更新日:2023/10/19
この記事のまとめ
一般的に、退職理由は大きく「会社都合退職」と「自己都合退職」の2種類に分けられます。自分の退職理由がどちらに該当するかによって、雇用保険上の扱いなどが異なります。
中には自分の退職理由が会社都合と自己都合のどちらに該当するのかが分からずに悩んでいる方もいるのではないでしょうか。そこでこの記事では、会社都合退職に該当するケースや自己都合退職との違い、会社都合・自己都合退職のメリット・デメリットについて解説します。
それぞれの違いを明確に理解しておけば、雇用保険の手続きや転職用の応募書類作成時に迷わずに済むでしょう。
目次
「会社都合退職」とは、自分の意思とは関係のない会社都合による退職のことです。業績悪化による人員整理や経営破綻など、一方的に会社から労働契約を解除される場合が当てはまります。
また、会社からの退職勧奨や希望退職に応じた場合、勤務地の移転により通勤できなくなった場合なども会社都合退職です。そのほか、ハラスメント被害などによる退職も本人の働きたい意思に反しているため会社都合退職に該当します。
会社都合退職と自己都合退職の違いはどこにあるのでしょうか。それぞれのメリット・デメリットを解説します。雇用保険関連の制度や退職金の扱いなどに差が出るため、きちんと理解しておきましょう。
会社都合退職のメリットは、失業給付金の支給タイミングが早いことです。最短7日間の待機期間を経れば失業給付金を受給できます。また給付金の支給日数は90日から最大330日となっており、自己都合退職よりも長期間受給可能です。
デメリットは、転職時に面接官からの質問事項が増える可能性があることです。会社都合退職の場合、履歴書には「会社都合による退職」と記載します。会社の倒産などで理由が明白な場合は多くを追求されませんが、「退職勧奨」の場合はその理由を深く聞かれる場合があります。就労時のトラブルや個人の業績などを質問されることもあり、より慎重な面接対策が必要です。
自己都合退職とは、引っ越しや結婚、転職など自身の都合によって退職することです。自己都合退職の場合、履歴書には「一身上の都合」と記載します。在職期間が短い場合や転職回数が極端に多いなどの場合を除き、会社都合退職と比較すると退職理由を深く追求されないことがメリットです。
一方、デメリットは失業給付金をすぐに受け取れない点と退職金が減額される点です。失業給付金を受け取るには、退職理由を問わず「待機期間」として7日間待つ必要があります。会社都合退職の場合は待機期間後すぐに受給できますが、自己都合退職の場合は「給付制限」と呼ばれる期間が2ヵ月、または3ヵ月間発生します。また、給付期間が90日から最大で150日と会社都合退職に比べると短い点もデメリットです。
企業によって異なるものの、退職金は会社都合退職よりも自己都合退職のほうが減額されるケースが多い点にも注意が必要です。具体的な条件や支給金額は就業規則を確認しましょう。
どのような理由が会社都合退職に該当するかを紹介します。明らかに会社都合退職であると判断しやすいものもあれば、自己都合退職と勘違いしやすいものもあるため注意が必要です。さらに、解雇など状況によって自己都合退職にも会社都合退職にもなり得る理由もあります。
会社の業績悪化により退職を余儀なくされた場合、また倒産した場合は会社都合退職です。なお倒産に関しては、破産だけでなく民事再生を受けた場合、会社更生などの各倒産手続の申し立てを行った場合も対象です。
会社のオフィスが移転し通勤が困難となった場合の離職は会社都合退職です。会社の移転は企業側の都合であるためです。逆に、自身の引っ越しにより通勤が困難になった場合は会社都合ではなく自己都合退職とされるため注意しましょう。
賃金の未払いや不当な賃下げにより退職した場合は会社都合退職です。
未払いとは、退職手当を除く「賃金の3分の1」を超える金額が期日までに支払われない月が連続2ヵ月以上、または離職直前6ヵ月の間に3ヵ月あった場合を指します。
不当な賃下げは支払われていた賃金の85%未満に低下した場合、または低下する予定がある場合が該当します。ただし、労働者側が低下の事実について予見し得なかったケースに限ります。
事業主から直接、もしくは間接的に退職勧奨されて退職するときは会社都合退職です。ただし、会社が従来から「早期退職優遇制度」などを設置していて、優遇制度に応募した場合は会社都合退職としては扱われず、自己都合退職に該当します。
上司や同僚からの嫌がらせやハラスメントを受けたために退職した場合も、会社都合退職に該当します。この場合は、都道府県労働局への相談が解決の一助となることがあります。
労働局はハラスメントをはじめあらゆる分野の労働問題を対象にしており、プライバシーが配慮された状態で相談可能です。勤務先の職場で働き続けたいと思っている場合は、転職を検討する前に労働局に相談してみましょう。
人員整理などによる解雇は労働者側に原因がないため、会社都合退職です。一方、従業員に著しい落ち度があり解雇された場合は自己都合退職になるケースがあります。
着服などの不正、遅刻や無断欠勤、職場の風紀や規律を乱す行動、そのほか就業規則において懲戒処分の対象となり得る問題を起こした場合は上記に該当します。処分の理由に納得できない場合や不当な処分の可能性がある場合などは、企業に詳しい説明を求めましょう。
ここからは、会社都合・自己都合で退職するときの流れを解説します。退職までにやらなければならないことや必要書類、雇用保険の手続きを詳しく見ていきましょう。まずは自分の退職理由が会社都合・自己都合のどちらに該当するのか考えたうえで、具体的な退職フローを確認することをおすすめします。
業績悪化などを理由とする解雇は会社都合退職に該当し、基本的には30日以上前に労働者に通知されます。
何らかの理由で30日以上前に通知できないときは、解雇予告手当を支払う必要があります。解雇予告手当は30日分以上の平均賃金とされており、30日に満たない日数分の支払いが必要です。一例として、退職日の25日前に通知したときは、不足している5日分に相当する退職予告手当を支払います。
一方、自己都合で退職する場合は企業に対して退職届を提出する形が一般的です。退職届は企業に到達した時点で効力が発生する退職の意思表示で、一度提出したら撤回できない点に注意しましょう。
退職するときには、会社からいくつかの書類を受け取ります。転職や雇用保険関連の手続きに必要なものもあるため、以下の書類を受け取ったか忘れずに確認しましょう。
上記のうち、離職票と雇用保険被保険者証は雇用保険関連の手続きに、源泉徴収票は税金の申告に使用します。
これらの書類以外にも、会社によっては基礎年金番号通知書や機密保持契約書などを受け取ることもあります。もし、意図が分からない書類を受け取ったときは会社側に問い合わせて確認しましょう。
実際に退職するまでの流れと必要な準備を詳しく見ていきましょう。在職中に転職活動を進めるケースにおける基本的な流れは以下のとおりです。
一口に退職の手続きといっても、やるべきことはさまざまです。退職までの時間が限られているケースでは、準備をスピーディーに進める必要があるでしょう。
退職日から起算して2年以内に12ヵ月以上雇用保険に加入している場合、失業給付金を受給できます。受給までの流れは以下のとおりです。
受給開始までにかかる時間は会社都合退職では最短7日、自己都合退職では最短2ヵ月と7日です。受給できる期間は状況によって異なるものの、会社都合退職のほうが長くなるケースが一般的です。
会社都合退職の場合、選考に影響するのではないかと不安に感じている方もいるのではないでしょうか。
業績悪化による倒産やリストラ、移転などが原因による退職の場合は選考への影響はないといえます。業績は会社の責任であり、社員に非はないためです。移転した場合も同様といえるでしょう。
一方、業務上の不正などが原因による懲戒解雇や諭旨解雇処分の場合は、選考に影響する可能性があります。採用担当者が詳しい理由を知らないとしても、何らかの問題があって解雇されたのではないかと予想できるためです。
退職理由によっては、会社都合と自己都合のどちらに該当するのかが分かりにくいケースがあります。そのような状況の場合、退職理由はどのように決まるのでしょうか。
ここでは、退職理由の決まり方と異議がある場合の対処法を紹介します。理由によっては自己都合退職から会社都合退職へ変更できることもあるため、事前にチェックしておきましょう。
退職理由が会社都合と自己都合のどちらに該当するかを最終的に判断するのはハローワークです。会社から交付される離職票には退職理由が記載されているものの、そのとおりにハローワークが決定するとは限りません。
自分の退職理由がどちらに該当するか判断できず悩んでいるときは、一度ハローワークに相談することをおすすめします。離職票に記載されている退職理由がおかしいと感じるときも同様です。
状況によっては、会社から自己都合退職を求められるケースがあります。明らかに自己都合退職であると判断できない状況で上記のように求められた場合は、メリット・デメリットの双方を比較・検討して判断することが大切です。
基本的に、退職金や失業給付金の受給に関しては会社都合退職のほうが有利です。一方で転職活動における選考では、会社都合退職になると理由を深掘りされるリスクが高まります。自分が何を重視するかをよく考え、受け入れるかどうかを判断しましょう。
会社都合退職に該当する可能性が考えられる状況で自己都合退職を望んでいない場合は明確に断り、会社都合に変更するよう要求しましょう。
望んでいないにもかかわらず自己都合退職と記載された離職票を受け取って交渉できなかったときは、ハローワークに異議を申し立てるとよいでしょう。退職理由を最終的に判断するのはハローワークの仕事であるためです。
異議を申し立てた場合、ハローワークの担当者は契約内容や就業記録、退職理由などを総合的に精査し、自己都合・会社都合退職のどちらに該当するかを判断します。会社都合退職に変更したいときは、雇用契約書や出勤簿のコピー、解雇予告通知書などの証拠を提出しましょう。
「特定理由離職者」とは、自己都合退職ながらやむを得ない事情を抱えており、保護が必要と思われる離職者のことです。「特定理由離職者」に該当すると、会社都合退職における「特定受給資格者」とほぼ同等の扱いを受けられます。特定理由離職者に該当する範囲は、次の2つです。
有期労働契約を締結していて契約更新の可能性はあるものの、確実ではない場合が該当します。契約更新はしないことが明確な場合や本人が契約更新を希望しない場合は雇い止めには該当しません。
厚生労働省では「正当な理由」として以下を挙げています。
ただし、これら正当な理由のある自己都合退職に該当する場合であっても、失業給付金の給付日数は自己都合退職の場合と同じです。なお、被保険者期間が1年未満の場合は失業給付金の所定給付日数は90日間です。詳しくは以下をご確認ください。
特定理由離職者に該当するか否かは、会社ではなくハローワークまたは地方運輸局が判断します。申し入れがない場合は自己都合退職として処理されるため、該当する可能性がある場合は具体的な退職理由を申し出ましょう。
その際、ハローワークからは判断材料として必要書類の提出を求められます。なお、特定理由離職者に該当させるために離職票に虚偽を記載することは法律違反です。
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退職理由には会社都合退職と自己都合退職の2パターンがあり、ケースによってどちらに該当するか異なります。会社都合退職は雇用保険や退職金の面でメリットが大きいのが特徴です。
状況によっては会社都合退職に該当する可能性が高いにもかかわらず自己都合退職にすることを求められるケースがあるため、十分に注意しましょう。必要に応じてハローワークに相談することをおすすめします。
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