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キャリア生相談 営業編 2人目
キャリア生相談 営業編 -2人目-

世界旅行の夢を叶えるために退職。キャリアダウンを防ぐには?

「今すぐ転職したいわけではないけれど、将来のために動くべきか、とどまるべきか」。そんな悩みを抱える20代ビジネスパーソンが、マイナビエージェントが誇るキャリアアドバイザーに本気で相談。第2回のテーマは、ある“夢”を実現した後の転職リスクについて。進行役はPIVOTの国山ハセン。

相談者プロフィール
相談者
山口さん(27歳・営業職)

新卒で入社した外資系企業で、営業職(プリセールス)として働いて4年目。長年の夢だった「世界を巡る旅」を実現するために近々会社を辞める予定。決断に迷いはないが、「帰国後の転職がキャリアダウンになるのでは」という不安あり。

私がじっくり聞きます!
千本佳奈子
マイナビエージェント キャリアアドバイザー
千本佳奈子

大学を卒業後、新卒で人材ベンチャー企業へ入社し、2015年にマイナビ入社。マスコミ・メディア・コンサルティング・インターネット・小売り・メーカーを中心に多種多様な企業・求職者の方向けの採用支援・転職支援を行う。現在はメーカー領域のマネジャーとして「質の高い転職支援サービス」を多くの方に提供するミッションを実行。キャリアコンサルタント国家資格保有。人材業界歴16年目。

上司からも顔出し公認!「人生の転機」を決断する本気の相談

ハセン

マイナビプレゼンツ「おもいっきりキャリア生相談」、今回は営業編の第2弾です。前回に引き続き、千本佳奈子さんにアドバイザーとしてご参加いただきます。千本さん、普段キャリア相談にいらっしゃるのは、どのような方が多いのですか?

千本

マイナビエージェントは20代、30代の転職に強いエージェントと言われていますが、最近は40代以上の幅広い年代の方もご支援しています。業界や業種は、本当に様々ですね。

ハセン

キャリア相談が人生の分岐点となることも多そうですね。千本さんに相談して、整理して、絞り込んでいく過程の中で、どんな質問があり、どんなフィードバックが出るのか楽しみです。さあ、今回の相談者をご紹介します、山口さんです。

山口

よろしくお願いします。

ハセン

この企画は「覆面出演」を前提に相談者を募集したのですが、山口さんは会社に許可を取ってここにいらっしゃったそうですね。

山口

はい、上司に相談しまして、「メディアに顔出し出演OK」の許可をもらいました。

ハセン

事前のヒアリングシートにも相談したいことがびっしり書かれていまして、熱量がすごいんです。早速始めていきましょう。千本さん、よろしくお願いします。

学生時代から遡って深掘り。見えてきたキーワード

千本

キャリア相談では、まず過去のことから遡ってお話をお伺いしていきます。これは、山口さんの人生の転機や、複数の選択肢があるときに、どのような基準で決断されたかを整理するためです。まず、学生時代に力を入れていたことを聞かせて下さい。

山口

高校時代はサッカーに明け暮れていました。大学でもサッカーを続けていましたが、それよりも夢中になったのが海外旅行でした。

千本

海外に目を向けたきっかけは何だったのでしょうか?

山口

初めて訪れた国は、カンボジアでした。そこで日本とのギャップを強く感じて、海外の魅力にハマっていったのです。大学在学中に訪れた国は30カ国ほど。車でアメリカを横断したり、鉄道でヨーロッパを回ったり、アフリカ縦断も……正直、単位はギリギリで卒業しました(笑)。

千本

行動力がすごいですね。お一人で旅をされたのですか?

山口

一人旅もありましたが、アメリカ横断は2人で、アフリカ縦断は1人で出発して途中で友達と出会い、最後は4人でゴールしました。

千本

ありがとうございます。「旅」というのが山口さんが大切にするキーワードの一つですね。学生時代に世界各国を旅して、就職活動はどう考えていたのですか。

山口

そうですね、就職はしようと思っていました。

千本

何を就職活動の軸に据えていましたか?

山口

僕は、世界中を旅する中で「やっぱり日本は素晴らしい国だ」と改めて認識しました。特に日本の強みと言えるのはインフラです。高度な公共インフラ、企業インフラが日本全体を支えているのだなと実感しました。そこで「自分も社会の基盤づくりに貢献できる仕事がしたい」と外資系IT企業を選びました。

千本

旅の影響で「インフラ」というキーワードを見つけたのですね。インフラ関連の企業が色々ある中で、現職への決め手は何だったのでしょうか。

山口

世界中を旅する中で現職の会社名を目にすることが多く、親近感を持ったんです。また、新興国でも皆が当たり前のように携帯電話を使い、ITインフラがどんどん整ってきているのを目の当たりにして「それをもっともっと進めて行きたい」と考え、今の会社を選びました。

千本

なるほど、ご自身の考えと一致するので今の会社を選んだのですね。入社してどのようなお仕事をされていましたか?

山口

プリセールスという技術営業の仕事です。僕は理系出身ということもあり、技術にも興味があったので。

千本

実際にお仕事をする中で、得意な業務、好きな業務はありますか?

山口

僕は人とのコミュニケーションが好きなので、プリセールスとして営業部門や技術部門などの他部署と関わりながら、調整の舵取りをする業務が楽しいと感じています。その一方で、やはり技術部門の方は専門性が高いので、僕自身の知識が追いつかず「このままで大丈夫かな?」と心配になる部分もありました。

千本

ご経験としては今年で4年目ですよね。理系の同僚に囲まれてある種の劣等感を抱きながらもここまでやって来られたのは、何が原動力になったのでしょうか。

山口

直属の上司にあたるマネージャーの存在が大きいです。案件の進め方や社内調整の仕方を一から指導してくださって。厳しく叱られたこともあるのですが、素晴らしい上司だと思っています。

千本

人間関係にも恵まれた環境なのですね。それなのに、なぜ今のタイミングで転職をお考えなのですか?

山口

実は、就職活動の時から「27歳で旅に出よう」と決めていたのです。キャリアを見つめ直すのに、30代になる前の27歳というタイミングがベストなんじゃないかと。

千本

学生時代に世界中を回ってこられたと思うのですが、なぜ、27歳になってまた改めて旅に出ようと決意されたのですか?

山口

学生時代は時間があってもがお金がなくて、行きたくても行けない場所もありました。今やっと資金を貯めて「行きたいところに行ける」という状況になったものの、今度は時間がない。今の勤務先は本当にすごく良い会社で、人間関係、働き方、年収すべてに満足しています。だからこそ、恵まれた環境に安住せずに、外の世界を見てみたいという気持ちが生まれたんです。そこで、一旦会社を辞めて旅に“全振り”しようと決意したのです。

ブランクは転職リスクになるとは限らない。カギは「何を学び、吸収したか」

ハセン

つまり、転職ではなく一旦退職して、旅に出るということですか。決断前の相談ではなく、もう決めてからキャリア相談というのは珍しいパターンですね。

山口

この決断に迷いはないものの、不安はあります。旅を終えたら、またしっかり働くつもりですが、キャリアのブランクがある状態で働き口があるのか、企業からどのように見られるのかがすごく不安で……。

ハセン

なるほど、確かに不安になりますよね。ブランクがあるとネガティブに見られるケースもあると聞きますし。千本さん、実際のところ転職市場において、キャリアにブランクがある人は、どのように評価されるのでしょうか。

千本

ブランクへの評価は、ポジティブとネガティブの両方あります。山口さんのように、就職前から「旅に出る」という目的意識を持って働いてこられたのであれば、その話もするべきですね。大事なのは、ブランク期間中に“どんな経験を積んで、どんな学びを得たか”を、就職先に語れるかどうか。その学びを採用後に体現していけるとアピールできるかどうかです。それができれば、ブランクはそれほどマイナスにはなりません。現時点で、旅に出る決断だけでなく、帰国後のキャリアにも目を向けられているのは素晴らしいことです。

山口

実は、ブランクの「期間」も心配です。僕は2年くらい世界を回りたいと思っているのですが、「1年程度なら良い」とか「3年は長すぎる」など、ブランクの長さで評価が分かれることはあるのでしょうか。

千本

ブランクの長さはあまり関係ないと個人的には思います。1年でも3年でも、中身のある経験をしたかどうか、それを人に語れるかどうかが大事です。山口さんの場合は旅ですが、それは“仕事をしていく中では体験できない経験”だと言えますね。それをご自身の中でどう消化して、アウトプットしていきたいのかが気になります。

山口

確かに、しっかり考えなくてはいけないですね……。僕の中で「旅を楽しみたい」という感情と、キャリアに悩む気持ちの両方があって、考え込んでしまいます。

ハセン

それは、多くの人が同じではないでしょうか。山口さんの場合は旅ですが、自分のキャリアに悩みを抱えている人は、一旦仕事を離れて、自分と向き合う時間をつくるのも一つの選択肢ではないかと私は思います。

山口

ありがとうございます。旅から戻った後の転職活動については、いつごろから準備すれば良いのでしょう。

千本

転職活動というのは、私たちのような転職エージェントをお使いになる場合も含めて、多くが2ヵ月程度の短期決戦の場です。活動自体は、ご自身の方向性を見つめ直したり、履歴書や職務経歴書を準備したりする期間と、色々な企業を比較検討して、何社か面接を受けて結果を出す期間があります。もし日本で働きたいという場合であれば、帰国後に取り組んだほうが良いでしょう。

ハセン

旅の間に、得た学びで「何をやりたいか」を考えながら過ごすのも良いかもしれませんね。帰国後の転職活動では、現職と同じIT業界を志望されるのですか?

山口

同業界も考えていますし、思い切ってキャリアチェンジできるのかも聞きたいです。

千本

そうですね、同業界であれば経験者という立場ですから、2年ブランクがあっても、企業側も戦力として採用しやすいでしょう。給与水準も現状と近い形で提示される可能性が。一方、キャリアチェンジという形で業界と職種の両方を変えてしまうと、求める待遇や年収にならない可能性もあります。ですので、業界または職種のどちらか一方に、現職との親和性を持たせると、提示される条件も有利になるかと思います。

山口

旅の間に起きた出来事や感じたことについて、YouTubeやSNSで情報発信したいなと考えています。メディアを使った発信が、転職活動でマイナスに評価されることはありますか?

千本

SNSでの発信内容によりますが、マイナス評価にはなりにくいでしょう。むしろ旅の記録として「このような経験を積みました」と人間力や柔軟性をアピールできる材料になり得るのではないでしょうか。

ハセン

旅に出るという行動力や、コミュニケーション能力を強みとしてアピールできそうですね。いま「人間力」という言葉がありましたが、キーワードとして「非認知能力」という言葉も紹介させて下さい。これはアメリカの経済学者ジェームズ・ヘックマン教授の研究によって提唱された言葉ですが、学力やIQなどの数値で測れる「認知能力」に対して、意欲やコミュニケーション能力など数値で測れない能力は「非認知能力」と定義されています。千本さん、この非認知能力は、大人になっても鍛えられるものでしょうか?

千本

基本的な能力は幼少期に培われるものが多いようですが、非認知能力は何歳でも伸ばしていけます。いろいろな経験に影響を受けて後天的に変化する部分だからです。海外旅行では発想の転換や物事への柔軟性が求められますから、非認知能力も効果的に鍛えられるのではないでしょうか。また、SNSでの発信を通して、興味を持つ分野が変わっていく可能性や、ご自身の強みが変わる可能性もあると思います。例えば、動画の編集能力が向上したり、インフルエンサー的な発信に興味を持ったりするかもしれませんね。

山口

ありがとうございます。実は、旅を目的に一旦会社を辞めることに対して、親戚から否定的な反応をされたので少し弱気になっていました。こんなふうに話を聞いてもらえて、フィードバックを受けることができて、とても嬉しいです。

キャリアのもう一つの選択肢。出戻り再入社の「アルムナイ」

ハセン

いま、一つアイデアを思いつきました! 旅を終えた帰国後に、「もう一度同じ会社に戻る」という選択肢はあるのでしょうか?

千本

あると思いますよ。近年、一度自社を退職した人を中途採用する「アルムナイ制度」という人事施策を導入する企業が増えています。大手企業では7割以上で導入されているというデータもあるんですよ(マイナビ中途採用状況調査2021年度版より)。

ハセン

そういえば、僕もTBSを辞めるときに「戻ってきてもいいんだよ」と言われました。これは、会社側にもメリットがある制度なのですね。

千本

そうなのです。これまでの終身雇用制度の中では、転職者はある種の「裏切り者」扱いをされて、その後の連絡も取りにくい雰囲気がありました。一方、アルムナイ制度では、会社と従業員が良好な関係性を保ったまま退職し、その後も関係性を持ち続けます。会社側は「別のところで経験を積んで、また戻ってきていいよ」という考えなのです。これから人材不足が深刻化してくる時代ですから、ますます重要になる制度と言えますね。

山口

そうなのですね。とはいえ、一度会社を辞めてしまうと「申し訳ないな」という後ろめたさがあるのですが。

千本

後ろめたさを感じる必要はありませんよ。会社側にとっては、「確実に戦力になる人材」を採用できるメリットがあるのですから。山口さんは会社との関係も良好なようですし、選択肢の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。また、別の企業で働くことになった場合でも、ビジネスで協業することは十分あり得ますから、今の会社とのつながりを保っておくのは賢明だと思いますよ。

山口

そうですね、旅に出る僕を「楽しんでこい」と送り出してくれた会社なので、今後も良好な関係は続けていたいですね。

どんな経験もキャリアのプラスに。明確な目標意識が次につながる

ハセン

では、このあたりで千本さんにジャッジしていただきましょう。山口さんは、旅の間に今後のキャリアについて考えるべきでしょうか?YES or NO、どちらでしょうか。

千本

NOです。

ハセン

NOですか!ちょっと意外ですね。理由を聞かせてください。

千本

山口さんの場合「自分が知らない世界を知るために旅をする」という大きな目的をお持ちです。旅の経験を通して価値観も変わるでしょうし、SNSでの情報発信などで新たな選択肢が見えてくるかもしれません。ですので、現時点ではキャリアのことは一旦置いて旅に集中するほうが、結果的に将来のキャリアにもプラスになるのではないかと私は思います。

ハセン

山口さん、いかがですか?

山口

ありがとうございます。少し肩の荷が下りたというか、旅を楽しむことに集中していきたいなと思えました。

千本

山口さんが相談にいらしたのは、旅から戻った際のキャリアに不安があったからですよね。今回お伝えしたアルムナイ制度や、旅の経験で得たことを面接で語れるように“経験の積み方”について考えてみるのもよいのではないでしょうか。

山口

ありがとうございます。アルムナイ制度は今回初めて知りました。今の会社でも出戻り採用自体は行われているので、ちょっと考えてみたいです。

ハセン

上司との関係も良好なので、相談しやすいかもしれませんね。旅の目的地はもう決まっているのですか?

山口

2024年のパリ五輪と、世界各地のお祭りを目指して行こうかなと。しっかり資金を貯めてきたので、自分が興味を持った場所に行ってみたいです。あとは、旅に向けての準備のノウハウ、帰ってきてからのキャリアについても発信したいですね。一度会社を辞めて旅に出る、そんなキャリアパスもあるんだよと多くの人に知ってもらえたら嬉しいです。

ハセン

キャリアの新しい選択肢を示せますね。ぜひ、旅を満喫して、お話を聞かせて下さい!

山口

はい、行ってきます!今日はありがとうございました。