更新日:2023/12/04
フリーランスや自営型リモートワークなど、「業務委託」での働き方は広まる傾向にあります。
業務委託は企業から仕事の依頼を受け、遂行することで報酬を得る働き方です。
企業との雇用関係がなく自由度が高い働き方なので、注目している方も多いのではないでしょうか。
ただし、会社員から業務委託になると、社会保険には自分で加入する必要があります。
会社員とは加入できる保険の種類が違うので、事前に知識を深めておくことが大切です。
そこで今回は、業務委託の方が加入する保険の特徴や加入方法を解説します。
目次
2000年代前半、小泉内閣の時代に「構造改革」を行ったことで、非正規雇用や業務委託といった働き方が拡大しました。
自由なイメージのある業務委託に興味はあるものの、実際にはどのような働き方なのか、想像できないという方も多いのではないでしょうか。
まずは、業務委託契約の概要やメリット・デメリットを解説します。
業務委託契約とは、企業が社内で対応できない業務を、個人や外部の企業に依頼する契約です。
業務委託契約を定めている法律はなく、「請負契約」「委任契約」の2つの制度に準拠しています。
業務委託は成果型の仕事というのが一般的な認識で、労働時間や業務方法など仕事を行う過程は関係ありません。
業務を受託した側は、業務を遂行し、完成した仕事を企業に報告・提出することで報酬を受け取れます。
業務委託は、働き方の自由度が高いのがメリットです。
企業との雇用関係がないため、対等の立場でやり取りできます。
成果物を滞りなく提出できれば問題ないので、時間的な拘束もなければ、業務命令を受けることもありません。
依頼される業務内容によっては断ることも自由です。
得意な分野の業務のみを請け負えるのは、会社員にはない強みといえます。
自分次第で働きやすい環境を作れるため、業務委託に憧れる方は多いかもしれません。
自由で気楽な働き方ができる一方、企業に雇用されていないことによるデメリットもあるのが業務委託です。
「給与」がもらえず「労働者」ではなくなるため、労働基準法が適用されません。
有給休暇や雇用保険といった制度も利用できなくなります。
今までは会社に任せていた所得の計算も自分でしなければなりません。
健康保険や住民税の手続き・支払いをするのも自分です。
すべてが自己責任になるため、収入面やキャリアの保証もありません。
自由な働き方を得る代わりに、安定を失う点がデメリットといえるでしょう。
社会保険は、一般的に「健康保険(医療・介護)」「年金保険」「雇用保険」「労災保険」の4種類に分けられます。
会社員はすべて加入できますが、業務委託で加入できるのは健康保険と年金保険のみです。
日本には国民皆保険制度があるので、業務委託で働く場合も「国民健康保険」と「国民年金保険」には加入することになります。
国民年金は、20歳以上60歳未満の方全員が加入する公的な保険制度です。
保険料は、職業や年齢などの条件に関わらず、一律で1万6,540円(令和2年度)と定められています。
国民年金である老齢基礎年金を受け取れるのは、原則65歳以降です。
ただ、国民年金のみの場合の受給額は満額でも月約6万5,000円なので、年金だけでやりくりしていくのは厳しいでしょう。
そのため、老齢基礎年金に上乗せする「国民年金基金」や「付加年金」の他、私的年金である保険商品や「個人型確定拠出年金」に加入している方もいます。
国民健康保険は、市町区村が運営する保険制度です。
会社員は「組合健保」や「協会けんぽ」に加入することになりますが、個人事業主や自営業者、年金受給者は国民健康保険に加入します。
保険料は前年度の所得金額に応じて決まる仕組みです。
したがって、所得が多いほど収める金額も大きくなります。
また、会社員の保険料は会社側が半分出してくれますが(労使折半)、国民健康保険では全額自己負担です。
保険料の支払いが厳しい場合は、国民健康保険組合に加入するという手もあります。
業種ごとにさまざまな組合があり、市町区村が運営する健康保険より安価なのが一般的です。
また、所得の上限があるものの、家族の扶養に入るという選択肢もあります。
業務委託で働く際に加入が必要となる、国民年金と国民健康保険の負担額の一例を紹介します。
年収は400万円と仮定、控除額が多い青色申告を利用した場合の保険料の目安を計算しました。
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※国民健康保険の1ヵ月あたりの支払額は年間支払額を12ヵ月で割った場合の金額です。
(参考:『日本年金機構』)
国民年金と国民健康保険合わせて、1年間に約50万円、1ヵ月あたり約4万円の支払いが必要になります。
国民年金・国民健康保険ともに全額自己負担なので、収入が不安定な時期は精神的にこたえるかもしれません。
国民年金と国民健康保険に加入する際の申請場所は、自宅のある市町区村役場です。
必要書類を持って、届出期限内に手続きを行う必要があります。
業務委託の場合、すべての手続きを自分でしなければなりません。
スムーズに手続きを進めるために、必要書類や申請方法を事前に確認しておきましょう。
会社を退職し、業務委託として仕事を開始する方が国民年金や国民健康保険に申請する際に必要な持ち物は、以下のとおりです。
各市町区村で異なる場合もあるので、事前に問い合わせをしておくと安心でしょう。
国民年金と国民健康保険へ加入する場合、手続きは住民票がある管轄の役所で行います。
必要書類を持って窓口で受付をしましょう。
申請書に記入したり、求められたものを提出したりするだけで、手続き自体は比較的簡単に終了します。
注意したいのは申請期限です。
保険を切り替る申請期限は、退職した日の翌日から14日以内と決められています。
特に国民健康保険の場合、申請が遅れるとその間は無保険状態になるため気を付けましょう。
会社員は企業と雇用契約を結んでいるため、両者の関係は「雇用主と労働者」です。
会社員である以上、働き方は制限されますが、手厚く保障されます。
厚生年金や雇用保険、労災保険に加入できるのはその一例です。
ここでは、業務委託契約では加入できない保険の制度内容を具体的に確認します。
企業と雇用関係にある会社員は、「厚生年金保険」に加入できます。
厚生年金は、国民年金の上乗せになる保険です。
65歳の老齢年金受給時には、国民年金である基礎年金に加え、厚生年金も受給できます。
厚生年金は「労使折半」といって、雇用主が保険料の半分を支払ってくれる点がメリットです。
実際には、自分が支払う年金保険料の倍額を収めることになります。
支払った保険料を元に年金受給額が決まることを考えると、厚生年金保険の手厚さを実感できるでしょう。
労災保険は、仕事中や通勤途中に負った怪我または病気、障害や死亡に備える保険です。
「療養補償」「障害保補償」「休業補償」「遺族補償」など、さまざまな給付制度があります。
労災保険の対象となるのは、正社員や契約社員のほか、パート・アルバイトです。
保険料は全額雇用主が負担するので、労働者が保険料を支払う必要はありません。
業務委託の場合、万が一の補償は自分で用意しなければならないため、この差は大きいといえます。
雇用保険は、雇用や就業の促進を目的とする保険制度です。
たとえば、失業した際は求職者給付、就職が決まった際には就職促進給付を受け取れます。
そのほかの主な保障内容は以下のとおりです。
保険料は労働者と雇用主が分担して支払います。
会社側が多く支払う決まりです。
ただし、継続して31日以上雇用される見込みがあり、週20時間以上働いている労働者だけが加入できます。
会社員が退職後に業務委託を行うときは、社会保険の任意継続が可能な場合もあります。
「健康保険任意継続制度」といい、企業で加入していた社会保険に加入し続けられる制度です。
国民健康保険と国民年金に加入せず、任意継続を選ぶ方も少なくありません。
ここでは、任意継続する際のメリットや、加入するための条件を解説します。
健康保険任意継続制度は、退職前に加入していた社会保険に最長2年間加入できる制度です。
2年間の限定ではありますが、会社員時代と保険内容が変わらないのは分かりやすくてよいでしょう。
任意継続保険に加入するメリットはいくつかあり、ひとつは保険料です。
会社員の健康保険料は最高でも標準報酬月額28万円以上で計算されるため、それ以上の稼ぎを見込める方は国民健康保険に加入するより安くなります。
また、扶養制度があるのも大きなメリットです。
ひとり分の保険料を支払えば、扶養家族も保険に加入できます。
健康保険任意継続制度は、誰でも利用できるわけではありません。
下記の条件をすべて満たしている方に限られます。
退職の際に会社側から社会保険の任意継続を行うか確認されることもあるので、事前に決めておくとスムーズでしょう。
〈加入条件〉
健康保険の任意継続の手続きは、退職日から20日以内に行う必要があります。
また、手続きには「任意継続被保険者資格取得申出書」が必要です。
扶養者がいる場合は、扶養の事実が確認できる書類も要ります。
加入している社会保険が協会けんぽの場合は、住所地の管轄の支部に書類を提出しなければなりません。
健康保険組合に加入していた場合は、それぞれの組合に郵送するのが一般的です。
申請書のダウンロードや必要な情報の確認は、各健康保険組合のホームページでできます。
近年、副業を認める企業が増えています。
会社からの許可が下りれば、勤め先以外から報酬を受け取っても構いません。
副業の魅力は、会社以外の仕事をすることでモチベーションの向上やスキルアップができる点でしょう。
一方の企業側には、働きやすい環境を整備することで、優秀な人材の離職を防げるメリットがあります。
平成30年に厚生労働省が作成した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」により、副業を解禁する企業が増えています。
新型コロナウイルスによる業績の悪化も、副業解禁を後押しする一因になりました。
会社員の副業は一般的になりつつあり、隙間時間でもできるデータ入力や簡単な文章作成などは人気の仕事です。
労働者は労働基準法において、「職業の種類を問わず、事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」と規定されています。
つまり、独立はせず、あくまで副業の範囲で業務委託を受けるのがポイントです。
賃金の保証や福利厚生などの恩恵を受けながらも、ビジネスの幅を広げられます。
(参考: 『副業・兼業の促進に関するガイドライン|厚生労働省』)
会社員が副業で業務委託をする際、副業の所得が年間20万円を超える場合には確定申告をしなければなりません。
会社をやめて業務委託を行う場合も確定申告が必要です。なお、申告の種類や基準には違いがあります。
〈申告の違い〉
【基礎控除の仕組み】
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※令和元年度以前は、一律38万円
働き方改革や新型コロナウイルス感染症の影響によって、多くの企業でリモートワークやフレックス、副業制度を導入する動きが活発になっています。
独立するリスクを取らなくても、働きやすい環境を手に入れられるのはうれしいポイントでしょう。
現在の働き方や、労働環境を変えたいと考えている方には追い風ともいえます。
マイナビエージェントでは、そうした働き方を導入する企業のご紹介が可能です。
さまざまな企業の中から自分に合った働き方ができるよう、転職市場に詳しいキャリアアドバイザーが丁寧にサポートします。
業務委託では、国民健康保険と国民年金に加入するのが一般的です。
業務委託は自由度が高い働き方である一方、自己責任が重くなります。
企業に勤める方より社会保障が薄い点も注意点でしょう。
しかし、現在は働き方が多様化している時代です。
マイナビエージェントでも時代の移り変わりをキャッチし、転職を考えている方や、働き方を変えたい方のお役に立てる企業を紹介しています。
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