更新日:2022/04/12
生命保険の法人担当の場合、仕事の内容は主に2種類に分けられます。
一つは相手企業の承諾を得て社内に入り込み、社員たちに保険商品を販売すること。
もう一つは経営上のリスク回避のため、その企業に適した保険商品を企業に販売することです。つまり、相手企業の社員一人ひとりはもちろんのこと、その企業そのものもお客様になるわけです。
ここでは、個人と法人の二者に商品を売るという独特な営業スタイルを持つ生命保険の法人営業について、詳しい仕事内容や求められるスキル、仕事のやりがいなどをご紹介します。
目次
生命保険の法人営業は個人営業とは異なり、総務部門の福利厚生担当者から役員・経営者レベルまで商談の相手が複数となるので、取引の成立に至るまでは何度も商談を重ねる必要があります。そのため、信頼関係を構築するスキルや提案力が強くないとなかなか成果には結びつきません。そういった意味で、生命保険の法人営業は難しい仕事であるといえるでしょう。
生命保険の法人営業担当者はコミュニケーション能力や情報の分析力、コンサルティング能力など、幅広いスキルを身につけている必要があるのです。
どんな人が生命保険の営業に向いているのかは、この記事の「生命保険営業に向いている人はどんな人?」でもご紹介しております。併せてご覧ください。
お客様に「将来の万が一に備えた安心」を得てもらうため、最適なプランを提案するのが保険営業の仕事です。
お客様の人生に寄り添って、一人ひとりのライフプランや家族構成、収入といった状況に合わせたプランを提案し、不安なく日々の生活を送ることができるようにお手伝いをすることは大きなやりがいや喜びとなります。
また、保険営業職は契約件数や保障額などによって評価されるため、成果次第で収入をアップすることもできます。お客様の人生に寄り添いつつ、よりよい評価、待遇が得られるのも、この仕事のやりがいといえるでしょう。
生命保険の法人営業は、企業に所属する従業員に保険営業を行うのに加え、企業に対して団体保険や退職年金など、福利厚生への備えとなる保険商品のコンサルティング営業を行うのが主な業務です。
福利厚生制度に関する知識、決算書や資金繰りについて理解を深め、顧客企業の財務状況や経営方針に合わせて最適なプラン・商品を提案します。
生命保険の法人営業の前に、ここではまず、個人を相手にする個人営業と企業を相手にする法人営業の違いについてご紹介します。
個人営業と法人営業は同じ営業といってもかなりの違いがあり、端的なものとして「ニーズの違い」が挙げられます。
例えば、あなたが車を持っているとして、その車を買った理由は何でしょうか?デザインでしょうか、あるいは性能、それとも居住性や燃費でしょうか。いずれにしても、あなたは「その車が欲しかったから」買ったはずです。
では、会社が車を買う場合はどうでしょうか。「欲しいから買う」ということはありません。その車を使って利益を上げるために買います。
つまり、個人の購買は消費であり、企業の購買は投資です。それぞれのニーズに応えるのが、個人営業であり法人営業なのです。
上記でご説明した「個人は消費であり、企業は投資である」という購買理由ですが、保険商品の場合はあてはまりません。保険商品の購入理由は、個人・法人いずれも「リスクに備えるため」です。
将来に起こる、あるいは起こるかもしれない事態に備え、経済的なリスクを回避することが保険の本質です。そのため、相手が個人でも企業でも、まずそうしたリスクがあることを相手に示し、それに備えるために保険が必要なのだという「ニーズの掘り起こし」を図ることが大切になります。
ここで、法人営業が扱う生命保険の商品をご紹介します。企業を契約者とする法人向け生命保険にはいろいろな種類がありますが、目的別に見ていくと、次の4種に分類されます。
法人向け生命保険の種類は、その目的によって、大きく以下の4つに分類されます。
経営者や役員が死亡すると、企業は大きなダメージを被る可能性があります。そのような場合でも、法人向けの生命保険に加入していれば、経営を立て直す資金を確保することが可能です。
役員や従業員が死亡した場合、遺された遺族は経済的なダメージを受けることになるため、企業は「死亡退職金制度」などを設けて、生活を保障しなければなりません。
こうした場合も、法人が被保険者を従業員とした生命保険に加入しておくことで、遺された家族をサポートする資金を確保することができます。
企業は従業員のモチベーションを高めるため、さまざまな福利厚生制度を設けて待遇の向上を図ります。その一つが退職金です。退職金は老後の生活費として非常に重要です。
退職金の支払いの備えとして、貯蓄性のある法人向けの生命保険を活用することが可能です。
企業経営では、世代交代や先代社長の死去などによって事業承継や相続が発生します。その際、個人と同じように相続税や贈与税がかかりますが、その金額は個人に比べてかなり大きなものになり経営を圧迫しかねません。
しかし、法人向けの生命保険をうまく活用して税金対策をしておけば、納税資金の準備であわてずに済みます。
次に、保障内容のタイプ別に法人向け生命保険を分類すると、主に下記のようなものがあります。
「逓増定期保険」とは、加入から一定期間経過後に死亡保障額が段階的に増加していく生命保険です。
経営者や役員の死亡退職金、解約返戻金を活用した勇退退職金対策などに活用されます。税法上の要件を満たせば、保険料の一定割合が損金扱いになるので、税制上のメリットを得ながら死亡退職金・勇退退職金対策が行えます。
解約返戻金のピークを加入数年程度で設定できるので、近々勇退予定の役員への退職金対策など、短期的な資金需要に合わせて活用することが可能です。
「長期平準定期保険」とは、一定期間の死亡リスクを保障する定期保険の中でも、保障期間が長期に設定されているタイプをいいます。法人が契約者となり、役員や従業員が被保険者となるのが一般的。死亡退職金や退職慰労金などの支払原資を確保するために利用されます。
解約返戻金の返戻率のピークが長期間に及ぶことから、退職金の原資だけでなく、解約返戻金を利用した資金需要対策にも利用することが可能です。
商品によっては保険料の2分の1を損金に算入できるので、税負担を抑えることができます。
「医療保険」は病気やけがの治療費・入院費を一定の範囲で保障する保険で、終身タイプと定期タイプがあります。
法人保険としての特徴は、終身タイプを退職金代わりとして現物支給するという利用法があることです。
保険料の支払いが終わる時期を役員や従業員の退職時期に合わせて設定し、そのタイミングで退職金代わりに支給します。こうすることによって、役員や従業員は、退職後に保険料を支払うことなく、一生涯の医療保障を受けることができます。
「がん保険」はがんの保障を目的とした保険で、がんで入院・手術をしたときに入院給付金や手術給付金を受け取れることができます。法人保険のがん保険も、医療保険と同じく、終身タイプを退職金代わりとして現物支給するやり方で利用することが可能です。
保険期間や保険料払込期間を終身とすると、保険料の2分の1を損金にすることができるため、税制上のメリットを得ながら福利厚生として活用することができます。
「養老保険」は、満期までに被保険者が死亡すれば死亡保険金が支払われ、満期時には満期保険金が支払われる生命保険です。
一般的には福利厚生の一環として、役員・従業員自身の退職金対策、遺族のための死亡退職金対策として加入します。満期保険金の受取人を会社、死亡保険金の受取人を遺族に設定しておき、会社が受け取る満期保険金または解約返戻金を退職金の財源とし、遺族が受け取る死亡保険金を死亡退職金とするのです。
役員または従業員を被保険者、満期保険金受取人を会社、死亡保険金受取人を被保険者の遺族とした場合には、支払う保険料の2分の1を損金とすることができる場合があります。
以上のように、法人向けの保険商品は支払う保険料の一部を損金として計上することができ、節税効果や貯蓄性の高いものもあります。うまく生命保険の契約をすることで、節税しながら将来の資金需要に備えておくという使い方が可能になるのです。
相手組織の内側に入っていき、リスク管理という面からサポートをする生命保険の法人営業。この仕事には、どのようなスキルや能力が必要になってくるのでしょうか?
生命保険の法人営業として仕事をしていくうえで、基本的には特別資格が求められるわけではありません。業務に必要な知識は、入社後に実務や研修などを通して身に付けていくのが一般的です。生命保険に関することはもちろん、社会保障など仕事にまつわることを広く勉強する必要があります。
基本的に資格は求められないのですが、生命保険の契約をするための営業(生命保険募集人)として働く場合には、生命保険協会が実施している「生保一般過程試験」に合格する必要があります。試験の内容は生命保険の募集や販売にあたって求められる基礎的なもので、難易度はそれほど高くありません。
生命保険協会の試験には、一般課程のほか、「専門課程」「応用課程」「大学課程(生保大学)」といった段階があり、一般課程に合格したら、専門課程→応用課程→大学課程と進みキャリアアップを図ることができます。
必須ではありませんが、保険営業として持っていると有利な資格には、以下のようなものがあります。
一般社団法人生命保険協会が主催する資格試験で、試験科目は生命保険の基礎知識を問う8科目。試験は例年、8月、10月、12月、2月に2科目ずつ実施されています。また、生命保険会社によっては、取得を義務付けている企業もあるようです。
FPの資格を持っていると、資産運用や資金計画について専門的なアドバイスをすることができます。お客様の信頼度も高まるので、できれば取得しておいた方がいいでしょう。生命保険会社では、営業職を中心にFP資格を取得している方は多いようです。
保険の法人営業というと、以前は昼休みの社食などでくじ引きのようなちょっとしたイベントを行ったり、社内でキャンディを配って挨拶回りをしたりという光景がよく見られました。しかし、近年ではセキュリティにきびしい企業が増えているため、ロビーやエレベーターホールなどが主な営業場所になっているようです。
初対面の人にも明るくフランクに声を掛けるのはなかなか勇気がいることですし、初めのうちは挨拶してもまともに返してくれる人は少ないでしょう。ですが、あきらめずに何度も続けることで、相手の反応にも変化が表れます。営業では当たり前のことではありますが、積極的なコミュニケーションが必要な仕事であり、それが得意な人であればぴったりの職種といえます。
法人営業はその営業スタイル上、相手企業との間に強い信頼関係がないとなかなか成果に結び付けることができません。その信頼を勝ち取るためには、人が好き・前向き・第一印象が良いなど、営業職としての基礎能力が必要になります。
しかし、本当に重要なのは、上記の基礎能力に対してあなたが自分自身の能力を知り、それを伸ばすことをいつも心掛けていることです。
例えば、法人営業の経験が浅い、あるいは初めてという場合には、まず場数を踏むことが大事です。特定の知識やテクニックを身に付けたいなら、社内外のセミナーを受けてみるというのもひとつの手です。
あなたが扱う保険商品は、相手企業の将来のリスクに備えるものです。ですから、どのような商品が最適なのか、適確な提案をするには多くの情報が必要になります。
商品の知識はもちろんですが、相手企業の事業内容や資産、役員と従業員の構成、退職についての社内規定などがわかれば、自ずとニーズが見えてきます。それらの情報を引き出すコミュニケーション能力、さらに情報からニーズをつかむ分析力は大きな武器になります。
法人営業では、手持ちの商品からおすすめ商品をプッシュするだけでは不十分です。彼らは保険を買いたいのではなく、それによって将来的なリスクを回避したいのですから、自社の状況にマッチし「これなら大丈夫だ」と納得しなければ契約してはくれません。
そこで、相手に適した商品を単品あるいは複数組み合わせ、より確実なリスク回避が図れるような提案をしなくてはならないのです。
また前述したように、法人向け商品には節税効果や貯蓄効果の高いものもあります。ですから、相手の状況とニーズに合わせて、柔軟性の高い提案を行うコンサルティング能力が必要になるでしょう。
企業の状況や、景気動向によって、企業が求める保障内容は変わります。そんなときには保険内容の変更や修正、入れ換えが必要になります。
たとえ、契約を取れたとしても、一定期間ごとにチェックを行い、保険の目的と保障内容、金額がマッチしているかどうかを見守り続けることが肝心です。
保険営業に向いている人には、以下のような特徴があります。
保険営業だけでなく営業職全般に求められるスキルですが、お客様のニーズに合った商品やサービスを提案できるかどうかというのが非常に重要です。
したがって、お客様の話に耳を傾け、お客様の悩みや要望をきちんと聞き出して最適なプランを提案するために、「聞き上手」であることは保険営業にとって大切な資質だといえます。
保険の営業というのは、まず話を聞いてもらわなければなりませんが、なかなかそこを突破するのは簡単ではありません。またノルマがある場合も少なくないので、思うようにいかないと、どうしてもネガティブになりがちです。
そういった状況でも、「次はこうしよう!」とポジティブに考えて行動できる人は、保険営業向きだといえるでしょう。
お客様のニーズに合った、説得力がある提案をするためには、保険やライフプランについての最新知識に限らず、経済や金融、社会の動きなどについて積極的に学ぶ必要があります。ですから、勉強熱心であることは、保険営業にとって必要な資質の一つだといえます。
営業職は、お客様に好印象を与え、親しみやすさを感じてもらうことが大切。ですから、礼儀やマナーを守り、服装や身だしなみをきちんと整えておくことは、基本中の基本です。
ここまで、保険の法人営業という仕事について、仕事内容と求められるスキルをご紹介してきました。
転職の際に、ここで挙げたスキルについて自分の能力をアピールすれば、企業へ好印象を与えることができます。
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