商品を世に送り出すメーカー企業は、就職先として常に人気があります。中でも花形の部署は「企画職」や「研究・開発職」といえるでしょう。これらの職種は、アイディアや研究成果を形にするのが仕事ですが、新商品を作るには多くの予算と時間が必要になります。
こうした現場で欠かせない職種のひとつが「生産技術職」です。ある商品（製品）の生産に際し、予算や時間、材料調達などのコスト管理を行うことで「工場の生産性を向上させる役割」を担います。さらに、生産ラインに問題が発生したときは、原因を究明して復旧させる責任を担うなど、決して目立つことはありませんが、なくてはならない「縁の下の力持ち」的な存在といえるでしょう。

活躍の場は海外の工場へと拡大中

生産技術は技術職のひとつですが、文系出身者でも問題なく参入できるマネジメント部門としても注目を集めています。さらに、海外へ進出しているメーカー企業では、日本独自の生産品質を現地の従業員に伝授することも求められるようになりました。すでに海外工場を持っていたり、これから海外に進出したりする企業で生産技術の職に就くと、国境を越えて活躍できる可能性があるわけです。

しかし、日本の生産技術のクオリティは世界基準で見ても高く、現地の従業員にはなかなか理解されなかったり、実行に移せなかったりするケースもあるといわれています。また、一時的に達成できたとしても、時間経過とともに形骸化して生産性が下がってしまった例もあるようです。このため、海外の工場で生産技術職を任されたときは、粘り強く指導を続けて、製品の品質やコスト意識、納期を厳守することの大切さを伝えていく必要があるでしょう。

日本の工場ではルールを守ることが大前提で、それを厳しく運用してきたことが品質や安全性、ひいては日本製品の信頼につながってきました。一方、海外の工場では、従業員を褒めすぎると油断したり、厳しく接すると反抗したりサボったりする場合もありますので、意識の異なる人々の個性や国民性などを把握した上で、指導を続けなければなりません。それでも、望ましい生産技術が達成されて生産が軌道にのれば、工場のみんなと喜びを共有できる魅力ある仕事といえるでしょう。

文系でもなれるが他業種からの挑戦は大変

商品の生産管理、工場の生産性向上という仕事内容は、どうしても一定の知識や経験がないと務めることができません。そのため、他業種から生産技術職へ正面切って転職するのは、かなりハードルが高いとされています。しかし、生産技術やプロセス開発などの経験が一切ない人への門戸が、完全に閉じられているわけではありません。
未経験で生産技術の世界に飛び込みたい人には、「未経験者歓迎」と掲げている企業を探すか、アシスタントを募集している企業にあたりましょう。そして、生産ラインで活躍した経験を基に、生産技術職として独り立ちを目指すわけです。あるいは、メーカー企業の他の職種に転職し、そこで得た知識やスキルをアピールして、配置転換で生産技術に就くという道も考えられるでしょう。

生産技術は、多くの人に向けて安価で高品質の商品を提供する下支えをすることが仕事内容ですから、社会貢献にもつながっているといえます。また、工場の生産ラインは、メーカー企業にとって命綱ともいえる存在であり、会社が多額の投資を行って築いた「事業の基盤」のひとつでもあります。実際の業務は外には見えない内容ですが、工場から出て行く商品は、世の中で普及している物や人々の生活に役立っている物ですから、高いモチベーションを持って働くことが可能です。

生産技術職の具体的な職務内容

もし、短期間に多くの製品を製造できれば、生産効率は上がりますが品質は落ちやすくなります。一方、製品の品質やラインの歩留まり（期待生産量と実際に生産した良品数の比率）を高めようとすると生産数が落ちますから、収益性は低下するかもしれません。また、納期に間に合わないリスクも生じてしまいます。

生産技術職には、「品質」と「効率」という、双方を引き上げると矛盾が生まれそうな要素を、バランス良く高めることが求められます。高品質と高効率の両立こそが、生産管理に携わる人間が問われる最大の課題であり、腕の見せ所といえるでしょう。

そのために、工場を隅々まで見回して設備や備品の配置を調べ、動線をチェックし、現場で働く従業員からの聞き取りを行います。こうして集めた情報を分析し、現在の生産ラインに生じている非効率な部分や不具合、従業員への危険性といった課題を発見することが重要です。
課題を見つけたときは、関係者に改善を提案していきます。施設や設備の大規模な修繕が必要と判断された場合は、計画やスケジュールを組み、必要な資材や器具などを決めることも生産技術の仕事です。さらに、修繕作業や稼働テストなどを指揮し、工場が早期に生産体制を整えられるようにします。

生産ラインの再稼働後、修繕した箇所に不具合が生じることもあります。その場合は、責任を持ってさらなる改善に挑まなければなりません。工場全体を常に良くすることが求められる大変な仕事ですが、働く人のことを第一に考えて効率を追求することで、現場で頼られる存在になれるでしょう。

工場で使用する設備や工具、備品、商品の材料、生産過程などは、日々進歩しています。消費者や取引先からは、さらなるコストカットや納期短縮を求められることもあります。工場の生産プロセスの改革を進め、より効率的な量産体制を整えるためには、最新情報を積極的に学ぶ姿勢も必要です。

生産技術職に適性がある人

生産技術という職種は専門性が高く、求められる経験や能力のレベルが比較的高い分野といえます。そうした知識や経験、スキルとは別に、生産技術を担う人が持っていたほうが良いとされる能力を2つご紹介します。

集団の調整力がある人

生産技術職に向いているのは、集団の「調整役」として自然に活躍できる人です。企画開発部門と生産現場をつなぐパイプ役を果たす必要があるため、人とのコミュニケーションが好きな人ほど向いているといえます。

探究心がある人

出来上がったマニュアルに沿って仕事を進めるのではなく、改善すべき点や不具合について「論理的思考」で原因を突き止めようと考えられる人も生産技術職に向いています。また、予算の許す範囲内で、生産性の向上を図る難しさもあります。潤沢な予算があれば誰でも生産性を上げられますが、とても生産管理のプロの仕事とはいえませんし、そのようなメーカー企業は皆無でしょう。
予算や期間に制約が課せられた中で結果を出すことや、限られた設備や人員で生産性を上げることにやり甲斐や喜びを感じられる人であれば、たとえ異業種からの転職でも積極性を持って仕事に取り組めるはずです。

生産技術職への転職に有利な資格

生産技術職に就いている人は、大学・大学院卒で約8割を占めますが、コミュニケーション能力や粘り強い探究心があれば、高校卒でも活躍できます。性別も男性が圧倒的に多い職種ですが、もちろん女性にも門戸は開かれています。広い視野を持ち、常に生産性の改善を考え、努力し続けられる人材が求められていますが、所持していると有利になる資格やスキルもありますので、転職を考えている人は取得を目指してください。

生産技術の開発（治具の設計など）は、CADで行うことが増えています。このため、「CAD利用技術者試験」に合格しておくといいでしょう（2次元CADと3次元CADにコースが分かれていますが、どちらを実務で使用するかは企業次第なのでご注意ください）。
また、在庫管理などはすべてPCで行うのが基本ですから、表計算ソフトなどの基礎技術やプログラミング知識があることを示す資格を取っておくと望ましいです。さらに、海外に製造拠点を置いている企業への転職を目指すときは、英語などの外国語コミュニケーション能力を示すため「TOEIC」や「英検」などを取得しておくと有利です。

生産技術職ならではのデメリット

生産技術職は、点検や修繕、改善などが主な任務になるため、生産ラインが止まっている休日に出勤しなければならない可能性があります。また、多くの生産拠点がある企業の場合は、出張だけでなく、転勤や海外赴任の機会があります。家族がいる場合は、新しい住環境に移ることを説得しなければなりませんし、場合によっては単身赴任になってしまうかもしれません。

生産技術職のキャリアプラン

生産技術職は、工場の全体像を把握している立場ですから、生産ラインの運用責任者、さらに工場長などの重要ポストに登用される可能性が高くなります。さらに、その後のキャリアとして、役員や社長に抜擢されるケースもあるでしょう。

生産技術職ならではの職務経歴書の書き方

職務経歴書を書くときは、経験者であれば、どのような仕事をどれぐらいの期間で行い、どんな経験や技術を身に付けたかを、できるだけ具体的に記載するようにします。また、生産技術職は未経験であっても、多くの人々の管理や指導したマネジメント経験、コミュニケーションによって各部署の利害調整などを行った職務経験などを記載することで、適性や将来性をアピールできます。

マイナビエージェントでは、専任のキャリアアドバイザーが履歴書や職務経歴書の書き方をアドバイスしています。特に、未経験や他業種からの転職を希望する場合、これらの書類はとても重要になりますので、生産技術職を目指す人はぜひ転職支援サービスにお申し込みください。

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