更新日:2025/05/20
この記事のまとめ
MRは製薬会社などに勤務し、医師や薬剤師に医薬品の情報を提供する専門職です。医療業界と密接に関わる重要な役割を担っており、高い専門性と営業スキルが求められます。MRへの転職を検討する際には、仕事の内容や1日の流れ、求められる資格、転職成功のポイントをしっかりと理解しておきましょう。
この記事では、MRとして働くうえで知っておきたい基本知識から、実際の働き方、キャリアパス、未経験から転職する方法などを分かりやすく解説します。
目次
MRとは、Medical Representativeの頭文字を取った略称で、日本語では「医薬情報担当者」と呼ばれています。製薬会社などに属し、医師や薬剤師などの医療関係者に対して自社の薬に関する情報を提供する仕事です。
患者の治療に最適な薬として自社の薬を選んでもらい、結果的に売り上げにつなげていくのがMRの役割です。
MRの仕事内容には、大きく分けて次の2つがあります。
MRの仕事は、第一に「自社の医薬品の情報を医師などの医療従事者に正しく伝え、利用してもらう」ことです。自社製品の品質や有効性、安全性などに関する情報を医療従事者に提供することによって、患者の治療に最適な薬として自社の医薬品を選んでもらい、売り上げ向上を目指します。
MRの仕事は、自社製品の情報提供だけではありません。医師などから自社製品の有効性(効き目や効果的な使い方)や安全性(副作用など)に関する情報を収集して開発部門に伝え、製品の改善や向上に役立てる役割も担っています。
製薬会社と医療現場双方の情報の橋渡しをすることによって、よりよい医薬品作りに寄与するのがMRの仕事です。
MRは、1日の多くを医療施設への訪問に費やす「外勤」が中心です。担当する施設が「開業医」か「病院」かによって、働き方や訪問スタイルに違いがあります。
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以下は、1日の業務スケジュール例です。
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転職は人生を大きく左右する決断です。特に専門職に挑戦する場合、業務内容や将来性、求められるスキルなどを事前にしっかりと理解しておくことが、後悔しない転職を実現するためには欠かせません。ここでは、MRへの転職を検討している方へ向けて年収や将来性など、転職前に知っておきたい知識を紹介します。
マイナビエージェントの職種別平均年収ランキングによると、MRの平均年収は626万円です。年代別に見ると、20代で474万円、30代で665万円と、年齢や経験を重ねるごとに収入が上昇する傾向です。
医薬品に関する知識を深める努力を重ねることで、高い年収や評価を得られる可能性があります。継続的な自己研さんと現場での成果が年収に反映されやすい点も、MRの魅力のひとつです。
MRは医療現場に不可欠な存在であり、将来性は高いといえます。とはいえ、「2024年版MR白書」によると、MRの人数は年々減少しており、ピーク時には6万人を超えていたところ、2022年以降5万人を下回っているのが実情です。この背景には、オンラインでの情報提供の普及や医療現場の変化があります。
デジタル技術の進化により、Web面談や電話を中心とした「非対面型MR活動」が増えており、従来の対面訪問に比べて効率的かつ柔軟な働き方が可能になりました。そのため、ひとりの担当者がカバーできる範囲が広がり、雇用を控える企業が増えたのが、MR数の減少につながっている理由のひとつと考えられています。
今後は、デジタルツールを効果的に活用しつつ医療従事者との信頼関係を構築し、質の高い情報を提供できるMRが求められるでしょう。
MRの主な勤務先は製薬会社や医薬品メーカーです。これらの企業に正社員として所属し、自社製品の情報を医療機関へ提供するのが基本的なスタイルです。
一方で、CSO(Contract Sales Organization)と呼ばれるアウトソーシング企業に登録し、クライアントである製薬会社の製品を担当する「コントラクトMR」として働くスタイルもあります。CSO経由で働くことで、複数のメーカーの業務を経験できたり、働く地域や時間の選択肢が広がったりと、柔軟なキャリア設計が可能になります。
MRへの転職は簡単ではありませんが、未経験者にもチャンスはあります。実際、未経験者を募集する求人も存在しています。未経験からMRへの転職を成功させたいのなら、「MR認定資格」や「医療業界に関する知識」を独学で身につけるなどしてアピール材料を増やしておきましょう。
ただし、30代以上では営業経験や社会人経験を必須とする企業が多く、年齢によっては転職難度が高くなる点に注意が必要です。
MRとして経験を積んだ後のキャリアパスは多岐にわたります。以下に代表的な進路を紹介します。
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MRは医療現場と深く関わる経験を積めるため、他職種と比較しても多様なスキルが身につきます。営業力だけでなく、情報収集力や信頼関係構築力、プレゼン能力などが磨かれ、長期的にキャリアを形成しやすい職業です。
MRの仕事は、ただ営業経験があるだけでは務まりません。医薬品に関する正確な情報を医療関係者へ伝えるためには、専門知識と高い倫理観、さらには人と信頼関係を築くためのスキルが求められます。その中でも特に重要なのが「MR認定証」の取得と、コミュニケーションスキルです。ここでは、MRに求められる資格とスキルについて解説します。
MR認定証は、厚生労働省認可の公益財団法人MR認定センターが認定している民間資格です。医薬品情報、疾病と治療、MR総論が試験科目となっており、資格を取得することでMRとしての信頼性を証明できます。MRとして働くうえで必須な資格ではありませんが、多くの企業が取得を義務づけています。
「2024年版MR白書」によると、2023年度のMR総数は4万6,719人です。そのうち4万6,060人がMR認定証を取得しており、MRとして活動しているほぼ全員がこの資格を保有していることが分かります。
MRの仕事には、相手の立場や状況を理解し、必要な情報を正確に、かつ納得してもらえるように伝える力が求められます。仕事相手である医師や薬剤師は日々多忙な業務をこなしているため、限られた時間の中で的確かつ簡潔に情報を提供することが欠かせません。
さらに、相手が求めている情報を先回りして提供したり、最新の医療知識をタイムリーに伝えたりする提案力も、優れたMRに求められる要素です。
MRの仕事は専門的な知識が要求されるため、転職を成功させるのは容易ではありません。また、日々知識のアップデートが必要であり、転職してからも苦労することがあるでしょう。とはいえ、MRに転職することで得られる魅力的なメリットがあります。ここでは、MRとして働くメリットを解説します。
MRの仕事は人々の健康に関わる医薬品の正しい情報を医療関係者に伝え、また医療現場から収集した情報を開発部門にフィードバックして自社製品の開発に活かす重要な役割を果たしています。
そうした役割を通して医療機関や医療従事者をサポートし、自社の医薬品が病気やけがで苦しんでいる人を助けるといったように、医療に貢献している実感を得られるのは、MRという仕事の大きなやりがいだといえます。
MRの仕事は高い収入を得られるのも魅力のひとつですが、製薬会社によっては、売り上げの実績に応じて「インセンティブ」がもらえる企業もあります。このようなインセンティブは、製薬会社によって固定給+出来高(インセンティブ)の場合と完全インセンティブの場合があります。
個人の努力によって収入が上がるインセンティブは、MRのモチベーションを高め、やりがいを感じさせる大きな理由のひとつです。
MRの仕事には魅力的なメリットがあるものの、この職種特有の厳しさもあります。転職を検討する際には、メリットだけでなく、デメリットにも注目することが大切です。「転職しないほうがよかった」と後悔しないためにも、ここで紹介する転職するデメリット、仕事の大変さを押さえておきましょう。
MRの仕事の特徴のひとつは、勤務時間が不定期になりやすいことです。その大きな理由は、取引相手である医師など医療従事者のスケジュールに合わせる必要があるためです。日中の時間帯は、医師は診察や治療、手術などを行っているため、診療時間前の早朝や診療時間終了後の夜遅い時間でないとアポイントが取れない場合が多くあります。
また、平日は忙しいことから、休診の土日・祝日でないと時間が取れないケースも多く、そうなると休日出勤せざるを得ません。これらに加え、資料を作成したり、新たな知識や情報を勉強したりする時間も必要となり、どうしても不定期の勤務時間になります。MRの現場は、一般企業のように「9時から17時まで」という世界ではありません。
各製薬会社では、日々新たな医薬品の研究開発を行っており、さまざまなジェネリック医薬品も登場しています。このように、MRは自社の医薬品はもちろん、他社の医薬品に関する知識も常に勉強することが大切です。
さらに、MRは医師をはじめとした医療従事者へ情報を提供するだけでなく、情報のフィードバックを受けることもあるため、必要最低限の医学知識を身につけている必要があります。
MRの営業活動で大切な点は、取引相手である医師ら医療従事者との間に強い信頼関係が構築されていることです。どのような仕事でも取引相手との信頼関係は重要ですが、MRの場合は人の命にも関わりかねない医薬品に関する情報を正しく、丁寧に提供することが不可欠です。そのため、より強い信頼関係が求められるといえます。
信頼関係は一朝一夕に築けるものではないため、長期にわたる営業活動が多くなります。また、医師本来の業務である診察や治療に支障がないタイミングでアポイントを取り、営業活動を進めていかなければならないという事情も、営業活動が長期間におよぶ理由のひとつです。
人によって仕事には向き不向きがあります。向いている仕事を選ぶと、モチベーション高く働くことができるでしょう。一方で、向いていない仕事に就くと、頑張っても成果が出にくく、苦労する可能性があります。MRの転職を検討している場合は、以下に当てはまるか確認してみてください。
MRは、医薬品の効能や使用法、副作用についての知識はもちろんのこと、医学知識や最新の医療事情などに広く通じていることが求められる仕事です。そのため、MRという仕事は常に勉強する姿勢が大切です。すなわち、向学心が強く、医療分野に関心や興味がある人はMRに向いているといえます。
MRは、自社の医薬品の有用性や安全性を医療従事者などに正しく情報提供し、患者の治療にとって最適な薬として自社の医薬品を選んでもらうことで売り上げに貢献する仕事です。したがって、コミュニケーション能力が高く、物事を分かりやすく具体的に説明することが得意な人はMRに向いているといえるでしょう。
MRはほかの営業職と比べても専門性が高く、求められる資質も多様です。そのため、事前の準備と情報収集によって、転職成功の可能性が大きく変わってきます。特に、業界構造の変化や非対面営業の普及といったトレンドもあり、選考においても「業界への理解度」や「志望動機の明確さ」が重要視されるケースも少なくありません。
ここでは、MRへの転職を成功させるために押さえておきたいポイントを紹介します。
MRを目指すにあたっては、業界の最新動向を把握することが欠かせません。たとえば、医師との直接面談が制限されるケースが増えたことで、Web面談や電話での情報提供など、MRの業務スタイルにも変化が生じています。
MR白書などの業界レポートからは、MR数が減少傾向にある一方で、専門性の高い情報提供へのニーズは根強く、役割の重要性が再認識されていることが分かります。
このようなトレンドを理解しておくことは、志望動機や面接の場で説得力のある受け答えをするために重要です。また、企業によって注力している領域が異なるため、個別企業の取り組みまで掘り下げて調べ、志望理由の精度を高めましょう。
MRへの転職を成功させるには、「なぜ数ある営業職の中でMRなのか」という明確な理由を伝えることが重要です。製薬業界の営業は、単なる商品販売とは異なり、医療現場で使われる薬の情報を正しく伝える使命感が求められます。人の命に関わる仕事だからこそ、社会的意義や責任感への共感を示すことが、説得力ある志望動機につながります。
さらに、「なぜこの会社を選んだのか」も問われる可能性が高いため、応募先企業の製品ラインナップや市場での強み、研究開発方針などを調査し、自身の経験とリンクさせて語れるように準備しておきましょう。
MRには、営業力だけでなく、論理的な説明力や信頼関係を築く力、自己管理能力、ストレス耐性なども求められます。面接では、これらのスキルを過去の経験と絡めて具体的に伝えることが大切です。たとえば、「限られた時間の中で顧客の課題をヒアリングし、的確な提案をして成果を上げた経験」などは、MRの職務に直結するエピソードとして効果的です。
加えて、未経験からMRを目指す場合は「学習意欲の高さ」も評価対象となるため、MR認定試験に向けた自主的な勉強の取り組みなども伝えると印象がよくなります。
MRへの転職を目指す際、面接でよく聞かれる定番の質問に対して、事前に回答を用意しておくことが重要です。「なぜMRなのか」「なぜこの会社なのか」「これまでの営業経験をどう活かすか」といった質問は、高い確率で聞かれると考えてよいでしょう。これらの質問にうまく答えられないと、準備不足と見なされ、「本気度が足りない」と判断されかねません。
また、ビジネスマナーや立ち居振る舞いもチェックされます。面接官が注視しているのは「この人を医師の前に出して大丈夫か」という点です。そのため、言葉遣いや態度、身だしなみまで含めた総合的な印象が重要になります。事前に面接の練習を繰り返し、自信を持って臨めるようにしましょう。
MRを目指して転職活動を進めるうえで、転職エージェントの活用は有効な手段です。特に医療業界に精通した転職エージェントを利用することで、企業の選び方から面接対策まで、手厚いサポートを受けられます。転職エージェントは業界の最新トレンドや、企業ごとの選考ポイント、内定者の傾向などを把握しているため、自分ひとりでは調べきれない情報まで得ることが可能です。
また、志望動機のブラッシュアップや履歴書・職務経歴書の添削、模擬面接なども実施してくれ、選考通過率を高めるうえで大きなアドバンテージになります。未経験からの挑戦であっても、適切な求人を紹介してくれるほか、自分では気づかなかった強みや適性を引き出してくれるケースも少なくありません。
マイナビエージェントでは、製薬業界や医療業界に精通した専任のキャリアアドバイザーが、あなたの希望や経験をもとに最適な求人を紹介します。未経験からMRを目指す方には、必要なスキルや資格取得のアドバイスを丁寧に行い、選考対策や書類添削、面接の模擬練習も徹底サポートします。
経験者には、これまでのキャリアをさらに活かせるポジションや、将来のキャリアパスまでを見据えた提案をします。MRとしての第一歩を踏み出したい方は、ぜひ一度マイナビエージェントにご相談ください。
MRは医療に貢献する魅力的な仕事であり、高い専門性と営業スキルが求められる職種です。平均年収は高く、キャリアパスも豊富ですが、未経験からの転職にはしっかりとした準備が欠かせません。業界のトレンドを把握し、自分自身の志望理由を明確に伝える力、そして必要なスキルや資格をしっかりアピールできることが、選考通過のポイントです。
また、転職活動を効率的に進めるためには、転職エージェントを活用するのが効果的です。MRへの転職を成功させたい方は、製薬・医療業界に精通したキャリアアドバイザーが在籍するマイナビエージェントをぜひご活用ください。
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