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「ビットコイン」がもたらした衝撃とは?

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン
最終更新日:2021/11/25

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皆さんこんにちは。クリプタクトの本廣麻子と申します。マイナビエージェント「フィンテック特集」にて、暗号資産やブロックチェーンに関する連載をすることになりました。

2017年より、ニュースなどで度々話題になったため、「暗号資産(仮想通貨)※」「ビットコイン」など、一度は耳にしたことがあるかと思いますが、実際何なのか、今後どういったことが起こるのか、ということについてはご存知でない方もいらっしゃると思います。そんな方に向けて、わかりやすい内容をお届けできればと思います。

(※2018年12月に金融庁より、仮想通貨の呼び名を暗号資産に変更する旨発表がありました。まだ聞きなれない方もいらっしゃると思いますが、本記事では「暗号資産」に統一します。)

第一回目となる今回は、暗号資産の代表例である、ビットコインについて、簡単にご紹介いたします。

ビットコインとは、(技術的な側面を省いて)一言でいうとネットワーク上で流通しているデジタル通貨です。発行や決済を管理する単一の管理者や中央サーバなどが存在せずに運営され、ブロックチェーンと呼ばれる公開分散元帳に実質改ざん不可能な方法で記録されていきます。

ビットコインは新しい「通貨」の形として普及し始めましたが、そもそも「通貨」として使用する上で必要十分な機能や安全性が確保されているのか、というのが大きなポイントかと思います。そこでまず、日常当たり前のように使われていますが、そもそも「通貨」とはどういったものか、振り返ってみたいと思います。


「通貨」とは、一般的には「①交換機能」「②価値尺度」「③価値貯蔵」の3つの要素を備えたもの(通貨の3要素とここでは呼びます)として定義されています。


「①交換機能」とは、物やサービスを交換(購入)したり、それらの価値に対して報酬を支払ったりすることが可能であることを意味します。他にも貸し借りにも使われます。

「②価値尺度」とは、物やサービスの価値を客観的に表すことで、異なる物やサービスの価値を比較ないし計算可能とするような、共通の価値のものさし機能を意味します。これにより、物々交換のようなあらゆる物やサービスの組み合わせの交換比率を管理する必要がなく、例えばパンとお肉の価値を容易に比較することができます。

「③価値貯蔵」とは、物を貨幣に交換することで、その価値を貯蔵することができることを意味します。例えば、パンはそのままであればいつか腐ってしまいますが、100円と交換すれば、いつまでも変わらずに価値の額面としての100円として、価値を貯蔵できます。必要なときにいつでも取り出し使えます。

■通貨の3つの要素

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通貨とは、実はこれらを満たせば基本的には成り立つものなのですが、実際に使用するという観点では、これだけでは不十分であり、他に必要な要件として「偽造防止」「二重支払防止」「透明性・信頼性のある通貨発行」があると考えられます。これらを通貨の3条件とここでは呼ぶこととします。

結論から申し上げると、ビットコインでは上記の要素と必要要件を技術的にすべて表現することができているため、新たな「通貨」としての広がりが期待されています。

では、具体的にこの「ビットコイン」が「通貨」としてどういった特徴を兼ね備えているのか、日常使っている日本円と比較しながらいくつか特徴を記載します。

■ビットコインと日本円の比較

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日本円における通貨の3要素

日本円を発行しているのは日本銀行です。日本銀行とは、国が定めた中央銀行です。日常で日本円を使用する際、全く意識しないと思いますが、日本銀行がその信用に基づき、日本円の価値を保証してくれているため、日本円は通貨として成り立っています。
ここでいう日本円の価値とは、「価格」ではなく、「決済手段として認めている」ということを意味しています。

この決済手段としての保証をするということで、日本円の交換機能、価値尺度、価値貯蔵の3要素が結果的に満たされることになります。(日本に住む)人々は、納税のために必ず円を利用する必要があり、結果的に日々の買い物や事業の支払いなどに日本円を使って決済することを皆が受け入れ、日本円の価値は形成され、同時にその価値がまた、共同主観的な日本円という通貨をより現実なものにするといえます。

日本円の通貨の3条件

偽造防止のための各種技術を通貨に施し、現金そのものを使用することは二重支払の防止に直結します。ただしキャッシュレスでの決済では二重支払のリスクが残るため、決済事業者や銀行がその安全性を管理・担保することで決済が行われます。


また、日本円の発行は、政府から独立している日本銀行が、その時々の金融政策に基づいて行います。金融政策は、その時々の景気動向を反映して決定されることから、将来の政策を予測することは一般的に困難であります。できるだけ不確定要素を排除し透明性を高めるために、一般的に中央銀行は各国政府から独立した機関となっていますが、それでも日本銀行の金融政策が日本円の価値を変動する非常に重要な要素となります。

ビットコインの価値形成の仕組み

ではビットコインはどうでしょうか。発行主体がないにも関わらず、実質的に通貨に準じた性質をもつものとして使用できるようになったのはなぜでしょうか。
ビットコインでは、誰かが「決済手段として認めている」、あるいは納税のための必要とするということは現時点ではありません。

日本円のアプローチとは異なり、通貨の3条件である「偽造防止」「二重支払防止」「透明性・信頼性のある通貨発行」を万人が確認できる形で満たすことで、決済手段として人々に認められコンセンサスを得ることができるのではないか、そのことがビットコインそのものの価値を形成し、人々に受け入れられていくのではないか、といった価値形成のプロセスになります。

そこで3条件を満たすために、ビットコインを支えているのが「暗号技術」を始めとする、「ブロックチェーン」の仕組みとなります。国やある中央管理者の権威に頼ったシステムではなく、誰でもシステムに参加でき、かつ仕組みや中身が全て公開されている形で通貨の3条件を満たすことで、結果的に決済手段としての価値も、皆が共有できるようになっています。

そして国も含めて、特定の誰かの信用に紐づかない「通貨」になりうるものが誕生したという点が革命的であり、また今は当たり前のように金融機関を介して行っていることが、個人単位で簡単にできるようになることから、全世界で注目されることとなりました。

通貨の3条件を満たし安全に決済できるものであれば、それすなわち通貨になり得るのではないか。この大きな社会的実験の1つを「ビットコイン」として捉えることもできるでしょう。本質的に法定通貨にあって「ビットコイン」にないものは、おそらく人々が集団で信じられるものとしてまだ幅広く受け入れられていないことと、景気動向の調整弁として政府あるいは中央銀行による利用が難しい、といったことかと思います。

通貨に準ずるものとして安全に決済できることを保証している「暗号技術」や「ブロックチェーン」とは何か、次回はその仕組みについてご紹介します。

著者

株式会社クリプタクト 本廣麻子

クリプタクトとは

2018年1月に元ゴールドマン・サックスの運用担当者、システム開発エンジニアの計3名で設立。損益計算やレポートなど、暗号資産投資家向けの支援サービス"grid@cryptact"を展開。登録者数は国内で3万人超。クリプタクトサイトは「こちら」。

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