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キャリア生相談 営業編 -1人目-
キャリア生相談 営業編 -1人目-

どこでも通用する自分になりたい。面接で「年収アピール」はNG?

「今すぐ転職したいわけではないけれど、将来のために動くべきか、とどまるべきか」。そんな悩みを抱える20代ビジネスパーソンが、マイナビエージェントが誇るキャリアアドバイザーに本気で相談。
第1話は、地方で働く営業職Aさんのお悩みを解きほぐすプロの技を公開!進行役はPIVOTの国山ハセン。

相談者プロフィール
相談者
Aさん(27歳・営業職)

地元の企業に営業職として就職して5年。コミュニケーション力を生かせる営業の仕事は好きだが、マンネリ気味。どこでも通用するスキルを身につけて、年収アップも狙える転職先を探したいが、決め手がないまま模索中。

私がじっくり聞きます!
千本佳奈子
マイナビエージェント キャリアアドバイザー
千本佳奈子

大学を卒業後、新卒で人材ベンチャー企業へ入社し、2015年にマイナビ入社。マスコミ・メディア・コンサルティング・インターネット・小売り・メーカーを中心に多種多様な企業・求職者の方向けの採用支援・転職支援を行う。現在はメーカー領域のマネジャーとして「質の高い転職支援サービス」を多くの方に提供するミッションを実行。キャリアコンサルタント国家資格保有。人材業界歴16年目。

転職市場は回復傾向に。今すぐ動き出すべきか?

ハセン

さあ、始まりました!初対面・台本なしの転職相談を公開する「おもいっきりキャリア生相談」。1人目の相談者をお迎えする前に、アドバイザーの千本さんに少しお話を聞きましょう。千本さんはご自身も転職経験者であり、人材業界歴16年のプロフェッショナルということですが、最近の転職市場は盛り上がっているのでしょうか。

千本

はい、盛り上がっています。2020年には新型コロナウイルスの影響で求人がグッと下がったのですが、2021年以降は回復傾向が続き、現在はコロナ前の水準まで戻っています。非常に活発になってきている印象です。

ハセン

なるほど。まさに今日の相談者も「自分も転職するべきなのかな?」と迷っているのだと思います。とはいえ、転職の相談は非常にセンシティブで“身バレ”は厳禁ですので、完全覆面形式で相談を進めていきます。では、Aさん、どうぞ!

相談者A

よろしくお願いします。

ハセン

私の手元の情報によると、「社会人5年目の27歳、営業職、滋賀県在住」とのことですが、間違いありませんか。

相談者A

はい、間違いありません。

ハセン

ちょっと緊張されている様子ですね。早速、千本さんに生相談を始めていただきましょう。

学生時代までさかのぼって求職者の思いの本質を発見

千本

よろしくお願いします。まずはAさんについて理解を深めるために、「過去」にさかのぼって、お話を聞かせていただきます。これまでAさんが何を大事にして意思決定をしてきたかを知ることで、今後の方向性も一緒に探っていけるからです。ぜひ本音ベースでお話しくださいね。学生時代に力を入れてきたのはどんなことでしたか?

相談者A

幼少期からサッカーをしていまして、12年ほど打ち込んできました。

千本

サッカーを始めたきっかけは?

相談者A

兄の影響で自然と始めたのですが、地元の強豪校に入って結構ガッツリとやっていましたね。

千本

ありがとうございます。学生時代はサッカーに打ち込んで、その後の就職活動では何を重視しましたか?

相談者A

漠然とではありましたが、部活を通じて「コミュニティーに所属することが好き」という自分の特性に気づいたので、コミュニケーション力を発揮できる営業職を候補にしました。ただ、正直、右も左も分からないまま、選んだのが正直なところで。業界も特に絞っていなかったので、ベストな選択ができていたかは自信がありません。

多角的な質問を重ねながら、キャリアの方針を一緒に探っていく。「最初から選択肢を絞ろうとせず、時間をかけてじっくり聞くことを大切にしています」(千本)

千本

現在は人材派遣の会社で営業職をされているそうですね。入社の決め手は何でしたか?

相談者A

一つは営業所が地元にあったこと。「生まれ育った滋賀で働きたい」という気持ちがあったので勤務地は結構大きなポイントでした。あと、スポーツチームのスポンサー活動をしている点も共感できたので、決め手の一つだったと思います。

千本

今、お勤めになって5年目ですね。これまで経験した業務の中で「こういう仕事が好きだな、得意だな」という気づきはありましたか?

相談者A

やはり「人と接して、信頼関係を築く」という点に一番のやりがいを感じてきたと思います。もちろん苦労もありますが、それも成長に必要な経験として受け止めています。

千本

ありがとうございます。では、今のタイミングで「転職」を意識するようになったのは何がきっかけだったのでしょうか?

相談者A

一つは、業務がかなりルーティン化してきて、「このままでいいのかな」という漠然とした不安を感じ始めたことです。もう一つは、年収ですね。私は両親にも恩返しをしていきたいと考えているのですが、今の会社の昇給制度では将来十分な収入を得られない懸念がありまして。

千本

なるほど。一つ目の業務ルーティン化の面をもう少し詳しく聞かせてください。どんなところに不安を感じますか?

相談者A

そうですね。やはり目まぐるしく変化する世の中で、定常化したスキルしか求められない今の業務で経験を積むだけでは、外で通用しなくなるんじゃないか、もしかしたら業務自体が市場から消滅してしまうのではないかという不安があります。手に職をつけるためには、転職すべきかなと……。

千本

「手に職」になるスキルとして具体的なイメージはありますか?

相談者A

今後も営業職のプロとしてセールスのスキルを磨いていきたいという気持ちはあります。

千本

ありがとうございます。もう一点の気がかりは「年収」でしたね。仮に転職するとして、入社時に確実に年収を上げたいのか、入社後に上がる見込みがあればOKなのか、どちらの優先度が高いですか?

相談者A

そうですね。入社時に上がるのは理想ですが、将来にわたる昇給ベースがきちんと見えるのであれば、後者でもいいなと思います。

千本

すると、必ずしも現時点の金額の比較ではなく、成果に応じてきちんと評価される制度が整っているかが重要になりそうですね。

相談者A

たしかにそうですね。

千本

他にも転職時の希望として外せないポイントはありますか?「これが叶えば決断できそう」というポイントがあれば。

相談者A

自分のアピールポイントになるスキルが磨ける環境で働きたいです。繰り返しになりますが、私は人と関わることが好きなので、できるだけ多くの人と関わっていける仕事をしたいです。漠然とした答えですみません。

千本

とてもよくご自身を理解されていると思います。「30代、40代でこんなスキルを身につけたい、こんな役割を担っていたい」というキャリア像はありますか?

相談者A

そうですね。30代以降はマネジメントの力もつけていきたいと思っています。

じっくり聞いて見えてきた、30代・40代のキャリアイメージ

ハセン

あの、ご相談の途中ですみません。

千本

どうぞ。

ハセン

本当に“ガチ相談”ですね。私が入る隙が一切ありませんでした。千本さんが本当にじっくりと聞いていて、寄り添い方が素晴らしいです。

千本

ありがとうございます。

ハセン

いつもこのくらい丁寧にヒアリングを?

千本

今日は収録時間の制限もあるので、質問を絞っているくらいです。ご相談に来てくださる方にとっては「初めての転職」は人生をかけた一大事ですので、しっかりとお話を伺った上で情報を提示したいという思いがあります。

ハセン

感心しました。ここまでのお話から、Aさんにどんな印象をお持ちですか?

千本

かなりしっかり考えていらっしゃるなという印象です。「30代、40代のキャリアイメージを」という質問には即答できない方が多い中で、Aさんは「マネジメントのスキルを身につけたい」という答えがすぐに出てきましたから。

ハセン

たしかにそうですね。ここからさらに今後の方針についてのお話が展開されると思いますが、転職市場に関するデータも一つご紹介させてください。Aさんの口からも出ましたが、転職を考え始めた理由としては「年収」に対する不満がトップなんですね。

データでチェック!「転職を始めた理由」

千本

そうですね。今は求職者が有利な売り手市場になっている状況もあり、年収アップの希望をおっしゃる方は増えています。

ハセン

実際に転職後に年収が上がった人も4割にのぼるというデータもあると伺いました。

千本

少し前まで異業界・異業種転職を希望される方が多かった印象なのですが、最近は「専門性を磨いて次のステップに行く」という意識を持って、同じ業種または職種という条件で転職する人が増えているんです。結果、即戦力となるスキルが評価されて年収アップとなるケースが多いですね。

ハセン

Aさんが希望する営業職での転職も年収アップが期待できますか?

千本

期待できます。コミュニケーションを重視する仕事は、AI時代においても必要とされると予測できますし、日本で1万7000種あるといわれる職種のうちの10%を営業職は占めるんです。ニーズは今後も確実にあると考えます。

ハセン

なるほど。では、相談を続行してください。

有形業界と無形業界。より活躍できるのは?

千本

では、ここからAさんの今後の方針を考えていきましょう。好きな営業の仕事はできているが、業務ルーティン化が不満ということでしたね。セールスのスキルを新たに学べる環境を求めているという理解で合っていますか?

相談者A

合っています。

千本

より具体的に絞っていきましょうか。業界を大きく二つ、モノを作って売るメーカーなどの「有形業界」とサービス中心の「無形業界」で分けて考えるとすると、現職の人材業界は無形業界になりますよね。次も無形業界を希望しますか? それとも有形業界にチャレンジしたいですか?

相談者A

そこも漠然としていまして、正直、どう考えたらいいのか分かりません。

千本

スキルがどのように身につき、評価されていくかで比較すると分かりやすいと思います。有形業界の場合は、モノ(商品)の質の保証に関してカバーするスキルを磨けば評価されますが、商品が売れなければ新しいことにチャレンジしにくい面も。一方、無形業界の場合は、その真逆です。在庫を抱えないので新しいことにチャレンジしやすい環境ですが、一定の質を保証できるモノがない分、売り上げは営業力や提案力にかかっている。Aさんのお話を聞く限りでは、「無形業界での営業職」が方向性として近いように感じました。

相談者A

おっしゃるとおりだと思います。

ハセン

有形・無形で業界を分けるという考え方、目からウロコでした。

千本

なかなか言葉で説明できない迷いがあるときに、「AかBか、どちらが希望に近いか」という軸を提示すると方針が見えてくることは多いんです。

相談者A

たしかに、自分の思いに対する解像度がかなり上がった気がします。

ハセン

私も転職前に千本さんに相談すればよかったなぁ(笑)。

ハセン

「無形業界の営業職」という方針が見えてきましたが、具体的にはどんな業界が該当するのでしょうか?

千本

今いらっしゃる人材もそうですし、IT、金融、保険など。これらの無形業界の中で、もう一つのこだわりである年収アップの条件をクリアできる候補を探すという方法はいいと思います。

ハセン

なるほど。

千本

あと、「自分がそこで働くイメージを持てるか」も重要です。例えば、金融や保険と聞いて、そもそも興味を持てる領域かどうか。Aさん、いかがですか?

相談者A

その意味では、過去にボランティアに力を入れていた経験もあって、SaaSの仕組みを生かして社会課題を解決しようとする企業にも魅力を感じます。

ハセン

それは例えば社会課題解決型のスタートアップのようなイメージですか?

相談者A

はい。ただ、実際にカジュアル面談で話を聞きに行ってみると、「どれほど熱い思いを持っているの?」と前のめりで聞かれて、うまく答えられなかったり……。

ハセン

リアルな“スタートアップ転職あるある”ですね(笑)。社風との相性はどうしてもありますよね。

千本

相性はありますね。ただ、Aさんが今の時点で他社に話を聞きに行っているというアクションは素晴らしいので、ぜひ今後もやっていただきたいです。転職は重要な決断なので、できるだけ多くの会社を見たほうがいいと、皆さんに勧めています。その中で、譲れない条件が絞れてくることもありますし。

転職できる人、できない人。その差はズバリ……

ハセン

千本さんからご提供いただいた資料によると、営業職の転職相談で多いキーワードベスト3は「キャリアチェンジしたい」「今の環境が物足りない」「ワークライフバランス」だそうですね。

※千本調べ

千本

はい。最初は漠然としたお悩みから相談にいらっしゃる方が多いですね。Aさんはここまでの話で結構キーワードが出てきましたし、20代で職務経験5年というタイミングも強みになると思います。

ハセン

転職できる人、できない人の差はなんだと思いますか?

千本

本当に真剣に自分のキャリアを考えているかどうか。それだけだと思います。真剣に考えていれば、情報収集をしたり、カジュアル面談に足を向けてみたり、なんらかのアクションが生まれます。受け身のままだと、なかなか転職につながる行動が生まれませんよね。

ハセン

なるほど。「自分のキャリアを真剣に考える行動」をもう少し具体的に説明いただくと? どんなアクションをすべきでしょうか?

千本

私たちのようなアドバイザーを使っていただくのも一つの方法だと思います。一人で考えているだけではなかなか言語化できませんし、誰かに話すことで初めて言葉にして、希望イメージが明確になることは多いんです。

ハセン

Aさんは、今日のようなキャリア相談をしたのは初めてでしたか?

相談者A

初めてでした。自分なりに情報は調べていたつもりでしたが、やはり話を聞いてもらうことで、自分の中にあったキーワードが見えてきました。

千本

あとはそのキーワードを意識して、さらに転職情報を集めていくといいと思います。

ハセン

キーワードの明確化のために、他に考えるべきポイントはありますか?

千本

将来のキャリアイメージがすぐに出てこない方に対しては、「プライベートでの理想の将来イメージ」を聞いて、キャリアイメージにつなげることもあります。例えば、「40代では自然豊かな場所で暮らしたい」という希望があれば、勤務地の候補も変わってきます。

ハセン

逆に、Aさんが転職に今すぐ踏み切れない理由は何かあるのでしょうか?

相談者A

先ほど申し上げたように、自分の中で「どんな社会課題を解決したいか」というテーマがまだ見えていないという理由かもしれないです。

ハセン

ちなみにボランティアはどんな活動をしていたんですか?

相談者A

スポーツを子どもたちに教える活動をしていました。

ハセン

なるほど。スポーツ系のボランティアだと。

千本

「教育」も無形業界の一つですよ。例えば、スポーツ系の教育事業を展開する企業なども、今後の候補に加えてもいいのではないでしょうか。

相談者A

そうですね。選択肢が広がりました。

「年収をアップしたい」という本音。採用面接で伝えても大丈夫?

ハセン

素晴らしいですね。過去から現在に至るまでの経験をふり返って言語化し、キーワードを絞り込んでいった結果、Aさんのキャリアの方向性が見えてきましたね。では、最後に、千本さんにジャッジしていただきましょう。
Aさんは転職を考えるべきか?今は考えるべきじゃないか?どちらでしょうか。

千本

YESです!

ハセン

おおー!理由をお願いします。

千本

やはりAさんご自身の「なりたい姿」が明確ですし、20代という若さの強みも生かして理想のキャリアが叶う環境を選ぶべきだと感じました。

相談者A

ずっとモヤモヤしていた悩みが、今日のお話でクリアになりました。転職活動に本格的に挑戦します!背中を押していただけた気分です。

ハセン

Aさん、表情が笑顔に変わりましたね!ちなみに、どんな会社にアプローチしたいですか?

相談者A

先ほど引き出していただいた教育系や情報系に興味があります。まずは気軽に話を聞きに行くことから始めてみたいです。

ハセン

頑張ってください。千本さんに聞きたいことはありますか?

相談者A

転職の採用面接のときに、年収アップの希望ついてはストレートに伝えてもいいものでしょうか?自分にとっては重要なポイントですが、がめつい印象にならないかなと……。

ハセン

めちゃめちゃリアルな質問ですね。私も知りたいです。

千本

譲れない希望は、率直にお伝えしたほうがいいです。ただし、なぜそう思うのかの理由もきちんと添えることが大事です。「成果が評価につながる環境を求めている」という理由も伝えることで、条件のすり合わせがしやすくなります。

ハセン

勉強になりますね。私からも一つ、よろしいですか? 転職するとしたら同業種を狙うべきか? YESかNOかでいかがでしょうか。

千本

うーん、両方です!

ハセン

え?どういう意味ですか。

千本

転職するときは、業種と職種のどちらも変えると、年収の維持も難しくなってしまいます。職種は現状維持で、業種だけ変えるのでしたらいいと思います。

ハセン

まさに、Aさんのように営業職でのスキルアップを目指しながら、より興味を持てる業種に変えるチャレンジはOKということですね。Aさん、頑張ってください!

相談者A

はい。今後の展望が見えてワクワクしています。ありがとうございました。