更新日:2025/04/23
この記事のまとめ
転職する際は、自分の退職理由が「会社都合退職」「自己都合退職」のどちらに該当するのかを知っておくことが大切です。同じ退職でも、失業保険の受給条件や履歴書の記載の仕方が異なるためです。
また、会社都合退職と自己都合退職のいずれにしても、転職を成功させるためには入念な準備と計画が欠かせません。
この記事では、「会社都合退職」「自己都合退職」の特徴や違い、双方のメリット・デメリット、転職を有利に進めるポイントを紹介します。安心して次のキャリアをスタートさせるためにも、ぜひ参考にしてみてください。
目次
退職には大きく分けて会社都合退職と自己都合退職がありますが、同じ「退職」であっても意味合いは大きく異なります。特に、退職後の失業手当や給付金に関する制度が大きく異なるため、どちらに該当するのかを理解することが重要です。ここでは、両者の違いを解説します。
「会社都合退職」とは、自分の意思とは関係のない会社都合による退職のことです。業績悪化による人員整理や経営破綻など、一方的に会社から労働契約を解除される場合が当てはまります。
また、会社からの退職勧奨や希望退職に応じた場合、勤務地の移転により通勤できなくなった場合なども会社都合退職です。そのほか、ハラスメント被害などによる退職も本人の働きたい意思に反しているため会社都合退職に含まれます。
会社都合退職の場合は、「再就職の準備をする時間的余裕がない離職」であることから、特定受給資格者に該当します。
参考:特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準|厚生労働省
自己都合退職とは、労働者が自らの意思で会社を退職することを指します。これは、個人的な理由に基づく退職であり、会社の都合や指示によるものではありません。たとえば、「キャリアアップのための転職」「結婚や育児による退職」「健康事情により仕事を続けられなくなった」などが挙げられます。
どのような理由が会社都合退職に該当するのかを紹介します。明らかに会社都合退職であると判断しやすいものもあれば、自己都合退職と勘違いしやすいものもあるため注意が必要です。また、解雇のような、状況によっては自己都合退職にも会社都合退職にもなり得る理由もあります。
会社の業績悪化により退職を余儀なくされた場合、あるいは倒産した場合は会社都合退職です。なお倒産に関しては、破産だけでなく民事再生を受けた場合や、会社更生などの各倒産手続の申し立てを行った場合も対象です。
会社のオフィスが移転し、通勤が困難となった場合の離職は会社都合退職に該当します。会社の移転は企業側の都合であるためです。反対に、自身の引っ越しにより通勤が困難になった場合は、会社都合ではなく自己都合退職とされるため注意しましょう。
賃金の未払いや不当な賃下げにより退職した場合は会社都合退職に該当します。未払いとは、退職手当を除く「賃金の3分の1」を超える金額が期日までに支払われない月が連続2ヵ月以上、または離職直前6ヵ月の間に3ヵ月あった状態のことです。
不当な賃下げは支払われていた賃金の85%未満に低下した場合、または低下する予定がある場合が該当します。ただし、労働者側が低下の事実について予見し得なかったケースに限ります。
事業主から直接、もしくは間接的に退職勧奨されて退職するときは会社都合退職です。ただし、会社が従来から「早期退職優遇制度」などを設置しており、優遇制度に応募した場合は会社都合退職としては扱われず、自己都合退職に該当します。
上司や同僚からの嫌がらせやハラスメントを受けたために退職した場合も、会社都合退職に該当します。この場合は、都道府県労働局への相談が解決の一助となることがあります。
労働局はハラスメントをはじめ、あらゆる分野の労働問題を対象にしており、プライバシーが配慮された状態で相談可能です。勤務先の職場で働き続けたいと思っている場合は、転職を検討する前に労働局に相談してみましょう。
人員整理などによる解雇は労働者側に原因がないため、会社都合退職です。一方、労働者側に著しい落ち度があり解雇された場合は自己都合退職になるケースがあります。
具体的には、着服などの不正、遅刻や無断欠勤、職場の風紀や規律を乱す行動、そのほか就業規則において懲戒処分の対象となり得る問題を起こした場合です。処分の理由に納得できない場合や不当な処分の可能性がある場合は、企業側に詳しい説明を求めましょう。
「特定理由離職者」とは、自己都合退職ながらやむを得ない事情を抱えていることから、保護が必要と思われる離職者のことです。「特定理由離職者」に該当すると、会社都合退職における「特定受給資格者」とほぼ同等の扱いを受けられます。特定理由離職者に該当する範囲は、次の2つです。
有期労働契約を締結していて契約更新の可能性はあるものの、確実ではない場合が該当します。契約更新はしないことが明確な場合や本人が契約更新を希望しない場合は雇い止めには該当しません。
厚生労働省では、「正当な理由」として以下を挙げています。
ただし、これら正当な理由のある自己都合退職に該当する場合であっても、失業給付金の給付日数は自己都合退職の場合と同じです。なお、被保険者期間が1年未満の場合は失業給付金の所定給付日数は90日間です。詳しくは以下をご確認ください。
参照:特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準|厚生労働省
特定理由離職者に該当するか否かは、会社ではなくハローワークまたは地方運輸局が判断します。申し入れがない場合は自己都合退職として処理されるため、該当する可能性がある場合は具体的な退職理由を申し出ましょう。
その際、ハローワークからは判断材料として必要書類の提出を求められます。なお、特定理由離職者に該当させるために離職票に虚偽を記載することは法律違反です。
会社都合退職は、労働者にとって経済的な影響やキャリアプランに大きな変化をもたらす可能性があります。具体的には、失業手当の受給条件や再就職活動のサポートなど、会社都合退職ならではの利点もあれば、反対に新たな仕事を見つける際に直面する課題もあります。ここで紹介する、会社都合退職のメリットとデメリットを押さえておきましょう。
自己都合退職では通常、待機期間が7日間あり、その後一定期間の給付制限期間があります。しかし、会社都合退職では給付制限がなく、最短7日間の待機期間を経れば失業給付金を受給できます。
また給付金の支給日数は90日~330日で、自己都合退職よりも長期間受給可能です。これにより、経済的な不安を早期に解消でき、金銭的に困窮している場合には大きな助けになります。
労働者を解雇する際には、30日以上前に解雇を予告する必要があり、予告をしない場合にはその分の給与を支払わなければなりません。解雇予告手当は予告期間に相当する給与であり、予告なしの即日解雇であれば30日分の手当を受け取れます。
デメリットは、転職時に面接官からの質問事項が増える可能性があることです。会社都合退職の場合、履歴書には「会社都合による退職」と記載します。会社の倒産などで理由が明白な場合は多くを追及されませんが、「退職勧奨」の場合はその理由を深く聞かれる場合があります。
「会社に不利益をもたらした」「実力や能力不足」「人間関係のトラブル」などが原因で退職勧奨を受け、会社都合退職となった場合は、転職で不利になる可能性も少なくありません。そのため、会社都合退職の場合は転職活動で採用担当者にネガティブな印象を与えないよう、退職理由の伝え方に工夫する必要があります。
「新しい仕事がしたい」「いまの仕事に不満がある」など、労働者の自由な意思で退職できる自己都合退職にはメリット・デメリットがあります。転職を検討している場合には、ここで紹介する内容をしっかりと理解し、慎重に判断しましょう。
自己都合退職の場合、履歴書には「一身上の都合」と記載します。面接では、この「一身上の都合」に対して深く追及されないことがほとんどです。自己都合による退職の理由は人それぞれですが、中には話しにくい事情を抱えているケースもあるでしょう。ただし、あまりにも転職回数が多い場合や短期間での退職の場合は、退職理由を聞かれる可能性があります。
自己都合退職は、転職活動において自身のキャリアプランや目標に沿った選択であるとアピールしやすい点が大きなメリットです。たとえば、「やりたい仕事があって転職した」「魅力的な事業内容の求人を見つけて応募した」といったように退職理由を伝えれば、採用担当者にポジティブな印象を与えられます。
デメリットは、失業給付金をすぐに受け取ることができない点と退職金が減額される点です。失業給付金を受け取るには、退職理由を問わず「待機期間」として7日間待つ必要があります。
会社都合退職の場合は待機期間後すぐに受給できますが、自己都合退職の場合は「給付制限」と呼ばれる期間が1ヵ月~3ヵ月間発生します。また、給付期間が90日~150日と会社都合退職に比べると短い点もデメリットです。
企業によって異なるものの、退職金は会社都合退職よりも自己都合退職のほうが減額されるケースが多い点にも注意が必要です。具体的な条件や支給金額は就業規則を確認しましょう。
ここからは、会社都合・自己都合で退職するときの流れを解説します。退職までにやらなければならないことや必要書類、雇用保険の手続きを詳しく見ていきましょう。まずは自分の退職理由が会社都合・自己都合のどちらに該当するのか考えたうえで、具体的な退職フローを確認することをおすすめします。
業績悪化などを理由とする解雇は会社都合退職に該当し、基本的には30日以上前に労働者に通知されます。一方、自己都合で退職する場合は企業に対して退職届を提出する形が一般的です。退職届は企業に到達した時点で効力が発生する退職の意思表示で、一度提出したら撤回できない点に注意しましょう。
退職するときには、会社からいくつかの書類を受け取ります。転職や雇用保険関連の手続きに必要なものもあるため、以下の書類を受け取ったか忘れずに確認しましょう。
上記のうち、離職票と雇用保険被保険者証は雇用保険関連の手続きに、源泉徴収票は税金の申告に使用します。これらの書類以外にも、会社によっては基礎年金番号通知書や機密保持契約書などを受け取ることもあります。もし、意図が分からない書類を受け取ったときは会社側に問い合わせて確認しましょう。
実際に退職するまでの流れと必要な準備を詳しく見ていきましょう。在職中に転職活動を進めるケースにおける基本的な流れは以下のとおりです。
一口に退職の手続きといっても、やることはさまざまです。退職までの時間が限られているケースでは、準備をスピーディーに進める必要があるでしょう。
退職日から起算して2年以内に12ヵ月以上雇用保険に加入している場合、失業給付金を受給できます。受給までの流れは以下のとおりです。
受給開始までにかかる時間は会社都合退職では最短7日、自己都合退職では最短1ヵ月と7日です。なお、「雇用保険法等の一部を改正する法律」(令和6年法律第26号)の施行によって、令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合は、給付制限が解除されます。受給できる期間は状況によって異なるものの、会社都合退職のほうが長くなるケースが一般的です。
参考:雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要|厚生労働省
転職活動は単なる職場の変更ではなく、自身のキャリアを向上させる絶好の機会です。しかし、計画なしに転職活動を進めると、希望に合わない職場を選んでしまうリスクもあります。そこでここでは、転職を有利に進めるために押さえておきたい7つのポイントを紹介します。
なお、以下で紹介する内容は、自己都合退職か会社都合退職かにかかわらず役立つ情報であるため、ぜひ参考にしてみてください。
転職を機に、自身のキャリアプランを見直すことをおすすめします。キャリアプランとは、将来の目標を明確にし、それを達成するための道筋を立てることです。キャリアプランを立てることで、自分がどのような仕事をしたいのか、どの業界・職種で成長したいのかが明確になります。これにより、求人を選ぶ際の軸ができ、目先の条件だけでなく長期的な視点で適した転職先を選べます。
また、キャリアプランを立てることで、転職後のミスマッチを防ぎやすくなる点もメリットです。転職後に「思っていた仕事と違った」と感じることは少なくありません。しかし、事前に自身の目標や優先順位を整理しておけば、理想と現実のギャップを埋められ、長期的なキャリア形成につながります。
転職活動では、自分の強みを理解し、それを適切にアピールすることが重要です。強みを見つけるためには、自己分析をして、過去の経験やスキルを整理する必要があります。
たとえば、「前職でどのような成果を上げたか」「どのようなスキルを身につけたか」を振り返ることで、自分の強みを明確にできます。そして、転職先の企業に対して「自分がどのように貢献できるか」を具体的に伝えることが可能です。
また、自分の強みを知ることは、適切な職種や業界を選ぶ際の判断材料にもなります。自分のスキルや特性を活かせる仕事を選ぶことで、転職後に活躍しやすくなり、長く働ける職場を見つけやすくなります。
転職を成功させるには、企業研究が欠かせません。企業の理念、事業内容、職場環境を事前に理解しておくことで、入社後のギャップを最小限に抑えられます。まず、企業の公式サイトや採用ページをチェックし、事業内容や企業のビジョンを把握しましょう。次に、口コミサイトやSNSを活用し、実際に働いている人の声を確認するのも有効です。
企業研究を徹底することで、面接時の質問に対して的確な回答ができるようになるだけでなく、面接官に熱意を伝えられます。企業に対する理解が深いほど、自分の志望動機を明確に伝えられ、採用担当者にも好印象を与えられるでしょう。
転職活動をスムーズに進めるためには、1社だけに応募するのではなく、複数の企業に応募することが重要です。転職活動は思いどおりに進まないことも多く、1社だけに絞ってしまうと不採用だった場合に再び一からやり直さなければなりません。一方で、複数の企業に応募しておけば、同時進行で選考を進められ、より多くのチャンスを得られます。
また、複数の企業を比較することで、それぞれの企業の特徴や条件を客観的に評価しやすくなる点もポイントです。結果として、自分に合った職場を見つけられ、満足度の高い転職につながります。
自分の強みや熱意を採用担当者にアピールするためには、選考対策は欠かせません。選考対策を万全にすることで、選考通過の可能性を高められます。特に以下の点を押さえておくとよいでしょう。
業界や職種に関連する資格を持っていると、専門的なスキルを有していることを客観的に証明でき、企業に強いアピールが可能です。たとえば、IT業界では「基本情報技術者試験」「応用情報技術者試験」、事務職では「簿記検定」「秘書検定」、英語を使う仕事を希望する場合は「英検」などの資格を持っていると、採用担当者の目に留まりやすくなります。
資格取得には時間がかかりますが、取得を目指して勉強している段階でも履歴書に記載できます。そのため、転職活動と併行して資格取得を目指すのもよいでしょう。
転職エージェントは非公開求人を扱っており、一般の求人サイトでは見つけられないような優良求人に出会える可能性があります。企業側も、転職エージェントを通じて質の高い人材を確保しようと考えているため、好条件の求人が多いのが特徴です。
また、転職エージェントでは履歴書や職務経歴書の添削を行い、より魅力的な応募書類に仕上げるサポートも行ってくれます。さらに、面接対策のサポートも受けられるため、より自信を持って面接に臨めるようになる点もメリットです。
会社都合退職と自己都合退職に関して、まだ気になる点や不安な点がある方も多いのではないでしょうか。安心感を持って転職活動を進めるためにも、事前に疑問や不安は解消しておきましょう。ここでは、会社都合退職と自己都合退職に関するよくある質問を4つピックアップして紹介します。
退職理由が会社都合と自己都合のどちらに該当するかを最終的に判断するのはハローワークです。会社から交付される離職票には退職理由が記載されているものの、そのとおりにハローワークが決定するとは限りません。
自分の退職理由がどちらに該当するか判断できず悩んでいるときは、一度ハローワークに相談することをおすすめします。離職票に記載されている退職理由がおかしいと感じるときも同様です。
状況によっては、会社から自己都合退職を求められるケースがあります。明らかに自己都合退職であると判断できない状況の場合は、会社都合退職と自己都合退職のメリット・デメリットを比較・検討して判断しましょう。
基本的に、退職金や失業給付金の受給に関しては会社都合退職のほうが有利です。一方で転職活動における選考では、会社都合退職になると理由を深掘りされるリスクが高まります。自分が何を重視するかをよく考え、受け入れるかどうかを判断しましょう。
会社都合退職に該当する可能性が考えられる状況で自己都合退職を望んでいない場合は、きちんと断り、会社都合に変更するよう要求しましょう。
望んでいないにもかかわらず、自己都合退職と記載された離職票を受け取ってしまったときは、ハローワークに異議を申し立てるとよいでしょう。退職理由を最終的に判断するのはハローワークの仕事であるためです。
異議を申し立てた場合、ハローワークの担当者は契約内容や就業記録、退職理由などを総合的に精査し、自己都合・会社都合退職のどちらに該当するかを判断します。会社都合退職に変更したいときは、雇用契約書や出勤簿のコピー、解雇予告通知書などの証拠を提出しましょう。
会社都合退職の場合、選考に影響するのではないかと不安に感じている方もいるでしょう。業績悪化による倒産やリストラ、移転などが原因による退職の場合は選考への影響はないといえます。業績は会社の責任であり、社員に非はないためです。移転した場合も同様といえるでしょう。
一方、業務上の不正などが原因による懲戒解雇や諭旨解雇処分の場合は、選考に影響する可能性があります。採用担当者が詳しい理由を知らないとしても、何らかの問題があって解雇されたのではないかと予想できるためです。
マイナビエージェントを利用すると、転職先の紹介や転職サポートだけでなく、退職に関するサポートも受けられます。退職交渉の代行やスケジュール調整などを依頼できるため、転職に伴う負担を大幅に軽減できるでしょう。
ひとりで転職活動や退職の準備を進めるのが難しいと感じている方は、ぜひマイナビエージェントにご相談ください。プロのキャリアアドバイザーへの相談は、スムーズな転職の実現につながります。
会社都合退職とは、会社の業績悪化や退職勧奨に応じた退職など、自分の意思とは関係のない会社都合による退職のことです。一方、自己都合退職は、引っ越しや結婚、転職など、自分の意思で退職することを指します。いずれの退職理由であっても、転職を成功させるためには入念な準備と計画が欠かせません。
転職に関する不安のある方、転職活動のサポートを受けたい方は、マイナビエージェントにご相談ください。転職ノウハウに精通したキャリアアドバイザーが、あなたの希望条件やスキルに合った求人を紹介します。相談のみの利用も可能なので、まずはお気軽にお問い合わせください。
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