更新日:2021/12/22
退職理由を書く際におなじみのフレーズである「一身上の都合」は、定形句としてビジネスシーンで広く使われています。しかし、その意味を正しく理解できていない方も多いと思います。
本記事では、「一身上の都合」の意味や正しい使い方などをケース別に解説します。
目次
退職届や履歴書を書く際など、ビジネスシーンで利用される言葉に「一身上の都合」という言葉があります。具体的に述べたくない事情がある場合に便利な言葉で、意味を深く考えず定形句として用いている方もいるかもしれません。
しかし、退職理由や状況によっては「一身上の都合」を使うべきでないケースもあり、使用の際には注意が必要です。
そもそも「一身上の都合」とは本来どのような意味があるのでしょうか。
「一身上」の辞書的な意味は以下の通りです。
「その人自身の身の上や境遇に関すること。個人的な問題や事情」
具体的には転職や起業、結婚・出産、引越し、病気など、本人の個人的な事情だけでなく、配偶者の転勤に同行する場合や、親の介護など家族にまつわる事情でも使用できます。
また、日常生活において「一身上の都合で引っ越すことになりました」というような使い方をすることも珍しくありません。
「一身上の都合」の類義語として「私事」という言葉もありますが、ビジネスで使用する文書では「一身上の都合」を使用することが一般的なマナーとされています。
「一身上の都合」は以下の3つのシーンで使われるのが一般的です。
退職のとき
会社を退職する場合は、「一身上の都合」を臨機応変に使用する必要あります。
退職時に「一身上の都合」を使うのは、自己都合で退職する場合です。やりたい仕事が見つかったり、スキルアップを目的としたりする転職、結婚、介護、配偶者の転勤への同行など、個人の事情によって退職するときに使用します。
「会社の給与に不満がある」、「人間関係が悪かった」など否定的な理由で辞める場合でも、「一身上の都合」としておくのが無難です。
基本的に会社都合で退職する場合には「一身上の都合」を使うべきではありません。
たとえば、会社から解雇されたときや業績不振で会社が倒産したとき、有期の雇用契約において契約満了で退職したときなどです。本来は会社都合であるにもかかわらず履歴書に「一身上の都合により」と記載するのは不適切な使い方です。
他にも、事業所の移転などで通勤ができなくなった場合、会社が早期退職希望者を募り、それに応募して退職した場合、ハラスメントが原因で退職せざるをえなかった場合なども会社都合に該当するケースがあります。
また、退職理由が自己都合か会社都合なのかは、失業保険の受給開始日や給付期間に関わるため重要な情報です。自己都合による退職では、退職後ハローワークに離職票を提出してから失業保険が支給されるまで7日間の待機期間に加え、原則2ヶ月の給付制限期間が設けられています。
一方の会社都合の退職では、7日間の待機期間があることは自己都合の退職と変わりありませんが、給付制限がないため約1ヶ月程度で失業給付金が受け取れるのです。
ただし、会社都合の方が有利だからといって、本来は自己都合であるにもかかわらず、会社都合にするように交渉するのはNGです。退職理由に少しでも会社が関係している場合、ハローワークのホームページなどでどのようなケースが会社都合に該当するのか記載されていますので調べてみるといいでしょう。会社都合に該当する可能性があれば、会社に掛け合ったり、会社が認めてくれない場合は、ハローワークに異議申し立てをする、といった方法があります。
退職届を記入する際の「一身上の都合」の使用例としては、以下のようなパターンがあります。
「このたび、一身上の都合により、○○○○年○月○日をもって退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。」
「このたび、一身上の都合により、勝手ながら○○○○年○月○日をもって退職いたします。」
また退職願や退職届の書き方については下記記事で詳しくご紹介していますのでご覧ください。
一身上の都合は、転職先に提出する履歴書にも使えます。
自己都合による退社の場合「一身上の都合により退社」を記述すれば詳細は書かなくても問題ありません。会社都合で退職した場合には一身上の都合は使えないため「会社都合により退職」とします。
履歴書の具体的な書き方については下記をご覧ください。
就職活動や転職活動をしていて複数の企業から内定をもらい、内定を辞退するときにも「一身上の都合」が使えます。
一身上の都合で内定を辞退したい旨を電話などで相手企業に伝えれば、詳しい理由を話す必要はありません。
内定辞退の理由よりも、内定をもらっているにもかかわらず企業に何の連絡も入れないことの方が問題です。内定を辞退するつもりであれば、早い段階で連絡することが採用企業に対するマナーです。
退職の際、法律上は退職理由を正確に伝える義務はないため、会社に詮索されても、答えたくなければすべて「一身上の都合」でOKです。
ただし、「一身上の都合」とだけ伝えた場合、会社からは「本当の理由を言いたくないので察して欲しい」という風に受け取られる可能性もあり、会社によっては詳細な理由を聞かれる場合もあります。
円満退職を希望するのであれば「体調の問題」、「家庭の事情」など、「より具体的ではあるが無難な理由」を話した方が円滑に進む場合もあると考えておいてください。
転職活動の際、履歴書に記載する文言としては「一身上の都合」で問題ありませんが、面接時に前職の退職理由を聞かれる可能性は高いでしょう。
面接官はその質問によって長く働ける人物かどうかを判断材料の一つとすることもあるため、「一身上の都合で」のように退職理由を濁すのは避けた方が賢明です。「すぐに辞めそうだ」という印象をもたれないよう、ネガティブな理由での退職であったとしても前向きな理由を答えられるように準備しましょう。
「一身上の都合は」ビジネスシーンだけでなく日常生活においても幅広い事情を婉曲に表現できる便利なフレーズです。一般的には退職時に会社に伝える理由として知られていますが、会社都合による退職の場合は使用できないため注意しましょう。
また、転職面接などで具体的な退職理由を聞かれた場合、「一身上の都合で」と答えても問題はありませんが、面接官にマイナスイメージを与えてしまわないよう、肯定的な理由を伝えましょう。
「一身上の都合」という言葉は、退職理由を説明する際などに、直接的な言い回しを避けられる便利な言葉です。しかし、状況によっては使用が不適切となる場面もあるため、意味をきちんと把握した上で正しく使うようにしましょう。
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