更新日:2025/05/21
この記事のまとめ
働き方改革が進む中で、注目を集めているのが「フレックスタイム制」です。出社や退社の時間を自分で調整できるこの制度は、ライフスタイルに合わせて働ける柔軟さが大きな魅力です。しかし、「フレックスタイム制のメリットは何なのか」「コアタイムとは何か」など、疑問のある方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、フレックスタイム制の概要やメリット・デメリットを紹介します。フレックスタイム制を導入している企業の探し方も解説しているため、ワークライフバランスを実現したい方はぜひ参考にしてみてください。
目次
フレックスタイム制とは、労働者が始業・終業時間を自由に決められる制度です。仕事とプライベートのバランスを取りやすくし、労働者が充実して働けるようにする目的があります。たとえば「明日は保育園の送り迎えに合わせて9時に出社して18時に退勤しよう」「来週の月曜は好きなバンドのライブがあるから17時に退勤しよう」といったように決められます。
自由に決められるといっても、24時間いつでも出退勤でき、好きな時間だけ働けるわけではありません。詳細は後述しますが、決められた総労働時間の範囲内で働かなければいけないことや、出勤しなければいけない時間帯も決まっています。
フレックスタイム制には、コアタイムとフレキシブルタイムがあったり、コアタイムのない「スーパーフレックス制」があったりなど、さまざまなルールや事前に知っておきたい注意点があります。フレックスタイム制を導入している企業への転職を決断する前に、制度への理解を深めておきましょう。ここでは、フレックスタイム制の基礎知識を解説します。
フレックスタイム制と裁量労働制は、いずれも働き方の柔軟性を高めるための制度ですが、その内容や運用方法に大きな違いがあります。まず、フレックスタイム制とは、あらかじめ決められた総労働時間の範囲内で、労働者が始業や終業の時間を自分で決められる制度です。実際に働いた時間が記録されるため、労働時間の管理は従来の方式と同様に行われます。
一方、裁量労働制は、実際の労働時間に関係なく、あらかじめ「この仕事は何時間働いたとみなす」と決めた時間で賃金や勤務時間を計算する制度です。主に専門的な職種や企画業務に適用されており、業務の進め方や時間配分を労働者が自らの裁量で決められます。
フレックスタイム制には、「コアタイム」と「フレキシブルタイム」があります。コアタイムは就業しなくてはいけない時間帯のことです。フレキシブルタイムは、自由に出退勤ができる時間帯のことで、コアタイムの前後に設けられます。フレキシブルタイムに遅刻や早退はありませんが、コアタイムの開始時間に遅れれば遅刻扱いになり、コアタイムが終わる前に退社すれば早退扱いになります。
フレックスタイム制は、労使協定によって定められた清算期間と総労働時間にしたがう必要があります。清算期間とは、労働者が働く時間を定める期間のことです。たとえば「毎月26日~翌月25日までを清算期間とする」といったように決められています。
総労働時間は、清算期間内で働く時間のことです。清算期間が1ヵ月で総労働時間が160時間であれば、160時間を超えると残業扱いになります。
自由度の高いフレックスタイム制は、適切に労働時間を管理しないと長時間労働や賃金未払いなどのトラブルが発生する恐れがあります。そのため労使間で出退勤時間と労働時間をきちんと記録しなくてはいけません。労働時間の管理方法は企業によってさまざまですが、タイムレコーダーや勤怠管理ソフトなどで管理する方法が多いようです。また労働者側も自分で勤務時間を記録し、会社に提出する必要があります。
スーパーフレックス制は、出勤・退勤の時間を自由に決められる制度です。フレックスタイム制と違ってコアタイムが存在しないため、より自由度の高い勤務形態といえます。遅刻や早退をすることもありません。
フレックスタイム制について、まだよく知らない人も多いのではないでしょうか。転職先の条件にフレックスタイム制を加える場合、ささいな疑問も解消しておくとよいでしょう。ここでは、よくある疑問を4つ紹介します。
清算期間内で総労働時間を超えた場合は残業とみなされます。たとえば、清算期間が1ヵ月で総労働時間が160時間であるのに対し、170時間働いた場合は10時間分が残業代として支払われます。また法定労働時間は1日8時間、週に40時間以内と決められていますが、フレックスタイム制の場合はその限りではありません。
1日6時間しか働かない日や、1日10時間働いた日があっても、原則として総労働時間内であれば時間外労働にはなりません。
総労働時間に達しない場合は欠勤扱いとなって不足分の給料がカットされるか、不足分を次月の総労働時間に合算して持ち越しとなります。「月の前半で休み過ぎたから後半は多く働こう」といったように、仕事が早く終わる場面であっても総労働時間の達成を目指して働くケースもあるでしょう。
フレキシブルタイムに関しては遅刻も早退もありません。ただしコアタイムは働かなければいけない時間帯であるため、コアタイムの開始時間に遅れれば遅刻、終了時間よりも早く帰れば早退扱いとなります。遅刻によって減給される恐れもあるため注意しましょう。
フレックスタイム制であっても有給休暇の取得が可能です。有給休暇は、標準となる1日の労働時間を労働したものとして扱われます。標準となる1日の労働時間は、総労働時間を所定労働日数で割った時間です。有給休暇を1日分取得した場合、標準労働時間が8時間であれば、その日は8時間分を働いたことになります。
フレックスタイム制を導入している業種で、特に多いとされるのは以下のとおりです。
続いて、フレックスタイム制を導入している職種で多いのは以下が挙げられます。
上記のようにフレックスタイム制を導入できるのは、時間にとらわれない職種や仕事を個人で進められる職種が多い傾向です。フレックスタイム制の導入が厳しいのは、接客業や医者、教師といった勤務時間の調整が難しい職種が挙げられます。
勤務時間を自由に調整できるフレックスタイム制は、労働者にとってさまざまな魅力があります。通勤ラッシュの時間帯を避けて出退勤でき、仕事が早く終わった日は早めに帰宅することも可能です。ここでは、フレックスタイム制で働くメリットについて具体的に解説します。
出退勤の時間や働く時間を調整できるため、仕事とプライベートのバランスを取りやすくなるのが魅力です。子どもがいる人であれば、保育園の送り迎えに合わせて出退勤の時間を調整できます。また平日にしか空いていない市役所や銀行の手続きも可能です。
出退勤の時間を調整できることで、通勤ラッシュの時間帯を避けられるのも魅力です。都内で働いている人は、満員の電車やバスで窮屈な思いをすることも多いでしょう。人の少ない時間帯にバスや電車に乗れれば、体力を消耗することなく快適に通勤できます。また座席に座れれば、読書をしたり仮眠をしたりなど、有意義に過ごせるでしょう。
仕事量に応じて働く時間を調整できる点も魅力です。仕事が少ない日は早めに帰り、忙しい日は多めに働くなど、効率的に働けます。このようにメリハリをつけて働くことで生産性もアップし、残業も減らせるでしょう。
フレックスタイム制は労働者にとって多くの魅力がありますが、いくつかデメリットもあります。特に自己管理が苦手な人にとっては適していない制度といえるでしょう。ここでは、フレックスタイム制で働くデメリットを3つ紹介します。
出退勤の時間が自由になることで、社員全員がそろう時間が少なくなります。そのため同僚や上司とのコミュニケーションが取りにくいのが難点です。また社外の人と連絡を取る際にも、相手が出社前や退社後であれば日を改めて連絡をする必要があるでしょう。
逆も然りで、相手側が連絡を取りたいときに自分が出社前や退社後というケースもあります。場合によっては勤務時間外に連絡が来て、返さなければいけないこともあるでしょう。
社内会議が入ったときや、取引先との商談が必要な場合などは出勤時間を調整できないことがほとんどです。特に、取引先がフレックスタイムを採用していない場合、自由に出勤時間を決められないケースも多いでしょう。また、周囲に遠慮して早く出社しても早く帰れないという声もあります。
自分の裁量で働く時間を調整できることから、自己管理が苦手な人は働き方がルーズになってしまいがちです。退勤時間が決まっていないことで、ずるずると仕事を引き延ばしてしまい、結果的に長時間労働になってしまう人もいるでしょう。
フレックスタイム制の魅力を知ったうえで、「転職先はフレックスタイム制の職場がよい」と思う人も多いでしょう。しかし転職する際には、いくつか気をつけておきたいことがあります。ここではその注意点を3つ解説します。
フレックスタイム制は部署や個人単位での導入が可能な制度です。そのためフレックスタイム制のある職場へ転職しても、配属先がフレックスタイム制を導入しているとは限りません。求人選びや面接の段階できちんと確認するとよいでしょう。
フレックスタイム制には、就業しなくてはいけない「コアタイム」が定められており、コアタイムの開始・終了時間は企業によってさまざまです。そのためフレックスタイム制だからといって、自分の理想的な時間に働けるわけではない点に注意しましょう。
またコアタイムは就業規則に明記する決まりとなっていますが、求人情報に掲載する義務はありません。自ら企業側に確認する必要があります。
面接でフレックスタイム制について質問する際には注意が必要です。ストレートに「自由に出退勤の時間を決められますか」と質問すると、採用担当者に「制度が目的で応募したのか」とマイナスな印象を与えてしまう恐れがあります。
質問する際には「求人にフレックスタイム制と記載されていますが、社員の方は何時くらいに出社・退社されていますか」といったように、「働くイメージをつかむために質問する」というスタンスで尋ねるとよいでしょう。
フレックスタイム制を導入している企業では、自分のライフスタイルに合わせて働ける点が大きなメリットです。しかし、その自由度の高さゆえに、労働時間の管理などの自己管理能力が必要になります。ここでは、フレックスタイム制の企業で働く際に意識したいポイントを3つ紹介します。
フレックスタイム制では、出社・退社時間をある程度自分で決められますが、その分「自分で自分を管理する力」が求められます。まず重要なのは、業務の優先順位を明確にすることです。1日の初めにタスクを整理し、重要度や納期に応じて順序立てて取り組む習慣をつけましょう。また、タスク管理ツールを活用すれば、抜け漏れを防ぎつつ効率的に仕事を進められます。
フレックスタイム制では、決まった始業・終業時間がないため、何時間働いたかを自分で把握・記録する必要があります。勤怠管理ツールを利用して正確に打刻する習慣をつけることで、働き過ぎや時間の使い過ぎを防げます。
また、業務日報を簡潔に記録すると、1日の業務内容を振り返ることも可能です。記録を習慣化することで、自分の働き方を可視化でき、無理のない労働を維持できます。長時間労働を避け、オンオフのメリハリをつけることも、健康的で持続可能な働き方のために欠かせません。
フレックスタイム制では、各自の出勤時間が異なるため、チーム内で顔を合わせる時間が限られることがあります。円滑な業務進行のためには、意識的なコミュニケーションが重要です。たとえば、コアタイム中にミーティングを行う、進捗状況を定期的にチャットや報告書で共有する、急ぎの連絡手段をあらかじめ決めておくなどの工夫が効果的です。
時間がずれていても、しっかり連携できる体制を整えることで、チームワークを維持しながら柔軟に働けます。
フレックスタイム制を導入している企業を見つけるには、複数の情報源を活用することが効果的です。求人サイトや企業の採用ページ、転職エージェントなど、さまざまな方法で情報収集することで、より正確な企業の働き方を把握できます。ここでは、フレックスタイム制のある企業の調べ方について解説します。
求人サイトでは、「フレックスタイム制」や「フレックス勤務」などのキーワードを使用して検索することで、該当する求人情報を見つけられます。大手求人サイトでは、詳細な検索条件を設定できるため、勤務形態や働き方に関する情報を絞り込むことが可能です。
また、求人情報の詳細欄には、フレックスタイム制の有無やコアタイムの設定、フレキシブルタイムの範囲などが記載されている場合があります。これらの情報を確認すれば、自分のライフスタイルに合った働き方ができる企業を見つけやすくなります。
企業の公式サイトにある採用情報ページでは、フレックスタイム制の導入状況や働き方に関する詳細が記載されていることがあるため、気になる求人を見つけたらチェックしてみるとよいでしょう。たとえば、10時~15時をコアタイムとするフレックスタイム制を導入しており、上司と相談して勤務時間を計画的に決められる企業があります。
また、フレキシブルタイム(6時~22時)の中で、始業・終業時刻を従業員の自主的決定に委ねるフレックスタイム制を導入している企業も少なくありません。このように、企業の採用ページを確認することで、具体的な勤務時間の設定や制度の運用方法を把握することが可能です。
社員や元社員のリアルな声を知るには、口コミサイトやSNSを活用するのが有効です。口コミサイトでは、フレックスタイム制の実際の運用状況や働きやすさに関する情報が掲載されている場合があります。また、SNSでは、企業の公式アカウントや社員の投稿から、フレックスタイム制に関する情報を得ることが可能です。
企業の説明会や面接の場では、フレックスタイム制の導入状況や具体的な運用方法について、直接質問できます。たとえば、コアタイムの有無やフレキシブルタイムの範囲、実際の勤務時間の調整方法など、具体的な働き方について確認することが可能です。
また、面接官や現場の社員に、フレックスタイム制の利用状況や制度の活用度合いについて尋ねることで、制度が形骸化していないかを判断できます。
転職エージェントを活用すれば、フレックスタイム制を導入している企業の情報を効率的に収集できます。転職エージェントは、企業の内部情報や制度の運用状況、社員の働き方に関する詳細な情報を持っているため、希望する働き方に合った企業を紹介してくれます。
また、面接対策や履歴書・職務経歴書の添削、条件交渉など、転職活動全般をサポートしてくれる点も大きなメリットです。
フレックスタイム制を導入している企業に転職したいと考えている方には、転職サポートのプロである「マイナビエージェント」の利用をおすすめします。マイナビエージェントでは、働き方の柔軟性やライフスタイルに合った求人を多数取り扱っており、専任のキャリアアドバイザーがあなたの希望や条件にマッチした企業を紹介します。
また、求人票だけでは分からない「実際の運用状況」や「制度が活用されているか」といったリアルな情報も把握しているため、ミスマッチの少ない転職が可能です。書類添削や面接対策、条件交渉などの転職サポートも充実しており、初めての転職でも安心して進められます。
フレックスタイム制とは、始業・終業時刻を自分で決められる柔軟な勤務制度のことで、ワークライフバランスの向上や生産性アップに役立つ働き方です。ただし、自己管理能力やコミュニケーションの工夫が求められるため、働く際には注意しましょう。
フレックスタイム制を導入している企業を探すなら、転職エージェントの活用が効果的です。マイナビエージェントはフレックスタイム制を導入している企業の求人を多数取り扱っており、あなたの希望に寄り添ったサポートが可能です。相談だけの利用でも問題ありませんので、転職をご検討中の方はお気軽にお問い合わせください。
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