更新日:2023/11/30
この記事のまとめ
公務員への転職では、公務員試験の受験が必要となり、求められるスキルが民間企業への転職とは異なります。
ここでは、公務員試験の内容と、公務員への転職が有利になる資格やスキルをご紹介しましょう。また、公務員の仕事内容や公務員に向いている人の特徴の他、民間から公務員に転職するメリット・デメリットについても解説します。
目次
一口に公務員といっても、その種類は多種多様で、仕事内容も多岐にわたっています。まずは公務員の種類や、それぞれの仕事内容を見ていきましょう。
いわゆる「キャリア官僚」と呼ばれるのが国家公務員総合職です。
主に法律の制定・改正、政策の企画・立案などに携わり、将来の幹部候補生として中央省庁やその出先機関で働きます。
内閣府や総務省などの、中央省庁内で異動する場合があります。
国家公務員一般職とは「ノンキャリア」と呼ばれ、事務処理などの定型的な業務に従事する仕事です。
総合職が企画・立案した政策を実際に運用していくのが、一般職の役割だといえるでしょう。
中央省庁と地方機関のいずれかに職員として勤めます。地方機関の場合には、関東甲信越地域など、地域ごとのブロック採用になります。
特定の行政分野で活躍するのが、国家公務員専門職です。
総合職や一般職の場合、ゼネラリストとして、広範囲にわたる知識・能力を有していることが求められるのに対し、国家公務員専門職は、特定の行政分野に関わる専門的な知識を有していることが求められます。
具体的には、国税専門官、労働基準監督官、外務省専門職員、法務省専門職員、裁判所職員、航空管制官、食品衛生監視官などが該当します。
地方公務員の中でも、「土木」「建築」「電気」「機械」「化学」「農業」「農学」などの専門分野に携わる職種を技術職といます。
専門性の高い仕事を任されますが、幹部候補になると現場での業務だけでなく、企画など他部署と連携する業務を担当する場合があります。
地方公務員の中で、警察官や消防士など、治安維持に従事する職業を公安職といいます。
警察官は都道府県で、消防官は市町村で(東京は東京消防庁)採用されます。
地方公務員の中で、行政事務の仕事に携わるのが行政職です。
それぞれの行政区の範囲内において、国家公務員と同じように企画の立案や執行に携わります。
公務員の仕事は、国家公務員と地方公務員に大別されます。
両者の仕事内容にはどのような違いと、メリット・デメリットがあるのでしょうか?
国家公務員は、国全体の運営に関わる業務を担います。
中央省庁や国会、裁判所、税務署などに勤務し、国全体を視野に入れたスケールが大きい仕事に携われるのが特徴です。
国家公務員の仕事には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
国家公務員になるメリット
国家公務員になるデメリット
地方公務員は、地域住民の生活に密着した業務を行います。
県庁や市役所、区役所などに勤務し、環境整備や教育・福祉の増進などに携わります。国家公務員と比べて仕事のスケールは小さいですが、その分、住民と協働で町づくりができるのが特徴です。
地方公務員の仕事には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
地方公務員になるメリット
地方公務員になるデメリット
続いては、公務員への転職を考えるにあたって、押さえておきたい基礎知識をご紹介します。
公務員のうち、職種によっては、定められた資格を取得することが必要となります。
たとえば、公務員のひとつに、「看護系技官」という職種がありますが、この仕事に就くためには、看護師の資格取得が必要です。また、同じく公務員である「保健師」として保健所・保健センターに勤務する場合は、看護師免許と保健師免許、2つの国家資格の取得が必要です。
公務員への転職を検討する方は、希望する職種で必要となる資格を確認しておきましょう。
公務員への転職を目指す場合は、年齢制限があることを覚えておきましょう。
公務員試験は、個々の試験ごとに上限年齢が設定されています。
たとえば、国家公務員総合職、国家公務員一般職の場合、受験可能な上限年齢は30歳となっています。なお、最近は年齢制限の上限を引き上げる動きも見られ、30歳を超えても受験できる自治体が増えてきています。
注意点として、公務員試験で設定されている受験可能な上限年齢は、採用年の4月1日時点での年齢です。たとえば、2020年度の採用で30歳が上限の場合、受験の段階では30歳であっても、2020年4月1日時点で31歳である方は受験できません。
続いては、中途採用で公務員に転職するのが向いている人の特徴をご紹介しましょう。
都道府県・市町村の地方自治体で働く地方公務員など、職種によっては住民と接する機会が多く、窓口での説明や、要望・苦情への対応などが必要になる場合あります。
ですから、営業職などで日頃から様々な人たちと接してきた経験があり、コミュニケーション能力が高い人は、地方公務員に転職しやすいといえるでしょう。
公務員の仕事では、書類や資料作成を行う必要があるため、総務・事務職の経験がある方は事務能力を活かすことができます。
公務員は、国民全体や地域住民の生活に関わる仕事であるため、責任感がないと務まりません。
企業において、与えられたプロジェクトを、責任を持って成し遂げた経験がある方は、公務員になっても活躍する可能性が高いといえるでしょう。
自社と取引先の利益を追求する傾向がある民間企業と比較して、公務員は基本的に社会・国民の生活に貢献することを目的とする職業です。
社会貢献したいという意欲が高い人には、やりがいを感じられる職業であるといえるでしょう。
民間から公務員に転職する際のメリットとデメリットをご紹介します。
公務員は、社会に貢献していることを実感しやすい職業といえます。また、社会的信用が高い職業であり、住宅ローンの金利が優遇される可能性がある点も魅力です。
民間から公務員に転職するメリットには、主に下記のようなものがあります。
民間から公務員に転職するデメリットには、主に下記のようなものがあります。
公務員の仕事は、民間の企業と比べて、前例にないプロジェクトなどに挑戦するのが難しいことや、異動が多い点はデメリットといえます。また、勤続年数が浅いうちは、成果を上げたからといって、給与アップを見込めない場合があります。
自分の裁量で様々な仕事をこなしたい方や、実力次第で高い給与が望める仕事に就きたい方などは、公務員以外の転職先についても検討してみるといいでしょう。
公務員になるためには、原則として、国家公務員か地方公務員かにかかわらず、公務員試験に合格する必要があります。公務員への転職を目指す場合は、一般枠か経験者枠で受験しましょう。
一般枠、経験者枠、それぞれの概要についてまとめました。
一般枠での公務員試験は、年齢要件を満たせば誰でも受験が可能です。
公務員試験は、出願が毎年の3、4月頃、1次試験が5、6月頃、2次試験が7、8月頃で、8、9月頃に内定、新卒の場合は翌春から採用となります。
一方、中途採用の場合、10月から勤務に入ることもあります。
詳細なスケジュールは、志望先によって異なります。
公務員試験は、基本的に一次試験で「筆記試験」、二次試験で「面接試験」が実施されます。
筆記試験は「教養試験」「専門試験」「論文試験」の3つで構成されるのが一般的です。
試験内容は、国家公務員か地方公務員か、また、志望する職種などによって異なります。志望する職種の試験内容について、調べておきましょう。
経験者枠では、民間の企業での職務経験を活かして採用試験を受けることができます。
受験のためには、年齢要件を満たすだけでなく、一定年数以上の社会人経験などが必要です。具体的な年数は志望先によって異なりますが、5年程度のケースが多くなっています。
ちなみに、経験者枠の公務員試験は、採用人数が一般枠より少なく、自治体によっては行っていないところもあります。
反面、一般枠よりは筆記試験のウェイトが軽いため、社会人経験を活かしたアピールがしやすいといえるでしょう。
地方公務員の経験者枠試験日程は、地方によって一般枠と同一である場合と、異なる場合があります。
国家公務員の場合は夏に申込み受付が行われ、秋以降に試験、11、12月頃に合格者が発表されるというスケジュールです。
経験者枠の試験内容は、教養試験、論文試験、面接試験がメインとなり、専門試験が課されることは少ないです。
ただし、国家公務員の経験者採用試験では、志望先に応じた試験科目やディスカッションなどが行われるため、個別に確認しておきましょう。
続いては、中途採用で公務員になるためのポイントと注意点をご紹介します。
中途採用で公務員に転職したい場合は、経験者枠で受験するのがおすすめです。
中途採用の方が一般枠で受験しようとした場合、年齢制限がネックになる可能性があります。しかし、経験者枠では、社会人経験年数が受験資格に含まれることもあり、受験可能な年齢の上限は高めです。
最近では、多くの都道府県や政令指定都市が多様化する行政課題に対応すべく、幅広い経験や視点を持った社会人を積極的に採用しようとしています。
上限年齢も引き上げられる傾向があり、中には59歳まで受験可能な自治体もあります。
経験が浅く、若年で転職を目指す場合は一般枠、社会人経験をある程度積んだ方は経験者枠と、自分の状況に合わせて検討しましょう。
地方公務員試験は各自治体で実施されますが、自治体ごとに年齢制限や募集職種などが異なります。各自治体のウェブサイトや、都道府県庁、市役所などで配布されている試験案内で確認しておくことが大切です。
また、試験の日程も自治体によって異なりますし、年度によって変更になることもあります。必ず、その年度の日程を確認した上で準備を進めましょう。
地方公務員試験の試験内容や受験資格は自治体によって異なりますが、一般的に「上級」(大学卒業程度)、「中級」(短大卒業程度)、「初級」(高校卒業程度)に分けて実施されています。
上級は4年生大学卒業(見込)の学歴要件を意味するわけではなく、受験者に要求する能力の目安や試験問題のレベルを示しています。
なお、初任給や出世のスピードといった待遇は、学歴によって違いがあります。一般的に、高卒者よりも大卒者のほうが数万円程度、給与が高めに設定されています。
公務員試験は、併願受験することが可能です。たとえば、国家公務員一般職と国家公務員総合職など、試験日が違えば、どちらも受験することができます。
どうしても公務員に転職したいという方は、併願を検討することをおすすめします。
前述のとおり、公務員になるには一般枠でも経験枠でも、公務員試験を受ける必要があります。続いては、公務員試験の具体的な内容をご紹介します。
公務員試験で出題される科目は、試験の種類や自治体によって異なりますが、大きく「教養科目」と「専門科目」に分かれます。
教養科目は大半の公務員試験で行われており、ごく一部の自治体では例外的に専門科目のみで試験が実施されています。
教養科目には、「一般知能」と「一般知識」があります。一般知能では数的推理と文章理解、一般知識では人文科学、社会科学、自然科学、時事問題が問われます。
専門科目は受験区分によって科目が異なります。
「行政職」では法律や経済学、政治学などが中心ですが、「心理職」や「福祉職」では心理学や社会学、社会福祉、「技術職」では土木、建築、機械、電気などの各分野の専門知識が問われます。
公務員試験の内容は、公務員の種類によって異なります。一般的な試験内容を、それぞれご紹介します。
<第一次試験>
<第二次試験>
<第一次試験>
<第二次試験>
中途採用で公務員への転職を目指す場合、働きながら公務員試験に向けて準備を進めることになります。
公務員試験は、基礎的な知識から専門的知識まで出題範囲が幅広く、論文対策も必要になるため、まとまった勉強時間を確保しなければいけません。とはいえ、なかなか時間が取れない人も多いでしょう。
公務員試験を合格するには、効率的に勉強することが重要です。
自宅で通信講座を利用したり、資格試験予備校の社会人向けコースに通ったりと、自分に合った勉強方法を選びましょう。
公務員への転職では、民間企業に比べて筆記試験が重視されます。しかし、それまでの実務経験や保有資格がまったく役に立たないというわけではありません。
保有していることで有利に働く資格や、転職後に役立つ資格をご紹介します。
宅地建物取引士は、農地法や税法、土地計画法などに関わる部署に配属された場合に役立ちます。
社会保険や税金を扱う部署では、業務で、住民からの相談や質問を受ける場合があります。その際、ファイナンシャルプランナー関連の資格があれば、より具体的なアドバイスをすることができるでしょう。
地域振興を担当する部署などに配属された場合、中小企業診断士の資格があれば、地元の中小企業の経営者などに的確な助言が行いやすくなります。
国家公務員の場合、英語検定やTOEICといった英語力を示す資格を取得しておくことをおすすめします。
ここ数年、訪日外国人数が増加しており、グローバル化が進展していることから、英語力は評価の対象となる場合があるでしょう。
英語力は国家公務員試験を受ける際にも有利に働きます。国家公務員総合職試験では、2015年度から、TOEFLやTOEICなど指定の外部英語試験を活用しており、そのスコアに応じて試験の総得点に15点または25点が加算されるようになったからです。
また、パソコンのスキルは、公務員として働く上でも必要です。とはいえ、高度なスキルは必要ありません。ExcelとWordの基本操作ができれば問題ないでしょう。
その他、公務員への転職では、下記のような資格が役に立つ可能性があります。
公務員への転職に役立つ資格(一部)
看護師、保健師、薬剤師、獣医師、管理栄養士、栄養士、学校栄養士、幼稚園教諭、保育士、教員、司書、社会福祉士、学芸員、臨床心理士、精神保健福祉士、衛生監視員、助産師、作業療法士、理学療法士、臨床検査技師
中途採用で民間企業から公務員に転職するためには、試験の概要や必要なスキルをしっかりと押さえ、対策を立てる必要があります。
特に、働きながら公務員への転職を目指す方は、勉強時間をうまく確保して、効率良く勉強を行うことが大切です。ご紹介した内容を参考に、自身に公務員の適性があるかどうかについても検討の上、転職活動を進めてください。
※公務員の職種、ならびに公務員試験の日程や内容は、2022年4月現在の情報です。
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