転職市場においては20代～30代前半といった若手人材の需要が高く、34歳になった方の転職は難しいといわれるケースがあります。しかし、本当に34歳での転職は難しいのでしょうか。

そこでこの記事では、34歳で転職する人の割合や転職するメリット・デメリット、34歳で転職を成功させるポイントを解説します。34歳ならではの経験やスキルを活かして転職活動を進めれば、転職成功率を上げられるでしょう。

34歳で転職する人は多い？割合や理由を分析

34歳になってからの転職は遅く、難しいといわれることがあります。しかし転職市場に目を向けてみると、34歳前後の年齢で転職を成功させている方は多くいます。そのため、転職するタイミングとして遅いわけではありません。

ここでは、厚生労働省の「令和4年雇用動向調査結果の概況」に基づき、34歳で転職する人の割合や主な転職理由を紹介します。

参照：令和4年雇用動向調査結果の概況｜厚生労働省

34歳の転職率

まずは、30代前半の方の転職率を前後の年代の方と比較してみましょう。厚生労働省の「令和4年雇用動向調査結果の概況」によると、年齢階級別の転職入職率は以下のとおりです。

年齢 男性 女性 25歳～29歳 15.3％ 14.1％ 30歳～34歳 9.5％ 14.0％ 35歳～39歳 7.7％ 10.7％

30代でも、転職に成功している方が一定数存在することが分かります。そのため、34歳という年齢が転職で不利に働くとは言い切れません。

なお、20代後半までの転職率は男女でほぼ変わらないものの、30代以降になると男性よりも女性の転職者が増えているのが特徴です。その理由としては、30代になるとライフスタイルが大きく変化しやすいことが考えられます。

34歳で転職を考える主な理由

30代前半の転職者は、主にどのような理由で転職することを決断したのでしょうか。代表的な理由は以下のとおりです。

【30歳～34歳男性】

• 労働時間・休日などの労働条件が悪かった：17.2％
• 給料など収入が少なかった：13.4％
• 会社の将来が不安だった：9.6％

【30歳～34歳女性】

• 職場の人間関係が好ましくなかった：12.8%
• 労働時間・休日などの労働条件が悪かった：12.3%
• 会社の将来が不安だった：8.4%

男性は主に労働条件、女性は主に労働環境やワークライフバランスの改善を目的に転職を決意していることが分かります。また、男女ともに会社の将来性に不安を感じて転職を決意する方も少なくありません。

34歳で転職する5つのメリット

34歳で転職する場合、これまでの実務経験や習得した専門的なスキルを活かせるのがメリットです。34歳で転職するメリットについて、詳しく見ていきましょう。自分の転職目的が実現しやすい状況かも併せてチェックしておくことをおすすめします。

前職での経験やスキルを活かせる

34歳で転職する場合は、大卒で就職したのであれば12年程度、大学院修士課程を修了後に就職した場合は10年程度の社会人経験を有しています。そのため、経験に応じたスキルを習得しているのが一般的です。これまでの経験や習得したスキルを活かせる職場への転職であれば、選考を有利に進められます。

現職で高い成果を出していれば、ヘッドハンティングやスカウトにより好条件の転職を実現できることもあるでしょう。

年収アップを目指せる

応募先企業に実務経験やスキルを高く評価してもらえた場合は、より好待遇で転職できる確率が高まります。入社前の交渉しだいでは、現職以上の年収アップも目指せるでしょう。

実際、厚生労働省の「令和5年上半期雇用動向調査結果の概況」から「転職入職者の賃金変動状況」を確認すると、30歳～34歳で転職した方のうち47.4％が「前職より賃金が増加した」と回答しています。年収アップを実現したい方は、経験やスキルを活かして上位職種にキャリアアップすることを目指しましょう。

参照：令和5年上半期雇用動向調査結果の概況｜厚生労働省

未経験職種への転職も目指せる

30代後半以上の方と比較すると、34歳の転職者は未経験職種への転職を実現しやすいのもメリットです。ただし、未経験職種への転職において有利というわけではありません。その理由は、20代の転職者とは異なり、熱意やポテンシャルを評価してもらえるわけではないためです。

30歳以上になると、即戦力として活躍できるスキルを有しているかが重視されます。そのため、未経験職種への転職を目指すなら、自分の経験やスキル・資格の一部を活かせる企業を選ぶことをおすすめします。

自分に向いている企業や職種を判断できる

これまでに10年程度のキャリアを積み重ねてきた34歳にもなると、20代のときに比べてやりたい仕事や向いている仕事、将来のキャリアプランが明確になっていることでしょう。そのため、どのような転職先が自分に向いているか、理想のキャリアプランを実現するにはどの企業を選べばよいかを判断しやすいのもメリットです。

転職の軸を明確に定めることで自分の経験やスキルを活かせる職場に転職しやすくなり、ミスマッチのリスクを低減できます。

役職をもらえる可能性がある

前職でリーダーやマネジメント業務に携わった経験があれば、転職後に何らかの役職に就任したりマネージャーとして活躍したりできる可能性が高まります。年収アップを目的としてキャリアアップしたいと考えている34歳の方にとっては有利な状況といえます。

転職でアピールできる経験を積むためにも、現職でリーダーやマネージャーとして働く機会が訪れたときには前向きに挑戦するとよいでしょう。

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34歳で転職する5つのデメリット

34歳には、転職活動に取り組むうえで見逃せないデメリットもいくつかあります。以下では、34歳で転職するときにデメリットになりやすい5つのポイントを解説します。転職にはリスクもあることを理解し、自分にとって最適な選択肢かを判断することが大切です。

20代と比較すると求人数は減る

長期的なキャリア形成を目的として若手人材を優先的に採用する企業は少なくありません。そのため、20代と比較すると求人数が減り、応募できる企業が少なくなるのが34歳で転職するデメリットです。

20代であれば第二新卒枠などもあり、比較的多くの求人から自分に合った企業を選べます。しかし、34歳では限られた求人から自分に合った企業を探す必要があります。

未経験職種への転職は年収が下がる可能性がある

スキルを活かせる同職種への転職であれば、年収アップに期待できるのが34歳の転職です。しかし未経験職種への転職は難度が上がることに加え、たとえ転職できても年収が下がる可能性があります。未経験者の市場価値は低く、それに伴って年収水準が低下するためです。

未経験職種への転職で年収ダウンを可能な限り防ぎたいのであれば、実務に役立つ資格を事前に取得するとよいでしょう。また、これまでに培ったスキルを活かしやすい職種を選ぶのも大切です。

転職活動は想像以上に長引く可能性がある

34歳の転職では、応募できる求人数が少なかったり選考の難度が上がったりするなどの理由でなかなか転職先が決まらずに長引くリスクがあります。転職活動が長引けば精神的な負担が大きくなり、妥協して決めてしまう結果にもつながりかねません。

さまざまな理由で転職先が決まりにくい可能性があることを考えると、予想以上に時間がかかっても慌てないように在職中から転職活動に取り組むのがおすすめです。

新しい職場に慣れるまでに時間がかかりやすい

ひとつの企業で長く働いていた方であれば、入社後に新しい職場の環境に慣れるまでに時間がかかりがちです。同業種・同職種への転職であっても、企業によって具体的なビジネスの進め方が異なるケースもあります。

職場ごとに異なる環境や細かいルール・システムに慣れるには、柔軟性が必要です。進んで新しい環境に適応するように努力しましょう。

次の転職はハードルが上がる

転職後にミスマッチが発覚したなどの理由で、再び転職する必要が生じたときに不利になるのもデメリットといえます。次の転職では30代後半になり、30代前半と比べて応募できる求人の数が大幅に少なくなったり、条件が合わずに採用に至りにくかったりするためです。そのため、34歳の転職では転職前に自己吟味し、ミスマッチのリスクを可能な限り低減することを意識しましょう。

35歳を過ぎると転職が一気に難しくなることを、「35歳の壁」と呼ぶこともあります。ただし、35歳を過ぎてもスキルやキャリアを活かしてキャリアアップする場合の転職はその限りではありません。

34歳で転職したほうがよい人の特徴

メリット・デメリットがある34歳での転職ですが、どのような人におすすめなのでしょうか。転職をおすすめできる人の特徴を以下にまとめました。

• 自分のキャリアプランを現職で実現できない
• 経験やスキルを活かしてキャリアアップしたい
• ライフスタイルの変化に対応できない
• 抱えているトラブルを解決できそうにない
• 自分が挑戦したいことが明確になっている

まずは自分がなぜ転職したいと思っているのかを考えてみましょう。転職目的を現職で達成するのが難しいのであれば、転職が最適な選択肢といえます。

34歳での転職に失敗する人の特徴

転職理由によっては、34歳で転職をするのがおすすめできない場合もあります。転職をおすすめできない代表的な理由は以下のとおりです。

• 漠然と現職を辞めたいと思っている
• やりたいことやキャリアプランが明確ではない
• 現職で転職目的を実現できる
• 年収ダウンのリスクを受け入れられない

基本的に転職理由が曖昧な場合や転職後のキャリアプランが定まっていない方はミスマッチのリスクが高いため、転職するかどうかは慎重に考えたほうがよいでしょう。転職理由を現職で実現できる場合も、あえてリスクを冒して転職する必要はないといえます。

34歳での転職を成功に導くポイント

ここでは、34歳の方が転職を成功させるために押さえておきたい5つのポイントを解説します。自分にとって転職が最適な選択肢と判断したのであれば、これらのポイントを押さえたうえで転職活動に取り組むとよいでしょう。転職目的を見失わないようにするためにも、まずは時間を取って考えてみることをおすすめします。

キャリアビジョンを明確にする

転職を決断したら、転職後のキャリアビジョンを明確にしましょう。転職で実現したいことと、そのために何ができるのかを可視化します。

キャリアビジョンが鮮明になっていないと転職の軸が定まらず、ミスマッチに陥るリスクが高くなるでしょう。選考に臨むときにキャリアプランや転職理由が曖昧だと、選考担当者にその様子が伝わって不合格になるケースもあります。

転職活動の期間を決める

30代後半になると、さらに転職が不利になりかねません。スピーディーに転職先を決めるためにも、いつまでに転職するのか期限を明確にしましょう。

設定した期限までに転職するには何をする必要があるのかも併せて考えることが大切です。最初の段階で期間を決めておけば計画的に行動できるようになり、転職活動が長引くことを防げます。

自己分析を徹底し転職先に求める条件を整理する

自分に合った転職先を見つけるためにも、まずは徹底的に自己分析しましょう。転職目的を達成するには、どのような条件を求める必要があるかを考えます。

キャリアアップやワークライフバランスの改善など、転職理由によって重視する条件は異なります。まずは転職先に求める条件をすべて書き出し、優先順位を定めるのがおすすめです。すべての条件を満たす転職先を探すのは難しいため、特に重視している条件を満たす企業を選ぶとよいでしょう。

培ってきたスキルや実績を整理する

34歳の転職では、これまでのスキルや実績を活かした即戦力としての活躍が求められます。そのため、自分のスキルを発揮できる転職先を選ぶことが転職活動期間を短縮するポイントです。

転職活動を始める前に、まずはこれまでの実績やスキルを可視化してみましょう。数値化して具体的に書き出し、転職後にどのように活かせるのかを考えます。スキルや経験を活かせる職種がどのようなものかを考えることも大切です。

これまでに築き上げてきたスキルや実績を洗い出すことで、転職の方向性や自分に向いている転職先の特徴が明らかになり、よりミスマッチを防ぎやすくなります。

家族やパートナーへ相談しておく

転職で年収が下がる可能性があるときやライフスタイルが変わる場合は、事前に家族やパートナーに相談することが大切です。家族やパートナーの理解を得られていないと、自分が望む転職を実現したとしても家庭内のトラブルにつながるリスクがあります。トラブルを未然に防ぐためには、事前に転職の相談をしておくことが欠かせません。

34歳での転職活動における注意点

ここからは、34歳の方が転職するときに注意したいポイントを見ていきましょう。厳しい選考を突破して転職を実現しても、ミスマッチに悩むケースは少なくありません。転職の失敗による後悔を防ぐためには、以下で紹介する5つのポイントを意識したうえで事前準備を徹底することが大切です。

転職先の候補は徹底的にリサーチする

自分のキャリアプランを実現できそうな業界・職種・企業を発見したとしても、すぐに応募するのはおすすめできません。まずは本当に転職目的を実現できるのかを徹底的にリサーチしましょう。表面的な情報だけで判断して転職すると、細かい部分が見えていなかったことが原因でミスマッチにつながるリスクがあるためです。

企業の公式サイトなどさまざまな情報をチェックし、応募予定の企業を多角的に分析しましょう。離職率の高さも、ミスマッチを防ぐために確認しておきたいポイントのひとつです。

自己アピールは簡潔かつ論理的に伝える

選考に臨むときは、事前準備の段階で可視化したスキルや経験を魅力的にアピールすることが欠かせません。応募書類を書くときには200文字程度で、面接では1分程度で自己PRすることが求められます。

自分の魅力を最大限伝えられるようにするためにも、自分の経験やスキルと応募先企業が求める人物像との共通点を明確にし、簡潔かつ論理的に伝えられるように準備しましょう。スキルや経験を端的に示し、裏づける実績を数値化して明確に示せば説得力が高まります。

転職活動は退職前に終わらせる

20代に比べて34歳の転職は長引く可能性が高いため、在職中に転職活動を完了させるのがおすすめです。退職してから転職活動に取り組むことも可能ですが、予想以上に長引くと経済的な理由で急いで転職しなければならない状況に陥り、妥協して転職先を決める結果になりかねません。転職活動が長引いたときのリスクを低減するためにも、在職中に転職活動をスタートして転職先が決まってから退職するとよいでしょう。

アピールポイントを見極める

34歳の転職で特にアピールしたいのは、自分のスキルが応募先企業の業務にどのように役立つのか、どう企業の売り上げの向上につなげられるかというポイントです。

20代の転職のように、熱意やポテンシャルはアピールポイントになりません。企業側にとって自分を採用するメリットがあると伝えることが重要です。採用担当者の立場になり、どのようなポイントをアピールすれば魅力的に伝わるかを考えながらスキルや実績を可視化しましょう。

長期的なキャリアビジョンを立てておく

転職するときには、直近だけでなく40代以降のキャリアビジョンもできるだけ具体的に考えておきましょう。キャリアアップ目的の転職であれば、10年後の姿をイメージしてみることをおすすめします。長期的なキャリアビジョンを定めることで、今後どのようにスキルアップすればよいか、応募先企業のビジネススタイルでそれを実現できるかが明らかになるでしょう。

選考でも、長期的なキャリアビジョンがあると伝えられればやる気を評価されます。加えて応募先企業であれば自分が望むキャリアビジョンが実現できることをアピールすると、企業にとっても必要不可欠な人材であると判断してもらえる可能性が高まり、より採用につながりやすくなるでしょう。

34歳での転職が不安な場合は転職エージェントの活用も有用

20代のときとは異なり、34歳になってからの転職は難しいポイントも多々あります。そのため、転職に対して不安を感じているなら転職エージェントにできるだけ早い段階で相談するとよいでしょう。

転職エージェントに相談すれば、キャリアアドバイザーとの面談を通じて自分のスキルや実績が可視化できるだけでなく、思い描くキャリアビジョンを実現できる転職先も紹介してもらえます。自分を魅力的な人材としてアピールするために何をすればよいかのアドバイスももらえるため、効果的に選考対策を進められる点もメリットです。

34歳での転職に役立つスキル

スキルや実績が重視される34歳での転職において、特に高く評価されるスキルにはどのようなものがあるのでしょうか。以下ではどのような職種を目指す場合であっても習得しておきたい4種類のスキルを紹介します。

いずれも選考において重視されるスキルであるため、キャリアの棚卸しをする際はどの程度のレベルに達しているかを可視化してみましょう。

ポータブルスキル

ポータブルスキルは職種を問わず発揮できるスキルのことで、具体的にはヒューマンスキルやロジカルシンキング・ネゴシエーションスキル・プレゼンテーションスキルなどビジネスに欠かせない各種スキルを指します。

ポータブルスキルは、同業種・異業種のどちらに転職する場合においても欠かせません。これまでの経験を通じて課題解決に取り組んだ経験やリーダー業務を担当した経験があれば、それを通じてアピールするとよいでしょう。また、自ら進んで仕事に従事する積極性や行動力をアピールすることも重要です。

高いコミュニケーション能力

転職に伴う環境の変化に対応し、即戦力として活躍するにはコミュニケーションスキルが重要です。どのようなビジネスに携わるとしても、さまざまな人と円滑にコミュニケーションを図ることは欠かせません。企業によっては、年下が上司になることもあるでしょう。そのような状況であっても、すぐに同僚と打ち解けられて仕事の成果を残せる人材は企業から重宝されます。

マネジメント能力

キャリアアップ転職を考えている方にとって、マネジメント能力は重要といえます。これまでの経験やスキルを活かしてキャリアアップする場合、リーダーやマネージャーといった管理職を目指すケースが多いためです。

マネジメント能力には、目標を定めてチームを動かすスキルやビジネスの進行状況を管理するスキル、適材適所に人員を配置・運用スキルが含まれます。前職で管理職を担当した経験がある方は、特に積極的にアピールするとよいでしょう。

専門的な資格や知識

専門性が高い資格や知識を有していれば、同業種・異業種いずれの転職でも有利に進められます。未経験職種にチャレンジするときであっても、保有している資格や知識を活かせる職種であれば高く評価されるでしょう。

自分が取得した資格や培った知識を活かせる職種にはどのようなものがあるのかをリサーチし、その中から転職先を選ぶのもおすすめです。

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まとめ

若手人材を優先的に採用する企業が多いこともあり、34歳の転職は難しくなりがちです。しかし、念入りに準備を整えつつ自分の経験やスキルを活かせる職種を目指すのであれば、比較的有利に転職できます。

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