更新日:2024/11/26
この記事のまとめ
テストエンジニアはIT製品の安定した品質を維持するうえで欠かせない職種です。しかし、さまざまな理由から「テストエンジニアには将来性がない」という声も聞かれます。テストエンジニアとしての将来に不安を感じている人もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、テストエンジニアに将来性がないといわれる理由や将来性のあるテストエンジニアになる方法を解説します。テストエンジニアとして活躍し続けるためにも、描けるキャリアパスや転職を成功させる方法を把握しておきましょう。
目次
テストエンジニアに将来性がないといわれる理由のひとつは、技術の進歩によるIT業務全体の変化です。これまでにも、ITスキルやシステムの進化により、需要のなくなったスキルや業務があります。また、テストエンジニアの業務内容や待遇に不満を抱くエンジニアも少なくありません。ここでは、テストエンジニアの将来性について詳しく掘り下げていきます。
IT業界では、AIの活用や高性能な開発ツールの普及が進んでいます。これはテスト業務においても同じです。
人の手だけで膨大なテストケースをすべて網羅するには時間もお金もかかるため、従来は重要なケースに絞ったテストを行うのがセオリーでした。しかし、AIや開発支援ツールを使えば、テスト業務の自動化が可能です。労働力の削減はもちろん、網羅的なテストによる品質向上というメリットもあるため、今後使用範囲がますます拡大していくのは自然な流れです。
そのため、AIや開発支援ツールの普及に伴ってテストエンジニアの需要は減少していくのではないかとの見方があり、「テストエンジニアには将来性がない」と判断される一因となっています。
従来、インターネットはコンピューター同士をつなぐためのもので、パソコンやサーバーなどのIT関連機器が接続されていました。しかし近年はスマートフォンやタブレットはもちろん、家電や車、家のドア、猫の首輪にいたるまで、さまざまな「モノ」がインターネットにつながるようになっています。これを「IoT(Internet of Things)」と呼びます。
IoTを使えば、遠隔からのコントロールやモニタリング、情報共有が可能になり、さまざまな課題解決にも利用できます。このような技術革新は、テスト業務を含むさまざまなIT業務のあり方を大きく変えてきました。それに伴いテストエンジニアというポジションがどうなるのかは未知数な部分が多く、「将来性がない」と考える人もいます。
テストエンジニアが業務に取り掛かるのは、開発工程の仕上げ段階です。設計や実装作業の段階で遅れが生じると、テスト業務にしわ寄せが来ます。納期に間に合わせるためには、残業やハードスケジュールをこなさなければなりません。計画段階で無理なスケジュールが組まれれば、さらに過酷な労働環境になってしまうでしょう。
常に人員が不足している現場も少なくありません。開発側から無理な要求やテスト内容の変更を求められることもしばしばです。しかし業務の割に給与はほかのITエンジニアと比べて低いため、「将来性がない」と判断されることがあります。
テストエンジニアの仕事はテスト作業だけではありません。しかし、未経験からの転職やスキルが高くないテストエンジニアであれば、単純作業の繰り返しとなるテスト業務に終始することになってしまうでしょう。仕様書にしたがって動作を確認するというテスト業務に裁量権はありません。職種名に「エンジニア」とついてはいるものの、クリエイティブな側面がないためにやりがいを感じられないこともあるでしょう。
実際には、スキルや経験を積んでいくと業務への取り組み方は大きく変わります。しかし、それに気づかないまま「将来性がない」と判断し、辞めてしまうケースは少なくありません。
AIによる業務の置き換わりやテスト業務の実情など、テストエンジニアの将来性を疑問視させる要素は確かに存在します。しかし、やり方しだいでは将来性のあるテストエンジニアになることも可能です。ここでは「将来性のあるテストエンジニア」とは何なのか、どうすれば目指せるのかについて解説します。
テストエンジニアはその役割により、「テストエンジニア」と「テスター」に分けられます。厳密な定義はありませんが、「テスター」とは仕様書のテスト手順、テストケースにしたがって総合テストを担当するエンジニアのことです。それに対して「テストエンジニア」は、計画・設計、テストの上流工程や開発側への改善提案など、より幅広い業務範囲を担当します。AIに置き換わりが可能なのは「テスター」の業務範囲です。
もちろん、誰でも最初は「テスター」業務から始め、スキルや経験を積んでいくことになります。しかし、変化の激しいIT業界で生き残っていくためには、AIに置き換えができない人材へのステップアップが必要です。真の「テストエンジニア」を目指してスキルアップを図れば、将来性を「ない」から「ある」に変えられるでしょう。
AIによる業務の置き換わりが進んでも、コミュニケーションを必要とする業務やチームのマネジメントの自動化は困難です。古いシステムや属人化している領域がある場合も、その業務に長年携わってきたエンジニアの存在は欠かせません。プログラム言語を習得するとテスト業務をさらに効率的に進められ、安全性をより高められるでしょう。
テストエンジニアとしての将来性を「ない」から「ある」に変える方法は、AIではできない業務を担える人材になることです。現在の業務に必要な最低限のスキルや知識に加えて幅広い業務知識や経験を身につけることで、AIに職を奪われることなくテストエンジニアとして活躍し続けられるでしょう。
転職もテストエンジニアとしての将来性を高めるひとつの方法です。転職目的は「待遇や給与を変えたい」「キャリアアップしたい」「キャリアチェンジしたい」など人によって異なりますが、待遇や給与がよりよい企業へ転職できれば、不満や不安は解消されます。
同じ職場では決まったテストしかできない場合でも、転職することで異なる経験を積み、スキルや知識を伸ばしていける可能性は十分あるでしょう。努力して新たなスキルや知識を習得したのであれば、転職を機に職種のグレードアップもできます。テストエンジニアとしての将来性に不安を抱かせる要因は、転職によって払拭可能です。
将来性のあるテストエンジニアとは、AIにはできない仕事ができる、幅広い業務を任せられる人材のことです。将来性のあるテストエンジニアになるためには、スキルや知識、能力を磨いていかなければなりません。ここでは、どのようなスキルを磨けばよいのかハード面とソフト面に分けて解説します。
テストエンジニアとしてのキャリアアップを目指し、スキルや知識を磨いていきたいのであれば、現在取得しているスキルに加えて以下のスキルや知識を学ぶとよいでしょう。
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業務を通じて身につけていきたいスキルや能力もあります。特にソフト面でのスキルは、AIによる置き換わりがしにくい部分であるため、意識しておくことが重要です。テストエンジニアとしてより大きな責任を担える人材になるためにも、ぜひ身につけましょう。
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将来性のあるテストエンジニアとしての道を切り開いていくためには、キャリアパスを見据えた勉強や準備が必要です。ここでは、テストエンジニアとして目指せる5つのキャリアパスを紹介します。
キャリアパスの中には、テストエンジニアとしてキャリアアップしていくものと、キャリアチェンジするものとがあります。それぞれに必要なスキルや能力が異なるため、できるだけ早くキャリアパスを見定め、準備を始めることが重要です。
決められた手順でテストを実行するだけでなく、どのようにしてテストを実施するのかといった設計から提案、テスト結果の判定・報告まであらゆるテスト業務に対応できるのがテストエンジニアのスペシャリストです。スペシャリストは、システムの要件やセキュリティ要件、パフォーマンス要件などさまざまな要件を把握したうえでスケジュールどおりに進められるようにテストの計画を立てなければなりません。
スペシャリストを目指すのであれば、システムのテストに関する幅広い知識を身につけましょう。テスト工程だけでなくシステム全体を理解できるようになることで、スペシャリストへとキャリアアップしていけます。
テスト業務はチームで進めます。チームをまとめていくのがテストリーダーやテストマネージャーで、チーム全体を統括・管理し、計画どおりに業務が遂行されるよう監督します。顧客に対する利用ケースのヒアリングや協力要請などもテストマネージャーの仕事です。
システム開発の経験やプログラミングスキルを兼ね備えたテストマネージャーであれば、高収入も狙えます。テスターからテストリーダー、テストマネージャーという道筋はキャリアアップの王道です。
テストアナリストは、テストケースの選択や実施を分析する職種です。テストで不具合のあったソフトウェアの分析や対処方法の提案なども請け負います。
業務上、顧客や製品の利用者が求める機能や性能を把握する必要があります。そのため、テスト業務に関わる高い知識やスキルだけでなく、システムや電子機器に関する知識も必要です。
品質管理コンサルタントはQA(Quality Assurance)エンジニアとも呼ばれます。製品の品質管理・品質保証を行うのが仕事です。製品の使いやすさやデザイン、サービスなどの問題をチェックする役割も担います。
テストエンジニアは開発段階の製品やサービスをチェックしますが、品質管理コンサルタントは完成した製品やサービスの動作性、耐久性といった品質を確認する職種です。コンプライアンスが重要視される昨今のビジネスシーンを考えると、品質保証の専門家である品質管理コンサルタントの需要は今後も拡大していくことが予想されます。
プログラミングのスキルを身につけ、プログラマーへとキャリアチェンジを果たすテストエンジニアも少なくありません。ただし、同じ職場や現場で職域変更できるケースはまれです。プログラマーを目指すのであれば、転職を視野にキャリアパスを組み立てましょう。
テスト工程をプログラマーが兼務する現場も多いため、プログラマーへのキャリアチェンジは転職先の選択肢も大きく広げてくれます。テストエンジニアとしての経験も十分に発揮されるでしょう。
転職は、テストエンジニアとして将来を切り開いていくうえで大きなチャンスとなり得ます。しかし、やり方を間違えると後悔につながりかねないため、準備をしっかりと行い転職を成功に導きましょう。ここでは、テストエンジニアからの転職を成功させ、キャリアアップ、キャリアチェンジにつなげる方法を解説します。
まずは、自分のキャリアパスをしっかりと思い描くことが重要です。待遇や収入に不満がある場合は、職場環境や労働環境、年収などが転職先の決め手になるでしょう。スキルや経験値を上げたいのであれば、たとえ収入が下がっても、学べる環境が整備された転職先を探すのが正解です。
テストエンジニアとしてキャリアアップを目指すのか、キャリアチェンジして新たな道を進むのかでも転職先は大きく異なります。キャリアパスが決まっていなければ、自分の目指すゴールへの道筋が見えないため、転職がかえって遠回りになってしまいかねません。
IT関連スキルにはさまざまな資格があります。資格取得は勉強するモチベーションを高めてくれるだけでなく、自分のレベルややる気を客観的に第三者へ証明できるため、転職の際にも有利に働くでしょう。ポイントは、自分のレベルと目指すキャリアにマッチする資格を選ぶことです。以下のような資格を検討してみましょう。
<テストエンジニアとしてキャリアアップする場合>
・ソフトウェア品質技術者資格認定
・IT検証技術者認定試験
・JSTQB認定テスト技術者資格
<IT関連のエンジニアとしてキャリアチェンジを目指す場合>
・基本情報技術者試験
・Microsoft認定資格
・LinuC
・シスコ技術者認定
・Oracle Certified Java Programmer
・PHP技術者認定試験
転職を成功させるうえで欠かせないのが、自分に合った転職先を見つけることです。そのためには企業研究が欠かせません。ビジネスや業務の内容だけでなく、企業の体質や求める人物像などが分かれば、ミスマッチは起こりにくくなります。時間や労力を無駄にすることもありません。
とはいえ、求人情報からすべてを読み解くのはかなり難しいのが現状です。おすすめは転職エージェントなどプロの力を利用することです。自分のレベルや目指したいキャリアを理解したうえでマッチする転職先を紹介してくれるため、転職の成功確率を上げられます。キャリアチェンジを目指す場合にも、これまでのキャリアを活かせる転職先を一緒に探してくれるでしょう。
IT技術の進化や業務内容、業務環境などの理由から「テストエンジニアには将来性がない」といわれることがあります。しかし、キャリアパスを見据えてスキルや能力を磨くことで、将来性のあるテストエンジニアになることは可能です。転職というチャンスをうまくつかみ、キャリアアップやキャリアチェンジを成功させましょう。
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