更新日:2024/06/21
AI(人工知能)は、スマートフォンの音声認識や自動車の自動運転、さらには膨大なビッグデータを用いたマーケティング、医療への活用など様々な分野で用いられ、急速に発展を遂げています。
その技術を支える職業が、AIエンジニアです。IT業界において、機械学習やデータ解析などのAI分野を専門とするエンジニアのことを指します。
将来的な発展や成長が見込まれる職業であり、様々な業界で人材の確保や育成に力を注いでいることも特徴です。
ここでは、IT業界の中でも、様々な業界から注目されているAIエンジニアという職業についてご紹介します。
目次
AIエンジニアの仕事は、ITエンジニアからさらに発展した業務が求められます。
具体的にどのような仕事に従事するのか紹介します。
AIエンジニアの仕事は、ビジネス上で求められる課題を、AIの専門知識や技術によって解決する役割を担当します。
AIエンジニアの分野は大別すると、AIのプログラム開発に携わるプログラム分野と、蓄積されたデータの解析・活用を行うアナリティクス分野の2種類に分かれます。
プログラミング分野では、企業の求めに応じてAIを使ったプログラムの開発・実装を行います。
アナリティクス分野では、AIによって導き出された情報を基に、ビジネスの改善に役立てることを目的としています。
AIエンジニアはITエンジニアと同じくくりで語られることもありますが、厳密に分けるとその役割は大きく異なります。
ITエンジニアといった場合、クライアントのオーダーを基に、仕様書や企画書に則ったシステムの開発を行う職業を指します。対してAIエンジニアの場合は、AIの特性を理解し、ビジネスでAIを活用する提案を、クライアントへ行うことが主です。
ITエンジニアよりもプロジェクトの上流プロセスから関わることができますが、それだけに幅広い知識、技術が求められます。プログラミングの知識や技術は当然として、AIの専門知識、数学知識、統計学への理解も必要です。
AIエンジニアの仕事を、より具体的に細分化すると、下記の3つの役割で活躍しています。
しかし、3つが完全に分かれているわけではなく、業務が一部重なることからそれぞれを兼任しているAIエンジニアもいます。
機械学習エンジニアは、プログラム分野のAIエンジニアで、プロジェクトに応じた機械学習のシステム開発や、プログラムの実装を行います。
機械学習とは、昨今のAI技術の核となる技術で、プロジェクトに必要とされる様々なデータをコンピューターに与え、反復的に学習させることでパターンを導き出したり、情報の特徴といったものを解析したりすることです。
コンピューターに反復学習させることから、学習という名称がついています。複雑なアルゴリズムを駆使し、クライアントのニーズに応えるシステム開発を行う、高度な仕事といえるでしょう。
機械学習と似たような技術として、コンピューターに反復学習を行うディープラーニング(深層学習)というものがありますが、これは機械学習をさらに発展させたものです。
データサイエンティストは、アナリティクス分野のAIエンジニアです。
大量のビッグデータから必要となる情報を分析し、導き出された結果からビジネスの状況改善のために、施策立案を行うことが役割です。AIの知見はもとより、データ分析のためのプログラミング能力や統計学といった数学的知識、問題解決のためのコンサルティング能力も求められます。
機械学習エンジニアの役割と、後述するデータアナリストの役割、それぞれの側面を持ち合わせたAIエンジニアです。
データアナリストも、アナリティクス分野のAIエンジニアです。
データサイエンティストに近い職種ですが、より専門的にデータ分析に特化しています。プロジェクトが要求する目的に対して、AI技術を駆使してデータを解析・分析し、特定のパターンや相関関係を見いだします。
企業のサービスに対するユーザーの動向や将来のニーズといったものを分析し、仮説を立てて問題解決の手段を提案したり、サービスの改善に役立てたりするのが、主な仕事です。
高度なスキルが要求されるAIエンジニアは、昨今、人材不足といわれています。
経済産業省の調査によると、IT産業の中でもAIやビッグデータ、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)を担う人材を先端IT人材と捉え、付加価値の創出や革新的な効率化等により生産性向上等に寄与できる存在として、今後急速に需要が高まることが見込まれています。
しかし、様々な問題によって人材不足が慢性化し、今後の整備が求められます。なぜ、AIエンジニアが人材不足となっているのか、その理由を探りました。
日本では、少子高齢化による影響で、労働人口の減少が進行しています。これは、AIエンジニアとして働く方も例外ではありません。
しかし、AIエンジニアなどのAI人材の需要は高まりを見せています。2018年のAI人材の需要は4万4,000人であるのに対し、2030年までに最大24万3,000人に拡大することが予測されています(経済産業省「IT人材需給に関する調査」)。
労働人口は減少しているのに、需要は増えているという状況ですので、慢性的な人材不足となっているのです。
AIエンジニアは、一般的なITエンジニアとは異なる専門性の高い技術が要求されます。
ITの基礎的なプログラムの技術を学んだ上で、さらに機械学習などのAI関連の知識・技術を学ばなければならず、一般的なITエンジニアからAIエンジニアになることは容易ではありません。そのため、現在のAIエンジニアは、主に大学院で修士や博士号を取得した人材が中心となっています。
高い専門性が必要であるがゆえに、AIエンジニアの人材は不足しがちなのです。
AI技術の発展は、主に海外企業が牽引しており、AIエンジニアの評価や収入は非常に高くなっています。日本では、IT人材の年収が500万円前後であるのに対し、アメリカでは1,000万~2,000万円のあいだと、倍以上にもなっているのです。
日本では、AIエンジニアの重要性については海外よりも遅れており、そもそもAIに対する理解度がまだ低く、ようやくその重要性に着目され始めたばかりという状態です。
前述のとおり、労働人口の減少に加えて高い専門性、AIエンジニアへの理解が遅れていたことが原因でAIエンジニアは人材不足といわれています。
しかし今後は、日本でもAIエンジニアを含むIT人材の育成強化が政府からも提案されており、さらなる好条件の求人が増えることが予想されます。
AIエンジニアに向いているのは、どのような性格の人でしょうか。
仕事内容から、全て備わっていることが望ましい、3つの素質をご紹介します。
AIエンジニアは、IT技術者のカテゴリーでくくられることが一般的ですが、機械学習に伴う大量のデータを扱う点が特徴となっています。
AIエンジニアは、主観や直感よりも、導き出されたデータを根拠とし、情報と冷静に向き合う論理的な思考能力を持つ方が向いているといえるでしょう。
AI技術は、まだまだ大きな発展の余地を秘めており、変化の多いIT業界の中でも特に進化が著しい分野といわれています。
AIに関する知識や技術の進化に対して常に新しいことを習得するという好奇心と、貪欲さを持っていることが大切です。
AIエンジニアは人口が少なく、プロジェクトの中でもAI担当は自分一人だけ、というケースもありえます。
単独作業でもモチベーションを失うことなく、粛々と作業を進めるタイプのほうが、AIエンジニアには向いているといえます。
AIエンジニアになるために必要なスキルは多岐にわたりますが、明確な資格は整備されていません。
そのため、自主的にスキルの習得や学習を行うことが必要です。
下記に、AIエンジニアとして必要といわれる主なスキルや知識について紹介します。
AIエンジニアは、機械学習の基本的な知識や技術はもちろんのこと、昨今ではディープラーニング(深層学習)の活用も求められます。
前述したように、ディープラーニングは機械学習をより発展させたもので、人間の神経回路を基にしたニューラルネットワークと呼ばれる仕組みを用い、AIそのものが膨大なデータから学習・予測するという技術です。
プログラミング言語として、AI開発に用いられるのが汎用的プログラム言語「Python(パイソン)」です。
AIエンジニアは、基本的なプログラミングスキルに加えて、Pythonへの理解も不可欠といわれます。
PythonはAI技術との相性が良く、ディープラーニングのプラグラムにもPythonが使用されています。
ディープラーニングによる学習でもたらされたデータは、オープンソースとして公開されているため、様々なスキルを持つ人々が利用することで、プログラムの開発期間とコストの短縮につながっています。
こうした要素も、Pythonが普及している理由です。
AIを用いて大量のビッグデータを集めたあと、どのように解析するかという点についても、知識が求められます。
そのために必要な知識とは、数学です。統計学を筆頭に、線形代数や微積分などの数学的知識があることで、AI開発だけではなく、データの活用という面でもスキルを発揮することができるでしょう。
AIエンジニアに向いている人として、論理的な思考ができる人を挙げましたが、むしろ必須のスキルともいえるでしょう。
IT関連のエンジニアの中でも、AIエンジニアはデータを扱うことが多く、論理的な理解力や思考力が求められます。曖昧なスタンスでは膨大なデータを正確に扱うことはできず、何事もロジカルに取り組むという姿勢が必要です。
SQL(エスキューエル)はデータベース言語の一種です。
データベース言語とは、データベースの定義や操作・制御を行う際に使われます。データベース言語であるSQLの特徴として、ISO(国際標準化機構)で標準規格化されている点が挙げられます。標準規格であるため、一度覚えてしまえば、他のデータベースにも応用することが可能です。
現在、ビッグデータに注目が集まっていることもあり、膨大なデータをAIに活用する意味でもSQLに対する知識の重要度は高まっています。
昨今は、Amazon Web Services、Microsoft Azure、Google Cloud Platformといった、海外の大手IT企業が運営するクラウドサービスが充実し、それぞれから機械学習ツールが提供されています。
企業にとってAIは、専門的人材の確保や大量のリソースが要求される点など、まだまだ容易に導入できる分野ではありません。そのため、これらのサービスに精通していれば、比較的容易にAIを活用したビジネスプランを、企業に対して提示することができます。
多くの可能性を秘めたAI業界では、論文の公開が活発に行われていることも特徴です。
将来的なAI分野の発展を見据えて、常に情報網を張り巡らせておくことも重要です。また、最先端の論文は海外から発信されることがほとんどですので、英文の理解力も必要となります。
AIエンジニアになる上で、明確に必要な資格はありません。とはいうものの、AI技術の進化は目覚ましく、わずか数年で学んだ知識・技術が役に立たなくなることも珍しくはありません。そのためAIエンジニアは、第一線で活躍する中でも、常に最先端の技術や知識を学習していく姿勢が求められます。
下記に紹介するのは、最先端の技術を学ぶ上で目指したほうが良い、資格試験や検定です。これらに挑戦することで、AIエンジニアに必要な学習を、さらに深めることができるでしょう。
基本情報技術者試験は、経済産業省が主催する国家試験であり、IT技術者にとっては基礎入門的な役割を果たします。
ITや情報処理の基本的な技術や知識だけではなく、経営やマネジメントについても一定の知識が必要であるため、IT分野全般を学ぶことができます。
G(ジェネラリスト)検定は、ディープラーニングをビジネスに活かすための知識を持っているかを証明する資格です。
E(エンジニア)資格は、ディープラーニングを実装するエンジニアとしての技能を持っているかを証明する資格です。
Python 3 エンジニア認定試験は、一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会が実施している民間資格です。プログラミング言語・Pythonの、基礎的な文法を理解していることを認定します。
統計検定は、統計に関する知識や活用法を有しているかを検定する全国統一試験です。
AIエンジニアの仕事に就くためには、主に3つの選択肢が考えられます。
AIエンジニアとして就職するためには、まず大学の理学部、工学部、情報工学系の学部や学科などでAIについての専門知識を身に付け、AI人材を求めているIT企業へ就職するパターンが考えられます。
大学からさらに大学院へ進学して卒業し、博士号を取得していると、AI分野の研究開発を担う大手企業への就職も視野に入ります。
ただし、大学院では修士課程で2年、博士課程で3年の計5年の履修が必要となり、就職までには最短でも5年を必要としますので、学費も考慮しなければなりません。
AIを仕事にするのは、企業への就職だけが選択肢ではありません。
広く募集されているわけではありませんが、大学の研究室に職員として残ることで、AI研究に携わるという道もあります。
研究室は日進月歩のAI技術に従事する上で、常に最新のAI研究の現場にいられるというメリットがあります。他にも、大学と協賛している企業へ転職できる可能性もあるでしょう。
前述のとおり、日本でもITエンジニアの需要が高まりを見せており、AIエンジニアの養成コースを開講する専門学校も増えています。
Pythonなどのプログラミングの基礎をはじめ、機械学習、ディープラーニング、ビッグデータ分析など、AIエンジニアに欠かせない最先端技術を、総合的に学習することができるのです。
このような専門学校で基礎をしっかりと身に付けて、AIエンジニアを目指すのも良いでしょう。
AIのさらなる発展に伴って、ますます需要が高まるAIエンジニア。その仕事は、生活の様々な分野にまで浸透し始めています。
世の中をもっと便利にし、これまでの常識を変える仕事に携わることも、夢ではありません。
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