更新日:2022/04/12
いくら職業選択の自由があるとはいえ、同業他社への転職は心情的に迷うものです。しかし、これまで身につけた技能や経験、知識を生かすことができ、より高い年収とポジションで迎えてくれるとなれば、心がゆらぐこともあるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、営業職が同業他社への転職をしてもよいのかについて解説します。転職のポイントや注意点をまとめたので、同業他社への転職を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
日本国内には、さまざまな営業職が存在します。その中には、同じマーケットで顧客獲得を目指す同業他社もいるでしょう。
同業他社は必ずしも敵対視する存在とは限りませんが、転職となると慎重に検討しなければなりません。ここでは法律や就業規則などを含め、同業他社への転職が可能であるかについて紹介します。
営業は、ヘッドハンティングやスカウトが日常的に行われている業界です。そのため同業他社から誘いを受けて、実際に転職するケースも多いでしょう。
日本国民は、憲法22条の経済的自由権のひとつとして、「職業選択の自由」を保障されています。これは、自分がしたい職業を選択し、選択した仕事を遂行する自由を保障するというものです。職業選択の自由は、転職先の制限なく常に優先されるため、基本的には同業他社への転職でもその自由を制限されることはありません。
自由に職業を選択できることは事実ですが、同業他社へ転職する際には、注意しなければいけないポイントもあります。たとえば就業規則に「競業避止義務」が定められている場合には、同業他社への転職を慎重に検討する必要があるでしょう。
競業避止義務とは、自社の技術やノウハウが社外に流出することを防ぐため、退職後の競合他社への転職や同業種での起業を禁止する社内規定で、就業規則や雇用契約書、入社時に記入する誓約書などに記載されています。規定に違反すると、就業中なら懲戒処分、退職後なら損害賠償請求などの対象になる可能性があるでしょう。
こうした場合、気になるのが「競業避止義務は、憲法に違反しないのか」という点です。競業避止義務の合理性については、これまでの多くの裁判において、「使用者側の利益(企業秘密の保護)」「労働者側の不利益(再就職の不自由)」「社会的利害(独占集中のおそれ)」の視点に立って、以下の4点について慎重に検討されてきました。
これまでの判例を見ると、競業避止義務の期間が前職を退職してから1年程度の場合は規定が有効となり、3年を超えると無効になる場合が多いようです(制限の期間)。
一方、同じ企業内でも機密性の高い情報に接している人だけを規定の対象とする場合(制限の対象となる職種の範囲)や、地元密着型企業が営業範囲内での競業を禁止するなど地域が限定されている場合(場所的範囲)は、競業避止義務に関する規定が有効とされやすい傾向があります。
競業避止義務の有効性は複数の要素を総合的に勘案して決定されるため、一概にいうことはできませんが、定められた期間が1年~2年以内の場合は競業避止義務の対象となる可能性があるでしょう。よほどのことがない限り、制限対象の期間が明けるのを待ってから転職、または起業することをおすすめします。
新しい環境に身を置きたいけれど、いまの仕事でキャリアを積みたいと考える方は少なくありません。いくつか制限のある同業他社への転職ですが、実はさまざまなメリットも存在します。
たとえば業界内でのキャリア形成が可能である点や、転職後にスムーズに業務をこなせる点は、魅力的でしょう。ここでは、同業他社へ転職するメリットについて紹介します。
同業他社へ転職する場合、企業から即戦力として期待されるケースが多いでしょう。業界経験が評価されるのはもちろん、業務に対するスキルや知識を持っていることも強みとなります。そのため選考において有利になり、他業種への転職よりも内定を勝ち取りやすい点がメリットです。
仕事の幅や裁量を広げ、いまより活躍しやすい点も同業他社へ転職するメリットです。同業他社への転職では、これまで培ってきたノウハウを活用できます。現職での実績がある場合には、いまよりも高いポジションを狙えるかもしれません。場合によっては、リーダーや責任者として活躍できるでしょう。
即戦力の人材として評価されやすい同業他社への転職では、年収アップを期待できるケースがあります。現職よりも給与の高い会社への転職はもちろん、転職時の年収交渉で希望が叶う場合もあるでしょう。あくまでも実績があることが前提となりますが、好待遇で働けることは、転職で得られる大きなメリットといえます。
同業他社への転職を成功させ、他社で活躍している営業は数多く存在します。しかし同業他社へ転職することで、苦労するケースもあるでしょう。同業他社への転職は、必ずしも現在よりよい環境で働けるとは限りません。ここでは、同業他社への転職におけるデメリットを紹介します。
同業他社であっても前職との方針が違ったり、これまでのノウハウを発揮できなかったりなど、転職後スムーズに業務をこなせないケースもあります。また前職で身につけた手法が他社では使えず、うまく成果をあげられない可能性も押さえておきましょう。
そのため同業他社への転職を考えている方は、異なる環境でもうまく対応しようという気持ちが必要です。転職先の方針を重んじることも求められます。
年収アップを目指しやすいといわれる同業他社への転職ですが、前職と給与相場はさほど変わらない点も押さえておきましょう。転職先企業の給与形態や自身の実績によっては、転職後に給与が下がる場合や、現職と変わらないケースもあります。特に規模が小さな企業へ転職した場合、結果としていまよりも年収が下がるかもしれません。
同業他社へ転職した場合、転職後に違う企業の社員として前職の顧客と接することがあるかもしれません。会社を移ったことへの挨拶ができる間柄の顧客であれば問題はありませんが、中には「信用できない」と感じる顧客もいるでしょう。顧客にネガティブな印象を持たれてしまうことが原因で、業績が落ちる可能性も否めません。
同業他社へ転職する場合、まずは就業している会社に競業への転職を禁止する規定が存在するかどうか、また規定がある場合はそれが有効か否かを確認することが大切だということが、おわかりいただけたかと思います。
競業避止義務については問題なさそうだと判断でき、同業他社への転職を決めたあとは、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。円満に退社して、新しい職場で気持ちよく働くためのポイントを3つお伝えします。
「転職を考えている」というだけでも言いづらいのに、ましてや同業他社への転職となると、切り出し方に悩むでしょう。とはいえ、悩んでいるうちに時間が経って、引継ぎも十分にせずに慌ただしく辞めていくということになると、現職に多大な迷惑をかけてしまいます。転職先から内定をもらったら、できるだけ早く現職の上司に伝えましょう。
このとき、転職先が同業他社であることは、あえて言わなくても問題ありません。正直に話したばかりに猛烈な引き止めにあい、辞めづらくなるかもしれないからです。
また、「他社の条件がよいから」「ここで得た技術を生かしてキャリアアップしたいから」など、同業他社への転職理由を話せば、現職に不快な思いをさせることにもなりかねません。同業他社に転職するということは、現職と同業界に居続けるということであり、今後も何らかの形で関わり続ける可能性があるということです。
同業他社へ転職した場合、転職後に前職の社員と顔を合わせる可能性が高いでしょう。たとえば営業先でばったり出会ったり、同じセミナーを受講していたりなどといった機会が訪れるかもしれません。
もしも退職時に揉めごとを起こしていると、そのたびに気まずい思いをします。転職時には、できる限り円満に退社できるよう努めましょう。業務の引継ぎを丁寧に行うことや、誠意をもって退職の挨拶をするなど、印象を悪くしないことが大切です。
同業種であっても、社風や仕事の進め方はもちろん、具体的な業務内容にも細かな違いはあります。「前職ではこうだった」と以前のやり方に固執せず、「郷に入っては郷にしたがえ」で新しい職場のやり方を吸収しようとする姿勢が大切です。
同業他社への転職では、技術や知識の面でのミスマッチというより、文化や仕事のスタンスなどの違いに戸惑うケースが多くみられます。よりスムーズにキャリアを構築していくために、転職先のソフト面も事前にしっかりリサーチしておくとよいでしょう。
メリットやデメリットを把握したうえで、同業他社への転職を視野に入れる方は、いくつか注意点も押さえておきましょう。採用されるためのコツを把握することはもちろん、転職後に活躍できる人材となるための心がけも重要なポイントです。ここでは、同業他社への転職において心得たい点について紹介します。
同業他社に転職すると、話の流れで前職の情報を聞かれることもあるでしょう。しかし前職の機密情報を漏らしてしまうと、「不正競争防止法違反」に問われるケースがあります。不正競争防止法違反で訴えられた場合に課せられるのは、10年以下の懲役または2,000万円以下の罰金です。
また実際には罪に問われなかったとしても、相手に不信感を持たれるかもしれません。もしも面接で前職の機密情報を聞かれたとしても、返答は控えましょう。
即戦力として採用されやすい同業他社への転職ですが、自身の実績やスキルをアピールしすぎると、転職後に大きなプレッシャーになる場合があります。自分の実力以上のポジションを任されて負担を感じたり、周囲の期待に応えられなくて苦しんだりするケースもあるでしょう。
また面接時には担当者の心を掴んだものの、実際の働きぶりでマイナスの印象を与えると、評価にも影響しかねません。同業他社への転職時には、背伸びをせずに自己アピールができるよう心がけてください。
同業他社への転職では、基本的な業務内容はさほど変わらないと考えられます。そのため面接時に、「今回も同じように辞める可能性が高いのでは」といった疑念を持たれるかもしれません。退職理由を伝えるときには、プラスの印象を与えられるように意識しましょう。
たとえば「仕事内容に不満があった」などという退職理由は同業他社にも当てはまるため、避けた方がよいといえます。「高い目標を持って働きたい」「営業の仕事により打ち込みたい」など、具体的に前向きな内容を伝えましょう。
同業他社への転職を検討しているものの、なかなか転職活動を進められないという方も多いのではないでしょうか。同業他社への転職にはいくつか注意点もあるため、ひとりで進めるには不安要素が多いといえます。そこでおすすめしたいのが、転職エージェントです。
大手転職エージェントであり、利用者から高い信頼を誇るマイナビエージェントは、さまざまな事情を抱える求職者をサポートしてきた実績があります。マイナビエージェントは業界情報だけでなく企業情報にも精通しており、より働きやすい企業とのマッチングが可能です。書類添削や面接対策も充実しているため、転職を考えている方はぜひご活用ください。
同業他社に転職することは、競業避止義務契約が結ばれている場合を除き、それ自体が法律やモラルに反することはありません。
ただし、内定を勝ち取りたいばかりにペラペラと現職の機密を話すのはマナー違反です。転職先にも「口が軽い」と思われかねませんので、必要以上の情報は漏らさないようにしましょう。今後も付き合いが続くかもしれない現職に十分配慮しながら、転職活動を進めることをおすすめします。
転職活動において疑問や不安がある場合には、転職エージェントの利用もおすすめです。マイナビエージェントは求人紹介からアフターフォロー、内定後のバックアップまで、一人ひとりの転職活動の手厚く支援します。新しい環境で活躍したい方は、まずはお気軽にご相談ください。
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