更新日:2023/12/04
公害は、一度発生してしまうと大きな社会問題になってしまいます。この公害が発生する可能性がある工場などで、発生を未然に防ぐのが公害防止管理者の役割となっています。
社会的に大切な役割を担う公害防止管理者になるためには、国家資格を取得する必要があります。
ここでは、公害防止管理者の仕事内容や、資格取得のポイントについて紹介しましょう。
目次
公害防止管理者は、公害が発生する可能性のある工場や施設などに常駐して、大気や水質、振動、騒音などの検査を行い、公害を防止する役割を果たします。
1960年代、日本各地で公害が発生し、従業員や特に近隣住民に対して深刻な健康被害をもたらしました。このことを背景として、1971年に「特定工場における公害防止組織の整備に関する法律」が制定されました。公害防止管理者は、この法律制定とともに登場した職種なのです。
公害防止管理者を選任することは、特定工場においてその設置者に義務付けられています。
特定工場とは、下記(1)のいずれかの事業を行っており、なおかつ(2)のいずれかの施設を備えている工場が該当します。
(1)事業内容
(2)施設
特に、ばい煙発生施設については、ばい煙の発生が1日4万立方メートル以上かつ排水量が1日1万立方メートル以上の施設は「一定規模以上の特定工場」として、他の特定工場とは区別されます。
特定工場では、「特定工場における公害防止組織の整備に関する法律」に基づき、公害防止組織を構成しなければなりません。公害防止の体制を整えて、工場の内外に被害が出ないよう役立てることが目的です。
一定規模以上の特定工場では、公害防止統括者を公害防止組織のトップとし、その下に公害防止主任管理者を選任して、公害防止管理者を管理します。公害防止管理者は、公害発生施設ごとに選任します。
なお、一定規模に満たない特定工場では、公害防止主任管理者を選任せずともよく、公害防止統括者と公害防止管理者で公害防止組織を構成します。
また、常時使用する従業員の数が20人以下の工場は特定事業者と呼ばれ、公害防止統括者の選任は不要です。
公害防止管理者は、大気関係(第1種~第4種)、水質関係(第1種~第4種)、ダイオキシン類関係、騒音・振動関係、特定粉じん関係、一般粉じん関係、公害防止主任管理者という13種類の資格があります。
これら、公害防止管理者の資格を取得するには、年に1回行われる公害防止管理者等国家試験に合格する方法と、延べ30回ほどの公害防止管理者等資格認定講習を受けて修了試験に合格し、取得する方法の2通りあります。資格認定講習は、講習ごとに決められている技術資格か、学歴に応じた実務経験年数を持っている方が受講資格の対象者となります。
ここでは、各公害防止管理者資格の所有者が必要となる施設のほか、受験資格、難度、合格基準、受験手数料について紹介します。
大気関係第1種公害防止管理者は、大気関係の資格の中で、最も活躍できる場が広い資格になります。
選任される公害発生施設の区分は以下のとおりです。
受験資格に制限はなく、年齢や経歴にかかわらず誰でも受験できます。
2019年の合格率は23.5%となっており、大気関係の中では最も合格率が高いです。
2019年の合格基準は、下記の各科目60%以上の正解率で合格でした。
8,700円(非課税)
大気関係第2種公害防止管理者は、以下の施設で選任される資格です。
受験資格に制限はなく、年齢や経歴にかかわらず誰でも受験できます。
2019年の合格率は17.5%でした。
2019年の合格基準は、下記の各科目60%以上の正解率で合格でした。
8,200円(非課税)
大気関係第3種公害防止管理者は、以下の施設で選任される資格です。
受験資格に制限はなく、年齢や経歴にかかわらず誰でも受験できます。
2019年の合格率は14.2%でした。
2019年の合格基準は、下記の各科目60%以上の正解率で合格でした。
8,700円(非課税)
大気関係第4種公害防止管理者は、以下の施設で活躍することができます。
受験資格に制限はなく、年齢や経歴にかかわらず誰でも受験できます。
2019年の合格率は13.0%でした。
2019年の合格基準は、下記の各科目60%以上の正解率で合格でした。
8,200円(非課税)
水質関係第1種公害防止管理者は、水質関係の中で最も広範囲な選任施設がある資格で、資格を取得すると以下の公害発生施設で活躍することができます。
受験資格に制限はなく、年齢や経歴にかかわらず誰でも受験できます。
2019年の合格率は34.8%でした。
2019年の合格基準は、下記の各科目60%以上の正解率で合格でした。
8,700円(非課税)
水質関係第2種公害防止管理者を取得すると、以下の施設に選任されます。
受験資格に制限はなく、年齢や経歴にかかわらず誰でも受験できます。
2019年の合格率は18.6%でした。
2019年の合格基準は、下記の各科目60%以上の正解率で合格でした。
8,200円(非課税)
水質関係第3種公害防止管理者は、以下の施設で選任されます。
受験資格に制限はなく、年齢や経歴にかかわらず誰でも受験できます。
2019年の合格率は29.0%でした。
2019年の合格基準は、下記の各科目60%以上の正解率で合格でした。
8,700円(非課税)
水質関係第4種公害防止管理者は選任される施設が限られており、その内容は以下のとおりです。
受験資格に制限はなく、年齢や経歴にかかわらず誰でも受験できます。
2019年の合格率は16.8%でした。
2019年の合格基準は、下記の各科目60%以上の正解率で合格でした。
8,200円(非課税)
ダイオキシン類関係公害防止管理者の資格を取得すると、ダイオキシン類発生施設で活動することができます。
受験資格に制限はなく、年齢や経歴にかかわらず誰でも受験できます。
2019年の合格率は36.3%でした。
2019年の合格基準は、下記の各科目60%以上の正解率で合格でした。
8,700円(非課税)
騒音・振動関係公害防止管理者に合格すると、以下のいずれかの設備が設置された騒音発生施設、または振動発生施設で働くことができます。
受験資格に制限はなく、年齢や経歴にかかわらず誰でも受験できます。
2019年の合格率は27.8%でした。
2019年の合格基準は、下記の各科目60%以上の正解率で合格でした。
8,200円(非課税)
特定粉じん関係公害防止管理者は、粉じんを発生させる施設にて、選任が義務付けられています。
中でも、特定粉じんに指定されている、石綿を発生させる施設に選任されるのは特定粉じん関係公害防止管理者だけです。
資格を取得すると下記の施設に選任されます。
受験資格に制限はなく、年齢や経歴にかかわらず誰でも受験できます。
2019年の合格率は37.3%でした。
2019年の合格基準は、下記の各科目60%以上の正解率で合格でした。
8,200円(非課税)
一般粉じん関係公害防止管理者は、石綿以外の粉じん発生施設で活躍することができます。
資格を取得すると下記の施設に選任されます。
受験資格に制限はなく、年齢や経歴にかかわらず誰でも受験できます。
2019年の合格率は22.7%でした。
2019年の合格基準は、下記の各科目60%以上の正解率で合格でした。
8,200円(非課税)
公害防止主任管理者は、特定工場の公害防止の管理責任者として選任が義務付けられている資格です。
配属された工場で調査を行ったり、公害防止管理者のリーダーとして現場をまとめたりします。
この資格を取得すると、以下の特定工場で活躍できます。
なお、公害防止主任管理者としての資格は取得できませんが、大気関係第1種公害防止管理者(または大気関係第3種公害防止管理者)と水質関係第1種公害防止管理者(または水質関係第3種公害防止管理者)の両方の資格を持つ方は、公害防止主任管理者として上記の特定工場で働くことが可能です。
受験資格に制限はなく、年齢や経歴にかかわらず誰でも受験できます。
2019年の合格率は8.7%でした。
2019年の合格基準は、下記の各科目60%以上の正解率で合格でした。
8,700円(非課税)
公害防止管理者の国家試験に挑戦する場合、受験者の負担を軽減する制度があります。
それが科目別合格制度です。一定の条件を満たすと、試験科目が免除されます。
科目免除には、下記の2つのパターンがあります。
公害防止管理者のいずれかの資格試験を受け、一部の科目だけ合格できた場合、資格取得については不合格になりますが、同じ試験を受ける場合に限り、科目は合格として最初に合格した年を含め3年までのあいだ、科目免除の対象になります。なお、科目免除を受けるには、申請が必要ですので注意しましょう。
たとえば、大気関係第1種公害防止管理者を受験し、6科目中4科目は合格、2科目は不合格だったとします。受験した年を含む3年までのあいだに再び受験する場合、科目免除の申請をすると、不合格だった2科目だけで受験することができます。
公害防止管理者のいずれかの資格試験に合格し、資格を取得すると、次に別の資格試験を受ける場合に共通科目を免除できます。こちらも、科目免除を受ける場合には申請が必要です。こちらの免除の場合、期限はありません。
たとえば、水質関係第4種公害防止管理者の資格を持っている方が水質関係第1種公害防止管理者の試験を受ける場合、水質関係第4種公害防止管理者の試験で合格した3科目すべてが免除の対象になります。水質関係第1種公害防止管理者の試験は5科目ですので、残り2科目で受験し、合格すれば資格取得となります。
公害防止管理者の試験は専門的な知識が問われるため、無勉強で合格するのは難しいといえます。以下の2つのポイントに注意して、コツコツ知識を身に付けていきましょう。
公害防止管理者試験を実施している産業環境管理協会では、さまざまな方法で公害防止管理者資格取得の支援活動を行っています。
公害防止管理者のための受験対策講習会や通信教育の実施、サイト上での過去問題集の公開、e-ラーニングによる映像教材の提供、試験参考書の販売など、勉強に必要な教材を入手できます。
公害防止管理者試験の合格基準は、全科目60%以上の正答率です。そのため、試験科目を満遍なく勉強しておく必要があります。平均して一定以上の点数が取れる状態にして一発合格を目指すべきですが、「3年以内に合格すること」を目指して、科目別合格制度を利用するのもひとつの方法です。
取得したい資格の科目が4科目あったとします。最低でも2科目は合格できるようバランスを見ながら勉強し、科目免除が受けられるようにします。次年、残りの2科目に合格できるよう勉強して科目合格すれば4科目合格となりますので、資格を取得できます。
公害防止管理者は、特定工場では有資格者を必ず選任する必要があるため、安定した需要があるといえます。資格を取得することで、公害を防ぐために大気や水質、騒音などの状況を調査して、日本の安全を陰で支えるという重要な仕事に携わることができます。
転職時は、公害防止管理者の有資格者を募集している求人情報を転職サイトなどで探すのが一般的ですが、情報量が少なく調べるのにも時間がかかってしまうというデメリットがあります。
そのため、転職エージェントも併せて活用してみることをおすすめします。資格や希望の労働環境などをヒアリングし、あなたにマッチした求人を紹介してもらえます。
また、転職サイトには掲載されていない非公開求人も多数保有しているため、転職先の幅が広がることにもつながります。
特定工場では、公害防止管理者を法律で選任することが定められているため、資格を取得すると転職に有利になります。講習会に参加したり、参考書や過去問題集を活用したりしてコツコツ勉強すれば、合格を目指すことができるでしょう。
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