更新日:2024/03/05
残業をすると残業代が支払われますが、どのように計算されているか知らないという方も多いのではないでしょうか。
正しく残業代が支払われているかどうかを知るために、残業代の計算の仕方を把握しておく必要があります。
以下、勤務体系別・パターン別に残業代の計算方法を詳しく解説します。
目次
残業とは、労働基準法で定められている「週40時間、1日8時間」の法定労動時間を超えて働いた時間を指します。
残業かどうかは、実働時間が法定労働時間を超えていたかどうかで判断されるため、以下に挙げる場合は実働時間とはならないので注意が必要です。
例えば、就業時間が午前9時~午後5時(休憩1時間)の企業で働く社員が、1時間遅刻して午後7時まで働いたとします。
この場合、実際に働いた時間は8時間で、1日の法定労働時間を超えていないため残業は発生しません。定時の午前9時に出社し午後7時まで働いた場合は、実際に働いた時間が9時間となるため、1時間分の残業が発生します。
「残業」には、以下に挙げる「時間外労働」と「法内残業」の2種類があります。
両者の違いは、残業代の支払いが必要かどうかにも関わってきます。
時間外労働とは、労働基準法で定められた法定労働時間(原則1日8時間、1週40時間)を超えて行われた残業のことをいいます。時間外労働に対しては、労働基準法によって割増賃金(残業代)を支払わなければなりません。
勤務時間が午前9時~午後5時(休憩1時間を含む)の企業で、午後7時まで残業を行ったとします。この場合、会社が就業規則などで定めた所定労働時間は1日7時間で、法定労働時間(8時間)よりも短くなります。
時間外労働は、法定労働時間を超えて行われた残業ですから、時間外労働にあたるのは午後6時~午後7時までの1時間となります。
法内残業とは、会社が就業規則などで定めた所定労働時間を超え、労働基準法で定められた法定労働時間内の範囲で行われた残業のことです。法内残業に対しては、通常の所定賃金を支払えばよく、残業代の支払いは発生しません。
上記のケースでいえば、午後5時~午後6時までの残業は、法定労働時間内の残業=法内残業ですから、この分の残業代は発生しないということです。
なお、法内残業には「労働基準法上の残業代」が発生しませんが、就業規則や労働契約によって、法内残業に対しても残業代を支払う旨を定めている企業はあります。
1時間あたりの正しい残業代はいくらになるのか、一般的な勤務体系の場合を例に見ていきましょう。
「週40時間、1日8時間」の法定労働時間を超えて働くと、「残業」となります。
残業に対して発生する賃金は、1時間あたりの賃金の25%増となり、「1時間あたりの賃金(時給)×1.25(割増率)×残業時間」で算出します。1時間当たりの賃金は、「月給÷所定労働時間÷所定労働日数」で求めます。
なお、月給には、家族手当・通勤手当・住宅手当などは含まれません。
それでは、残業1時間につき、残業代はいくらになるのか、具体的に計算してみましょう。
〈例〉
月給24万円、所定労働時間8時間、所定労働日数20日の人が1時間の時間外労働を行った場合
1時間当たりの賃金=24万円÷(8時間×20日)=1,500円
残業代=1,500円×1.25×1時間=1,875円
残業代を計算する際には、「割増率」が適用されます。この割増率は、残業代の対象となる労働の種類によって異なります。
以下、それぞれの残業代の計算の仕方について、具体例を挙げて解説します。
休日労働とは、法定休日に働いた場合をいいます。法定休日とは、労働基準法で定めた休日のことで、毎週少なくとも1日、または4週で4日以上与えなくてはならないとされています。
休日労働の割増率は、35%と定められています。
〈例〉
法定休日に午後1時~午後6時まで働いた場合(1時間あたりの賃金を1,500円として算定)
残業代:1,500円×5時間×1.35=10,125円
法定労働時間を超える残業については、割増率25%で残業代が支払われます。
残業が午後10時~翌午前5時の時間帯におよんだ場合は深夜労働となり、その時間帯分の残業代はさらに25%割増の50%で残業代が支払われます。
企業が定めている所定労働時間を超えても、法定労働時間である1週40時間、1日8時間以内の残業(法内残業)であれば、通常の所定賃金を支払えばよく(割増率0%)、労働基準法上の残業代の支払いは発生しません。
〈例〉
勤務時間が午前9時~午後5時(休憩1時間を含む)の企業で、午後6時まで残業を行った場合(1時間あたりの賃金を1,500円として算定)
所定労働時間:1日7時間
時間外労働:0時間(午後6時までは法定労働時間内)
残業代:なし(通常の1時間あたりの賃金1,500円)
労働者の価値観やライフスタイルが多様化しており、より柔軟で自律的な働き方への志向が強まっており、一律的な時間管理が馴染まない状況が徐々に拡大しつつあります。
そうした中、多様な働き方に応じて設けられたのが「フレックスタイム制」や「変形労働時間制」です。
これらの制度でも、残業代は発生します。制度の概要や特徴と合わせ、残業代の計算の仕方も解説します。
フレックスタイム制とは、始業や就業の時間を社員が自分で自由に決めることができる制度です。労働時間が1日8時間・1週40時間を超えても残業代は発生しません。
ただし、フレックスタイム制では1カ月以内の「清算期間」が設けられ、その期間内で社員が労働すべき総労働時間は、平均して1週間の労働時間が40時間(特例措置対象事業場は44時間)以内でなければいけません。
あらかじめ定められた総労働時間を超えた場合には、その超えた分について残業代が発生することになります。
〈例〉
フレックスタイム制で働くAさんのある週の勤務時間:月曜日6時間、火曜日10時間、水曜日6時間、木曜日10時間、金曜日9時間
精算期間:1週間
あらかじめ定められた総労働時間:40時間
Aさんの合計労働時間は41時間であり、法定労働時間である1週40時間を超えているため、1時間分の残業代が発生します(1時間あたりの賃金を1,500円として算定)。
残業代:1,500円×1時間×1.25=1,875円
変形労働時間制とは、繁忙期と閑散期がはっきりしているような場合、月単位・年単位で労働時間のバラつきを調整できる制度です。
繁忙期にはさまざまな仕事をこなさなければならず、勤務時間が8時間を超える日も多くなると思います。労働基準法では、1週40時間、1日8時間を超えると法律違反になってしまいます。しかし、変形労働時間制を取り入れて、閑散期の労働時間を短く設定しておけば、勤務時間が増加しても時間外労働として扱わなくてもよくなります。
代表的な「1カ月単位の変形労働時間制」では、1カ月以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間以内(特例措置対象事業場は44時間)となるように、労働日または労働日ごとに労働時間を設定することで、労働時間が特定の日に8時間を超えたり、特定の週に40時間を超えたりすることが可能になります。
例えば、第1週と第3週が繁忙期の場合、第1週47時間、第2週33時間、第3週45時間、第4週35時間とすれば、1週間当たりの平均労働時間は40時間となります。
なお、1カ月単位の変形労働時間制を導入するためには、労使協定や就業規則などで、次の項目を定めておく必要があります。
変形労働時間制においても、1週間の所定労働時間が40時間を超えている場合は所定労働時間を超えた部分、40時間未満の場合には、法定労働時間を超えた部分が時間外労働となります。
〈例〉
所定労働時間が第1週47時間、第2週33時間、第3週45時間、第4週35時間、実労働時間が以下のとおりだった場合
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この例では、第3週で所定労働時間を超えた2時間分、第4週で法定労働時間を超えた2時間分の計4時間が時間外労働となり、25%割増の残業代が支払われます。
なお、第1週は実労働時間が所定労働時間内であり、第2週は実労働時間が所定労働時間を超えていますが、法定労働時間内なので、時間外労働は発生しないのです。
裁量労働制とは、外回りが多い営業職のように、会社側が労働時間を把握することが難しい社員に対し、実際に働いた時間にかかわらず、事前に決めた時間働いたものとみなす制度で、みなし労働時間制ともいわれます。
裁量労働制を適用し、みなし労働時間を8時間以下とした場合には、法定労働時間内ですので残業代は発生しません。
しかし、労使協定または労使委員会の決議で、裁量労働制のみなし労働時間を8時間超に設定した場合には、休憩時間を除く実労働時間が8時間を超える分につき、残業代(割増率25%)が発生します。
〈例〉
みなし労働時間9時間、1時間あたりの賃金1,500円の場合
法定時間外労働=10時間-9時間=1時間
残業代=1時間×1,500円×1.25=1,875円
みなし残業は給料にあらかじめ一定時間分の残業代を含ませておくもので、固定残業制度とも呼ばれています。
雇用契約書に「月○時間の残業を含む」などと記載されている場合、その分の残業代は給料とは別に支給されません。実際の残業時間がみなし残業時間より少ない場合でも、一定額が支給されるというのは社員にとってメリットだといえます。
ただし、実際の残業時間が、みなし残業を超える場合も少なくありません。実際の残業時間がみなし残業を超えた場合、追加で残業代を支払う必要性があります。
みなし残業代を支払っているからといって、いくらでも残業させていいわけではなく、会社には別途残業代を支払う義務が生じるのです。
ところがそのような場合でも、「一定のみなし残業代を支払っているから」と、会社側が決められた時間を超えた分の残業代を支払わないといった未払いをめぐるトラブルが起こることもあります。
〈例〉
みなし残業時間30時間、実際の残業時間(時間外労働)36時間
みなし残業を超えた6時間分は残業代が追加で発生する(1時間あたりの賃金を1,500円として算定)
時間外手当=6時間×1,500円×1.25=11,250円
残業が多い、あるいは残業代がきちんと支払われない。こういった悩みを抱えている方もいらっしゃると思います。
いわゆる「サービス残業」が常態化し、残業代未払い問題が大きく取り上げられるようになっているのは、皆さんもご存じかと思います。
そのような場合、勤務先の制度が法的に問題あるようであれば、労働基準監督署や弁護士などに相談してみましょう。また、問題が解消しないようであれば、働き甲斐やスキルアップなどに影響するため、転職も考えたほうがいいといえるでしょう。
「残業代が出なくて厳しい」「残業がつらい」という方は、転職を考えるのも一つの手です。転職を検討するにあたっては、同じことを繰り返さないよう、企業情報の収集の際に残業代の扱いはどうなっているかをきちんと確認するのを忘れないようにしましょう。
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