更新日:2024/07/25
社会の情報化が進み、人々の生活が便利で豊かになっていく一方、そうした情報システムの脆弱性や運用面のミスを原因としたトラブルが後を絶ちません。
そういった事態を回避し、情報システムの安全性を高めていくことを目的としたシステム監査技術者の重要性は年々高まっており、その能力を証明するための資格の人気も向上しています。
ここでは、システム監査技術者試験の内容やその資格を活かせる職業、その取得方法について詳しく解説していきます。
システム監査の概要については、こちらもご覧ください。
目次
システム監査技術者は、システム監査人と呼ばれます。
システム監査人は、独立した視点で、経営方針に対してシステムが正しく機能しているのか、どのようなリスクがあるのか等を評価・報告します。
監査結果を基にシステム改善をして、よりシステムを有効活用にしていくコンサルティング業です。
公認会計士や医師などのように資格が無いと携われない業務ではないので、資格は必要ありませんが個人で活動している人はほぼいません。
監査機関に所属している人がほとんどですので、監査を手掛ける企業に入社することが技術者になるための条件と言えるでしょう。
システム監査は企業が使用している情報処理システムにおいて「経営にシステムを活用できているか」「障害発生のリスクはあるのか」「不正アクセスや災害への対策が十分できているか」といった信頼性・安全性・効率性・機密性・保全性などの観点から、第三者視点で客観的に点検・評価をします。
監査内容を報告し、経営リスクを見つけ解決へのアドバイスを行い、今後起こる可能性のあった損害を未然に防いでいく仕事です。
事故を未然に防ぐ立場のため、システム導入に関わるコンサルタントとは異なり、IT機器のハードウェア・ソフトウェアの仕組みや構造を熟知している必要があります。
そのため、システム監査技術者試験のような難易度の高い資格が存在しています。
企業がシステム監査を依頼するタイミングは複数あります。
どの段階であっても、独立した立場で監査を行い、ときにはクライアント企業が嫌がるような内容も厳しく指摘しなければなりません。
事故を未然に防いで損失を限りなく小さくするための助言であることを理解してもらえるように、立場を示し続ける必要があります。
システム監査技術者試験は、経済産業省が認定する国家資格である「情報処理技術者試験」の試験区分のひとつで、情報システムを監査するための知識を問う試験です。
システム監査技術者試験の合格は、ITガバナンスの向上やコンプライアンス確保に貢献できる監査人や情報システム責任者である証明となります。
取得の難度は高く、情報処理技術者試験の中でも最高難度のレベル4として位置付けられている難関試験です。
システム監査技術者試験に合格すると、どのような職業への転職で有利になるのでしょうか。
2つのケースをご紹介します。
システム監査技術者試験に合格すると、企業内の監査部門でシステム監査業務に従事したり、監査法人で企業システムを外からチェックしたりする立場として働くのに有利になります。
企業のセキュリティ機能を高めるセキュリティ担当としてのキャリアも目指しやすくなるでしょう。
システム監査技術者の資格が昇給・昇格や採用の条件になっているという大手メーカーや情報サービス会社も少なくありません。
システム監査技術者試験は、エンジニアとしてのスキルと同時に経営的なノウハウも問われるため、技術者としてのスキルを磨いていきたい人はもちろん、ITを軸足にしてマネジメント寄りの仕事にチャレンジしたい人にもおすすめです。
システム監査技術者試験合格によるキャリアの広がりは、非常に大きくなります。
試験は午前I・午前II・午後I・午後IIの4項目となっており、午前は4つの選択肢から1つの回答を選択する多肢選択式、午後は記述式の試験が行われます。
それぞれの試験時間と出題数、回答数は以下のようになります。
システム監査技術者試験は、情報システムの監視や情報システムの適切な活用によって、経営を支えることを目的としているため、単なる技術者としてのスキルだけではなく、経営者としてのスキルや目線も取り入れた問題が出題されます。
システム監査技術者試験は難度が高いのですが、具体的にどの程度難しいのでしょうか。
独学でも合格できる資格なのか、詳しく見ていきましょう。
システム監査技術者試験の難度は非常に高く、合格率はおよそ15%程度といわれています。
合格者の平均年齢も40歳を超えるなど、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が主催する情報処理技術者試験の中でも最難関試験のひとつとされています。
年によっては、例年の合格率を大きく下回ることもあり、受験をする際には入念な準備と同時に、豊富なシステム経験もあると有利になります。
午前Iでは高度情報処理の基礎知識が、午前IIではシステム監査に関する知識が、午後ではそれらの知識を総合した能力を問う出題がされます。
勉強をしていく順番は、この出題の順番に沿って行うのが効果的といえるでしょう。
出題される問題の中には、例年と同じ問題や似たものも多いため、過去に出された問題を難なく解けるようになっておくだけでも、合格率を大きく引き上げることができるはずです。
ただし、システム監査技術者試験では、小論文の作成という課題があるため、小論文対策もしっかり立てておくようにしましょう。エンジニアとしてのスキルだけでなく、文章の構成力といったスキルも問われます。
システム監査技術者の試験は毎年4月に実施されており、申込期限は1月初旬から2月中旬までとなっています。
インターネットと願書郵送の、いずれかで申し込むことができます。
試験の一部免除規定がありますので、事前にチェックしておくと良いでしょう。
5,700円(税込)
システム監査技術者試験には、年齢制限や受験資格はありません。
6月下旬に合格者の受験番号が、試験を主催するIPA(情報処理推進機構)のウェブサイトに掲載されます。
また、個人の成績照会をするには、受験番号とパスワードが必要です。
試験結果の通知はありませんので、自分でウェブサイトを見て確認します。なお、合格者の受験番号は、後日、官報にも公示されます。
システム監査技術者試験の勉強に必要な時間は、受験者の基礎スキルによって異なりますが、おおよそ100~300時間程度だと考えられます。目安として、平日1日1時間、土日で5時間の勉強をする場合、2~5ヵ月程度を勉強期間として見ておくのがおすすめです。
システム監査技術試験の勉強をどのように進めるのかは、人によって異なりますが、ポイントを押さえれば効率的に学習することができます。続いては、午前I~午後IIそれぞれの試験で、おすすめの勉強方法をご紹介します。
午前Iは選択問題ですから、テキストを読みつつ問題集を周回する勉強方法がおすすめです。ひたすら問題集を解いて、間違えた問題については解説を読んだり、テキストの該当箇所を読み直したりして復習を行いましょう。
問題集を1周解き終えたら、間違えたところのみ再度解き直します。正解した部分も知識があやふやなところがあると感じた場合や、十分時間がある場合は、再度全て解き直しても問題ありません。
ある程度正答できるようになったら、午前Iの過去問を解きます。1回分ではなく、過去3回分ほど解いて、8割以上の正解を目指しましょう。
なお、午前Iは、別の試験に合格することで免除してもらうこともできます。該当の試験に合格している方は、免除制度を利用しましょう。
午前IIも選択問題です。基本的に午前Iと同様、問題集と過去問で対策を行います。
午前II試験は、システム監査の分野以外の問題も多く出題されることが特徴です。過去問を解く際には、開始したら問題全体をチェックして、自分の得意分野の問題から先に解くようにしてください。
「わかる問題があったのに試験時間が足りなくて解答できなかった」ということにならないようにしましょう。
午後I試験は記述式となるため、試験でどのような視点が求められるのか、過去問を解くことで把握しておく必要があります。システム監査技術者に求められるスキルは、リスクコントロールが適切に行われているかどうかをチェックする能力です。
注意点として、事業部もしくは企業全体でリスクが適切にコントロールされているかという点をチェックするにあたり、組織全体のマネジメントの視点を含んだ解答が求められることがあります。
システム監査技術だけでなく、企業の運営に関する知識を広く身に付けておくことが必須といえるでしょう。
過去問と解説を繰り返しチェックして、どういった視点や考え方が大切なのか確認してください。
午後IIの試験対策では、時間内に規定文字数で的確な内容を伝える論文を書くための対策を行う必要があります。
実際の試験と同じタイプの原稿用紙を用意して、手書きで規定文字数に合致した論文をまとめる練習をしましょう。また、内容については、いくつかの事例について、起こりうるリスクとコントロール方法、監査手続きを書き出すという事前準備が役立ちます。過去問を闇雲に解くというよりは、過去問を参考に様々な事例について検討し、引き出しを増やしておくことが大切です。
試験当日、最も避けなければいけないのが、「全然わからない」と試験を投げ出してしまうことです。特に、午前は選択肢ですから、まったく答えがわからなくても、どれかを選ぶことはできます。もし、2つに絞り込むことができれば、半分の確率で当たるわけですから、答えないのはもったいないでしょう。
午後は論文試験なので、当てずっぽうで答えるのは難しいかもしれません。しかし、午後Iに関しては外れていたとしても、何らかの答えを書いておくことで、点につながる可能性があります。また、午後IIは、まず論文の規定文字数を達成することを目指してください。
ポイントは、わからない問題があったら次に進んで、解答できる問題を先に終わらせてしまうということ。
また、眠くならないよう昼食を食べ過ぎない、休憩時間に終わった試験の振り返りはせず、次の試験に意識を向けるといった対策も有効です。
システム監査技術者試験はIT業界でも屈指の難関試験であり、取得への道のりは決して容易なものではありません。
しかし、システム監査技術者試験の合格は、現職での待遇アップや転職先候補の増加など、様々なメリットがあります。
また、システム監査技術者資格を取得することは、エンジニアとしての成長だけでなく、経営的視点を持つマネージャーとしての成長も期待できるため、キャリアの可能性は大きく広がります。
大きな努力に見合う価値は十分にある資格といえるでしょう。
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