更新日:2022/05/30
この記事のまとめ
金融業界では、インターネットでの取引や非接触型のサービスが拡大しています。ここで利用される金融システムの開発に携わるのが、金融エンジニアです。未経験からのチャレンジも可能であるため、金融エンジニアへの転職を目指している人もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、金融エンジニアとはどのような職業なのか、未経験から転職するにはどうすればよいのかを解説します。金融エンジニアは将来性のある職種です。業務内容や必要とされるスキルを理解したうえで準備していけば、金融エンジニアへの転職を成功させられるでしょう。
目次
近年、インターネットバンキングをはじめとするパソコンやスマートフォンを使った各種手続き、AIを使った顧客対応機能など、金融エンジニアの活躍の場はますます広がっています。
多くの人材が必要とされているため、未経験からの転職も可能です。ただし、これは「実務未経験」という意味です。システムエンジニアに必要とされる基本知識やスキルは学んでおかなければなりません。さらに、金融エンジニアの業務内容を理解し、新しい技術を積極的に習得する覚悟も必要です。
転職先の選定を行う際には、ミスマッチを防止するために、正確な情報の収集を行います。構築するシステムや社風など、自分に合ったものかどうかを確認するようにしましょう。
金融エンジニアとは、銀行や証券会社など、金融企業で使用されるシステムに関わる業務を担当するシステムエンジニアのことです。現在、金融業界ではITによるシステム管理や商品・サービスの提供が進んでいます。事業内容に合わせたシステムを構築するのが金融エンジニアの仕事です。
金融業の種類は大きく3つに分けられます。それぞれの分野で金融エンジニアがどのような仕事を行うのか、確認しておきましょう。
銀行業務に利用されるシステムに、勘定系システムがあります。口座や融資の残高管理、預金額や融資額に対する利息計算など、勘定処理を担うシステムです。
ATM(現金自動預け払い機)で現金を引き出したり預け入れたりするたびに口座残高を更新する、クレジットカードの利用代金や公共料金などを複数の預金者の口座から一括して引き落としてクレジットカード会社などの口座に加算するなど、24時間休むことなく稼働しています。勘定系システムの構築は、金融エンジニアが神経を使って取り扱う業務のひとつです。
ほかにも、営業支援にも使われる情報系システムや事務処理に必要なシステムなど、さまざまなシステムを担当します。
保険会社で使用されるシステムは多岐にわたります。保険の種類は大きく生命保険と損害保険、共済保険とに分けられますが、サービス内容も仕組みもそれぞれ異なるため、事業内容を理解したうえでのシステム開発が欠かせません。
ひとつの保険に関しても、契約内容や入金・支払い管理、更新・変更・満期の手続き、個人契約・団体契約の取り扱い、事故受け付けや査定など、必要とされるシステムは数多くあります。それぞれを連動させることも必要です。ほかにも、経理業務や代理店、オンラインサービスなど、多くのシステムに関わります。
証券会社は、株式や債券といった有価証券の売買の取り次ぎや引き受けを行う企業です。最近はオンラインで売買ができるシステムを導入する企業が多く、顧客の裾野を広げています。利用者を増やすためには、機能的で使いやすいツールでなければなりません。金融エンジニアはニーズやトレンドを見極めながら、システム開発を行うことが必要です。
不正取引を監視・検知するためのコンプライアンスシステムや、国内外の情報を共有する情報系システム、顧客管理や事務処理のシステムなどもあります。
金融エンジニアの業務内容は複雑で、ストレスも多い仕事といわれています。しかし、やりがいや将来性のある仕事です。続けていけば、高収入も狙えるでしょう。
ここでは成功している金融エンジニアに共通する特徴をご紹介します。当てはまる人は適性があるといえるかもしれません。金融エンジニアを新たなキャリアにと考えておられるのであれば、自分にその適性があるかどうかを確認してみましょう。
金融エンジニアは、企業の業務内容や商品・サービスの種類に合わせたシステム開発を行います。なぜそのシステムが必要なのか、どのような機能が求められているのか、顧客の意図をくみ取ったうえで取り組まなければ、独り善がりなシステムになってしまうでしょう。
成功している金融エンジニアは、コミュニケーション能力の高い人です。顧客の真意をしっかりと理解し、コンピューターに関する知識がない人にも分かりやすく説明できます。
金融エンジニアが担当するシステムの多くは、金融情報や個人情報といった機密情報を取り扱います。金融システムの開発・管理を担当する場合には、セキュリティーに対する高い意識と責任感が必要です。
近年、サイバー攻撃による不正アクセスでシステムが破壊され、情報が盗用される事件がたびたび発生しています。その被害は甚大で、システム開発者の責任も重大です。金融エンジニアには、業務の重要性をしっかりと認識したうえで、慎重に取り組む姿勢が求められています。
金融エンジニアの仕事には、スピード感だけでなく正確性が求められます。計算処理の多い金融システムにおいては、ちょっとした数字の違いが大きな損失をもたらすこともあります。一度のつまずきで企業が信頼を失うことにもなりかねません。
システム開発のどの部分を担当するかにかかわらず、丁寧で正確な仕事を行うことにより、効率的で安定したシステムができあがるのです。仕事が丁寧で正確な人は、金融エンジニアの適性があるといえるでしょう。
未経験から金融エンジニアを目指す場合には、実務経験はなくても、業務に必要な知識やスキルは習得しておく必要があります。さらに、転職に有利になる知識やスキルを身につけられれば、なおよいでしょう。ここでは、未経験から金融エンジニアへの転職を果たすうえで身につけておきたい、4つの知識やスキルを取り上げます。
プログラミングのスキルは必須です。プログラミングに使用される言語にはさまざまな種類のものがありますので、金融エンジニアに必要な言語に絞って習得しておくとよいでしょう。
まず、押さえておきたいのはCOBOLです。金融業界を始めとする多くの企業や国家機関の基幹システムで使用されています。汎用性の高いJavaもよく使われます。Javaはセキュリティーに配慮した信頼度が高い言語です。コンプライアンス意識の高い金融システムに採用されることの多い言語であるため、学習しておくとよいでしょう。
プロジェクトやスケジュールの管理、顧客へのプレゼンテーションなどに便利なExcelやPowerPointなどのOfficeソフトも使えるようにしておきましょう。工程管理や進捗管理、タスクリストの作成、チェック漏れなどさまざまなシーンで活用できます。
基本的なパソコンスキルのひとつとしてOfficeソフトを習得しておくことは、社会においても常識になりつつあります。ExcelやWordで分かりやすい資料を作成すれば、顧客との打ち合わせもスムーズです。
金融業界は専門性が高いため、システム開発を担う金融エンジニアにも、金融に関する知識と理解が求められます。金融サービスの特徴や仕組みが分かっていれば、顧客のニーズを理解するのも容易でしょう。
未経験からの転職においては、必須というわけではありませんが、預金や証券、保険、カードといった金融に関する知識をもっていると有利になるでしょう。前職が銀行や証券会社、保険会社、投資顧問など金融系だった場合には、そこで培った知識や経験が活かせます。
英語を習得していることは大きなアピールポイントになります。外資系金融企業においては、英語が使えることは必須です。システム関連のやり取りはグローバルに行われるため、高い英語力が要求されます。
アジアなど海外へ業務を拡大する国内の金融機関も少なくありません。海外系システム担当や将来的な海外拠点への異動も踏まえ、英語の話せる転職希望者は有利になる傾向です。
システムエンジニアとしてのスキルに加え、金融関連の知識や理解も求められる金融エンジニアの仕事は、決して楽なものではありません。それでも金融エンジニアを目指すうまみとは何なのでしょうか。ここでは金融エンジニアに転職するメリットをご紹介します。ほかのシステムエンジニアとは異なる魅力がありますので、自分が求めるものと重なるかどうかを確認してみましょう。
金融エンジニアとして金融企業に転職できれば、高収入が期待できます。マイナビエージェントによる調査では、証券会社の平均年収は513万円、30代男性に絞ると738万円という結果が出ました。ネット銀行でも503万円であり、IT・通信・ソフトウェアベンダーといった業種より30~50万円ほど高い傾向があります。
金融業界の業績は横ばいか好調傾向にあります。新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、ITインフラへの投資も増加傾向で、金融エンジニアへの期待は大きくなっています。
近年、金融業界では、IT技術を使ったシステムがビジネスの中心になっています。現金や紙を使った取引は大幅に減少し、インターネットを使った取引が主力です。
使いやすいツール、効率的なシステム、安全な通信環境を構築できれば、収益の増加や新規顧客の獲得、コスト削減に直接反映されます。質の高いパフォーマンスが経済に大きな影響を与えることとなり、社会貢献にもつながります。
金融システムではお金や個人情報を取り扱うため、質の高いシステムの構築が不可欠です。どの工程を担当するとしても、高いセキュリティー意識が求められます。小さなミスが大きな損失につながることもあるため、丁寧で正確であることは必須条件です。さらに、スピード感をもって業務をこなしていかなければなりません。
業務において高品質を求められることが多いため、必然的にスキルアップしていきます。責任も大きいですが、高いスキルが身につけば、さらなるキャリアアップにもつながるでしょう。
せっかく金融エンジニアへの転職を果たしたにも関わらず、時経たずに離職するケースもあります。多くが、想像とのギャップにつまずいたという理由のようです。金融エンジニアの業務環境はほかのシステムエンジニアと大きく異なります。転職を目指す場合には、メリットだけでなくデメリットもきちんと理解しておくことが必要です。ここでは知っておくべきデメリットを3つ解説します。
金融システムに求められる絶対条件は、高い品質です。金融システムの不具合は、一時的な不利益をもたらすにとどまりません。企業への信頼低下や社会不安につながることさえあります。高いスキルと緻密な作業により、ミスのない安定したシステム開発に努めなければなりません。神経を使う業務であることは、理解しておく必要があるでしょう。
金融システムの開発においては、最新の法律や税制を理解しておくことも必要です。銀行で使われる勘定系のシステムでは、税金が勘定されなければなりません。法律が求める条件をクリアする形で、反社会的勢力への融資防止やマネーロンダリング対策にも取り組みます。
そのほかにも、金融関連の法律にはさまざまなものがあり、頻繁に改正されます。その都度情報をアップデートし、システムに反映させていかなければなりません。金融エンジニアには、金融関連の規制や法律に関する知識と、法改正にも対応していく柔軟性が求められます。
金融系のシステムが不具合を起こした場合の影響は広範囲に及びます。金融システムが半日ダウンしてしまうと、金融企業だけでなく顧客である多くの個人や企業のビジネスにもダメージを与えてしまいます。倒産など致命的な結果を引き起こすことすらあるのです。
「絶対に失敗できない」「システムを止めてはいけない」といったプレッシャーが、大きなストレスとなることもあります。実際にシステムトラブルが発生した場合には、怒りの矛先となってしまうこともあるため、精神的な負担を感じる人も少なくありません。
未経験から金融エンジニアに転職した場合、どのようなキャリアパスを描けばよいのでしょうか。金融エンジニアは高い技術力と精神力が求められる職種です。金融エンジニアとして経験を積んでいけば、能力の高いシステムエンジニアになれるでしょう。ここでは金融エンジニアとして目指せる3つのキャリアパスをご紹介します。
ひとつ目のキャリアパスは、ITスペシャリストを目指すことです。システム管理・セキュリティー・データベース・アプリケーション共通基盤・ネットワーク・プラットフォームのいずれかの分野でレベル3以上のスキルをもつエンジニアのことを「ITスペシャリスト」と言います。レベルは情報処理技術者試験を受けると判定されます。
ITスペシャリストになれば、収入が上がるだけでなく、より条件の良い職場への転職やフリーランスへの道も開けてくるでしょう。
金融エンジニアとしてのスキルを磨きながら、上流工程やマネジメントの経験を積んでいけば、プロジェクトマネージャーに昇進できるでしょう。
プロジェクトマネージャーとは、プロジェクト計画の立案やリソース管理、リスク管理、ステークホルダー管理など、主にマネジメント業務を担当する職種です。システムエンジニアが技術職であるのに対し、プロジェクトマネージャーは管理職として、システムエンジニアよりも上流職に位置します。
プロジェクトマネージャーになれれば、収入は大幅にアップするでしょう。転職してキャリアアップも可能です。
金融エンジニアが取り扱うシステム技術はFintech(フィンテック)と呼ばれます。「Finance(金融)」と「Technology(技術)」を掛け合わせた言葉です。FinTechは、お金の管理や支払い、資産運用など、金融に関する幅広い分野でサービスを提供しています。技術の進化に伴い、さらに「安い・早い・便利」を追求している、ITの専門領域です。
FinTechは今後も拡大と進化を続けると見込まれており、将来性の高い分野であるといえるでしょう。金融エンジニアとして、FinTechの第一線で活躍するというキャリアパスもあります。
金融エンジニアは、金融機関で使用されるITシステムに関わる業務を担当する技術者です。高収入で将来性も高い職業ですが、高い技術力や緻密な作業、強い精神力が求められます。未経験からのキャリアチェンジも可能ですが、プログラミングスキルや金融知識を勉強してからチャレンジしましょう。前職が金融系である場合には、転職も有利になります。
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