更新日:2024/01/18
ITエンジニアの最終目標といわれる「ITコンサルタント」ですが、企業(人)によって定義や解釈が異なる職業でもあります。
そこで、まずは一般的にITコンサルタントと呼ばれる職種の、基本的な仕事内容をご紹介します。
さらに、ITコンサルタント全般に求められる能力についてまとめました。
目次
ITコンサルタントとは、顧客の「経営や業務上の重要な問題点」を集約し、それらをIT(Information Technology・情報技術)によって解決して「会社や事業を成長させる」職業です。
具体的な仕事内容ですが、「Webページの改善提案」から「課題解決のためのシステム開発」まで、ITが関係するあらゆる部門(分野)にわたります。
同じIT職であるプログラマーやSE(システムエンジニア)の上位職というイメージもありますが、それらの経験者であれば誰でもできる職種ということではありません。また、インフラやネットワーク、サーバー周りなどのエンジニアが、ITコンサルタントを目指すこともできます。
ITコンサルタントは、企業業績や業務の改善、事業の売上といった成果に直結する仕事ですので、何かひとつずば抜けた能力を持っているプロフェッショナルではなく、「総合点の高さ」が求められます。
そのため、初めからITコンサルタントという人はそれほど多くなく、IT関連のさまざまな仕事を経験してから就く例がほとんどです。
IT業界にいる人でも、意外と勘違いしやすいのがITコンサルタントとSEの違いです。どちらもクライアントの課題をITの技術で解決する点に変わりはありませんが、仕事のスタンスには大きな違いがあります。
SEの場合、「事前に顧客が答えを持っている」という前提で仕事を進めます。例えば、「これまで紙で管理していた全社員の業務報告書をデータで一元管理したい」という顧客の要望(答え)をもとに、それを解決するためにシステム開発をします。
しかし、ITコンサルタントの場合は、「顧客が具体的な答えを持っていない」仕事がほとんどです。漠然と「会社を良くしたい」「成長させたい」と考える経営者からの依頼は、広くその業界全体について調査した上で多角的に分析する必要があります。そして、そのデータを基に「御社が成長するには...○○が必要である」「××の改善が必須」などと顧客にプレゼンテーションし、同意を得られたプロジェクトの開発を社内外の協力者と一緒に進めていくことになります。
つまりITコンサルタントには、「クライアントの業界や業務全体を見通す力」と「提案する力」が、SE以上に求められるのです。
ITコンサルタントの仕事の領域は多岐にわたるため、業務によって呼び名や仕事内容が変化することがあります。
今回は、ITコンサルタントの仕事を大きく4つに分けてご紹介します。自身のスキルや目標に合致するITコンサルタント職を見つけてください。
「ERP」とはEnterprise Resource Planningの略で、直訳すると「企業資源計画」となります。
ERPコンサルタントの主な仕事内容は、業務システムの見直しや統合を図ることです。情報を一元管理するソフトウェアを導入することで、各種業務の効率化を図ると同時に、経営サイドが全体の(経営)状態を把握しやすくします。
なお、一元管理するためのシステムは、全社の業務を最適化する「統合型ERP」だけでなく、業務単位で導入することで追加や拡張を容易にする「コンポーネント型」、単独の業務に特化した「業務ソフト型」、インターネットを介してアプリを使う「クラウド型」など、さまざまなタイプが存在します。
当然、クライアントの規模や業種によって求めるタイプは異なります。各社が抱える経営課題を深く分析し、最適の提案を行うことがERPコンサルタントに求められる能力です。
「CRM」とはCustomer Relationship Managementの略で、日本語では「顧客関係管理」といわれることが多いです。企業がCRMを導入すると、顧客満足度が上がると同時にブランド力も強化されますから、結果として「長期的な顧客関係を築く」ことができます。
CRMコンサルタントの仕事は、顧客のニーズを把握して、それに合ったサービスを提供するしくみの構築やサポートを行うことです。戦略を描き、体制とプロセスを整えて、必要なIT技術(システムなど)を導入していきます。一度、クライアントのサービスを利用した人(顧客)を「お得意様に変える」ことが最大のミッションです。
「PMO」とはProject Management Office(Program Management Officeという場合もあります)の略で、企業内で推進される各プロジェクトの事務作業や業務支援、管理を行うとともに、全プロジェクトを成功へと導く役割を担います。
例えば、該当するプロジェクトの「プロセス」「情報」「ツール」「ビジネス」「人材」などを分析して改善点を提案し、実行まで幅広くフォローしていきます。
企業では数多くのプロジェクトが同時並行で進んでいますが、それぞれに問題が発生したとき、現場監督であるプロジェクトマネージャー1人では対処しきれない場合もあります。そのようなとき、PMOコンサルタントがサポートを行うことで、プロジェクトを成功へと導くわけです。
「SCM」とはSupply Chain Managementの略で、仕入れから販売に至るまでの各プロセスを「一連なりのチェーン(鎖)」としてとらえ、全体の最適化を図るための経営手法のことです。
SCMコンサルタントは、「開発」「発注」「生産」「出荷」「物流」「販売」などのプロセスに問題があるかを分析し、課題の解決や収益改善を支援していきます。
SCMの導入によって顧客は「欲しいときに欲しいものを買う」ことが可能になり、企業側も無駄な在庫や滞留時間を圧縮できるようになりました。SCMを構築するためのソフトウェア(パッケージ型)も増え、ITコンサルタントの中でも活躍の場が広がっている職種のひとつといえるでしょう。
ITコンサルタントになるために、特定の資格は必要ありません。
もちろん、IT全般の知識やスキルを身に付けていることは重要ですが、それよりも重要な能力がいくつかあります。中でも代表的なものを挙げておきますので、ITコンサルタントを目指す人はぜひチェックしてください。
ITコンサルタントの仕事は、顧客が抱える業務の中から課題を見つけ、解決策を提案することがメインです。現場はもちろん、業界の傾向なども踏まえて業務を徹底的に分析します。
そこで発見した問題を論理的に考え、その場しのぎの応急処置ではなく、根本的且つ実現可能な解決案を提示しなければなりません。仮に、豊富なITの知識を持っていたとしても、それを適切に使えなければ意味がありませんし、論理的にわかりやすい説明ができなければ、顧客の理解は得られません。ITのスキルを活かす意味でも、論理的思考ができることは必須といえるでしょう。
ITコンサルタントは、経営者や管理職などの発注者をはじめ、実際に改善を図るチームのメンバーやシステム開発を行うエンジニアと連携するなど、常に「人と関わる」職業です。
仕事の成功=顧客に満足してもらえるかは、周囲の人間とどれだけ良好な関係を築けるかにあるといっても過言ではありません。もちろん、単純に仲良くなるのではなく、いかに「信頼が得られるか」が重要になってきます。
「顧客へのプロジェクト提案」「遠方のプログラマーとの連携」「業務に携わる現場の人からの聞き込み」など、コンサルティングを遂行するためには、あらゆる立場の人との適切なコミュニケーションが欠かせません。たとえ初対面であっても、相手の言いたいことを理解し、自分の意図を的確に伝える能力が求められます。
プロフェッショナルマインドとは、文字どおり「プロとしての自覚」です。
ITコンサルタントは、他の職業に比べると重要な経営情報に関わるケースが増えるため、高い職業倫理や強い責任感が要求されます。また、任された仕事だけでなく、相手の期待を超えるような「付加価値」を生み出す必要もあります。
これを実現するためには、常に自分の中で高い基準を持ち、顧客の満足を得るための努力をし続けなければいけません。
複数のプロジェクトを並行して行うITコンサルタントには、それらをまとめるマネジメント力が必要不可欠です。
自分の仕事だけではなく、関係者の仕事の進捗や問題点なども把握し、予算内且つ期限どおりに、高い品質でプロジェクトが進んでいるかなど、全体をしっかり把握して、都度修正する(してもらえる)能力を身に付けましょう。
すべては「顧客の満足」のために仕事を行うサービス業であるITコンサルタント。
顧客が置かれた状況によっては、無理難題とも思える課題を与えられる場合もあるでしょう。そのようなときも、問題を論理的に解決できるよう、肉体的にも精神的にもタフでなくてはなりません。
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