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キャリア生相談 エンジニア編 -前編-
キャリア生相談 エンジニア編 -前編-

エンジニア転職のリアル。面接官が「会いたい」と思う経歴の中身とは?

「今すぐ転職したいわけではないけれど、将来のために動くべきか、とどまるべきか」。そんな悩みを抱える20代ビジネスパーソンが、マイナビエージェントが誇るキャリアアドバイザーに本気で相談。第3回は、今の環境ではものたりなさを感じるソフトウェアエンジニアのBさんのお悩みに迫ります。進行役はPIVOTの国山ハセン。

相談者プロフィール
相談者
Bさん(27歳・ソフトウェアエンジニア)

大学時代のインターンシップ経験がきっかけとなり、エンジニアキャリアを選択。大学院修了後に入社した現在の会社に勤めて3年目。サービスを立ち上げ、要件定義から実装、リリースまで一通りのことを経験した後の次のステージを思案中。

私がじっくり聞きます!
大原直人
マイナビエージェント キャリアアドバイザー
大原直人

大学を卒業後、日本最大手メーカー系SIerにてアプリエンジニアとして従事し、外資コンサルと連携しながらの要件定義から導入まで幅広く経験する。マイナビに転職した後は、関西IT領域専門のキャリアアドバイザーとして活躍。アプリ・インフラだけでなくコンサルや社内SEの提案も強みとし、20代前半から40代後半まで、年齢を問わず内定実績を挙げている。面談する相談者の9割がエンジニア。

エンジニア業界を熟知したプロが、転職の“手前”の段階からアドバイス

ハセン

「おもいっきりキャリア生相談」の第3回目は「エンジニア編」です。お悩みに答えるキャリアアドバイザーは、マイナビエージェントの関西IT領域専門の大原直人さんです。年間相談件数の9割がエンジニアという、この業界における転職の“プロ中のプロ”だと伺っています。

大原

ありがとうございます。アプリやインフラ領域から、コンサルや社内SEのご提案まで、幅広く転職のご支援をして参りました。

ハセン

マイナビエージェントは、特にエンジニアの転職に強みがあると聞きますが本当ですか?

大原

はい、サーバーエンジニアやインフラエンジニア、メーカーで機械設計を担当していた者や科学分野の研究者など、さまざまな経歴を持つアドバイザーが在籍しております。私自身もアプリエンジニア出身です。

ハセン

現場をよく知っているプロだから、具体的なアドバイスができるという強みがあるのですね。ところで大原さん、そもそも「転職したい」というエンジニアの方は多いのですか?

大原

年々、右肩上がりで増えています。弊社に登録されるお客様も増加していますよ。

ハセン

これは、エンジニアの市場価値が上がっているからですか?

大原

かなり有利な状況です。だからこそ、エンジニアとして“どのようなキャリアを歩みたいか”を重視した転職ができるわけです。

ハセン

今日の相談に対して、どのようなアドバイスが出てくるか楽しみです。さあ、相談者のBさんに来ていただきましょう。今回は覆面形式で本音の相談を進めていきます。

相談者B

よろしくお願いします。

ハセン

Bさんは「今のところ転職の意向はない」とのことですが、それでもキャリアアドバイザーに相談したいと。大原さん、転職の意向がなくても相談はできるのでしょうか?

大原

もちろんです。実は弊社に登録される方の7割は、今すぐの転職意向はお持ちではありません。中長期のキャリアを見据えて「今のうちに相談したい」という情報収集メインの方や、周りの方の転職を見て「興味が出たので、一度話を聞いてみたい」という方が多いですね。

ハセン

その場合、どのようなお話をするのですか?

大原

まずは、ご自身の市場価値を明確にするために、今までのご経験をお伺いします。あくまで指標の一つではありますが、年収や勤務先の企業規模などを見て市場価値を計っていきます。

ハセン

なるほど、「市場価値」がキーワードの一つですね。

「年齢が高くなると転職は難しい」は本当か?

大原

事前にいただいた情報では、Bさんは、この先のキャリアについて悩んでいらっしゃると。現職への不満はありますか?

相談者B

僕は今27歳ですが、ずっと同じ環境で仕事を続けることにリスクを感じています。特にエンジニアは「年齢が高いと転職に不利になる」という話も聞くので、「早くスキルアップしなければ」と焦っています。

大原

どのような点がリスクだと思いますか?

相談者B

1社のやり方しか知らない点です。自分のスキルアップのためにも、他の会社でどういった運用・開発をしているのか、さまざまな手法をキャッチアップしていきたいのです。

ハセン

エンジニアの転職において年齢は重要なのですか?

大原

一般的に「年齢が高くなると転職は難しい」と言われますね。実際は、年齢に応じた経験があれば、転職が不利になることはありませんが、職種を問わず、年齢に応じて企業から求められるレベルは変わります。例えば、20代後半のエンジニアなら「開発経験があれば採用します」という会社でも、30代のエンジニアに対しては「リーダー経験がないと難しい」と判断する場合もあるでしょう。40代であれば、メンバーの査定や戦略企画などのラインマネジメントの経験がないと、採用されないケースもあります。

ハセン

なるほど、年齢に見合ったスキルを身に付けたいと焦ってしまうBさんの気持ちがよく分かりました。

大原

では、少し過去の話もお伺いしますね。Bさんがエンジニアを目指そうと思ったきっかけは何でしたか?

相談者B

学生時代のインターン先の企業で、エンジニアの方が活躍する姿を見て興味を持ちました。プロダクトドリブンな開発に、非常に魅力を感じました。

大原

今の会社に入社したきっかけを教えてください。

相談者B

就職活動の時は、「まず技術的な修業を積みたい」と思い、現職に決めました。

大原

現職ではどのような経験を?

相談者B

サービスを立ち上げ、要件定義から実装、リリースまで一通りのことを経験しました。今は運用フェーズに入っているので、一つのサービスをやりきったと感じています。

大原

サービスのサイクルをすべて経験されたのですね。現職では、新しいサービスの企画はされないのですか?

相談者B

少し事情がありまして、現職ではそれが難しいのです。

大原

そうなのですか。例えば現職で「新しいサービスを立ち上げることになったので、Bさんにその事業を任せます」というオファーがあったとしたら、このまま勤め続けたいと思いますか?

相談者B

いえ、辞めるかもしれません。

現職への不満から見えてくる、「理想の職場」のイメージ

大原

新規サービスのオファーがあったとしても、辞めたいと思うような悩みが?

相談者B

そうですね……実は、今の会社にはメンターがいないのです。

大原

メンターがいない。なるほど、それは大きいですね。

ハセン

あの、素朴な疑問ですが。エンジニア業界は、基本的にメンターがいるものなのですか?

大原

企業規模にもよりますが、基本的にはメンターがつきます。企業ごとに開発の方法も異なりますし、技術選定や工程管理など、新卒の方がいきなり実戦投入されても難しいため、通常はメンターが必要になると思います。Bさんは、メンターがいない状況で、今までの業務は独学で進めてこられたのですか?

相談者B

他のサービスの現場を見て学んだり、上司にどのような開発をしているのか尋ねたりしながらなんとか進めてきました。

大原

すごいですね。Bさんはアプリエンジニアですが、フロントエンドとバックエンドのどちらで開発を?

相談者B

バックエンド側です。インフラチームは別にいるので、1つのプロダクトに対して、4〜5組の担当チームが開発にあたる体制です。

大原

チームの人数規模と開発期間はどの程度ですか?

相談者B

サービス全体では20〜25名、僕のチームは3〜4名です。今、手がけているプロダクトは、2年半担当しています。企画の実現可能性を調査するフィジビリティスタディの部分から携わりました。

ハセン

ちょっと質問よろしいでしょうか。今、開発期間について質問されましたが、どういった意図があるのですか?

大原

これは、企業の採用基準に関係する情報になります。例えば新規開発の期間が2週間だった場合、「小さなプロジェクトを担当していたのだな」と分かりますし、「開発期間は2年間で、チーム規模は○人、予算規模は○円くらいです」という答えであれば、採用側も「うちも同じくらいの規模のプロジェクトをやりたいから、活躍してもらえそうだ」という判断ができます。

ハセン

なるほど、自社のプロジェクトに見合う人材かどうかという視点ですね。企業側のニーズに合わせて評価軸が変わるのですね。

大原

おっしゃるとおりです。

ハセン

Bさんのようなスタートアップ企業での経験は、どのように評価されますか。

大原

Bさんの経験なら、別のスタートアップ企業でも「新規サービスを始めます」という段階から活躍できるはずです。大企業でも「新規事業を立ち上げたい」というフェーズであれば、非常に魅力的に映るでしょう。一方で、すでにリリース済みの大規模サービスの運用フェーズで、細かなマイクロサービスを継ぎはぎしていくような現場では、やや経験が異なるため評価も変わってきます。ただ、20代というポテンシャルは見てもらえますよ。

ハセン

率直に伺いますが、Bさんのキャリアの評価はいかがでしょう。

大原

素晴らしいキャリアだと思います。大学院を卒業されて社会人3年目で、フィジビリティスタディからリリースまでの一貫した経験をお持ちの方は、希少性が高い。さらにお使いの開発言語が今主流の言語なので、どの企業からもニーズがある、「会ってみたい」と思われる人材だと思います。

相談者B

本当ですか!ありがとうございます。

ハセン

開発言語も一つのキーポイントなのですね。やはり、今主流の言語ができると有利ですか?

大原

主流の言語であればニーズは大きいですね。ただ、企業が求めている開発の環境によっても、評価は異なります。

なぜこのサービスにこの技術なのか。「背景知識」が転職のアピールポイントに

相談者B

エンジニアが転職するときにアピールするポイントや、企業が求めているスキルのイメージを知りたいです。

大原

アピールポイントとしては、どれだけ“技術を選択した背景を知っているか”が重要です。例えば、Pythonというプログラミング言語であれば、Djangoというフレームワークを使ってWebアプリを開発していることが多いですし、JavaScriptであればReactというフレームワークがよく使われています。それに対して「なぜ、このサービスにこのフレームワークを使っているのか?」という技術環境の背景知識を質問してくる企業は多いですよ。なぜなら、その技術環境を理解した上で開発しているのか、何も考えず指示を受けたから開発を行っているのか、そういった姿勢も判断基準になっているからです。

ハセン

エンジニアとして、能動的に技術環境を把握しているかということですね。どの職種もそうですが、「自分のスキルを理解した上で使えているか」という部分が企業に見られるのですね。

大原

おっしゃるとおりです。Bさんは、開発にあたってどの技術を使うかの技術選定には携わっていましたか?

相談者B

いえ、そこは上司が担当していました。

大原

「なぜ、この開発言語と開発環境が使われているのですか?」と確認したことは?

相談者B

ありません……。

大原

では、上司の方に聞いておきましょう。実は、ここを答えられるかどうかで、面接の通過率が変わってくるのです。特にメガベンチャーでは、必ずと言っていいほど問われるポイントです。なぜなら、技術環境を理解した上で開発している人材なら、新規企画から任せられるからです。20代であれば経験値として大きく評価されますよ。一方で、30代で技術選定の背景を答えられない人は「リーダーを任せられない」と判断される可能性もあります。

相談者B

分かりました、聞いておきます!

ハセン

大原さん、このような面接の評価ポイントなどは、普段の相談でもお伝えしているのですか?

評価されるポイントを押さえれば、面接は怖くない

大原

もちろんです。先ほどのように“宿題”を出すこともありますよ。面接対策においても、どういった準備が必要か、エンジニアとして何を話すべきかをしっかりお伝えしています。

ハセン

いま面接対策のお話がありましたが、逆にエンジニアを採用する企業側は、開発環境など技術の話をちゃんと理解しているのでしょうか? というのも、PIVOTでこんな出来事がありました。映像コンテンツを作る際、撮影部隊とエンジニア部隊との間で、お互いの技術に対する共通言語がなくて、意思の疎通が上手くいかなかったのです。

大原

そういったケースも多いですね。IT企業がエンジニアを採用する際は齟齬が起こりにくいのですが、例えば人材会社がエンジニアを採用する場合、人事の採用部隊がエンジニアの技術に必ずしも詳しいわけではないですから。

ハセン

今、多くの企業が「優秀なエンジニアが欲しい」と、世界中で人材の取り合いになっています。しかし、採用側が技術を理解していないと、せっかくの人材を獲得できないケースも出ているのでは?

大原

実はそうなのです。企業から「求人を出しても応募が来ない」「応募があっても書類通過率が悪い」という相談を受けることはよくあります。例えば、Bさんが即戦力で活躍できる求人なのに、企業側の人事の方が技術に詳しくなくて「ご縁がなかった」となる可能性もゼロではありません。そこは、仲介役となる我々アドバイザーの腕の見せ所でもあります。

ハセン

Bさんは、もし好条件の募集があれば、早めに転職に動く可能性は?

相談者B

あります。もっと成長できる次のステージに行きたいと思っているので。

何歳までに何を成し遂げたいか。将来の目標から選択肢を絞り込む

大原

転職意欲がありながらも、今の会社にBさんが残る理由は何でしょうか?

相談者B

自分が担当したプロジェクトに対して、もう少し頑張りたい、自分の責任を果たさねばという気持ちがあります。

大原

仕事への責任感なのですね。では、Bさんの未来のお話も聞かせてください。将来のキャリアとして、マネジャーを目指すのか、プロダクトマネジャーを目指すのか、テックリード側に行かれるのか、複数の選択肢のうち、Bさんの興味はどのあたりでしょう?

相談者B

テックリードか、事業サイドのプロダクトマネジャーに興味があります。

大原

テックリードですか。どんな点に魅力を感じていますか?

相談者B

開発の仕事をする中で「もっと技術の知識を深めたい」という気持ちが大きくなってきたのです。技術の知識を深めればスキルも身に付きますし、自分の市場価値も高められるのではないかと。

大原

Bさんは、どんな状況のときに「技術の知識が深まったな」と実感しますか?

相談者B

開発で「新しい技術をどう組み込むか」という部分を考えるときに実感します。

大原

確かに、今まで取り組んでこなかった新しい技術にチャレンジする瞬間って、面白いですよね。Bさんは自分で技術選定から組み込みまでできるスキルをお持ちですから、テックリードに興味があるのも納得です。では、プロダクトマネジャーに興味があるのは、どういった理由からですか?

相談者B

エンジニアの仕事は、顧客の要件に沿った開発をする“受発注”の関係になりがちです。しかし、僕は「もっと顧客に価値提供できる方法があるのでは?」と思うのです。例えば顧客から「Aの機能が欲しい」とオーダーがあったときに、「ではAを作りましょう」と応じるのではなく、「そもそもAよりも便利なBの方法がありますよ」「Cの機能もあった方が、より高度な問題解決が可能ですよ」と提案できるようになりたい。顧客により近いところでプロダクトの価値を創造するキャリアも面白いのではと考えています。

大原

そこまでお考えなのですね。ちなみに、キャリアの最終的なゴールはありますか?

相談者B

まだ空想レベルですが、自分でサービスを立ち上げてみたいですね。

大原

それは何歳ごろを想定されていますか?

相談者B

今27歳なので、30代後半くらいを考えています。

大原

そうなのですね。ゴールを30代後半に置かれるのであれば、私は現時点のBさんは転職を「してもよい」と判断します。

転職「してもよい」と「しなくてはならない」。その判断の境目とは?

ハセン

転職を「しなくてはならない」ではなく、「してもよい」ですか。これは、ゴールが30代後半であることと関係しますか?

大原

はい、Bさんのゴールが30歳であれば、現職では企画の経験が不足しているため「今すぐ転職してください」とお伝えします。新規に事業を立ち上げる企業で企画の経験を積まないと、理想の人生には間に合わないと思うからです。

ハセン

この「理想の人生に間に合わない」って、すごいパワーワードですね!

大原

Bさんのゴールは30代後半ですから、そこまで急がずとも大丈夫でしょう。リリース後のサービスの広め方などは、ゆくゆくはご自分のサービスを立ち上げる際の参考にできるはずですから、現職でこのフェーズの経験を積んでおくメリットはあります。ただし、新規サービスの経験が望めない環境ですから、現職にとどまる期間は、今のサービスを見終わるまでが限界かなと。

ハセン

すごいですね。ここまで逆算して、具体的に判断できてしまうのですね。

大原

一つの参考意見であり、このとおりにする必要は全くありませんよ。我々は、あくまで情報提供が仕事ですから。最終的な判断はBさんです。

ハセン

実際の相談でも、これくらいズバッとお伝えするのですか?

大原

もっと鋭く掘り下げることもあります。Bさんはかなりしっかりした方ですが、中には「どうしたらいいのか分かりません」というふわっとした相談も、けっこうあるんですよ。

言語化のサポートによって「なりたい姿」の解像度が上がる

ハセン

具体的な希望が見えていない段階の方も相談に来られるのですね。そこで、大原さんのような専門的なアドバイザーと一緒に言語化していけるのは、心強いのではないでしょうか。というわけで、大原さんのアドバイスをふまえて、Bさんに、この先目指したいキャリアを書いていただきました。フリップを見せていただけますか?

ハセン

「サービス設計から入れるプロダクトのエンジニア」ですか。とても具体的ですね! ぜひ理由を聞かせてください。

相談者B

一緒にお話ししていく中で「顧客にもっと価値提供できるエンジニア」という目標が見えてきました。その第一歩として、自分でサービス設計や技術選定から関われるエンジニアを目指したいです。

ハセン

大原さん、いかがでしょうか。

大原

Bさんの最終ゴールに対して、最短ルートに近いものだと思います。ぜひチャレンジされるべきですね!

相談者B

ありがとうございます。キャリアの解像度が上がりました!

ハセン

ここまで、Bさんのケースを具体的に見てきました。キャリア相談において“言語化”は重要なポイントですね。

後半では、エンジニア転職に特有の悩みや、エンジニアの転職市場のリアルな情報をお伝えしていきます。