更新日:2022/05/13
この記事のまとめ
不動産仲介営業は、物件の売手と買手あるいは貸手と借手を結びつけるのが仕事です。多くの人は「仲介営業」と聞いて、店頭での接客や物件案内といった業務をイメージするのではないでしょうか。しかし実際の仕事内容は、物件の仕込みから契約手続きまで、多岐にわたります。
そこでこの記事では、不動産仲介営業の特徴について具体的に解説します。売買仲介と賃貸仲介の違いも説明するので参考にしてください。
目次
不動産仲介営業は、大きく売買仲介と賃貸仲介に分けられます。どちらも「顧客の要望に合った物件を紹介して契約する」ということでは共通していますが、具体的な仕事の内容や必要なスキルはかなり異なります。ここではそれぞれの特徴を説明したうえで、売買仲介の仕事の流れを紹介します。
売買仲介は、不動産を買いたい人に対して要望に合った物件を紹介して販売するのが基本です。取り扱う対象は、土地や新築・中古の住宅・マンションから、ビル・工場・倉庫といった事業用物件まで広範囲にわたります。このため、特定のジャンルに特化している会社が少なくありません。
売買仲介には、不動産だけでなく金融・法律・税務といった分野の知識が必要です。また、個人のほか企業、同業者、金融機関などとの交渉もあるため、臨機応変なコミュニケーション能力が求められます。
賃貸仲介も、物件を紹介して契約するという点は売買仲介と共通しています。ただし、ローンや権利移転が関係する取引はないため、金融や税金、法律の知識は売買仲介に比べると求められないでしょう。売買営業の経験は賃貸営業に転身後も応用可能ですが、その逆は覚えることのほうが多いかもしれません。
以下では、基本的に売買仲介について解説し、必要に応じて賃貸仲介に関する補足説明をします。
売買仲介は、厳密には「売り仲介(元付け業者)」と「買い仲介(客付け業者)」があります。それぞれの基本的な仕事の流れは以下のとおりです。
<売り仲介の仕事の流れ>
1.売主を探す(チラシや一括査定サイトを活用)
2.物件の査定
3.売主と媒介契約締結
4.購入希望者を探し(チラシ・Web広告など)、売買交渉
5.契約締結
6.引き渡し
<買い仲介の仕事の流れ>
1.購入希望者の集客(チラシ・Web広告など)
2.購入希望者に対して物件を選定・案内
3.売買交渉
4.ローンの紹介・手続き(必要な場合)
5.重要事項説明
6.契約締結
7.引き渡し
また、日々の業務では以下のような作業が発生します。
・チラシや撮影の下準備
・広告用の物件撮影
・ポスティング
・案内予定の物件の下見
・撮影した物件の入力作業
・アポ取り/追客(メール、電話など)
・案内用資料の作成
・見込み客のフォロー
不動産仲介営業の仕事は多岐にわたるため、豊富なスキル・経験を持っているに越したことはありません。ここでは、とりわけ重要と考えられる「コミュニケーション能力」「税金の知識」「接客や営業の経験」を取り上げ、詳しく解説します。
仲介営業は、顧客である個人・法人のほか、他の不動産会社や金融機関、保険会社、ハウスメーカーといった、さまざまな業種や立場の人とやり取りする必要があります。このため、状況に応じて臨機応変に対応できるコミュニケーション能力が求められます。
たとえば、他人には分かりにくいこだわりが、顧客の物件選びのポイントになっていることもあります。会話の内容や表情の変化などからヒントをつかみ、積極的にコミュニケーションを取って希望条件をきめ細かく聞き出せれば、契約できる確率は高まるでしょう。
売買仲介では、顧客から税金について質問されることが多いため、不動産売買に関する税制の基礎知識を身につけておけば信頼感が高まります。ただし、税制は頻繁に改正されることから、常に最新の内容を把握しておかなければなりません。
また、物件の規模や収入などのわずかな違いで、税額が大きく変わることもあります。トラブルになるリスクを避けるためには、制度の概要を説明したうえで、最終的には税理士のようなプロに相談するように勧めるのがよいでしょう。
不動産業界の未経験者でも、営業や接客の経験がある人は不動産の仲介営業に対応しやすいといえます。基本的なビジネスマナーやコミュニケーション能力は身につけていると考えられるからです。
特に、「お客様の本音を引き出すのが得意」「新規顧客の獲得率が高い」といったスキル・経験があれば、仲介営業でも即戦力として活躍できる可能性は高いでしょう。
不動産の仲介営業に関連する資格には、「必須に近いもの」や「持っていれば仕事に役立つもの」「不動産業界でのキャリアアップに役立つもの」など、さまざまなタイプがあります。ここでは代表的な資格として「宅地建物取引士」「ファイナンシャルプランナー」「不動産鑑定士」を取り上げて説明します。
宅地建物取引士(宅建士)は、宅地建物取引業法に基づく国家資格です。契約前に行う「重要事項説明」および「重要事項説明書・契約書への記名押印」は、独占業務で宅建士でなければできません。
不動産仲介業では、専任の宅建士を業務従事者5名に1名の割合で設置することが義務づけられています。このため宅建士へのニーズは常にあり、業界内でも市場価値の高い資格といえるでしょう。なお、宅建士として働くには、資格試験に合格するだけでなく都道府県での登録が必要で、2年以上の実務経験か登録実務講習の修了が条件となります。
ファイナンシャルプランナー(FP)は、税金、住宅ローン、不動産、投資、相続など、個人にまつわるお金のエキスパートです。FPの資格には、国家資格である「FP技能士(1~3級)」と民間資格(日本FP協会)の「AFP、CFP」の2種類があります。
FP技能士は合格すれば生涯有効ですが、AFP・CFPには有効期限があり更新が必要です。不動産仲介業をしながら勉強・取得するのであれば、FP技能士のほうがチャレンジしやすいでしょう。
また、FP技能士は3級、2級、1級の順で難易度が上がりますが、不動産の実務で役立てるのであれば2級以上の取得をおすすめします。
不動産鑑定士は国家資格で、「不動産鑑定評価書の作成」を独占業務として認められた不動産鑑定評価のプロフェッショナルです。また、鑑定評価を基礎にした土地有効活用などのコンサルティング業務も行えます。
不動産鑑定士は、試験の難易度が高いことで知られています。加えて、試験に合格しても最低1年の実務研修を受けて終了考査に合格しないと、不動産鑑定士として登録できません。働きながら合格・登録するにはハードルが高いといえますが、不動産業界でのキャリアアップには役立つ資格です。
不動産仲介営業で契約を獲得するために大切なのは、「顧客の信頼」を得ることです。そのためにはさまざまなやり方が考えられます。ここでは「対象地域の絞り込み」「事例の研究」「要望のヒアリング」の3つを取り上げました。
顧客の話や質問にすぐ対応できるようになれば、信頼感が高まります。そのためのひとつの方法として、対象地域を絞って営業することが挙げられます。対象地域を絞り込んだら、スーパーや飲食店、病院、学校といった生活に欠かせない施設の立地や評判、道路の混雑状況などを徹底的に頭に入れましょう。
再開発をはじめとする将来に向けた町づくりの情報収集も欠かせません。また、対象地域の絞り込みは物件の下見や案内をするための移動時間削減につながり、営業の効率化にも役立ちます。
売買仲介では、営業対象地域の取引事例を徹底的に研究し、相場観を養っておくことが重要です。相場に精通していれば、顧客の希望価格について「高いのか、安いのか」を、根拠を持って判断できます。物件の具体的な条件を踏まえて論理的に説明できれば、顧客の希望とは異なる判断を示しても信頼を得られる可能性は高いといえます。
賃貸仲介でも同様の方法で相場観を養っておくことは大切です。また、賃貸物件ではオーナーによって設備や家賃設定に特徴がある場合もあります。対象地域で複数の物件を所有する有力なオーナーがいれば、その情報も収集しておきましょう。
顧客の信頼を獲得する基本は、要望をしっかりと聞くことです。そのためには、単に希望条件を聞くだけでなく、現状に対する不満や物件を探している理由、将来展望などを顧客から話すように会話を組み立てるのがコツです。
十分にヒアリングをすることで、顧客自身が気づいていなかったこだわりポイントが見つかり、契約につながることもあります。実際、「一番話をしっかり聞いてくれた」ことが、不動産会社を選んだ理由として挙がることも少なくありません。
不動産仲介営業のやりがいのひとつは、個人や企業にとって重要な「拠点探し」を手伝えることです。加えて、営業成績が収入に反映しやすい報酬制度も魅力です。一方で、常に学習や工夫が求められることを負担に感じる人もいます。仕事の特徴をよく理解したうえで、向き・不向きを判断しましょう。
居住用物件の仲介営業には、進学、就職、結婚さらにはマイホーム購入など、人生の節目となるタイミングで訪れる顧客の割合が高いという特徴があります。新たなスタートのベースとなる「住まい探し」を手伝えることに、やりがいを感じる人は少なくないでしょう。
また、仲介営業では、営業成績が自分の収入に大きく影響する給与・賞与のインセンティブ制度を、多くの企業が採用しています。目に見える形で分かりやすく評価されるうえ、取引金額が大きい売買仲介であれば、実力次第で大幅な収入アップも可能です。
仲介営業で買手(借手)に紹介する物件の多くは一般に公開されているため、同じ物件の取り扱いを巡って他の不動産会社と競合することもあります。この競合を勝ち抜くには、顧客の信頼を獲得するための営業スキルを磨いたり、付帯サービスを充実させるといった工夫をしたりすることが求められます。
営業スキルの中には、不動産に関する知識や地域の生活関連情報なども含まれますが、どちらも常に知識・情報をアップデートしておかなければ意味がありません。誤った情報を伝えるのは顧客を逃す要因になることに注意しましょう。
不動産仲介営業は仕事の結果が分かりやすい仕事で、それを収入に反映させるインセンティブ制度を多くの企業が採用しています。年齢や性別、経験に関係なく実力次第で大幅な収入アップも可能な仕事といえるでしょう。しかし、不動産仲介営業にやりがいや魅力を感じながらも、自分に向いているかよく分からないという方もいるのではないでしょうか。
マイナビ営業エージェントは、業界に精通したキャリアアドバイザーが、一人ひとりにじっくりと向き合い、疑問や不安にお答えします。営業職の専任チームがお客様の転職を徹底的にサポートしますので、不動産仲介営業に転職をお考えの方は気軽にご相談ください。
営業職
第二新卒には営業がおすすめ?向いている理由や成功に導くコツを紹介
営業職
メーカー営業の将来性を徹底解説!市場価値を高める方法やキャリアパスも紹介
営業職
IT営業を辞めたいと感じたら?仕事がきつい理由とおすすめの転職先を紹介