カシオヒューマンシステムズ株式会社
代表取締役社長 藤井茂樹

| 住 所 | 東京都新宿区西新宿6丁目13番1号 新宿セントラルパークビル7F |
|---|---|
| URL | https://www.casio-human-sys.co.jp/ |
――カシオヒューマンシステムズの事業について教えてください。
私たちカシオヒューマンシステムズは、3つの事業を展開しています。一つ目は、人事管理、給与計算、勤怠管理などの人事部で使われるシステムで、「ADPS」シリーズとして提供しています。
二つ目は、企業の健康保険組合向けのシステムで、「VoiceRadar」の名称で提供しています。健康保険組合の業務は非常に複雑なのですが、それを管理するシステムとなっています。被保険者である従業員の方が病院にかかると、健康保険組合負担分と自己負担分がわかれますよね。この自己負担分というのは、国の負担分と自己負担分とでわかれる場合があります 。こうした複雑な収支を管理することができます。
三つ目が、小規模事業者向けの販売管理システムで、「楽一」の名称で提供しています。
――御社の設立は2009年ですね。これらの事業はその時から始めたのでしょうか?
いえ、3つの事業は、全て1991年前後からカシオ計算機において始まった事業で、35年の歴史があります。その後機能ごとにカシオ計算機と子会社に分かれて事業を行っていましたが、2025年に3つの事業を引き継いで、カーブアウト(※)をすることになりました。独立した新体制はスタートしたばかりですが、事業そのものは長い歴史があるのです。
(※企業が自社の特定の事業部門や子会社を切り離し、独立した新会社として事業を展開、または他社へ譲渡すること)
――人事部向けのソリューションを立ち上げるきっかけはどんなものだったのでしょうか?
人事部がご利用になるシステムは、1990年代には主にホストコンピューターで動かしていました。しかし、時代の変化に合わせて要件変更が多発し、その変化に迅速に対応する必要性から人事部門だけで運用ができるダウンサイジングされたシステムを求められる企業様が多かったのです。そこで、35年前にカシオ計算機でそのようなニーズに応えるシステムを提供しようということでこの事業が始まりました。
一方、従業員数が1万名を超える大手企業の場合は、人事システムを人事部で運用するというよりは、企業全体を管理するシステム構築を行い、その一部として人事関連の機能も構築するということが多くなっています。そのため私たちは、企業の人事部内で運用するシステムを必要とする規模のお客様へサービスを提供しています。
人事部の担当者に寄り添うため、カシオヒューマンシステムズのシステムエンジニア(SE)は、デスクに座ったままではなく、お客様のシステム導入からサポート、改善提案に至るまでコミットするという、伴走型の業務を行っています。これが長期間にわたってご好評をいただいており、多くのお客様がいらっしゃいます。
――カーブアウトという形で独立をしたのはなぜなのでしょうか?
市場の変化にスピーディーに対応していくのはどうしたらいいのかということを考えて出した結論です。
カシオヒューマンシステムズがカシオ計算機の子会社として設立され、SEと営業がお客様の対応にあたっていましたが、商品開発はカシオ計算機の開発本部が担当していました。つまり、開発部隊と営業部隊が別会社になっていたのです。
開発と営業が分かれたままではお客様のご要望にスピーディーに応えることができないということが課題となり、カシオ計算機にあった開発機能をカシオヒューマンシステムズに順次、移行していきました。
――HR(Human Resources、人材資源)の分野はそこまで市場変化が速いのでしょうか?
はい。例えば、給付付き税額控除が現在議論されているほか、多くの企業が賃上げするなどの動きがあります。政策に変化があれば人事・給与システムもそれに合わせて改修や新たなシステムの導入をしていかなければなりません。
さらに、企業が人的資本経営や健康経営などを経営理念として掲げるようになっているという背景もあります。また、人事部にはまだまだアナログ的な業務が残っていることも多くデジタル化したいというニーズもあります。
カシオ計算機は腕時計などの消費者向け製品を開発していることもあり、どちらかというと、メーカーとして消費者に提案するというプロダクトアウトの発想が主流となっています。
一方で、カシオヒューマンシステムズで扱う商品群は、顧客のニーズをもとにサービスを提供するマーケットインの発想が大きく求められます。HR市場が活性化しており今後も成長が望まれること、カシオ計算機とは開発する上での発想に異なる点が多いことを考えると、子会社という形態より、新たな資本を求めてカーブアウトするべきではないかという結論に至りました。
――カシオ計算機という大きな傘から外れて独立するというのは大きな決断だったのではないですか?
私自身に関しては、カーブアウトするためにやらなければならないことが山ほどあり、不安を感じる暇もなかったです。こういうことを経験できる機会はそう多くなく、未知の世界にチャレンジできるというのは私にとっては大きな魅力でした。
また、カシオ計算機時代からこれらの事業を担当していましたので、責任感もありました。やるからには事業を拡大させたい、そういう思いで決断しました。
ただ、従業員は全員がそういう意識だったかというと違うかもしれません。正直、カーブアウトが決まった時は動揺もあったと聞いています。
藤井社長は「カシオ計算機の子会社時代にはできなかったことをひとつひとつ実行していくのがわたくしの仕事」と話す。
――藤井社長は、動揺した従業員に対してどう応えられていますか?
まず、人事制度や福利厚生などに関しては、カシオ計算機のものをほぼそのままを引き継ぎました。したがって、会社の規模から考えると、充実した水準といえると思います。
さらに、子会社時代にはできなかったことをひとつひとつ実行していくことが私の仕事だと思っています。そのひとつが積極的な経験者採用です。カシオヒューマンシステムズでは、新卒採用が中心で、経験者採用が思うように取り組めなかったため、中途採用に積極的に取り組みたいと考えています。
――従業員の方々の側の意識変化の必要性についてはどのようにお考えでしょうか。
元々カシオヒューマンシステムズが対象とする事業の環境は変化が速いことから、従業員も時代の変化に合わせて自分たちも変わらなければならないという意識は強くありました。しかし、カシオ計算機の下にいると、そのきっかけがなかなかつかめないというもどかしさもあったのです。
これは自らが変われるチャンスなのだという感覚を従業員の皆に持ってもらうようにすることが、私の重要な役割だと考えています。
これまでは、HR、健康保険組合、SMB(※)の事業分野ごと、さらには営業と開発という職種ごとに、セクショナリズムのようなものがあって、他部署のことは関知しないという感覚があったのも事実です。
ただ、ひとつの会社になったことを契機にチームワークをうまく醸成していき、ワンチームとして外に対してエネルギーを発散していける、そういう企業を目指して変化し続けている最中です。
(※Small and Medium-sized Business、小規模事業者から中堅企業までを含む「中小・中堅企業」の総称)
そのためにはまず、私を含めた経営陣が、会社をいい方向に変えていくことが大切だと思います。それができていないと、従業員も「カシオ計算機時代と何が違うの?」と不満を持ったり、不安になったりさせてしまいます。そうならないようにするのが、経営陣の責任だと考えています。
――チームワークを醸成していくためにどのようなことをされていますか。
「カスタマーサクセス」「チームワークとパートナーシップ」「オーナーシップ」「プロダクティビティ」の4つのカテゴリに分けた上で、合計16の行動指針をまとめて発表しました。
ただ、このような行動指針というのは言葉だけあっても意味がなく、従業員一人一人が腹落ちした時に活きてくるものだと思っています。
そこで、現在は「『ありがとう』を原動力に、人とテクノロジーで寄り添い、 お客様の課題解決に貢献します」という経営理念を掲げています。提案した内容がお客様の目的と合致し成果が出ることによって、お客様から「よかったよ」「ありがとう」と言われる。これは仕事をしていて、誰もが感じられるご褒美だと思うのです。お客様から感謝の気持ちをいただきたいと全員が思って行動する企業は強いと思います。
社内でもそうです。これまで従業員同士で「ありがとう」という言葉はなかなか出てきていなかったように思います。それは先ほど述べたようなセクショナリズムのようなものが要因だった可能性が高いです。
これを解消し、従業員同士がうわべの言葉ではなく、腹の底から「ありがとう」と言える会社にしていかなければなりません。相手の立場を理解し、建設的な議論を交わして、それが成果に結びついて出てくるのが本当の「ありがとう」といえるのです。
これはまだまだできているとは言えません。従業員教育、製品の完成度、組織改革、給与体系など取り組まなければならない課題が山積みです。これは大きな課題かもしれませんが、解決できると信じて常にそこを目指していきたいです。
――組織体制はカシオ計算機時代とどう変わったのでしょうか?
カシオ計算機時代は、戦略、開発、生産、営業、サポート、保守と業務ごとに分かれていて、その中にそれぞれの事業分野のユニットがある機能本部制でした。これはこれでメリットも多いのですが、私たちのようなスピードが要求される事業にとっては難しい面もありました。例えば、営業と開発が何かを決めたいという時は、最終的には営業本部長、開発本部長に報告をあげて、それぞれの本部長の承認を必要するという形になっていました。
現在は、事業分野ごとに組織がわかれているため、開発と営業など、職種が異なっても直接コミュニケーションができます。さらに、異なる事業分野と連携したいという場合は、それぞれの事業を統轄する部長同士が話し合えばいいという形になっています。事業という縦串、機能という横串のあるクロスファンクショナルな形になっています。
ただ、これが理想的な形だとは思っていません。組織を整えることよりも、繰り返しになりますがマーケットに対してスピーディーに反応できる企業になることが大切で、それが実現できる体制を作るにはどうすればいいかと常に考え続けています。組織構造より、現場の「今、こういう機能が不足しています」という声を聞いて、それを補ってくれる人をスピーディーに採用していく。経営陣だけでなく、従業員全員が企業戦略を理解した上で要望を出し、それをもとに人材を補い、機能を強化していくという体制を整備することが先決なのではないかと思っています。そうしたことができるようになれば、最適の組織図というのは自ずと決まっていくのではないかと思います。
――具体的にはどのような職種、どのような方を採用していく予定でしょうか?
現在従業員数が約230名で、開発とサポートで大体100名程度のエンジニアがいますが、エンジニアの方が圧倒的に足りていません。営業やマーケティング人材ももちろんですが、市場変化が激しいためにシステム開発・サポートの仕事が多く、今後どのようにエンジニア人材を強化していくかは大きな課題になっています。
特に、お客様の困りごとを解決したいという意欲があって、「ありがとう」の言葉をいただくことにやりがいを感じるエンジニアをはじめ、同じマインドをもった営業や企画、推進、本部スタッフも含めてジョインしていただきたいです。持っているスキルに関しては細かく定義することもできますが、そこは私たちが必要としている技術と応募される方がお持ちの技術をつき合わせてみればいいことです。スキルは学べば向上させることができます。それより、仕事に向き合うマインドの方が重要だと思います。マインド面で私たちの目指している理想と合うかどうか、そこが大切だと思います。
――今後の事業展開や成長戦略はどのようにお考えでしょうか?
カシオヒューマンシステムズはサービスに歴史はありますが、独立後の新体制としてはまだ不十分なところがありますし、市場変化の速さも激しいですので、まずは今のお客様のご要望に応えて、満足度をあげていくというのが当面の目標になります。
そして、長くご愛用していただいて、信頼関係ができたところで、そのお客様の周辺領域で新たな提案をしていき、事業の幅を広げていくというのが最も優れた戦略ではないかと思っています。まずは今のお客様を大切にする。マーケット自体は急成長しているので、当面はそれで成長していくことができます。
――独立した組織としてリスタートを切られましたが、今後はどのような会社になっていきたいとお考えでしょうか?
現在、経営の体制としてはとても良い状態にあります。経営陣が同じ方向を向いて、どうしたら事業を伸ばせるかを一緒に考えることができており、ものすごく事業に集中できています。
引き続き、お客様に選ばれ、従業員が輝ける組織を基盤とし、ステークホルダーの皆様と共に「この会社が独立して良かった」と確信できる未来を、切り拓いていきたいと考えています。
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