更新日:2025/07/31
この記事のまとめ
転職を考え始めたとき、多くの方が直面するのが「失業中の生活費」という現実的な問題です。失業保険がいくらもらえるか不安で、退職するか迷っている方もいるのではないでしょうか。失業保険の支給額は、自己都合か会社都合かだけでなく、年齢や雇用保険の加入期間、退職前の給与によっても異なります。
この記事では、失業保険の計算方法と自己都合・会社都合による違いを詳しく解説します。転職前の資金計画に役立つように、具体的にシミュレーションしてみましょう。
目次
失業保険(正式には雇用保険の基本手当)の金額は、退職前の給与や年齢、雇用期間、退職理由によって大きく変わります。ここでは、基本手当日額の算出方法から総支給額の計算方法まで、分かりやすく解説します。失業保険は単なる給付金ではなく、再就職活動を支援するための制度です。その仕組みを理解することで、退職後の生活設計に活かせるでしょう。
失業保険は、正式には「雇用保険の基本手当」という名称で、会社を離職した方が生活の心配をせずに再就職活動に専念できるように支給される給付金です。受給するには、いくつかの条件を満たす必要があります。
まずは、ハローワークに求職申込みをし、積極的に就職する意思と能力があるにもかかわらず、失業状態にあることが条件です。また、離職前2年間に被保険者期間が通算12ヵ月以上必要です。ただし、倒産・解雇といった理由で離職した場合、離職前1年間に6ヵ月以上あれば受給できます。
支給される金額は離職前の賃金を基に計算され、失業状態が続く間、年齢や離職理由に応じて決まる日数分(90日~360日)支給されます。失業保険はただもらえるものではなく、新しい仕事を探すための支援制度です。
基本手当日額とは失業保険の1日当たりの給付額で、離職前6ヵ月間の給与を180日で割った「賃金日額」に給付率(50%~80%)を掛けて算出します。基本手当には年齢別の上限額が設定されており、30歳未満は7,065円、30歳以上45歳未満は7,845円、45歳以上60歳未満は8,635円、60歳以上65歳未満は7,420円です。
たとえば、25歳で賃金日額が1万3,000円の場合、基本手当日額は1万3,000円×50%(給付率)=6,500円と算出されます。失業保険の金額を正確に知るには、ハローワークに問い合わせるのが確実です。なお、受給資格者証には基本手当日額が記載されているため、受け取ったら確認しましょう。
失業保険の総支給額は、基本手当日額に所定給付日数を掛けて求めます。1ヵ月当たりの受給金額は「基本手当日額×28日(最大)」です。
所定給付日数は、離職理由と年齢、雇用保険の被保険者期間によって大きく変わります。たとえば、自己都合退職の場合は90~150日、会社都合の場合は90~330日と差があります。45歳以上60歳未満で被保険者期間が20年以上の場合、会社都合(倒産・解雇など)だと330日分が支給される一方、自己都合では最大150日分です。
失業保険を受け取るには、一定の手続きと期間が必要です。まずは退職後、住所地を管轄するハローワークで「求職申込み」を行い、会社から交付された「離職票」を提出します。受給資格が確認されると、受給説明会の日時が通知され、「雇用保険受給資格者のしおり」が配布されます。
説明会では雇用保険制度の説明を受け、「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」を受け取りましょう。この時点で第1回目の「失業認定日」も通知されます。
離職票提出から7日間の「待機期間」が経過すると、受給資格が発生します。ただし、自己都合退職の場合、待機期間に加えて1ヵ月の給付制限期間があるため注意しましょう。会社都合(解雇・定年・契約満了など)の場合は給付制限がなく、待機期間後すぐに受給可能です。
実際の支給は、4週間に1度の失業認定日に「失業認定申告書」と「雇用保険受給資格者証」を提出し、失業状態と求職活動実績が確認された後に行われます。このため、退職してから最初の失業保険を受け取るまでには通常1ヵ月〜2ヵ月かかります。
失業保険の受給において、自己都合と会社都合の退職では給付内容に大きな違いがあります。給付制限期間や給付日数、受け取れる総額にも明確な差が生じるため、どちらの区分に該当するかによる経済的な影響は少なくありません。ここでは、自己都合と会社都合による失業保険の違いについて「判断基準」「給付制限期間」「給付日数」の3つの観点から詳しく解説します。
自己都合と会社都合の区分は、失業保険の受給内容に大きな影響を与えます。会社都合と認められるケースは厚生労働省の基準で明確に定められており、倒産による離職と解雇による離職が存在します。
たとえば、事業所の廃止や移転による通勤困難、労働条件の著しい相違、賃金未払い、過度な時間外労働が会社都合として認められる理由です。自己都合でも、セクハラやパワハラといった特定理由がある場合、会社都合扱いになることがあります。会社都合の退職は給付制限がなく給付期間も長く設定されるため、退職理由が自己都合か会社都合かの判断は重要です。
会社都合による退職の場合、待機期間の7日間のみで、給付制限なしに失業保険を受給できます。一方、自己都合退職の場合、失業保険の受給には給付制限期間が設けられています。2025年4月の法改正により、給付制限期間は従来の2ヵ月から1ヵ月に短縮されました。これにより、7日間の待機期間後、約1ヵ月半で失業保険を受け取れます。
また、離職前1年以内に厚生労働省指定の教育訓練を受講した、もしくは離職後に受講している場合、自己都合退職でも給付制限が解除される特例も設けられました。これらの改正は転職活動中の経済的負担を軽減し、円滑なキャリア形成を支援する目的があります。
失業保険の給付日数は自己都合と会社都合で大きく異なります。自己都合の場合、被保険者期間によって給付日数が決まり、10年未満は90日、10年以上20年未満は120日、20年以上は150日です。
一方、会社都合の場合は年齢と被保険者期間の両方を考慮し、最大330日まで受給できます。被保険者期間が20年以上のケースでは、35歳以上45歳未満が270日、45歳以上60歳未満が330日と、自己都合の約2倍の給付日数です。これは同じ失業状態でも、会社都合のほうが再就職に時間がかかると想定されているためです。特に子育て世代の30代〜50代は手厚く保護されており、経済的な安心感が大きいといえるでしょう。
失業保険の受給額について具体的なイメージを持つために、代表的な年収パターン別のシミュレーション事例を見てみましょう。年収300万円の場合、年収500万円の場合、パート・アルバイトといった非正規雇用の場合における失業保険の受給総額を計算例とともに解説します。具体的な金額と計算方法を通して、失業保険がいくらもらえるか確認しましょう。
なお、実際の受給額は細かな条件で変動する可能性があるため、ハローワークで正確な金額を確認することをおすすめします。
年収300万円の場合の失業保険受給額をシミュレーションしましょう。年齢は29歳、被保険者期間が5年以上10年未満の方を例に計算します。
退職前6ヵ月間の賃金総額が150万円とすると、賃金日額は150万円÷180日=8,333円です。これに給付率68%を掛けると、基本手当日額は5,634円と算出されます。
所定給付日数は自己都合退職の場合の90日間で、総支給額は5,634円×90日=50万7,060円、会社都合退職の場合は120日間で、総支給額は5,634円×120日=67万6,080円です。同じ年収300万円でも、離職理由によって受給総額に約17万円もの差が生じます。
年収500万円の場合も同様に具体的な計算例で見てみましょう。年齢が30歳、被保険者期間が5年以上10年未満の方を想定します。
退職前6ヵ月間の賃金総額を250万円とすると、賃金日額は250万円÷180日=1万3,888円です。これに給付率の50%を掛けると、基本手当日額は6,944円と求められます。
所定給付日数は自己都合退職の場合は90日間で、総支給額は6,944円×90日=62万4,960円です。会社都合退職の場合は180日間で、総支給額は6,944円×180日=124万9,920円と、離職理由によって2倍もの差があります。この差額は再就職活動期間の生活設計に大きな影響を与えるため、退職を検討する際は慎重に判断することが重要です。
パートやアルバイトなどの非正規雇用者でも、雇用保険に加入していれば失業保険を受け取れます。加入条件は「所定労働時間が週20時間以上で、31日以上の雇用見込みがある」ことです。
計算方法は正規雇用と同じで、退職前6ヵ月間の賃金総額から算出します。退職前6ヵ月の賃金総額が54万円、年齢が30歳、被保険者期間が1年以上5年未満の場合、賃金日額は54万円÷180日=3,000円です。これに給付率80%を掛けると、基本手当日額は2,400円と算出されます。
所定給付日数は自己都合退職の場合は90日間で21万6,000円、会社都合退職の場合は120日間で28万8,000万円です。このように、1週間の労働時間が短い非正規雇用者も、条件を満たせば十分な支援を受けられます。
失業保険を最大限に活用するには、制度の細かい運用ルールを知ることが重要です。ここでは、実際に受給する際に直面するかもしれない状況への対処法や知っておくと得をする情報を紹介します。これらの知識を身につければ、失業保険をより効果的に活用でき、次の就職までの期間を経済的に安定して過ごせるでしょう。
失業認定日は失業保険を受給するための重要な日です。この日に行けない場合、事前にハローワークへ連絡しましょう。体調不良やけが、冠婚葬祭といったやむを得ない理由があれば、日程変更が認められることがあります。無断で欠席すると、その期間の基本手当が支給されなくなるリスクがあるため注意が必要です。
連絡する際は、氏名、支給番号、行けない理由、連絡先電話番号を伝えます。事前連絡と事後連絡では対応が異なり、事前の方がスムーズに進むでしょう。ただし、旅行やレジャーのように日程変更が可能な予定の場合、ハローワークへの訪問を優先することが求められます。
失業保険受給中でもアルバイトは可能ですが、一定の条件を満たす必要があります。週20時間未満で、31日未満の雇用が条件です。これを超えると雇用保険に加入することになり、失業状態ではないと判断されます。
アルバイト収入はハローワークに申告する義務があるため、注意しましょう。収入によって失業保険の給付額が調整され、アルバイト収入と基本手当日額の合計が賃金日額の80%を超えると減額されます。
また、1日4時間以上のアルバイトをした日は失業保険の支給が先送りになります。申告を怠ると不正受給と見なされ、返還や罰則の対象となる恐れがあるため、正確な報告を心がけましょう。
早期に再就職が決まった場合、「再就職手当」が受け取れる可能性があります。これは、基本手当の受給資格を持つ方が所定給付日数を残して安定した職業に就いたときに給付金が支給される制度です。
給付額は基本手当の支給残日数に応じて異なります。所定給付日数の3分の2以上残して再就職した場合は残日数の70%、3分の1以上残して再就職した場合は60%の金額です。
早期に再就職して再就職手当を受け取ることで、再就職先の給与と合わせた金額が失業保険より多くなるケースもあるため、積極的な就職活動を後押しする意味合いがあります。ただし、離職前の事業主に再就職した場合は対象外となるため、詳細な条件を確認することが大切です。
再就職手当は、ハローワーク経由の就職だけでなく転職エージェントを通じた就職でも受給できます。自己都合退職の場合、待機期間後1ヵ月間はハローワークか職業紹介事業者の紹介による就職のみが条件ですが、転職エージェントは職業紹介事業者に該当します。そのため、待機期間満了後に就職が決まれば、会社都合・自己都合退職にかかわらず再就職手当の対象です。
転職エージェントを活用すれば、キャリアアドバイザーによる求人紹介や選考対策など手厚いサポートを受けながら再就職手当も確保できるため、効率的な転職活動が実現できます。
失業保険(雇用保険の基本手当)の給付額は、離職前6ヵ月の賃金から算出される基本手当日額と所定給付日数によって決まります。自己都合退職と会社都合退職は給付制限期間と給付日数に差があり、最初に支給される時期だけでなく、最終的にいくらもらえるかという総支給額が異なります。
失業保険を最大限に活用するなら、受給期間中に計画的な転職活動を行うことが重要です。特に再就職手当を受け取るには、職業紹介事業者に該当する転職エージェントを利用するとよいでしょう。
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