都心から離れて、生まれ育った地元で働くUターン転職には、多くのメリットが存在しています。しかし、故郷でのんびり働くというUターン転職の良い面だけを見て転職を決めてしまうと、後悔することにもなりかねません。
これからご紹介するUターン転職のメリットとデメリットの双方を理解した上で、本当に自分や家族のためになる選択なのかどうかを考えてみましょう。
地方で就職!3つの「◯ターン転職」
都心で働いていた方が地方の企業に転職することを「◯ターン転職」と呼びます。このような転職方法は、「Uターン」「Iターン」「Jターン」の3つに分類することができます。
1.Uターン転職
Uターン転職は、故郷から都心に出てきて働いていた方が、再び故郷に戻って就職することをいいます。たとえば、福岡出身の方が大学のときに東京へ出てそのまま就職し、その後、福岡に戻って転職するようなケースがUターン転職にあたります。
2.Iターン転職
Iターン転職は、都心出身でそのまま都心で働いていた方が、地方で転職をするものです。都内で働いていた東京出身の方が兵庫に引っ越して転職するような場合は、Iターン転職となります。
3.Jターン転職
Jターン転職は、故郷から都心に出てきて就職していた方が、地元以外の地方企業に転職するものです。福岡出身の方が東京で就職し、その後、兵庫に引っ越して別の仕事に就くような場合はJターン転職と呼ばれます。
Uターン転職の5つのメリット
Uターン転職をすることで得られるメリットは、大きく5つあります。
1.生活環境を変えられる
自然が少なく、人であふれかえった都心で、朝晩のラッシュにもまれながら通勤する生活に嫌気がさしている方も多いと思います。Uターン転職をして地方の企業に就職すれば、人ごみからも解放されますし、自然豊かな環境でゆったりとした生活を送ることができます。通勤では車を使うことも多く、電車も都心ほど混雑することがないため、満員電車のストレスからも解放されるでしょう。
2.地方自治体のサポートを受けられる場合がある
Uターン転職やIターン転職などを推進している自治体もあります。このような自治体に属する企業への転職を希望している場合、転職後の住居や仕事のあっせんといったサポートが受けられるかもしれません。
たとえば、愛知県には、東京23区から愛知県内へ移住した要件を満たす移住者に対し、最大100万円を支給する移住支援金制度があります。移住希望者向けの相談会を開催している自治体や、移住希望者向けポータルサイトを開設している自治体などもありますから、チェックしてみましょう。
3.人との交流が生まれやすい
地方は、都心に比べて地域のつながりが強く、近所の方との交流も生まれやすい傾向があります。
特に、故郷で就職するUターン転職の場合、元々つながりがあったコミュニティに戻ることになるため、人付き合いのベースはできている状態です。実家の近所の方や旧友など、懐かしい方たちとの再会もあるでしょう。
都会のドライな人間関係に不満を感じている方や、周囲と助け合いながら暮らしていきたいと考えている方にとって、故郷での就職は大きなメリットとなります。
4.ワークライフバランスがとりやすい
地方は都心ほど地価が高くないため、無理なく職場の近くに家を構えることができます。通勤時間が減れば、その分プライベートな時間を確保しやすくなるでしょう。
また、人口がそれほど多くない地域であれば、保育園に入れないといった問題なども少なく、実家の手助けなども期待できるため、子育てにかかる負担や不安も軽減できます。
5.故郷で暮らせる
Uターン転職の大きなメリットのひとつに、住み慣れた故郷に戻れることがあります。たとえば、故郷に住む両親の近くで暮らすことは、介護などのサポートもしやすくなるので、離れて暮らす場合に比べて大きな安心感があります。
頼れる方が多くいるということは、住みやすさにもつながります。
Uターン転職の5つのデメリット
Uターン転職には、メリットだけでなくデメリットも存在します。Uターン転職を考えるにあたって、理解しておくべき問題点を見てみましょう。
1.求人の数や種類が多くない
都心に比べると、地方は求人数そのものが多くなく、種類も限られる可能性があります。希望している条件や職種にマッチした求人があるか確認しておく必要があります。
さらに、たとえ希望に合致する求人があったとしても、その企業に就職できるとは限りませんし、社風が合わない可能性もあります。選択肢が少ないことは、なかなか仕事を見つけにくいということでもあります。
2.引越しを伴う
Uターン転職には、必ず引越しが伴います。時間や労力、コストがかかりますから、あらかじめスケジュールや資金計画を立てておく必要があります。
このような手間とお金をかけてでも移住にメリットがあるのか、考えてみましょう。
3.家族がいる場合は同意が必須
自分一人で暮らしている方なら、ある程度気軽に地方へ拠点を移すこともできるでしょう。しかし、配偶者や子供がいるのであれば、家族の同意を得る必要があります。
配偶者も働いている場合、別々に暮らすのか、仕事を辞めてもらって一緒に引越しをするのかという問題もあります。子供の年齢によっては転校を伴うこともありますし、引越しも大がかりになってしまいます。自分の希望だけでUターン転職を決めることはできません。
4.地方ならではの慣習になじめないとうまくいかない
地方ならではの密接な人間関係や、その地方ごとの慣習、行事などに家族全員がなじめるかどうかという問題もあります。家族が暮らしになじめなかったり、人間関係のストレスを感じてしまったりするようでは、移住を成功させることはできません。また、自分自身も、子供の頃と大人になってからでは、故郷に対する感じ方が違う可能性があります。
地方の人間関係や慣習は、メリットにもデメリットにもなりうるものです。あらかじめ、どのような暮らしになるのか十分に確認しておくことをおすすめします。
5.利便性が劣るため、スキルアップの妨げになる可能性がある
都心部に比べて地方では、どうしても開催されるセミナーやビジネスイベントが少なくなってしまいます。また、美術館や博物館といった文化的な施設の数も限られます。スキルアップや趣味などの面で不満を感じてしまうかもしれません。
Uターン転職を成功させるための3つのポイント
メリットもデメリットもあるUターン転職を成功させるために、覚えておくべきことが3つあります。
Uターン転職を希望している方は、ポイントを押さえた転職活動を心掛けましょう。
1.家族で十分話し合う
Uターン転職には引越しを伴うため、「失敗した」と思っても、気軽に戻るのが難しい場合も多くあります。生活環境もがらりと変わることになるため、家族で十分な話し合いの場を持つ必要があります。もし、不安や不満を持っている方が一人でもいた場合は、問題が解決するまで転職を待つべきです。家族は最も身近なコミュニティですから、誰かが犠牲になるようなことがないようにしてください。
なお、独身の場合でも、簡単に戻るのが難しい点は同様です。理想どおりの転職ができなかった場合に、代わりとなる手立てはあるのか、後悔しないかを十分考えておくことが大切です。
2.焦らず条件に合う就職先を探す
Uターン転職は、そもそもの求人数が少ないことから、条件に合う仕事がなかなか見つからない可能性が高くなります。焦って移住を決めたり、移住してから仕事を探したりすると、妥協した仕事に就くことになりかねません。準備期間をしっかり取って、焦らずに仕事を探しましょう。
仕事を探す上では、それぞれの地方の移住ポータルサイトやハローワークのインターネットサービスなどの他、地方の就職や移住に強い転職エージェントを利用するのもおすすめです。
その土地に強い転職エージェントを利用することで、より多くの求人の中から自分に合った仕事を探すことができます。また、企業の特徴や具体的な仕事内容も判断しやすくなります。
3.なぜ地元の企業なのかを固めておく
通常の転職では、「なぜこの企業を志望したのか」についてアピールする必要がありますが、Uターン転職の場合は、「なぜ都心の企業ではなく地方の企業なのか」という質問も予想されます。
単純に「地元に帰りたい」というだけでは、転職活動時のアピールとしても、自分自身の覚悟としても不足しているといえます。地元企業に勤めることで何がしたいのかをはっきりさせておく必要があります。
Uターン転職は仕事だけでなく生活環境も大きく変える
普通の転職とは違い、Uターン転職は、仕事が変わるだけでなく、生活環境や毎日の暮らしの大きな変化も伴います。この変化がプラスに働けば、毎日の暮らしは充実し、満足のいく結果を得ることができるでしょう。
しかし、変化はプラスに働くこともあれば、マイナスに働くこともあります。地方に移住するメリットと、想定されるリスクを考えて検討することをおすすめします。