更新日:2022/08/25
この記事のまとめ
長引く低金利政策や金融庁が発表した老後2,000万円問題から国民の金融リテラシーは高まり、投資や資産運用に関心のある方が増えました。そのような背景から、アセットマネジメントという言葉を耳にする機会も増えたのではないでしょうか。
そこでこの記事では、アセットマネジメント業界の特徴や業務内容について解説します。働くうえで必要なスキルも紹介しているので、転職を考えている方は参考にしてみてください。
目次
アセットマネジメント業界に転職を考えている方は、業界の特徴や現状を知ることが大切です。幅広い金融業界の中でも専門的な金融知識が求められる職種であるため、業界のことをよく知って転職活動に臨みましょう。ここでは、アセットマネジメント業界の特徴や現状について紹介します。
アセットマネジメントとは資産や財産を意味するアセット(asset)と 管理や経営を意味するマネジメント(management)を組み合わせた言葉で、個人投資家や機関投資家からお金を預かりさまざまな資産に投資する「投資信託」や投資家に対して助言や情報提供をする「投資顧問」により資産の管理・運用を代行する業界です。
オフィスやビルといった複数の不動産を購入するJ-RIETやデリバティブ商品が発展していく中で、投資先は多様化しています。
近年、資産運用に関心のある方が増えている影響でマーケットが好転し、金融のスペシャリストであるアセットマネジメント業界の求人も増加傾向です。
また、時代の変化に合わせた商品企画・開発の業務や営業先の拡大に必要な新規ポジションも増加しているため、企業も優秀な人材を確保したいと考えているでしょう。実際に、国内系外資系ともに大手企業を中心に求人が増えており、特にマネージャー・営業・不動産運用業務の求人が多い傾向があります。
アセットマネジメントには3つの部門があります。市場を分析して運用方針を決める「運用部門」、投資信託営業や機関投資家営業をする「営業部門」、営業のサポートやデータ管理といったオペレート業務を担当する「ミドル・バック部門」の3つです。ここでは、部門ごとの業務内容を詳しく解説します。
運用部門では中長期的な収益を上げることを目標に資産を運用します。運用責任者であるファンドマネージャーやポートフォリオマネージャーが中心となって、ファンド全般の運用を指揮し、最終的な投資判断や意思決定をします。
ほかにも、市場や銘柄を分析して投資判断の材料を提供するアナリストやマクロ経済を分析するエコノミスト、投資戦略を立案するストラテジストも資産運用には欠かせない存在です。投資戦略を立てたら、トレーダーが分析に基づいた適正な価格で取引します。
いずれも自分の分析や判断が数字となって表れるため、やりがいがある半面、プレッシャーに負けない精神的な強さが必要な仕事といえるでしょう。
アセットマネジメントにおける営業部門はクライアントサービス業務とも呼ばれ、投資信託営業と機関投資家営業の2種類があります。
投資信託営業は、証券会社や銀行へ個人投資家向けの資産運用サービスを提案・営業する業務です。ほかにも、顧客のニーズに合わせて新しい商品の開発や企画の立案、運用状況のレポート作成といった仕事があります。
機関投資家営業は、企業年金・公的年金・金融機関といった幅広い顧客に対して、サービスの特徴やメリットをプレゼンしたり販売資料を作成したりする業務です。企業によって業務内容に違いはありますが、営業から情報分析、電話応答まで幅広い業務をこなします。
ファンド運用責任者の投資判断に基づいて、売買手続きや資金決済、ファンドの管理をするのがミドル・バック部門です。主な業務には、リスクマネジメントや営業部門のサポート、プロジェクト管理があります。企業の業績や不正のチェック、内部管理や市場リスクを報告するリスクマネジメントは、健全な会社運営のためには欠かせない仕事です。
営業部門のサポートには、予期せぬトラブルへの対処や約定トレードのチェックがあります。プロジェクト管理は、営業目標達成のために戦略を立案して業務内容を改善するのが仕事です。ほかの部門同様に業務内容は幅広く、業務の正確性や専門的な金融知識が求められます。
アセットマネジメント業界では、PCスキル・分析力・語学力といったスキルが求められます。さらに、大手独立系の証券会社やメガバンクで運用業務に携わった経験があれば、高い金融知識を証明でき転職でも有利になるでしょう。ここでは、アセットマネジメント業界で求められる経験やスキルについて解説します。
アセットマネジメントの運用部門では金融・資産運用の専門的な知識を求められるため、証券アナリストの資格や金融機関の有価証券関連部門での実務経験が求められます。多くの企業では即戦力となる人材を求めており、株の銘柄やトレンドのチェック、企業の業績リサーチに素早く対応できる能力が必要です。
したがって、大手独立系の証券会社や銀行系証券会社でアナリスト業務や資産運用業務の経験があれば、転職でもアピールできます。また、営業部門やミドル・バック部門でも金融の知識は求められるため、証券アナリストや認定アセットマネージャー国際検定試験を取得するとよいでしょう。
営業部門で働く場合、ディスクロージャーや運用状況レポートのようなさまざまな資料を作成するため、PCを用いた資料作成スキルは欠かせません。特に、投資信託営業ではセミナーや勉強会で使う資料も必要です。ExcelやPowerPointの使い方は熟知しておいたほうがよいでしょう。
また、ミドルオフィス業務やバックオフィス業務でも、分析レポートやデータ管理といった事務作業をする際には一定以上のPCスキルが求められます。
ミドル・バック部門では、運用パフォーマンスの測定やリスク管理、各種データの管理ができる能力や分析力が求められます。特に、ファンド管理業務ではパフォーマンス計測や要因分析、リスク量の測定を細かく実施する必要があり、業務の正確性や分析力は大切なスキルです。
また、分析力はエコノミストやアナリストが在籍する運用業務においても重宝されます。投資の最終的な判断には、マクロ経済や市場の分析が必要であるためです。
海外に拠点を置いている企業や外資系企業では一定以上の語学力が求められます。特に、営業やプロダクトスペシャリストは顧客と密にやり取りするため、ビジネスで使えるレベルの英語力は欠かせません。英語力を証明するために、TOEICで800点以上、TOEFLは90点以上程度のスコアを取得するのがおすすめです。
また、語学力と同時にコミュニケーションスキルも求められます。ミドル・バック部門でも海外の担当者と電話でやり取りすることがあるため、スムーズに英語が話せるとよいでしょう。
アセットマネジメント業界は求人数が増加傾向ですが、資格を取得することでライバルと差をつけられ、転職で有利になるでしょう。ここでは、アセットマネジメント業界への転職に役立つ資格を紹介します。実務経験が必要な資格もありますが、アピール材料として参考にしてみてください。
証券アナリストはCMAとも呼ばれ、日本証券アナリスト協会が実施しています。アセットマネジメントの運用部門では金融・投資の専門的な知識が求められるため、業務に生かせる資格です。
1次試験と2次試験があり、講座を受講した後に試験を受けます。金融商品の仕組みやポートフォリオ構築の基礎、投資パフォーマンスの計算、ファイナンス理論といった専門的な知識を幅広く学べます。ただし、資格を取得するには3年以上の実務経験が必要です。
CFAとは、CFA協会が主催する米国の証券アナリスト資格です。CFAを取得することで専門的な金融の知識を証明できるだけでなく、一定の英語力も備えていることをアピールできます。
海外の金融機関や外資系アセットマネジメント会社で求められる資格のひとつで、日本の資格保有者は1,300人程度と希少です。日本の証券アナリストより難易度は高いものの、高い統計スキルやグローバルな知見が深まるため、キャリアアップにもおすすめの資格です。
MBAは経営学修士と呼ばれ、経営学の大学院修士課程を修了することにより授与される学位です。アセットマネジメント業務に直接生かせることは少ないかもしれませんが、キャリアアップや役職を目指している方が取得する傾向があります。
ファイナンス科目で金融の知識も学べますが、特に経営学を中心に学びたい方におすすめです。育成方針や授業の質が学校によって異なるため、働きながら学校に通いたいという方は慎重に選ぶとよいでしょう。
英語力を証明できるスキルとして有名なTOEICは、国際ビジネスコミニケーション協会が主催する試験です。資格ではなくスコア制で、聞く・話す・読む・書くといった全ての英語コミュニケーション能力を測ります。
高スコアを取れれば、ビジネスシーンでも活用できる高い英語力を証明できます。日系企業のアセットマネジメント会社の場合、800点台後半以上のスコアがあることが望ましいでしょう。
アセットマネジメント業界の人材ニーズは高まっているとはいえ、絶対的なポジション数は少なく、金融業界未経験者が転職するのは難しいといえます。一方、証券会社やメガバンクで資産運用業務の経験があれば転職でも有利になるでしょう。
転職を検討している方は、証券アナリストやTOEICのような自分のスキルをアピールできる資格を取るのもおすすめです。運用部門・営業部門・ミドル・バック部門それぞれで求められるスキルは異なります。自身がどの部門で活躍できるのか分析して、転職活動に臨むとよいでしょう。
アセットマネジメントは投資家に代わって資産を運用・管理する仕事です。国民の金融リテラシーが高まりつつある現在、人材ニーズは拡大しています。しかし、専門的な金融知識を求められるため、金融業界未経験者の転職は簡単ではありません。証券アナリストやCFAのような金融系資格を取得し、実務経験を積んでから挑戦してもよいでしょう。
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