更新日:2024/10/30
この記事のまとめ
IoTの普及をはじめとしたさまざまな要因でコンピューターを組み込んだ製品が多く開発されており、それに伴って組み込みエンジニアの需要が高まっています。しかしキャリアアップを目的として組み込みエンジニアへの転職を検討するにあたり、自分が希望する年収条件を満たすかどうかが気になるところではないでしょうか。
そこでこの記事では、組み込みエンジニアの年収水準と転職で年収アップを実現するコツを紹介します。これから組み込みエンジニアを目指す方や経験を活かしてキャリアアップしたいと考えている方は、望む年収を実現するためにもぜひ参考にしてみてください。
目次
さまざまな分野で活躍する組み込みエンジニアは、どの程度の年収が期待できるのでしょうか。以下では厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」に基づき、組み込みエンジニアの平均年収・給与水準を詳しく紹介します。
組み込みエンジニアへの転職で自分が希望する年収を実現できるか知るためにも、転職活動をスタートする前に確認しておきましょう。
組み込みエンジニア全体の平均年収は550万2,000円です。プログラマーやアプリケーションエンジニア、インフラエンジニアといったほかのIT系エンジニアと年収水準は変わりません。
その一方で、全体のマネジメントを担当するプロジェクトマネージャー(660万4,000円)やIT面で企業をサポートするITコンサルタント(660万4,000円)は組み込みエンジニアよりも年収水準が高い傾向にあります。より高い年収を実現したいなら、マネジメントスキルや経営スキルなどを身につけてキャリアアップを目指すとよいでしょう。
参照:システムエンジニア(組込み、IoT)|職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag|厚生労働省
参照:プロジェクトマネージャ(IT)|職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag|厚生労働省
参照:ITコンサルタント|職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag|厚生労働省
同調査から月額給与の金額に着目すると、20万円台~40万円台まで幅広く分布していることが分かります。その中でも、以下の3ヵ所がピークになっているのが特徴です。
転職したばかりであれば月収20万円台~30万円台が、ある程度の経験・スキルを有していれば40万円台がひとつの目安になるでしょう。少数ながら50万円台~70万円台の方もいるため、スキルレベルを上げて高度な業務を担当できるようになれば、さらなる年収アップにも期待できます。
組み込みエンジニアの平均年収を年齢別にチェックすると、30代後半までは年齢とともに大きく上昇する傾向にあります。以降も50代まで緩やかに上昇しているのが特徴です。
ピークは50代前半の701万7,500円で、組み込みエンジニア全体の平均年収と比較して150万円ほど高いことが分かります。
組み込みエンジニアはスキルレベルが年収に反映されやすい職種です。高度な開発スキルをはじめとして、市場価値が高いスキルを習得すればより高い年収を目指せるでしょう。
組み込みエンジニアとは、特定の機械に内蔵する小型コンピューターを開発する仕事です。たとえば冷蔵庫やエアコンなどの家電製品、自動車に取りつけるカーナビゲーションなどが挙げられます。
組み込みシステムの開発には、効率的に動作するプログラムが求められます。一般的なアプリケーションやシステムとは違い、読み込めるプログラムの容量やハードウェアのスペックに制限があるためです。それゆえ高い技術力や、プログラムに関する潤沢な知識が必要になるケースも少なくありません。
組み込みエンジニアの業務は、制御プログラムの開発が中心です。しかし具体的にどのような業務が存在するのか、正確に把握できていないこともあるでしょう。特にこれから転職を検討している方の場合、まずは職種への理解を深めておくのが重要です。ここでは組み込みエンジニアの仕事内容を解説します。
要件定義・企画は、開発における最終目標を定めるフェーズです。クライアントの要望や課題の解決につながるプロダクトを開発するため、プロジェクト全体の方針を固めます。開発する機能や予算、開発体制などを検討し、実現可能な計画を立てる段階です。
そして要件定義・企画の段階では、要件定義書を作成します。プロジェクトのベースとなる書類のため、組み込みエンジニアに加え、プロジェクトマネージャーや営業担当者も協力して作成を進めるケースが少なくありません。
要件定義書が完成したら、システム設計のフェーズに入ります。要件定義・企画の段階で詰められなかった箇所を明確化し、実装をスムーズに進めることが目的です。
システム設計は、外部設計と内部設計に分かれています。外部設計ではシステムの操作方法やデータの出力といったユーザーの利便性に関わる仕様を決定し、内部設計ではデータベース設計やバッチ処理計画といったシステム内部の仕様を詰めるのが特徴です。
設計書を準備したら、開発・実装へと移ります。開発は設計書に基づき、チームで取り組むのが一般的です。チーム内で適切なコミュニケーションを図りつつ、要件定義書の記載内容やスケジュールに沿って必要な機能を実装します。
予期しない不具合が発生したなどの理由で、開発途中で設計書の修正が必要になるケースもあります。設計書にしたがって開発を進めた際、想定していた仕様とは異なる動作をするケースもあるためです。修正箇所が多岐にわたる恐れもあるため、慎重に作業を進める意識が欠かせません。
開発が終わってリリースを目前に控えた段階で、システムテストのフェーズに入ります。実装した機能に不具合が発生していないかを確認する作業で、完成したシステムの品質を担保するうえで欠かせない重要な工程です。
リリース後は、運用や保守・アップデートといった業務にも携わります。機能改善やセキュリティーアップデート、エラー修正など、運用後に発覚するさまざまな課題に対処するのも組み込みエンジニアの仕事のひとつです。
組み込みエンジニアの収入はIT業界全体の平均年収よりも高い傾向にありますが、さらに収入を上げるためにはスキルを磨いたり、資格を取得したりと常に自己研さんに励む意識が欠かせません。ここでは、組み込みエンジニアの年収をアップする方法を解説します。
扱えるプログラミング言語の数が増えれば、より多くの開発プロジェクトに参加できるようになります。高度なスキルを必要とするプロジェクトを担当できるようになれば、年収アップを実現しやすいでしょう。
そのためには、ニーズが高いプログラミング言語を扱えるようになることが欠かせません。具体的なプログラミング言語と用途の一例は以下のとおりです。
まずは自分が目指す分野の組み込みシステムでどのようなプログラミング言語が使われているかを調べ、習得しましょう。
年収アップを狙うのであれば、IoTやAI開発などの最先端分野にも精通しておくと効果的です。IoTは「モノのインターネット」を意味する言葉で、家電製品や自動車などさまざまな媒体とインターネットをつなぐ技術を指します。AI開発においては、音声認識や画像認識といった機能の組み込みをするのが特徴です。
組み込みエンジニアには、チームメンバーやクライアントと適切なコミュニケーションを取るスキルが求められます。具体的には丁寧なヒアリングや、状況に応じたスムーズな連絡などです。
特に仕様には書かれていない非機能要件の実装でコミュニケーションスキルは役立ちます。システムの使いやすさやセキュリティーの確保といった非機能要件は顧客側から要求されることはあまりありません。そのため顧客の要望である機能要件に加えてどのような非機能要件を組み込むか、チームで話し合ったうえで概要を顧客に提示し、同意を得る必要があります。
組み込みエンジニアとして経験を積み、さらなる年収アップを実現したいと考えている方もいるのではないでしょうか。そのためには、マネジメントスキルを習得してチームリーダーやプロジェクトマネージャーを目指すのがおすすめです。
マネジメントスキルは課題設定力や進行状況の管理スキル、テクニカルスキルなどを含んだ複合的なスキルを指します。これらのスキルを培うには、日頃から意識してトレーニングすることが欠かせません。
何らかのプロジェクトにおいてリーダーやマネージャーとして活躍する機会が訪れたら、積極的に挑戦するのがスキルアップのコツです。
組み込みシステムはIT業界のみならず、自動車業界や家電業界などのさまざまな業界で活用されています。そのため、日々の業務ではほかの業界で活躍している方とコミュニケーションを取ったり、協力してプロジェクトを進めたりすることが考えられるでしょう。
スムーズなコミュニケーションを取るうえで、ビジネスや経営に関する知識やスキルは欠かせません。組み込みシステムをどのように活用すればビジネスを推し進められるのか、課題を解決するには何をすればよいのかを提案するときに、ビジネスや経営関連の知識・スキルが役立ちます。
組み込みエンジニアとしてスキルアップを図りたい場合は、資格を取得しましょう。資格取得は社内評価の向上や年収アップの材料、転職におけるアピールポイントとして役立ちます。しかしどのような資格を取得したらよいのかがよく分からない方もいるのではないでしょうか。そこでここでは、組み込みエンジニアの業務に役立つ資格を紹介します。
ETECは一般社団法人組込みシステム技術協会が主催する資格試験で、組み込みソフトウェアに関する技術力を判定するものです。資格を取得すれば、システム運用や管理に関する専門的な知見が身につきます。
試験は「組込みソフトウェア技術者試験クラス2」と「組込みソフトウェア技術者試験クラス1」の2段階に分かれています。両者は習熟度による区分があり、クラス2の試験で500点を取得すればクラス1への挑戦が可能です。まずは組み込みの基礎となるクラス2の試験で高得点を目指しましょう。
Linux Professional Instituteが実施しているLPICは、Linux運用に関する技術力を判定する資格試験です。Linuxの基礎から実務で役立つインフラの運用方法に至るまで、幅広い知識やスキルを身につけられます。
そのため組み込みエンジニアに転職した後でも、インフラについて深く理解するうえで有用といえるでしょう。ITエンジニアとして働くうえで、インフラに関する知識・スキルは欠かせません。
情報処理推進機構(lPA)が運営する基本情報技術者試験は、IT技術者に必要なスキルを網羅した国家試験です。IT全般の基礎的な内容が問われるため、組み込みエンジニアとして活躍したい方は積極的に受験するとよいでしょう。転職の場で評価されるのはもちろん、より上位の資格を取得する際にも学んだ知識やスキルが役立つ傾向にあります。
試験は午前と午後の2部に分かれており、ソフトウェアの技術やマネジメント、経営戦略に関する問題が出題されます。出題範囲が広いため、苦手分野を作らないように対策を進めることが重要です。
応用情報技術者試験はITエンジニアとして数年以上の経験がある方を対象とし、システムやソフトウェアの設計・開発だけでなく企画や要件定義といった最上流工程を担当するのに必要なスキルの有無を問う国家試験です。
さらに、応用情報技術者試験ではビジネスや経営に関する知識も問われます。多くの企業はIT技術を活用して自社のビジネスを推進したり課題を解決したりすることを目的としています。そのため、適切な計画を立てるうえで必要な経営やビジネスに関するスキルを有している人材の価値は高いといえるでしょう。
応用情報技術者試験に合格することで上記のスキルを客観的に身につけていることを証明でき、上流工程から開発までを総合的に担当できるITエンジニアであるとアピールできます。
組み込みシステムの開発に必要な専門性が高いスキルを有していることを証明する試験が、エンベデッドシステムスペシャリストです。基本情報技術者試験や応用情報技術者試験と同様に、IPAが実施する国家試験に含まれます。
組み込みシステムの開発に必要な企画・設計・開発・テスト・運用に関する総合的なスキルを証明できるのが特徴です。本試験に合格すると組み込みシステム開発のスペシャリストであることをアピールできるため、学習計画の一環として取得を目指すのもおすすめです。
組み込みエンジニアは、家電製品や自動車といった機器で利用するシステムを開発します。そのためIT業界に限らず、あらゆる業界でニーズが高い職種です。しかし具体的にどのような業界で働くことが可能なのか、イメージしづらい方もいるでしょう。ここでは、組み込みエンジニアが求められる業界を紹介します。
組み込みシステムが必要な業界のひとつに、自動車業界があります。自動車には自動ブレーキ機能やスピード制御機能など、あらゆるシステムが複雑に組み込まれているためです。
特に近年注目を集めているのが、自動運転システムの組み込みです。現在の自動運転車はPCによる制御・構築を前提として作られていますが、将来的には省電力化やリアルタイム処理といった動作の自動化に踏み切る必要があります。性能・精度が高く、信頼性のある自動車開発に携わりたい方におすすめです。
組み込みエンジニアの主戦場となっている業界に、家電業界があります。エアコンやスピーカーなどの家電製品にIoT・AI技術を搭載する「スマートホーム」の市場が拡大傾向にあるためです。
IoT・AI技術の進歩により、インターネットを駆使した生活水準の向上が加速しています。ただし利便性が高まる一方で、ネットワークやセキュリティーの強化も欠かせません。最先端の技術を使いつつ、家電の設計や開発に携わりたい方におすすめです。
金融業界においても、組み込みエンジニアが活躍する機会はあります。銀行やコンビニエンスストアで利用できるATMが代表例です。銀行のコンピューターとATM間の情報操作がスムーズに流れるよう、専用のマイクロコントローラーを整備します。
また銀行の機能を外部から呼び出すAPIの開発も、組み込みエンジニアの仕事です。強固なセキュリティー構築や新たなビジネスの創出などの一助を担います。銀行以外でも、証券や保険、決済システムなどのさまざまな分野で組み込みシステムが活用されています。
病院にいる医師が自宅にいる患者を診察する遠隔診療を実施するには、組み込みシステムが欠かせません。具体的には患者に装着したセンサーが収集するデータを自動で送信したり、手術支援ロボットを運用したりするために用いられています。
遠隔診療をつつがなく行うには高精度なセンサーやデータを遅延なく送るための通信機器が必要です。それらの機器を開発する際に組み込みエンジニアが活躍しています。
長期的に働き続けたいと考えている方にとって、将来性は気になる要素のひとつでしょう。将来の動向を正確に予測することは難しいものの、組み込みエンジニアの将来性は高いと考えられます。
主な理由は、社会全体でAIやIoTといった新たな技術を活用する動きが盛んであるためです。AIやIoTを活用した機器を開発するには、組み込みエンジニアの力が欠かせません。自動車業界や家電業界など幅広い分野で必要とされている点も、これから組み込みエンジニアを目指す方にとって見逃せないポイントです。
組み込みエンジニアとして実務経験を積めば、アプリケーションエンジニアやAIエンジニアといった別の職種を目指すことも可能です。さまざまなキャリアパスが開かれているのも魅力的なポイントといえるでしょう。
将来性を見込んで組み込みエンジニアへの転職を目指しているものの、転職までの具体的なステップが分からずに困っている方もいるでしょう。転職を成功させるには、組み込みエンジニアに求められる知識やスキルを身につけ、採用の場で高い評価を得られる人材を目指すことが重要です。ここでは組み込みエンジニアになる方法を解説します。
まずは転職の場でアピールできるように、開発実績を積みましょう。効率的なのは、組み込み開発のプロジェクトにテスターや運用担当として参加することです。継続的に成果を出し、開発や設計に携わるチャンスを狙いましょう。
ほかにもプログラマーやシステムエンジニアといった別のITエンジニアとして経験を積み、その経験を活かして転職するルートもあります。
実務経験がない場合は、ロボットや家電製品などの制御システムを開発してポートフォリオを作成し、アピールするのがおすすめです。ハードウェアにプログラムを組み込む体験を通じて、どのように業務で活かせるかを説明しましょう。
組み込みエンジニアになるうえで、ハードウェアに関する知識は欠かせません。特に回路図を理解しながらプログラムを組むスキルが必要です。設計する際にも役立つため、積極的な学習をおすすめします。
加えて、ソフトウェアの基礎知識も押さえておきましょう。制御システムの構築手順やハードウェアとの関係を知っていれば、採用後もスムーズに実務へ移れます。
ひとりで転職活動をするのが難しい場合は、転職エージェントを利用するのも選択肢のひとつです。転職活動では応募書類の準備や面接対策など、さまざまなタスクを並行してこなす必要があります。
転職エージェントと協力しながら適切な対策を講じられれば、効率的な準備が可能です。自分の転職目的に合った転職エージェントを積極的に活用することは、転職活動の期間短縮にもつながります。
組み込みエンジニアは機器に組み込んで使用するコンピューター向けのソフトウェアを開発する職で、さまざまな業界で活躍しています。AIやIoTの活用が進んでいることもあり、将来有望な職種のひとつです。
これから組み込みエンジニアへの転職を考えているのであれば、求められているスキルを習得するところから始めましょう。また求人へ応募するときは、自分が望む年収やキャリアプランを実現できる企業を探すことが大切です。
ひとりで転職活動に取り組むのが難しいと感じているなら、早めにマイナビITエージェントへご相談ください。プロのキャリアアドバイザーが、一人ひとりのキャリアプランを実現するための転職をサポートします。
関連記事:マイナビITエージェント
IT業界
Webエンジニアに将来性はない?AI発展の3つの影響と生き残るための戦略
IT業界
ネットワークエンジニアの将来性は?需要が高まる理由と必須のスキル
IT業界
システムエンジニアを辞めたい4つの理由と辞める前に確認したいこと