更新日:2025/04/22
この記事のまとめ
品質保証(QA)は、製品やサービスの品質を維持・向上させる重要な役割を担っている職種です。製造業やIT業界をはじめ、さまざまな分野で求められる専門職ですが、「具体的にどのような仕事をするのか」「平均年収はどれくらいなのか」「自分に向いているのか」など、気になる方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、品質保証の仕事内容に加え、平均年収の目安や転職成功のポイントを解説します。品質保証の職種への転職を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
品質保証の具体的な仕事内容を把握する前に、まずはどういった職業なのか概要を紹介します。また、品質保証と似た職業である「品質管理」との違いについても具体的に解説します。品質保証と品質管理はどちらも品質の維持・向上にかかわる職業ですが、両者の役割や仕事内容には違いがあるため、転職を考えている方はしっかりと理解しておきましょう。
品質保証は、顧客に安心安全な製品を届けられるよう、自社製品の品質を検査し顧客満足の最大化をサポートするのが主な仕事です。
具体的には、原材料の仕入れ段階から生産完了に至るまで品質検査を実施し、定められた規定値を満たした安全なものであるかを確かめます。検査は国内規格や国際規格に則って実施します。さらに、製品を顧客に納品後に発生した不良品やクレームの対応も品質保証の仕事の領域です。
つまり品質保証の仕事における目的とは、領域に限定されず自社製品の高い品質を担保し、創出した価値を不足なく顧客に届けることです。製造業の根幹を支える、重要な目的を背負うポジションといえます。
品質保証と混同されやすい仕事として、品質管理が挙げられます。品質保証は原材料や製品に対し一定の品質が保たれているかを確認する役割を担いますが、品質管理は生産フェーズでいかにして不良品の流通をなくすかという点にフォーカスした業務内容です。
どちらも「高品質の製品を顧客へ届ける」という目的は同じですが、品質管理は品質保証という大きな業務領域に含まれる仕事という見方ができます。品質管理について詳しくは下記記事で紹介しています。ぜひ併せてご覧ください。
品質保証の役割は単なる検査にとどまらず、製品開発の段階から製造プロセス、出荷後のフォローまで広範囲におよびます。品質保証の仕事に就きたい場合は、具体的な仕事内容を理解し、自分の理想とするキャリアが実現できそうかという点も踏まえて検討することが大切です。ここでは、品質保証の主な仕事内容について解説します。
品質保証の仕事は、製品開発の初期段階から始まります。まずは、顧客のニーズや市場のトレンドを踏まえて、どのような仕様や規格の製品を提供するかを決定します。そして機能性や耐久性、安全性などの基準を設定し、それを満たす設計が行われるよう仕様書や企画書を作成する流れです。また、国際規格や業界基準に準拠した仕様を定めることが求められます。
製品の品質を安定させるためには、製造プロセスの設計が欠かせません。品質保証の担当者は、各工程で品質が維持されるよう、管理項目を設定し、具体的な管理方法を策定します。品質管理部門や生産技術部門などの他部署とも連携しつつ、製造プロセスが適切に管理されているかを定期的に確認し、改善点を特定します。
品質検査は、製品が仕様どおりに作られているかを確認するための工程です。製造の各段階で実施されることが一般的であり、主に原材料の受け入れ検査、中間工程での工程内検査、最終製品の出荷前検査に分類されます。検査方法には、全数検査、サンプリング検査、自主検査があり、製品の特性やコスト、時間の制約に応じて適切な方式を選択します。
万が一、不良品が発生した場合、品質保証部門は速やかに原因を調査し、再発防止策を講じます。具体的には、発生した不具合を分析し、設計や製造プロセスのどこに問題があったのかを明らかにします。たとえば、製造ラインの設備や作業員の手順に問題がある場合、設備の点検や作業手順の見直し、作業員の教育強化などを実施することが大切です。
顧客から品質に関するクレームが寄せられた際には、迅速かつ誠実に対応することが企業の信頼を維持するうえで欠かせません。クレーム対応では、まず顧客の意見を丁寧にヒアリングし、問題の詳細を把握します。その後、社内で調査を行い、原因を特定して適切な対応策を講じます。
顧客からのフィードバックは、製品を改善するための貴重な情報源です。品質保証部門は、クレーム内容を分析し、設計や製造プロセスの見直しに反映させることで、今後の品質向上につなげます。
どの業界でも品質の確保は欠かせず、特に製造業や医療、食品業界などでは、品質保証の業務が直接的に企業の信頼やブランド価値に影響を与えます。この仕事にはさまざまな魅力があり、やりがいを感じるポイントも多くあります。転職を迷っている方は、以下で紹介する品質保証の魅力も参考に検討してみてください。
品質保証の仕事は、製品やサービスが適切な基準を満たしているかをチェックし、不具合やリスクを未然に防ぐ役割を果たします。たとえば、自動車業界では、ブレーキやエアバッグなどの重要な部品の品質を厳格に管理することで、事故のリスクを低減できます。
品質保証の仕事は、単に製品の品質を維持するだけでなく、最終的に人々の生活の安全を守る使命を担っているといえるでしょう。
品質保証の仕事は、クレーム対応や顧客満足度の向上に貢献することで、ほかの部署から感謝される機会が多いのが特徴です。たとえば、営業部門が顧客と交渉を進める際に、製品の品質がしっかりしていれば、大きな信頼を得られます。また、クレームが発生した際には、迅速かつ適切に対応することで、企業の信頼回復に貢献できます。
このように、品質保証は社内全体の業務を円滑に進めるために不可欠な職種です。同僚や上司から感謝される機会が多く、仕事のモチベーション向上にもつながります。
ものづくりの仕事ならではの魅力として、自分が品質保証に携わった製品が市場に出て、多くの人に使われる喜びがあります。製品が完成し、実際に消費者の手に渡る瞬間は、大きな達成感を味わえる瞬間です。
たとえば、自動車業界の品質保証担当者が、何ヵ月にもわたって試験や検査を実施し、品質を確保した車が市場に流通すると、その車が街を走る姿を目にできます。また、家電業界であれば、自分が品質管理を担当した製品が店頭に並び購入される様子を目の当たりにし、消費者の生活を便利にしていることを実感できることもあります。
マイナビエージェントの「職種別平均年収ランキング【2020年版】」によると、品質保証・品質管理の平均年収は526万円です。高い専門性を持ち広い領域を網羅しなければならない品質保証の仕事は、比較的高い年収であることがわかります。なお年代別で見てみると、20代が380万円、30代が464万円です。
男女別では、20代は男性よりも女性のほうが若干年収は高いものの、30代になると逆転し、男性のほうが204万円高くなっています。
品質保証は企業の価値や信頼を守るうえで重大な責任を負う仕事です。では、どんな人がこの仕事に向いているのでしょうか。
品質保証の業務では、日頃から製造工程に広くアンテナを張り巡らせ、検査や分析に有効なデータをコツコツ収集しておく必要があります。実際の検査や分析作業も、データや数値を用いながら細かい工程をこなしていきます。
場合によってはすぐに求める成果が得られず、長い間作業を継続する必要も出てくるでしょう。そのため、品質保証の仕事は細かい作業や地道にコツコツ進める作業が好きな人、辛抱強く目の前の作業に打ち込める人に向いています。
感情論や根拠のない仮説に振り回されず、常に慎重で冷静な対応ができる人も、品質保証の仕事に向いています。品質保証がいかに正確な仕事をしているかによって、製品の出来や顧客満足度が左右されるといっても過言ではありません。
そのため、事実や根拠に基づいたデータから論理的に結論を導き出せる人や、いかなる状況でも立場を踏まえた冷静な対応ができる人は活躍できるでしょう。
品質保証では常に知識をアップデートしていくことが求められるため、市場や世間の動向、最新技術の情報に敏感であることが求められます。そのため、何事にも興味関心を持ち突き詰められる人、新たな知識や情報に触れることに喜びを感じられる人に適した仕事です。
品質保証への転職を成功させ、長期的に活躍していくためには、どのように考えて仕事を進めたほうがよいのでしょうか。ここでは、仕事をするうえで重要になる品質保証の考え方について解説します。以下で紹介する内容は、品質保証の仕事について理解を深めるだけでなく、選考対策にも役立てられます。ぜひ参考にしてみてください。
PDCAサイクルとは、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Act(改善)」の4つのステップを繰り返し実施することで、継続的な改善を図る手法です。品質保証の観点からは、一度の品質チェックで終わるのではなく、常に改善し続けることが重要です。
たとえば、製造業においては、不良品の発生原因を分析し、その結果を基に工程を見直すことが求められます。また、ソフトウェア開発では、テスト結果をフィードバックしてコードを改修し、次の開発プロセスに反映させることが品質向上につながります。PDCAサイクルを迅速に回すと、問題の早期発見と対応がスムーズになり、結果として全体の品質を高めることが可能です。
ファクトコントロールとは、事実(ファクト)を正確に把握し、適切に管理・分析することを指します。品質保証の現場では、感覚や経験則に頼らず、客観的なデータや数値に基づいた判断が必要です。
たとえば、製造業では、歩留まり率や不良率といったデータをリアルタイムで収集・分析し、適切な対策を講じることで品質を維持できます。正確な現状を把握できていないと、誤った対策を講じてしまい、結果的に品質低下を招く可能性があります。したがって、データを適切に管理し、根拠に基づいた改善策を実施することが、品質保証の仕事には不可欠です。
製品やサービスの品質は開発の各工程で決定づけられるため、どのようなフローで進められているかを把握し、それに応じて品質管理を行うことが必要です。たとえば、ソフトウェア開発では、要件定義・設計・実装・テスト・運用の各フェーズがあり、それぞれの段階で品質保証の観点を取り入れることが求められます。
「要件定義の段階で仕様の曖昧さを排除する」「設計フェーズでレビューを徹底する」「実装後の単体テストや結合テストを適切に実施する」など、各工程での品質管理が最終的な成果物の品質を左右します。開発の流れを把握すれば、問題がどこで発生しやすいのかを予測し、早期に対策を講じることが可能です。
「品質(Q)」「コスト(C)」「納期(D)」のバランスを取ることは、安定した企業経営において欠かせません。中でも優先したいのは「品質(Q)」です。なぜなら、品質が低下すると、結果的に顧客からの信頼を失い、長期的なコスト増や納期遅延につながる可能性があるためです。
品質を第一に考えることで、長期的に見ればコスト削減や納期短縮にもつながります。確かな品質を維持すれば、企業のブランド価値を高め、顧客満足度も向上するでしょう。
品質保証は専門的な知識や経験が求められる職種ですが、学歴や経験を不問とする求人も多く、異業種からの転職も十分可能です。とはいえ、簡単に内定を獲得できるわけではないため、転職におけるポイントを押さえておく必要があります。ここでは、未経験者でも転職を有利に進める方法やポイントを紹介します。
未経験でも資格を持っていれば、一定の知識を有していると企業にアピールできます。また、試験勉強を通じて、品質保証に関する基礎知識や業界の専門用語を習得できる点も資格取得のメリットです。以下は、品質保証の仕事を目指すうえでおすすめの資格です。
履歴書には勉強中の資格も記載できるため、転職活動と併行して資格取得を目指すのもおすすめです。
選考対策が不十分だと、自分の強みやアピールポイントが採用担当者に伝わりません。入社意欲を伝えるためにも選考対策は万全にしておきましょう。
まずは自己PRを明確にしてみてください。未経験でも、前職で培ったスキルや経験を品質保証の仕事にどう活かせるかを整理しましょう。たとえば、細かい作業を丁寧に進められる能力や、チームワークを重視した仕事の経験などは、品質保証の業務と親和性が高いといえます。
面接対策では、よくある質問に対する回答を準備することが大切です。品質保証の仕事を選んだ理由、キャリアプランなど、スムーズに答えられるようにしておきましょう。
転職エージェントは、人材を求めている企業と求職者をマッチングさせるサービスです。転職エージェントを利用することで、品質保証の求人市場や求められるスキルについて、専門のキャリアアドバイザーからアドバイスをもらえます。また、転職サイトには掲載されていない非公開求人を紹介してもらえることがあり、より多くの選択肢から応募先を選べる点もメリットです。
ほかにも、書類選考の通過率を上げるためのアドバイスや、面接での受け答えの指導を受けられるため、選考対策がしやすくなります。転職の成功確率を上げたい場合は、ぜひ利用してみてください。
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品質保証の仕事は、製品やサービスの品質を維持・向上させる重要な役割を担います。具体的には、検査・試験の実施、品質管理の仕組み作り、不具合対応などが含まれます。平均年収は経験や業界によって異なりますが、マイナビエージェントの調査(2020年版)によると526万円です。
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