更新日:2025/05/21
この記事のまとめ
転職活動において1社の内定を承諾したものの、その後に第一志望の企業から内定をもらうケースは珍しくありません。内定承諾後に辞退は可能なのか、不安に感じる方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、内定承諾後の辞退の可否や企業に伝えるときに意識したいことを紹介します。できるだけスムーズに内定辞退の手続きを済ませるためにも、この機会に確認しておきましょう。
目次
内定辞退は、たとえ内定を承諾した後でも入社2週間前までであれば問題なく可能です。
内定に承諾すると双方が労働契約を締結したことになり、契約関係が成立します。しかし、民法第627条によると、雇用期間を定められない労働者はいつでも解約の申し入れが可能です。また、使用者の同意がなくても申し入れから2週間が経過すれば解約が成立します。したがって、内定を承諾していても辞退することは可能です。
内定承諾後に第一志望の企業から採用連絡があった場合など、辞退する必要があるときはすぐに採用担当者へ連絡しましょう。
ただし、それでも内定先の担当者に迷惑をかけることに変わりはありません。少なくとも入社の意思があいまいなまま内定を承諾するのは避けましょう。
そもそも「内定承諾」とはどのような位置づけなのでしょうか。ここでは「内定」「内定承諾」それぞれの法的な位置づけを紹介します。転職活動の選考におけるトラブルを未然に防ぐためにも、どのタイミングで労働契約が成立するのかを把握しておきましょう。
「内定」は企業が「応募者を採用し、自社の社員として働いてもらいたい」という意思を伝えるものです。この段階では、企業から応募者に対する一方的なオファーであり、承諾するかどうかは応募者に委ねられています。
企業はメールや電話で連絡したり郵便で内定通知書を送ったりして内定の旨を伝えますが、連絡を受けた時点では内定を承諾したことにはなりません。そのため、応募者はよく考えて内定を承諾するか判断し、回答する必要があります。
「内定承諾」は、企業が応募者を採用したいというオファーを受け入れ「社員として入社する」意思を表明するものです。
民法第522条によると、契約は一方が契約したいという意思を表明し、相手がそれを承諾したときに成立すると定められています。したがって、内定承諾は両者が入社に合意したこと、労働契約が成立することを意味します。そのため、内定承諾後の辞退は、「契約の解除」に該当する点を押さえておきましょう。
一般的な内定辞退と内定承諾後の辞退は、具体的にどのように異なるのでしょうか。それぞれの違いは以下のとおりです。
内定辞退は契約成立前、内定承諾後の辞退は契約成立後と、辞退する意思を表明するタイミングが異なる点がポイントです。
転職活動では、複数社の選考を同時に受けるケースが一般的です。しかし複数社から同時期に内定が出た場合、入社を希望する企業以外の内定は辞退する必要があります。また、「転職を家族から反対された」「内定通知後にけがや病気が発覚した」などの理由でやむなく内定を辞退しなければならなくなることもあるでしょう。
ただし、企業から内定辞退の詳細な理由を求められない限り、詳しく伝える必要はありません。どのような理由や事情にせよ、内定辞退の意思が固いのであれば誠意をもって企業側へ伝えることが大切です。
ここでは、転職の内定辞退を伝える際の基本的なマナーを3つ紹介します。内定辞退を決めた際には、できる限り早く連絡することが大切です。内定辞退後のトラブルを避けるためにも、誰にどのような方法で伝えたらよいのかを押さえておきましょう。
「企業の採用担当者とは今後会う機会がない」という理由から、メールのみで内定辞退の連絡を済ませるのは避けましょう。内定を辞退する旨は、可能な限り企業の採用担当者に直接伝えるのが望ましいとされています。まずは電話もしくはメールで直接話すためのアポイントメントを取り、企業の採用担当者におわびの気持ちを伝えましょう。
しかし、直接伝えるのが難しい場合や企業から断られた場合には、電話やメールでも構いません。多くの時間とコストを割いて内定を出した企業に対して失礼のない対応を心掛けましょう。
内定を辞退する場合は、なるべく早めに連絡しましょう。しかし先に第二志望以降の企業から内定通知が出てしまった場合、第一志望の選考結果を待ちたいと考える方もいるでしょう。
内定辞退について検討したい場合、内定の保留が可能です。ただし、内定の保留には上限があります。通常は2日~3日、長くても1週間が上限です。それ以上になると、内定の取り消しもあり得ます。
内定辞退の理由は誠意をもって伝えることが大切です。ただし、何でもありのままに伝えればよいわけではありません。正直さは大切ですが、伝え方によっては相手の心情を害することもあります。たとえもう二度と会うことのない相手であったとしても、社会人としての礼儀を尽くしましょう。
内定辞退の理由を伝える際は、採用担当者がどのような気持ちになるのかを推察したうえで丁寧な言葉遣いを心掛けるのが基本です。
通常、内定承諾後に辞退するときは電話かメールで伝えるのが一般的です。連絡する内容は同じですが、伝え方のマナーは電話とメールで異なります。ここでは、電話・メールそれぞれのマナーを詳しく見ていきましょう。どのように伝えればよいか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみることをおすすめします。
電話で内定辞退の連絡を入れる際に明らかにしておきたいことは、伝える内容と電話をかける時間帯です。伝える内容はメモにまとめておき、手元に置いておきましょう。具体的には、次のような内容を伝えます。
内定辞退の理由は「検討の結果」だけで構いませんが、企業によっては「なぜ自社の内定が辞退されたのか」について聞かれる場合があります。念のため、辞退理由を詳しく話せるようにまとめておくとよいでしょう。
また電話をする際には、できるだけ企業が忙しくない時間帯を選ぶのがマナーです。就業時間が9時から17時の企業であれば、14時から17時の時間帯が一般的には推奨されます。ピークタイムがある業種であれば、その時間帯を避けましょう。
メールで内定辞退を伝える場合、「内定辞退のご連絡(マイナビ太郎)」というように分かりやすい件名をつけたうえで、以下の内容を含めた文章を作成しましょう。
文章作成のポイントは、分かりやすく簡潔にすることです。読んですぐに内容が理解できる文章を目指します。なお担当者が不在でやむなくメールを出す場合は、「先ほどお電話させていただきましたが、ご不在でしたのでメールをさせていただきました」など、ひと言断りを入れるといいでしょう。
電話で内定承諾後の辞退を伝えるとなると、直接会話することになるため緊張する方も多いでしょう。ここでは、スムーズに伝えられるように電話で話すときの例文を2つ紹介します。基本的なマナーを押さえつつ的確に伝えるためにも、電話での話し方を学んでおきましょう。
【例文】
「私、御社から内定をいただきましたマイナビ太郎と申します。
恐れ入りますが、人事担当の△△様をお願いできますでしょうか」
(担当に代わる)
「お世話になっております。マイナビ太郎です。
△△様、いまお時間よろしいでしょうか。
(承諾を得る)
このたびは内定をいただき、誠にありがとうございます。大変申し上げにくいのですが、今回の内定を辞退させていただきたく、ご連絡いたしました。
御社や社会に対し、自分がどのくらい貢献できるかを熟慮した結果、ご縁を感じた他社様への入社に思い至りました。
本来なら直接伺っておわびしなければならないところですが、取り急ぎお電話でのご連絡となり誠に申し訳ございません。
御社には多大なご迷惑をおかけし、大変申し訳ありませんが、何とぞよろしくお願いいたします」
まず内定通知に対する感謝の気持ちを伝え、辞退により迷惑をかけることをおわびしましょう。その後、辞退する理由を手短に伝えます。
前もってメモを準備するのは構いませんが、台本読みにならないように注意しましょう。相手の反応を受け止めつつ、誠実に気持ちを伝えることが大切です。
【例文】
「私、御社に内定をいただきましたマイナビ太郎と申します。
お忙しいところ恐縮ですが、人事担当の△△様はいらっしゃいますでしょうか」
(担当に代わる)
「お世話になっております。マイナビ太郎です。
ただいまお時間よろしいでしょうか。
(承諾を得る)
先日は内定通知を頂戴し、心より感謝申し上げます。身勝手な申し出で大変心苦しいのですが、御社の内定を辞退させていただきたいと思い、本日お電話を差し上げました。
(理由を質問される)
応募していたほかの企業様に内定をいただきました。熟慮した結果、自分の適性を考えて、その企業様とのご縁を感じ、このような決断に至りました。
本来であれば、直接おわびに伺わなければならないところ、取り急ぎお電話でのご連絡になり、申し訳ありません。
貴重なお時間をいただいたにもかかわらず、このようなお返事となり、大変ご迷惑をおかけしました。申し訳ございません」
いきなり話し始めるのではなく、まずは相手の都合を確認します。また相手に負担をかけないように前置きは短く、内定辞退の結論を手短に伝えましょう。
内定承諾後に辞退する意思をメールで伝えるときは、電話とは異なるマナーがあります。テキストベースのコミュニケーションツールであるため、件名・宛名の書き方や文章の組み立て方などに注意が必要です。
ここでは、メールで連絡するときの参考にできる2つの例文を紹介します。例文を参考にしつつ自分の状況に合わせてアレンジすることで、スムーズに連絡できるでしょう。
【例文】
件名:内定辞退のご連絡(マイナビ太郎)
株式会社◎◎ 人事部
採用担当 △△様
お世話になっております。
先日、内定の通知をいただきましたマイナビ太郎です。
先ほどお電話させていただきましたが、ご不在でしたのでメールにて失礼いたします。
この度は内定をいただき、誠にありがとうございます。
誠に恐縮ではございますが、今回の内定を辞退させていただきたく、ご連絡差し上げました。
社会に対して自分がどのくらい貢献できるかを熟慮した結果、ご縁をいただいた別の企業への入社を決めました。
貴重なお時間をいただき、お手数をかけたにもかかわらず、このような形になり大変申し訳ございません。
本来なら直接伺ってお詫びしなければならないところですが、メールでのご連絡となりましたこと、何卒ご容赦いただきたくお願い申し上げます。
△△様をはじめ、今回の採用に関わってくださった皆様には心より感謝しております。
末筆ながら、貴社のますますのご発展を心よりお祈り申し上げます。
マイナビ太郎
〒000-0000
東京都▲▲区◯◯
TEL:090-×××-×××
メールアドレス:***@***.or.jp
メールで連絡する場合は、ビジネスで用いるフォーマルな言葉を使います。結びは定型文で構いません。電話がつながらなかった旨を記載し、メールだけの連絡ではないことを伝えましょう。
【例文】
件名:内定辞退のご連絡(マイナビ太郎)
株式会社◎◎ 人事部
採用担当 △△様
お世話になっております。
先日、内定をいただきましたマイナビ太郎です。
ご多忙ではないかと思い、取り急ぎメールにて失礼いたします。
この度は内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございます。
大変恐れ入りますが、貴社の内定を辞退させていただきたく、ご連絡を差し上げました。
就職活動を通して自分の適性を改めて見つめ直した結果、他社との縁を感じ、貴社の内定を辞退させていただくことにいたしました。
貴重なお時間を割いていただいたにもかかわらず、このような返信となり、誠に申し訳なく、心よりお詫び申し上げる次第です。
後ほどお電話でもご連絡いたしますが、取り急ぎメールにてご連絡させていただきました。
末筆ながら、貴社のますますのご発展をお祈り申し上げます。
マイナビ太郎
〒000-0000
東京都▲▲区◯◯
TEL:090-×××-×××
メールアドレス:***@***.or.jp
電話で連絡がつかない場合、先にメールで内定辞退を伝え、後から連絡する方法もあります。その場合は後から電話することをメールで事前に伝えましょう。相手から電話の連絡は不要と返信が来た場合は、電話をかける必要はありません。
内定承諾後に辞退することは可能であるものの、いくつかリスクもあります。ここでは、代表的な2つのリスクを詳しく見ていきましょう。内定承諾を辞退するか入社するかで悩んでいる方は、以下のリスクを考慮したうえで、どちらの選択肢を選ぶか判断することが大切です。
場合によっては状況が変化し、将来的に辞退した企業に入社したいと思うようになることもあり得ます。基本的に、辞退した企業に再び応募して選考を受けることは可能です。しかし、ある程度時間がたっていたとしても、企業側に内定承諾後に辞退したという記録が残っていると選考でマイナスに働くケースがあり得ます。
また、自分が入社したいと思ったときに目指すポストが空いておらず、採用活動自体をしていないこともあるでしょう。内定承諾後に辞退するときは、将来的な入社が難しくなるリスクがあることを念頭に置きましょう。
通常、内定承諾後に辞退したという事実が他社の選考に影響をおよぼすことはありません。しかし、企業によっては応募者の情報を子会社などの関連企業に共有しているケースも考えられます。そのような場合、内定承諾後に辞退した事実が関連企業の選考に影響することもあり得るでしょう。
過度に心配する必要はありませんが、関連企業への応募を検討している方は多少意識しておくことをおすすめします。
内定承諾後の辞退は自分にとっても応募先企業にとっても大きな影響をおよぼすため、可能な限り避けたほうが無難です。企業から内定をもらった後には、返事をする前にここで紹介する3つの要素をよく考えることをおすすめします。
それぞれどのようなことを意識すればよいか、疑問があるときはどのように解消すればよいかをチェックしていきましょう。
複数社に応募していて結果が出ていない企業があるときや、判断に迷っているときはいったん内定を保留して考え直すのが有効です。内定の連絡から1週間程度であれば返答を保留できるため、悩みがあるときは即答しないようにしましょう。
保留してから第一志望の企業の選考結果を待ったり時間を取って考え直したりし、どこの企業の内定を承諾するかを判断すると後悔するリスクを減らせます。迷っているときは、急いで返答しないことを心掛けることが大切です。
面接時に確認できなかったことなど、何らかの疑問点があるときは内定を承諾する前に質問して解消するようにしましょう。内定を伝えるメールに返信したり、別途質問メールを送信したりする形で気になることを確認することが大切です。
すでに選考は終了して結果は出ているため、報酬面や働き方に対する疑問なども比較的質問しやすいでしょう。重要なポイントがあいまいなまま内定を承諾すると、その後に辞退したり入社後に早期退職したりする結果になりかねないため、性急な返事は避けることが大切です。
転職を考え始めたら、できるだけ早い段階で転職エージェントに相談するのがおすすめです。どこの企業が自分に合っているのか、本当に入社してよいのか迷った場合、ひとりで悩んでいても結論に至らないケースがあります。
しかし、転職エージェントに相談すればプロのキャリアアドバイザーからサポートを受けられ、さまざまな悩みを解消できるでしょう。転職後のミスマッチを防いだり、不安を解消して自信を持って転職活動に臨んだりするうえで役立ちます。日程調整や内定辞退の連絡、給与交渉など、応募先企業とのやりとりも代行しており、転職活動全般の負担も軽減可能です。
内定承諾後の辞退リスクを低減するためにも、可能であれば転職活動をスタートする段階で相談するとよいでしょう。
内定承諾後の辞退は可能ではあるものの、契約が成立してから破棄することになるため可能な限り避けたほうが無難です。やむを得ず辞退する場合は、電話やメールで速やかに伝えましょう。
内定承諾後に辞退する状況に陥らないようにするには、時間を確保してきちんと考えて判断したり、疑問点を解消したりすることが大切です。
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