更新日:2022/06/06
筐体設計の求人情報をチェックしていると、「機械設計」や「機構設計」「構造設計」など、とても似ている募集があることに気付くと思います。
それぞれ、具体的にどのような仕事なのかよくわからないという人も多いのではないでしょうか。
ここでは、筐体設計の仕事内容や必要となるスキルのほか、未経験からの転職事情についてご紹介します。
目次
筐体は、一般的には機械のケースやフレームなどの外装の総称として使われる言葉で、広い意味では自動車や航空機のボディなども筐体に含まれます。
筐体設計とは、機械に求められる性能や条件を満たす筐体の設計を行う仕事です。
筐体設計は、機械設計の一分野であり、機械によっては構造設計とも密接な関係があります。
家電製品や自動車、工場などの大型産業設備など、世の中にある機械は、機械設計によって生み出されています。
筐体設計は、そんな機械設計のひとつなのです。
また、機械の内部機構を設計する機構設計とは一対の関係にあり、機械の種類によっては、機構設計と連携して、あるいは機構設計と筐体設計を一体として設計しなくてはならない場合もあります。
筐体の中には、PCのように内部構造と筐体にそれほど密接な関係がなく、筐体は一定の規格に沿った形状をしていて、防塵・放熱・耐震など基本的な条件を備えていればデザインは自由に設計できるという物もあります。
また、電子機器のように、形状そのものがその機械の主要な機能であることが求められる場合もあります。
このように、機械によって求められる設計内容が大きく異なるのが、筐体設計という仕事の特性です。
以下に、いくつか例として、機械と筐体設計に求められることをご紹介します。
モーターやエンジンのように、振動や衝撃を伴う機械の筐体には、防音・耐衝撃・耐振動(あるいは振動吸収)性能が求められます。
さらに、クランクシャフトなど、内部の物理的な動きを妨げない形状が求められます。
また、特定の部分に強い力学的負荷がかかるような機械ですから、それに見合う強度も計算し、設計に盛り込む必要があります。
カメラやスマートフォンのように、人間が手に持って操作するプロダクトは、持ちやすさや使いやすさ、操作性といったユーザーインターフェースも筐体設計上の重要な要素となります。
産業機械であれば、オペレーターが作業しやすい形状、事故が起こりにくい形状を設計に盛り込まなくてはならない場合もあります。
また、機械が使用される場所によっては、高い防水・防塵・防磁・耐圧性能を求められることもありますし、設置スペースを最少化したり、機械全体の重量を軽くしたりといった役割が求められることも少なくないでしょう。
このように、筐体設計の仕事には機械の用途によって「この筐体に求められる役割は何か?」が大きく異なるため、エンジニアにはそれらを理解し、設計に反映することが求められます。
筐体を製造する際に、必要な工数やコストを削減することも筐体設計の重要な役割です。
同じ機能や形状の筐体でも、設計次第で部品数、組立工数を大幅に減らせる場合がありますし、使用する素材によってもコストは大きく異なります。
筐体に要求される性能、形状といった条件を満たしつつ、いかに合理的且つ経済的に生産できるかを考えるのも筐体設計の大きな役割です。
筐体設計は、私たちの身の回りの機器や家電をはじめ、乗り物、建物、オフィスで使用される情報機器やOA、医療機器、産業機器、産業プラントや都市インフラレベルの大型の機械まで、あらゆる機械に必要とされる技術です。
また、自動車のように1台で数万個という部品を必要とする機械もあり、そのほとんどの部品にも筐体設計が必要です。
ですから、私たちの身の回りから機械がなくならない限り、筐体設計は必要となります。
また、ひとつの機械を作るのに必要な筐体設計は1回限りではありますが、新製品の開発やリニューアルがなされる度に、必要とされる仕事です。
こうしたことを考えると、これからいかに世の中が変化しようと、筐体設計という仕事のニーズ自体が減少することは考えにくいでしょう。
昨今の生産技術では、国際的な商品競争を勝ち抜くために、いかに省コスト、省エネ、短納期を実現するかが、重要な課題となっています。
こうした課題をクリアできる高度な筐体設計技術を習得していけば、活躍の場は業界、業種を超えて、あらゆるメーカーに対して広がっていくでしょう。
前述のとおり、筐体設計は機構設計と密接な関係にあるため、筐体設計への転職を皮切りに機構設計、あるいはその他の機械設計系エンジニア職としてキャリアを高めていくというキャリアパスも考えられます。
筐体設計に転職する際に、有利になるスキルや資格をご紹介します。
もちろん、スキルや資格よりも筐体設計や機構設計、あるいは機械系の設計職の実務経験が重視されることは間違いありませんが、こうした資格を取得しておくことで、設計の仕事への意欲が高いことのアピール材料にもなります。
筐体設計には設計図の作成が必要であり、そこにはCADのスキルが求められます。
筐体設計が未経験の方でも、CADの経験があれば有利に評価されるはずです。
厚生労働省認定の「CADトレース技能審査」、一般社団法人コンピュータ教育振興協会主催の「CAD利用技術者試験」などがあります。
機械設計に関係してくる「機械力学」「材料力学」「熱力学」「流体力学」を大学などで専攻していたとすれば、転職に有利になる可能性が高いです。
製造業では、昨今、深刻な技術者不足に悩まされており、「まったくの業界未経験者であってもゼロから技術者として育成していく」という前向きな企業も多く見られます。
未経験者にとっては今が大きなチャンスといえるでしょう。
また、現在の職業とは業界や業種が大きく異なっていても、同様に転職しやすい状況となっています。
「本当にやりたい仕事」を目指し、思い切ったチャレンジがしやすい職種といえるのではないでしょうか。
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