更新日:2024/04/23
この記事のまとめ
転職先を検討するうえで、将来性があるかどうかは重要なポイントです。将来性が高いと言われている組み込みエンジニアへの転職を検討しているものの、本当に需要があるのか疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、組み込みエンジニアの将来性が高い理由を解説します。市場価値を高めるために取得したい資格も5つピックアップして紹介しているため、転職を成功させたい方はぜひ参考にしてみてください。
目次
組み込みエンジニアは、機械に組み込むソフトウェアを開発する技術者です。テレビや冷蔵庫などの家電製品からスマートフォン、自動車まで扱う機器が幅広い点が特徴です。ここでは、組み込みエンジニアの将来性が高いと言われている理由を2つ紹介します。
IoTやAIの導入が進み、さまざまな分野でデジタル化が求められていることから、組み込みエンジニアの需要は増加傾向にあります。IoTは「Internet of Things」の略で、「モノのインターネット」という意味です。モノとインターネットをつなげると、機械の遠隔操作やセンサーによる電源の自動オン・オフが可能となります。
さらに、IoTによって集めたデータをAIが解析・判断することで、動作の精度が高まっていきます。今後もIoTやAIの技術が発展していくことが予想されるため、組み込みシステムの開発に携わる組み込みエンジニアの将来性は高いと言えるでしょう。
IT業界は日々成長・発展していますが、人手不足が深刻化しているのが現状です。ITエンジニアには専門的な知識・スキルが求められますが、人手を確保するために未経験者を採用して自社で育成しようとする企業も少なくありません。
したがって「組み込みエンジニアの仕事がなくなる」心配は少ないといえるでしょう。とはいえ、IT技術の進展によって求められる人材の要件も変化しています。組み込みエンジニアとして活躍したいなら、日々スキルをアップデートし、最先端の技術を扱えるように努力する心構えが欠かせません。
組み込みエンジニアは、自動車業界や家電業界、医療業界など活躍できる業界が幅広い点も将来性が高いと言われる要素のひとつです。それぞれの業界で組み込みエンジニアがどう必要とされているのかを把握しておけば、転職先を決める際に役立つでしょう。ここでは、組み込みエンジニアが求められる4つの業界を紹介します。
自動車業界では、障害物を検知するセンシング技術、AIによるブレーキシステムなど自動運転技術の研究が進んでいます。これらの電気制御システムを自動車に組み込む際には、組み込みエンジニアが必要です。
ほかにも、インターネット接続の機能を持つコネクテッドカーの開発、電気自動車(EV)の生産、カーシェアリングとライドシェアリングの普及により、自動車業界では組み込みエンジニアの需要が拡大しています。
家電業界は、組み込みエンジニアが古くから活躍している業界です。IoTやAIの技術を組み合わせた製品の登場により、組み込みエンジニアの需要はますます高まりつつあります。
たとえば、設定された室温を維持できるエアコンにはセンサー技術が使われています。センサーを搭載したIoTデバイスによって、温度の上昇を感知して冷却能力を高め、適切な室温を保っているわけです。ほかにも、洗濯機やテレビ、電子レンジなどの家電機器に組み込むシステムの開発には、組み込みエンジニアが欠かせません。
IoT技術は医療分野にも用いられており、「IoMT(Internet of Medical Things)」という言葉で注目されています。IoMTとは、医療機器とITシステムをネットワークでつなぐ技術のことです。
新型コロナウイルス感染症の影響もあり、遠隔診療や遠隔治療のニーズが急増しました。IoMTのWeb問診システムによって患者は自宅にいながら問診を受けられるので、感染症のリスクがなくなります。
また、手首や足などに装着するコンピューターデバイスの「ウェアラブルデバイス」によって、患者のバイタルデータを遠隔でモニタリングすることも可能です。こういった医療機器に搭載するプログラムも、組み込みエンジニアの開発対象です。
金融業界においてもデジタル化が進んでおり、金融システムの開発などで組み込みエンジニアが活躍しています。代表的なのは、銀行やコンビニエンスストアに設置されているATMシステムです。ATMシステムに専用のマイクロコントローラーを搭載し、銀行とATM間の情報のやりとりがスムーズに行われるようにします。
また、金融業界では「2025年の崖」への対策や生産性向上も求められており、組み込みエンジニアの需要が増加しています。2025年の壁とは、「日本国内の企業がDX化を推進しなければ、2025年から大きな経済損失を生む」と表現した言葉のことです。金融システムの開発や業務効率アップには、組み込みエンジニアの力が必要とされています。
組み込みエンジニアは将来性が高く魅力的な職業ですが、「きつい」「オワコン」などのイメージを持たれることも少なくありません。ここでは、組み込みエンジニアが「オワコン」と言われる2つの理由を解説します。
ITエンジニア不足により、ひとりあたりの業務量が多くなっている企業も少なくありません。納期に仕事を間に合わせるために、残業時間が長くなってしまうこともあるでしょう。残業が多いと肉体的・精神的な負荷もかかるため、組み込みエンジニアの仕事は「きつい」と言われることがあります。
組み込みエンジニアには、ハードウェアやソフトウェアの知識、プログラミングスキル、IoTの知識など、多様な知識が求められます。ほかのITエンジニアと比較しても要求されるスキルは幅広く、組み込みエンジニアとして活躍し続けるのは容易ではありません。日々知識のアップデートが必要なことから、組み込みエンジニアに対してネガティブなイメージを持つ人もいます。
IT業界は技術やトレンドの変化が激しいため、組み込みエンジニアとして転職できたとしても5年後、10年後も活躍し続けられるとは言い切れません。しかしスキルを磨き、市場価値を高めることで将来性の高い組み込みエンジニアになれます。これから組み込みエンジニアへ転職する場合は、以下で紹介するスキルを磨きましょう。
ひとつのプログラミング言語だけでなく、複数の言語を使用できるようになると業務の幅が広がり、市場価値を高められます。組み込みエンジニアが主に用いるプログラミング言語は「C言語」です。C言語は「仕組みが単純で処理速度が速い」特徴があり、組み込みソフトウェアで使用されています。
ほかにも、C言語を拡張した言語である「C++」や、オブジェクト指向言語の「Java」も、開発言語に使用されることが増えてきました。
組み込みエンジニアには、ソフトウェアとハードウェア双方の知識が欠かせません。ハードウェア関連の知識で言えば、デジタル回路やアナログ回路の基礎、基板製造技術、回路設計などが挙げられます。ハードウェアの設計書や仕様書を読めるようにしておくことも大切です。
ソフトウェア関連であれば、「ITRON」「T-Kernel」といったリアルタイムOSの知識が挙げられます。OSと言えば一般的にWindowsやMacがイメージされる傾向にありますが、組み込み機器ではこれらのOSは使用されません。
AI やIoTを活用した機器が増えていることから、組み込みエンジニアは最先端分野の知識も身につけておく必要があります。データ収集や分析の技術について、理解を深めておくとよいでしょう。
IoTを使えば多くの情報が手に入ります。そして膨大な情報を人力で処理するのは困難なため、AIが活用されます。有用なデータを収集するには、ITエンジニアがAIの活用方法について知っておくことが重要です。
英語力は組み込みエンジニアに求められるスキルではありませんが、身につけることで海外の開発メンバーとやりとりできたり、海外の技術書が読めたりするなどのメリットがあります。海外に拠点を持つ企業に転職した場合には海外転勤を命じられる可能性もあるため、活躍の領域を広げる意味でもビジネスレベルの英語力を身につけるのは有効です。
スキルを証明する手段としては、資格の取得がおすすめです。特に組み込みエンジニアの転職を有利にさせたい場合には、一定の知識やスキルを証明できる資格は分かりやすいアピール材料のひとつといえます。勉強中の資格も履歴書に記載できるため、転職活動と併せて以下の資格取得も検討してみてください。
C言語プログラミング能力認定試験は、C言語の知識やスキルを問う試験です。組み込み開発においてC言語は頻繁に利用されることから、組み込みエンジニアが最初に取得したい資格とも言えます。
試験は初心者に向けた3級、基本アルゴリズムの理解度を問う2級、コーディングの実践力や応用力を問う1級の3段階に分かれています。6月、9月、1月の年3回実施されており、2級と3級はリモートで受験可能です。
IoTを含む組み込みシステムに関する知識やスキルが問われる国家試験です。エンベデットシステムとは、組み込みシステムを指します。エンベデッドシステムスペシャリスト試験に合格することで、組み込みシステムの専門家であることを証明できます。
また、試験勉強を通じて組み込みシステムの設計・開発や保守、IoTやAIなどの最先端技術を身につけられる点も魅力です。試験は午前・午後に分かれており、年に1回開催されています。
参照:エンベデッドシステムスペシャリスト試験 | 試験情報|独立行政法人情報処理推進機構
ETEC(組込み技術者試験制度)は組み込み系ソフトウェアの技術者に向けた認定試験で、組み込み開発全般の知識が問われます。試験は合否制ではなく、スコア制となっているのが特徴です。
また、試験には「組込みソフトウェア技術者試験クラス2」「組込みソフトウェア技術者試験クラス1」の2つのレベルがあり、クラス1はクラス2で500点以上のスコアを取らないと受験できません。試験はコンピューターを使用したCBT方式となっており、通年開催されているため受験しやすい点が魅力です。
参照:ETEC(組込み技術者試験制度)|一般社団法人組込みシステム技術協会
LPIC-1とLinuCは、OSの「Linux」に関する知識を問う認定試験です。LPICは全世界で対応している国際的な資格であり、LinuCは日本国内向けの資格です。
LPICはレベル1~レベル3、LinuCはレベル1~レベル3・システムアーキテクトの4つの難度に分かれています。試験はCBT方式となっており、通年開催されています。組み込みエンジニアにはOSの知識も求められるため、転職先がLinuxを活用している場合には取得するとよいでしょう。
参照:LinuC|LPI-Japan
参照:LPIC-1|Linux Professional Institute
基本情報技術者試験と応用情報技術者試験はどちらも独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が主催する国家試験で、IT業界において定番の資格です。
基本情報技術者試験はIT戦略やシステム、セキュリティー、プログラミングの基礎知識について出題され、応用情報技術者試験はその応用問題が出題されます。試験はCBT方式で年に2回開催されています。IT業界が未経験である場合はまず基本情報技術者試験に受験し、ITの基礎知識を身につけるとよいでしょう。
参照:基本情報技術者試験 | 試験情報|独立行政法人情報処理推進機構
参照:応用情報技術者試験 | 試験情報|独立行政法人情報処理推進機構
組み込みエンジニアについて、まだ気になる点がある方も多いのではないでしょうか。転職を検討している場合には、ささいな疑問や不安であってもきちんと解消することが大切です。ここでは、組み込みエンジニアに関するよくある質問を5つピックアップして紹介します。
未経験でも組み込みエンジニアへ転職することは可能です。実際、未経験者を募集している企業は少なくありません。しかし、組み込みエンジニアには幅広いスキルが要求されることから、まったくのIT業界未経験だと転職を成功させるのは難しいといえます。
まずはプログラマーやネットワークエンジニアなど、未経験でも採用されやすいITエンジニア職へ転職して開発経験を積むのがおすすめです。
組み込みエンジニアと似た職種に「制御エンジニア」があります。組み込みエンジニアの役割は、機器を動作するソフトウェアを開発して組み込むことです。一方、制御エンジニアの役割は組み込んだ機器を制御するソフトウェアを開発することです。
両者の役割は異なるものの、業務領域が重なることもあり、求人では「組み込み系・制御系」と作業範囲を指定せずに募集されているケースもあります。
40代以降で未経験の場合、20代や30代と比べて組み込みエンジニアへの転職は難しいといえますが、不可能ではありません。コミュニケーションスキルや入社意欲をしっかりとアピールできれば、選考を有利に進められるでしょう。
ただし、組み込みエンジニアを募集している企業の中には「長期的なキャリア育成のために募集年齢を35歳まで」と限定している場合がある点に注意が必要です。
マイナビエージェントの「職種別平均年収ランキング【2020年版】」によると、組み込みエンジニアの平均年収は455万円です。20代の平均年収が432万円、30代が480万円となっており、昇給にも期待できます。スキルや経験が反映されやすい職業であるため、実力しだいで高収入を目指すことも可能です。
組み込みエンジニアのキャリアパスには、以下が挙げられます。
ITエンジニアには多様な職種があるため、組み込みエンジニアとしてキャリアを積めばさまざまなキャリアパスが開かれるでしょう。
ITエンジニアとしてスペシャリストを目指すのであれば複数の開発工程を担うフルスタックエンジニア、ゼネラリストを目指すのであればプロジェクトマネージャーがおすすめです。
組み込みエンジニアは自動車業界や家電業界、医療業界など幅広い業界で必要とされ、需要が高い職業です。また、ITエンジニア不足やIoTの普及によって将来性にも期待できます。組み込みエンジニアへの転職を考えている場合は、複数のプログラミング言語を習得したり、AIとIoTの知識を身につけたりするとよいでしょう。
組み込みエンジニアへの転職を成功させたい方は、ぜひマイナビITエージェントにご相談ください。IT業界に精通したキャリアアドバイザーが組み込みエンジニアの求人を紹介し、応募書類の添削や面接対策のアドバイスなど転職を成功に導くサポートをいたします。
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