更新日:2023/10/19
この記事のまとめ
テレワークや副業、フリーランスなど働き方が多様化する中、企業と業務委託契約を結んで働く方も少なくありません。業務委託とは雇用関係にない企業からの仕事を引き受ける契約形態を指しますが、どのようなメリットやデメリットがあるのかがよく分からない方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、これから転職を考えている方へ向けて業務委託について詳しく解説します。フリーランスや正社員などほかの働き方との違いもまとめているので、自分に合った働き方を模索している方はぜひご一読ください。
目次
業務委託とは、雇用関係を結ばない会社から委託された仕事を行って報酬を得る契約形態です。ここでは、業務委託がどのような働き方なのか、そのほかの雇用契約の種類との違いについて見ていきましょう。契約内容の違いを知っておくだけでも、転職活動が進めやすくなります。
業務委託契約とは、会社が業務を外部に委託するときに結ぶ契約です。労働力としてではなく、仕事に対する成果が求められます。委託された仕事内容を遂行すること、仕事の成果を挙げることで報酬が支払われる仕組みです。
勤務する時間や稼働時間などが定められているわけではないため、稼働する時間帯の縛りがない点は魅力のひとつでしょう。業務委託契約は、企業同士や企業対個人でも締結できます。
正社員や契約社員、パート、アルバイトなどで働く方は、会社と直接労働契約を結びます。会社の従業員は決められた時間内に働く対価として給与を受け取ります。企業と労働者は雇う側と雇われる側という主従関係になり、仕事の進め方に関する指導も行われます。
一方、業務委託契約は、会社と雇用関係を結ぶ正社員や契約社員などとは違い、契約した会社から仕事の進め方に対して具体的な指導は受けません。時間的な制約もない代わりに給与は発生しませんが、完成した仕事を納品することで報酬を得られます。
派遣契約は、派遣元である会社と派遣先会社が結ぶ契約です。派遣社員は派遣会社と雇用契約を結び、派遣先企業の指導の下で業務を行います。会社と雇用関係を結ぶ意味では、派遣契約は雇用契約と同様です。
しかし実際に働く会社に雇用してもらうわけではなく、派遣会社を介することが特徴といえるでしょう。
個人で業務委託として働く場合は企業と同じ立場で対応する必要があるため、個人事業主として仕事を引き受けます。副業に関しても同様です。業務委託で働くときには開業届を提出し、毎年確定申告を行うのが一般的です。
業務委託の種類は、請負契約と委任契約(準委任)の2つです。それぞれの契約内容の違いについて見ていきましょう。
請負契約とは、業務に対する成果物を完成させることで依頼主である企業から報酬をもらえる契約です。業務内容や時間、その過程などは報酬に関係がなく、無事に納品されたかの有無のみが問われます。
請負契約を結ぶことがよくある主な職種には、デザイナー、ライター、プログラマー、営業、警備員、清掃員などがあります。
委任(準委任)契約は、成果物を完成させる責任を負わず、遂行した業務に対して報酬が支払われます。委任と準委任は、業務内容が法律行等であるかないかという点で区分します。たとえば弁護士の業務は委任となり、法律行為に関係のない範囲のアドバイスを行うシステムコンサルタントは準委任です。
委任契約を結ぶことが多い主な職種には、弁護士、医師、受付、美容師、エステティシャンなどがあります。
フリーランスは企業などに属さず個人で仕事を請け負う働き方のことです。法人化して事業を行うケースもあります。個人事業主とほとんど同じ意味合いで使われますが、個人事業主は法人を設立せずに個人で事業を行うため、その点が違いといえるでしょう。
フリーランスや個人事業主は自分で仕事を獲得しますが、このときの企業との契約方法を業務委託と呼びます。会社員や契約社員など企業と雇用契約を結んでいるときとは異なり、毎年1月1日~12月31日までの1年間に48万円を超える事業所得があった場合は、納めるべき所得税額を計算し、翌年2月16日~3月15日までの間に住所地を管轄する税務署で確定申告を行う必要があります。
ここからは、多くの企業が業務委託を活用する理由を3つ解説します。企業が業務の遂行にあたってフリーランスなどを積極的に利用する理由を知ると、業務委託の需要があることが分かるでしょう。これから業務委託として仕事の受注を検討している方は、事前に押さえておくことをおすすめします。
企業はフリーランスなどと業務委託契約を結び、業務の一部を外部に委託することで人件費を抑えられます。企業が雇用契約を結び従業員を抱えると給与が発生するほか、社会保険への加入や業務に必要な設備・備品の用意など多くの費用がかかります。特にプログラマーや弁護士といった専門性の高い業種の人材を会社で雇うとなると、毎月多くの人件費が発生するでしょう。
企業が業務委託を活用するのは、教育コストを抑えられるメリットがあるからです。企業が従業員を雇用した場合、入社後の研修に時間とコストがかかります。すでにある程度の能力や技術を身につけた人材の力を借りたほうが、効率がよいと考える企業も少なくありません。
専門分野の業務を外部に任せると社内で働く従業員にはほかの業務を割り当てられるので、人材を有効に活用できるようになります。社内の人材をより適した業務へ配置すれば、企業全体の生産性も向上させられます。業務の効率化を図ることは、企業にとって働き方改革にもつながるメリットといえるでしょう。
ここでは、企業と業務委託契約を結んで働くメリットやデメリットについて解説します。業務委託契約を提示する企業への転職を考える場合は、前もってメリットだけでなくデメリットまでしっかりと把握し、イメージを膨らませておくことが大切です。
業務委託として働くメリットは、時間や場所にとらわれず、自分が得意な分野の業務を行える点にあります。勤務時間や勤務地が基本的に固定されている会社員と比べると、働き方の自由度は高いといえるでしょう。
また業務に対する報酬が決まっていることから、成果の見えやすさがモチベーションにつながります。自分の裁量によっては、高収入を目指せます。
会社に属する場合、自分が関わりたくない業務を依頼されても断れないケースも多いでしょう。業務委託の場合には仕事を断るのも自由です。
業務委託は働き方の自由度が高い反面、問題が発生した際には自分で対処する必要があります。関わるクライアントや案件量が月によって変動するケースも多くあるでしょう。
また業務委託契約には労働基準法が適用されず、会社員であれば企業が行ってくれる保険料の支払いや確定申告にも自分で対応する必要があります。仕事を自分で安定的に取ってきて完納しないと報酬を得ることが難しくなるため、収入が不安定になる可能性もあります。
厚生年金や雇用保険の加入対象者に含まれない点も留意しましょう。老後や万が一のことが起きたときに慌てることがないよう、自らさまざまな制度や保険を比較検討し、備えておくのがおすすめです。
業務委託が向いている人と向いていない人の特徴をそれぞれまとめました。業務委託と企業勤めでは、どちらの働き方が優れているということはありません。どちらにもメリットがあればデメリットもあります。大切なのは、自分に向いている働き方なのかどうかです。業務委託契約の求人に応募する前に、自分に向いているのかを確認しておきましょう。
業務委託は自由な働き方で進めたい方や、自分自身でマネジメントすることが好きな方ほど、働くメリットを感じやすいでしょう。時間や場所にとらわれず働けるのが大きな特徴であるためです。
また業務委託では、受注先の変遷や案件量が都度変化しやすい傾向にあります。そのような変化を楽しみ、柔軟に対応できる方は業務委託で働くのに向いているでしょう。
目標をしっかりと自分で設定し、自分自身の強みや専門性を活かして収入を得たい方にも業務委託はおすすめです。
タスクや予定の管理、体調管理など、自分自身のマネジメントが苦手な方は業務委託のメリットを感じにくい傾向にあります。思うように仕事を進められず、不安感やプレッシャーで心身のバランスを崩してしまう恐れもあるでしょう。
セルフマネジメントが難しい場合は正社員として企業に属し、決められた時間に決められた仕事をこなす対価として給料を得るほうが安心かもしれません。
業務委託は働き方だけではなく、仕事の探し方も一般とは異なります。ここで基本的な準備や仕事の探し方を押さえておきましょう。
業務委託で働き始める方法は、決して難しくはありません。フリーランスや個人事業主、副業などどのようなケースであってもまずは始め方を知り、チャレンジするための準備を整えましょう。
業務委託として働く方法には、現在の会社に属しながら副業として始めるケースとフリーランスとして始めるケースに分けられます。副業としてスタートする場合には、自社企業がダブルワーク可能か確認しておく必要があるでしょう。業務委託で副業の収入が年間で20万円を超えると確定申告が必要になることも頭に入れておきましょう。
一方、フリーランスで業務委託を始める場合には、国民健康保険、国民年金、開業届、青色申告承認申請書などの届け出が必要です。フリーランスとして活動するのであれば、名刺を作っておくのもよいでしょう。
業務委託の探し方は、さまざまあります。ひとつ目は、クラウドソーシングです。クラウドソーシングとは、インターネット上の仲介サイトを通じて、企業や個人間で仕事の受・発注を行う仕組みのことです。フリーランサーがサイト上に公開されている案件に応募し、依頼主によって応募者の中から条件とマッチする人が選定され、選ばれると仕事を獲得できます。
ブログやSNSを営業ツールとして活用するのもひとつの方法です。金銭面でコストをかけずに営業活動を行えます。仕事を請ける場合には、受注のルールや問い合わせ方法などを明確にしておきましょう。
自分で仕事を獲得するのが難しい場合は、フリーランス向けのエージェントを利用するのもよいでしょう。業界や職業ごとにさまざまなエージェントがあります。安定して仕事を受注できる可能性が高いのもメリットといえるでしょう。仲介手数料が必要となる場合もあるので、事前に確認しておくと安心です。
業務委託の主な職種としては、デザイナー、ライター、プログラマー、ITエンジニアなどのクリエイティブ職が挙げられます。デザイナーには、Webサイトのデザインやレイアウトを決めるWebデザイナー、広告やカタログなどの紙媒体をデザインするグラフィックデザイナーなどがあります。
ライターは、雑誌や書籍の記事を制作する記者、ブログやメルマガ、コンテンツ記事を執筆するWebライター、広告などに使うコピーライトを考えるコピーライターなど、ジャンルや媒体によってさまざまです。システムエンジニアやプログラマーなど、ITに関する技術職も業務委託の職種として人気です。
企業から独立して、フリーランスとして働く人もいます。
業務委託契約はメールや口頭でも成立しますが、トラブルを避けるには業務委託契約書の締結が欠かせません。ここでは、業務委託契約書とはどのような書類であるのかを分かりやすく解説します。不当な契約を交わさないためにも、事前に押さえておきましょう。
業務委託契約書は「基本契約書」と「個別契約書」の2種類に大別されます。
基本契約書には、契約期間や報酬、支払い方法などが記されているほか、契約解除や損害賠償が発生する取り決めについても記載されています。しっかりと目をとおし、報酬を得るうえで自分がしなくてはいけないこと、してはいけないことを把握しましょう。
また、納品物の取り扱いについても記載されています。納品した原稿やイラストなどをクレジット表記なしで使用されたり、許可なく改変されたりしては困る場合には、特に納品物の権利に関する項目をよく確認しておきましょう。
個別契約書は、個々の取引に関する具体的な取り決めを示す契約書です。基本契約書を補完する書類であるため、契約内容や委託元によっては基本契約書のみの場合もあります。継続的な業務委託であり、かつ取引ごとに細かな取り決めがある場合には、依頼ごとに発行されるケースが多いでしょう。
各委託注文に関する年月日や注文者氏名・住所といった基本情報のほか、委託業務の内容や期限、納品方法や報酬などが細かく記載されます。
業務委託契約を締結・解除するときの手順をそれぞれ解説します。一般的な流れを把握しておくことで、焦らずに落ち着いて対処できるようになるでしょう。
なお業務委託契約には、法律による詳細なルールは設けられていません。トラブルが起きたときには、契約書をはじめデータとして残っているこれまでのやりとりによって判断されるため、無責任な行動は避けましょう。
業務委託契約を締結するまでの一般的な流れは、以下のとおりです。
仕事を始めたばかりのうちは「企業が業務内容を提示し募集している案件に応募し、選考を受ける」形式が一般的でしょう。選考に通過したのち、契約書を取り交わします。
業務委託に関する契約書は一般的に委託者が作成しますが、書類を作成しないケースもあります。そのような場合には、トラブルを避けるために受託者から契約書の作成を申し出ることもひとつの方法です。
業務委託契約を解除したいときには、以下の流れで手続きを進めましょう。
まずは契約書や契約時のメールなどから、解除に関する決まりを確認しましょう。特に契約形態が「委任契約(または準委任契約)」であるか、「請負契約」であるかは重要です。
委任契約であれば受託者からであっても解除申し立てはスムーズですが、請負契約の場合には原則、受託者からの解除が不可です。請負契約でなくても契約書で解除に関する取り決めがされている場合には、そちらに準ずる必要があります。
契約違反ではなく、また罰則をはじめ不利益になることもないようであれば契約解除の旨を委託者に伝えましょう。契約によってはその場ですぐに解約成立となる場合もあれば、厳正な協議のうえで解除となるケースもあります。
自己裁量が大きい業務委託は、仕事量から業務の進め方まで自由に決められるのが大きな魅力です。しかしほかの働き方にも、魅力はさまざまあります。
ここでは、正社員や派遣社員といった働き方を業務委託と比較して紹介します。それぞれのメリット・デメリットを改めて確認し、自分に合う働き方を模索しましょう。
業務委託にはない正社員ならではのメリットは、主に以下の5つです。
正社員は雇用期間の定めがないため、基本的には毎月一定の収入を得られます。さらには福利厚生や労働基準法など保護制度や規定も多く、生活を安定させやすいでしょう。
社会的信用度が高く、賃貸借契約やローン申込時の審査に通過しやすいといったメリットもあります。
業務委託に比べて生活の安定を得やすい反面、正社員には以下のようなデメリットもあります。
正社員として働く場合、基本的には会社の指示にしたがう必要があります。転勤や異動、残業、休日出勤を受け入れなくてはいけないこともあるでしょう。
また給与に関しても規定が設けられている点は、やり方次第ではどこまでも年収を伸ばせる業務委託とは大きく異なります。
派遣社員としての働き方では、業務委託にはない以下2つのメリットを得られるでしょう。
正社員と比較すると勤務場所や時間などの自由度が高いといわれる派遣社員ですが、企業に所属している分、手厚い保護を受けられます。たとえば業務中にトラブルが起きたときには派遣会社が一定の責任を請け負ってくれるため、業務委託よりも仕事に対するプレッシャーは受けづらいでしょう。
正社員同様、業務委託に比べると安心感のある派遣社員ですが、以下のような点はデメリットに感じやすいでしょう。
派遣社員が同じ職場に勤められるのは、法律上、原則3年間です。長期勤続ができない以上、重要な役割を任せられることはまずありません。
結果、自己裁量で仕事ができないことや年収アップおよびキャリアアップが難しいことは、派遣社員として働くデメリットといえます。大幅な年収アップやキャリアアップを派遣社員で望むことも難しいでしょう。
社会に出て働くうちに業務委託という働き方に興味を抱いたのであれば、まずは基盤を整えることが大切です。見切り発車で動き出すのではなく、さまざまな情報を収集および精査して、「本当に自分に合った働き方なのか」を十分に検討しましょう。
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