困難な状況の中、前任がオミカレをしっかり守ってくださった後、社会が正常化していく中で本格的に市場を創りにいったり、事業をグロースさせていったりするフェーズに発展させていくにあたり、ジャフコさんが、攻めに強い私に白羽の矢を立ててくださったのではないか。そうだとしたら、私もそのお気持ちに全力で応えていきたいと思ったのです。
――前任がオミカレを守り、下永田さんがそれをさらに発展させていこうと。
少子高齢化や晩婚化・未婚率の上昇といった社会環境の変化により、婚活市場にも強い追い風が吹いていることに疑いの余地はありません。いま私たちがやるべきは、これまでの婚活パーティーというリアルな場をリデザインし、アップデートしていくことだと思っています。
私は単にテクノロジーを使ってコンバージョン率を上げることよりも、「ユーザーにとっての出会いの価値ってなんだろう」とか「人って"出会い"のどんな部分に可能性を感じているんだろう」といった本質的な部分を重視しており、そういったものをサービスの中に実装していかなければ婚活サービスは良くなっていかないと思っています。
経営のバトンタッチをされたのは、そうした思いの強さを特に買ってくださったのだろうと思っています。
下永田社長は、「出会いは時代を経るごとに変化していくもので、出会いを実現するサービスも、常に時代にマッチしたものへとアップデートしていくことが求められる」とし、婚活事業者とともに、「趣味などの共通項だけでなく趣味を通じて表出される感情など、よりエモーショナルな情報を伝えやすい仕組みを作りたい」と話す。
――オミカレの具体的なサービスについてお聞かせください。
オミカレは婚活パーティーを主催する事業者ではなく、婚活パーティー主催事業者とユーザーとを結びつける「婚活プラットフォーマー」であるという点が大前提となります。
具体的なサービスとしては、日本最大級の婚活パーティー情報サイトである「オミカレ」、婚活マッチングアプリの「オミカレLive」の2つを主軸としたサービスを展開し、新たな出会いの創造に取り組んでいます。
ここまでは他の婚活プラットフォーマーやパーティー事業者と共通する部分かもしれませんが、私たちはそれに加えて「人がどうやって”感情交換”できる場を創っていくか」という部分に強くこだわっています。
なぜなら、「出会い」は時代を経るごとに変化していくもので、出会いを実現するサービスも、常に時代にマッチしたものへとアップデートしていくことが求められるからです。例えば私の両親の時代は、職場結婚やお見合い結婚が主な出会いの機会で、私の両親も、祖母が仲人として縁談を持ちかけ、結婚へと至っています。
仲人や職場の上司といった人からもたらされた縁談を通じて出会い、結婚に至ることが普通だった時代から、自由恋愛が当たり前の時代背景となり、「合コン」や「街コン」での出会いが主流になり、互いを選び合いながらパートナーを見つけるスタイルへと出会いが変化していきました。
そこからさらに時代が変わり、出会いにテクノロジーが進出してきました。WEBやマッチングアプリによるオンラインでの出会いが一気に加速。テクノロジーの進化とともに、デジタルの先に何百万人という出会いの可能性が生まれるようになったのです。それによって居住地や職業、収入、容姿といった条件はもちろん、趣味嗜好も含めたさまざまな条件を軸にパートナーと出会っていくことができるようになりました。
ただテクノロジーの進化によって出会いの間口が大きく広がる一方で、本当に自分に合ったパートナーと出会うためは、デジタルで設定された条件だけでは分からないリアルな部分やエモーショナルな部分を感じあう、"感情交換"の重要性がより重要視されるようになったと思っています。
――デジタルの時代だからこそ、"感情交換"というエモーショナルな要素が重要であると。
オミカレでは、「出会におけるプラスの感情をどう創っていくか」、つまり"感情交換"をどう実現していくかが、婚活プラットフォーマーとして取り組むべき重要課題だととらえており、そのための仕組みづくりに全力で取り組んでいます。
"感情交換"を実現するには、その起点であり基盤となる仕組みや仕掛けの実装が欠かせません。それによって「その人らしさ」がより見えやすくなるからです。
これからの婚活サービスは、そうしたことを念頭に置き、プラットフォームやサービスの設計を行っていくことがより重要となっていくでしょう。出会いのプロセスを見直し、今の時代に適ったものにデザインし直していくことが、オミカレの使命と思っています。
――"感情の交換"は具体的にどうデザインしていくのですか?
例えば、婚活パーティーでは、1対1で話す際に自分の趣味や嗜好をプロフィールカードに記入してそれを交換することで会話のきっかけを作っていくことが多いですが、それを感情交換へと発展させていくには、趣味・嗜好そのものよりも、趣味・嗜好を通じて得られる楽しさや感情をお互いにどれだけ伝えられるかが重要であり、そこがリデザインの大きなポイントとなります。
この部分のデザインが欠けていると、例えば、「週末に釣りをしています」という情報だけが伝わるにとどまってそこから話が広がらず、相手から見れば「この人はどんな人なのかわからない」という結果に終わってしまいます。
オミカレでは、趣味だけでなくそれを通じた喜びなど、よりエモーショナルな情報を伝えやすい仕組みを考え、出会いをより建設的なものにしていくようなコミュニケーションデザインを心がけています。
さらに、「出会いの場のデザイン」も大切です。例えばマッチングアプリを使っていたとしても、1対1で会うだけがすべてではありません。相手とコミュニケーションを深めていく中で「1対1で会うことに抵抗がある」と感じるケースも少なくないでしょう。そんな時、オミカレで知ったリアルなパーティーに「一緒に参加しませんか?」と相手を誘うことで、2人の関係を深められる可能性が高まるのと同時に、その他の人とも出会う可能性も広がっていきます。そんなN対Nが出会う場に一緒に参加する仕組みをサービスに実装していくことも、今後の可能性として検討したいです。
――新しいオミカレが目指すところをお聞かせください。
オミカレはこれまで自社でパーティーは主催せず、プラットフォーマーという立ち位置に拘っていました。しかし、今後、出会いをアップデートしていくにあたり、力を入れていきたいのが「婚活パーティー事業者の方々といっしょにR&D(研究開発)に取り組んでいく」ということです。
婚活パーティーはマッチングを最適化するために磨きこまれてきました。一方で出会いのフォーマットが少し固定化されつつあることも否めないです。
ユーザーが出会いに求める価値が変化しているからこそ、より相手を多角的に見ることができたり、ふとした瞬間に出る「その人らしさ」を捉えられたりするリアルの価値を活かすことができるかもしれない。
現在は新しい視点・価値観にもとづくパーティーの開発やサービスのリデザインを主としたR&Dを、各パーティー事業者の方々と進めていくための準備を行っています。
――「その人らしさが見える瞬間」の創造、面白い視点ですね。
「その人らしさ」が見えることは、相手を知ることにもなるのと同時に、感情交換にもつながっていきます。
趣味を通じた出会いをテーマとする、いわゆる「趣味コン」はたくさんありますが、私たちは趣味そのものよりも、その趣味が好きな背景や趣味と向き合う姿勢といった、「その人らしさ」をしっかりと理解することのほうが、パートナーと一緒に未来を築く上で大切だと考えます。
したがって、「その人らしさが見える瞬間」をどうパーティーの中に盛り込み、出会いをデザインしていくのかが、私たちが目指すR&Dのテーマとなります。
――そうしたオミカレの取り組みを推進していくにあたっては、どういった人材を必要としていますか?
サービス創り、またユーザー体験を上げるためにデザイナーとエンジニアの採用を推進していきたいと考えています。
デザイナーは「出会いのリデザイン」を実現していくために重要性が増しています。パーティーを探す時から始まり、パーティーに参加するまで、参加時、参加した後のフォローとユーザーの感情を捉えたサービス体験を再構築したいです。パーティー事業者の方々と新たなパーティー開発を行いながらも、パーティー前後のプロセスにおいては伸びしろしかない状況です。このプロセスをデザインの力で最高のユーザー体験に変えていく必要があります。
さらに、私たちが持つさまざまなデータをもとにマーケティングを推進し、それをサービス開発に活かしたり、パーティー事業者にフィードバックしたりしながら一緒に時代が求める出会いの場を創造するために、エンジニアリングの重要性は増すばかりです。
特にデータドリブンの事業を推進していくにあたっては、ユーザーのトランザクションデータを分析し、社内の事業開発メンバーやパーティー事業者さんへと展開・共有を図っていくことが欠かせません。データを元にしてデザイナーと共に、ユーザーにとって最適なパーティーを最適な形で届けるフロント側の開発強化は必須です。
将来的には、「どのエリアで」「どんなユーザーが」「どういったパーティーに」「どのような反応を示したのか」といった情報を一元管理し、そうしたデータをパーティー事業者が活用することで自主的に改善やサービス開発へとつなげていけるクライアントダッシュボードのような仕組みも構築したいと考えています。
攻めの仕掛けをスピーディーに実現するためには開発ロードマップ、バージョンアップやリファクタリングといったエンジニアの開発生産性を上げる環境が重要です。そのためにもエンジニアリングマネージャーの採用に注力したいと考えています。
――背景に「少子高齢化」という日本が抱える大きな社会課題がありますので、行政との連携というのはとても重要なポイントになってきますね。
婚活業界の市場を分析していくと、2000年初頭から2023年の直近にいたる約20年間の間に、20~39歳のいわゆる結婚適齢期の人口が急速に減少していることが分かります。この現象は特に地方都市で顕著なものとなっており、中には20年間で50%近くも減少した都市もあります。
ですので、いくら結婚の意思があったとしても、そもそも街中で出会う同世代の人間が少なく、少し前の時代の感覚で「焦らずゆっくり出会えればいい」と思っていたら、いつまで経ってもパートナーと出会えない時代になってしまっているのです。
さらに出会いのチャンスが少ないだけに、出会いの後の関係性構築のプロセスまでをしっかり考えていかないと、パートナーと出会ったり未来を築いていったりすることは難しい。
そんな未来へとつながる関係性づくりをサポートしていくのが、オミカレの存在意義でありビジネスです。そのためには積極的に自治体や行政と連携を図って行くことが重要だと考えています。
――そうした関係性づくりをより広いスケールで進めていくために、どのような形で行政や自治体へのアプローチを行っているのですか?
すでに積極的なアプローチを開始しています。そうした取り組みの一つとして、先日(2024/03/30)、鳥取県と出会い・結婚支援に関する連携協定を締結しました。
鳥取県は、過去10年間で出生数が約1,000人以上減少、未婚率も男女ともに増加しており、この課題に歯止めをかけるべく「カップル倍増プロジェクト」を推進しています。
今回の連携協定は、その支援に向けたものであり、今年の5月25日に鳥取砂丘を舞台としてオフラインとオンラインを掛け合わせた新しいかたちのマッチングイベントを実施する予定です。
私たちの考えとしては、これを一つの事例として実績化することで、その他の自治体へと広がっていくようにしたいと思っています。
オミカレは北海道から沖縄まで日本全国のパーティー事業者と連携し、地域特性を踏まえた婚活パーティーの開催実績を豊富に持つのが強みです。そうしたネットワークを活かしながら行政―パーティー事業者―当社の3者間で連携を図り、「新たな出会いの創造~出会いが0をZEROにする~」というオミカレのビジョンにもとづくサービスで人生を共にするパートナーとの出会いを提供し、婚姻率低下、少子化という社会課題に向き合っていくつもりです。
これから先、どんな挑戦と出会い、社会貢献を果たしていけるのか、私自身も楽しみでなりません。
株式会社オミカレ 代表取締役社長 下永田 真人に関するページ。転職エージェントならマイナビエージェント。マイナビの転職エージェントだからできる、転職支援サービス。毎日更新の豊富な求人情報と人材紹介会社ならではの確かな転職コンサルティングであなたの転職をサポート。転職エージェントならではの転職成功ノウハウ、お役立ち情報も多数掲載。