更新日:2021/09/14
医療秘書は、医療の知識と秘書の知識を兼ね備え、医師や看護師が医療に集中できるようサポートする、重要な存在です。
ここでは、医療秘書という仕事について、医療事務や一般企業の秘書との違いの他、実際の仕事内容や関連資格、必要なスキルなどについてまとめました。医療関係の仕事がしたいが、医療事務や看護師は希望と異なるという方は、医療秘書についても検討してみてはいかがでしょうか。
目次
医療秘書とは、医療機関で医師をサポートする職種です。病院によっては、医師ではなく院長のサポートをするケースもあります。
また、院長や要職に就いている職員の個人秘書としてだけでなく、医局所属の秘書として組織全体をサポートするなど、職場の規模や雇用者の方針によって業務範囲は様々です。
医師のサポート業務以外にも、病院受付や診療報酬請求といった、病院全体の事務作業を行う場合もあります。
医療秘書と一般企業の秘書とでは、サポートする上役と勤務先が異なります。
一般的な秘書は上司が会社役員や社長で、勤務先は企業であるのに対し、医療秘書の上司は病院経営者や医師であり、勤務先は病院です。
スケジュール管理や備品管理の他、電話やメール対応、各種手配といった業務は、一般的な企業秘書でも医療秘書でも、同様にこなしていくものでしょう。
医療秘書ならではの業務として挙げられるのは、学会に関連する業務です。医師が学会で発表するための資料作成の補佐や、会場まで同行しての外部対応、発表の準備など、学会に関連する一連の業務をサポートします。
医療の最前線にふれる機会が多くなることは、一般企業の秘書と異なる医療秘書の特徴といえるでしょう。
医療秘書と医療事務は、メインとなる業務が異なります。
医療事務の主な仕事内容は、レセプト(診療報酬明細書)や処方箋の作成、電子カルテの入力・管理、また、病院の受付窓口や医事課において、患者の対応や会計を行うことです。
一方、医療秘書のメインとなる仕事は、病院に勤めるスタッフのサポートです。院長・役員などのスケジュール管理やスタッフ間の業務連絡など、社内対応が主な業務内容となります。
医療事務は、秘書業務を行うことはありません。一方、レセプトや処方箋の作成など、医療秘書が医療事務の仕事を兼ねることはあります。
医療秘書の具体的な仕事内容は、勤務先の病院によって異なります。
ここでは、医療秘書として行うことの多い仕事を5種類ご紹介します。このうちの一部のみを担当する場合や、5種類全てに対応する場合もあり、勤務先によって業務の範囲は様々です。
受付業務とは、外来患者や入院患者の受付け、病室の手配、診療報酬請求に関連した業務など、一般的な病院の受付が行う業務全般です。
これらの仕事は医療事務が行うものですが、医療秘書も秘書業務と並行して行う場合があります。
医療機関での受付業務では、医療保険制度についての知識など、一般的な事務仕事とは別の専門知識が必要です。医療秘書もこのような知識を備えていることが求められます。
カルテや検査結果、伝票、行政への届出書類といった書類の作成やファイリングも医療秘書の仕事です。受付業務同様、医療秘書と医療事務、両者が担当する業務となります。
医療秘書ならではの書類関連の業務として挙げられるのは、院長や医師が受け取った名刺のデータ化や保管、手紙類の管理といった、上役を直接サポートする業務です。
これらの業務は通常、医療事務が担当することはありません。
上司のスケジュール管理は、秘書の大切な仕事です。これは、医療秘書であっても変わりません。
病院の医師や院長は非常に多忙ですから、スケジュールが重なってしまったり、抜けてしまったりすることがないよう、医療秘書が管理を行います。
医師や院長は、学会や会議、もしくは研究会などがスケジュールに組み込まれるものです。診療などメインの仕事をスムーズに優先できるよう、医療秘書が先んじて日程や場所を調整します。
医師や院長といった上司に来客があったときは、医療秘書が応接室に案内します。お茶出しや資料の用意なども医療秘書が行う場合が多いでしょう。
また、医師や院長宛の電話についても、ほとんどのケースで医療秘書が一次対応を行います。上司が不在のときだけでなく、在席しているときでも医療秘書が対応し、ワンクッション置くことが大切です。
あらかじめ要件を聞いてから取り次ぐことで、上司の負担が軽減されるでしょう。
医師や院長は、診察だけでなく、専門分野の研究も行っています。このような研究の補佐業務も、医療秘書の仕事です。
論文の検索やデータ入力、書類の作成などを必要に応じて行います。
医療秘書の業務に関連する資格を3つご紹介します。
医療秘書は、資格がなければできない仕事ではありません。しかし、資格取得を目指すことで、医療秘書として求められるスキルを総合的に学ぶことができますので、スキルアップにつながります。
日本医師会認定医療秘書とは、公益社団法人日本医師会が認定する資格であり、専門的な医療事務の知識と、最新の情報処理技能を備えるとともに、医師を補佐する医療秘書として、ふさわしい対応ができる能力があることを証明するものです。
日本医師会認定医療秘書資格を取得するためには、認定養成機関におけるカリキュラムを修了し、認定試験に合格する必要があります。その後さらに、第1~4群で構成される規定の秘書技能科目の中から3つの群を選択し、各群で1科目を選択して検定試験を受け、合格しなければなりません。
取得までのハードルは高いものの、その分、仕事や転職にも活かしやすい資格といえるでしょう。
認定養成機関のカリキュラムについて、詳しくは下記のウェブサイトを参照ください。
医療秘書技能検定は、一般社団法人医療秘書教育全国協議会が主催している医療秘書の検定資格です。
医療秘書としての専門知識と技能を認定するもので、採用する医療機関においては志望者の習得レベルを判断する目安となります。
医療秘書としての実務や関連法規、医療に関する知識、医療事務の知識など、医療秘書として求められるスキルを総合的に問われます。
受験級は3級、2級、準1級、1級の4つで、複数の級を併願受験することも可能です。
各級の認定基準と受験料は下記のとおりとなります。
■医療秘書技能検定の認定基準と受験料
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※2020年5月現在
医療秘書資格とは、一般財団法人日本能力開発推進協会が認定している資格です。
医療機関などでの受付業務、接遇、院内コミュニケーション、秘書業務に関する職業能力が問われます。
受験資格として、指定された認定教育機関のカリキュラムを受講し、修了することが必要です。受験ができるのは、カリキュラムの受講修了後、1年間となっています。
<医療秘書資格の認定教育機関のカリキュラムの履修内容>
自宅で試験が受けられる「在宅受験」が認められているので、カリキュラム修了後、主催者のウェブサイトで申込みを行えば、随時受験できます。ちなみに、受験料は5,600円(税込)です。
医療秘書になるためには、秘書としての能力や医療事務としての能力の他、医療に関する専門知識など様々な能力を兼ね備えている必要があるでしょう。
医療秘書として求められる必須スキルを5つご紹介します。
医療秘書は業務において、素早さと確実性の両方を兼ね備えていなければいけません。
医療秘書の上司となる院長や医師は、非常に多忙です。医療の現場自体も、多くの患者を時間制限のある中で診ていく必要がありますから、素早い対応が求められるでしょう。
また、医療に関連する業務は、間違いが許されません。カルテや検査結果、伝票、行政への届出書類の作成、レセプトの処理などは、不備や間違いがあると査定機関で認定されず、やり直しや再提出となり手間や費用が発生してしまいます。何より、医療機関におけるミスは、院全体の信用問題に発展することもあるでしょう。
多忙な時期は特に冷静に対処し、正確・迅速に業務を処理する必要があります。
一般企業の秘書と同じく、医療秘書は上司が仕事をしやすいように気配りをして、情報を整理したりスケジュールを組んだりする必要があります。上司が仕事をしやすいように、先々のことを見据えて行動することが大切です。
また、医療秘書は、受付スタッフとして、医師と患者や、看護師と患者の橋渡しをすることもあります。病院という特殊な場所だけに、一般的な接客業以上に、医療秘書は細かい気配りを忘れず、相手の心情をくみ取ることが求められます。
医療秘書の細かい気配りは、上司の業務効率、ならびに過ごしやすい院内環境の形成に影響するでしょう。
医療秘書と通常の秘書の大きな違いが、医療知識が必要かどうかです。
医療秘書には、担当する診療科はもちろん、医療全般に関する知識が求められます。
医療に関する法知識や、実際の治療に関する知識、診療報酬に関する知識など、医療秘書として知っておくべき知識は多岐にわたります。
特に、上司の診療科の知識については、言葉の意味などを含め、十分理解しておく必要があるでしょう。
医療秘書として活躍するには、コミュニケーション能力も欠かせません。
医療秘書は、医師のスケジュール管理なども行うため、看護師や医療事務スタッフなど、他のスタッフと連携をとりながら働くことになります。医療機関内の様々な医療活動がスムーズに運ぶように、医師・看護師、他医療スタッフとの円滑な意思疎通が必要です。
また、医療秘書は患者とのコミュニケーションも大切にしなければなりません。受付で医療秘書が温和な対応をすれば、患者の不安な気持ちが少し楽になることもあるでしょう。
病院内の雰囲気を明るくするため移動中でも笑顔を心掛けるなど、接客業に通ずるコミュニケーション能力が求められます。
病院によっては、英語でのメールのやりとりや電話対応、資料の準備といった仕事が発生する可能性があります。専門用語も多いため、医療現場で通用する高い英語力が必要です。
ただし、どの程度の英語力が求められるかは、病院や診療科によって異なります。病院のウェブサイトを参照するなど、あらかじめ対応範囲を確認しておきましょう。
医療秘書は、医療と秘書両方の知識が必要な仕事です。高い専門性が求められるため、関連資格の取得などを通して、総合的に知識を身に付けるのがおすすめです。
ただし、具体的な仕事内容や求められるスキルのレベルは病院によって異なります。まずは、実際の求人をチェックしてみましょう。
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