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社長力―経営トップの仕事論

経営トップの仕事論

社長力 - 経営トップの仕事論

2014年06月12日掲載

今に満足してはいけない。変化やチャレンジには、大きな成長の種が潜んでいるんです

ヘルベルト・ヘミング 氏

ボッシュ株式会社

ボッシュ株式会社
代表取締役社長

ヘルベルト・ヘミング 氏

PROFILE

1953年生まれ。78年、シュトゥットガルト大学機械工学科技術修士取得。84年、Business Administration Academy Stuttgart経営学修士取得。79年、メルセデス・ベンツAG入社。83年、プツマイスターGmbh入社。85年、ロバート・ボッシュGmbh入社。92年、ロバート・ボッシュ韓国の取締役社長。95年、ロバート・ボッシュGmbhシャシー・システム事業部営業部門長。00年、エナジー&ボディ/システム事業部取締役。05年、シャシー・システム・コントロール事業部取締役。10年、ボッシュ株式会社取締役副社長。12年より現職。

売上高5兆9732億円、従業員数28万1000人。世界に知られる自動車部品メーカーが、ドイツに本拠を持つボッシュ。この会社の技術開発力こそが、自動車産業の歴史を形作ったと言われるテクノロジーカンパニーである。その100%出資企業がボッシュ株式会社。社長を務めるヘルベルト・ヘミング氏はドイツ出身。彼の「仕事論」とは?

(取材・文/上阪徹 撮影/工藤ケイイチ)

Chapter01技術者のかたわら、ビジネス経営学を学びに

 生まれたのは、ドイツの田舎町でしてね。子どもの頃に憧れていたのは、機械工や鍛冶屋といった職人仕事でした。もともとモノづくりに関心があった。それで、大学で機械工学を勉強するんです。当時、シュトゥットガルト地域で、技術を勉強する人間の夢は、地元の大企業、メルセデス・ベンツのような大きな会社で働くこと。幸いにも私は、エンジニアとして教育を受けた後、その夢を果たすことができました。
 メルセデス・ベンツでは、大型バスの部門で試験環境を担当していました。技術分野については、かなり専門知識を蓄えることができましたが、世の中は技術だけで成り立っているわけではありません。広い意味でのビジネスの知識や、いろいろな視野を広げたいと考えていました。技術的な面だけではなく、商業的な部分も学びたかった。
 そこで、メルセデス・ベンツで仕事をするかたわら、いわゆるMBA、ビジネス経営学を並行して勉強したんです。もともと一つの分野で満足するタイプではありませんでした。大きな意味でゼネラリストになるには、一つの狭い分野のエキスパートというだけでは不十分で、いろいろな分野を学び、経験を培う必要があると感じていました。

Chapter02チャレンジによる痛みは、早く経験したほうがいい

 私がメルセデス・ベンツに入った頃は、大きな会社に入れば安泰で、そこでずっとやっていけるだけの安定感があった時代です。しかし、世の中の会社は一つだけではありません。いろんなチャレンジをしてみたかった。
 人と違ったことをしようとすると、そこには痛みが伴うことがあります。しかし、それはチャンスを手に入れるために必要なものでもある。ですから、痛みは伴うけれども、できるだけ早く経験して消化してしまったほうがいい、と思うんです。あとまで伸ばしておくと、苦しみはより強くなってしまう。だから、早く挑んだほうがいい、という主義です。
 もちろんメルセデス・ベンツを去るのは、大きな決断でした。安定した大企業を辞めるわけですから。しかし、技術と技術以外の両方の仕事のチャンスは、なかなか大企業では得られませんでした。将来を考えたとき、もっと経験を積むためにも規模の小さな会社に移ってみようと決断したんです。
 大企業から同じような大企業に移っても、安定感はありますが、それだけの話。思い切って意識して、もっと小さなところに行こうと思いました。小さいといっても、その分野でリーダー格の企業。そんなときに、プツマイスターという会社と出会うんです。

Chapter03サプライヤーこそ、本当に革新的な技術をつくっている

 プツマイスターは、有名な特殊ポンプのメーカーでした。技術的なリーダーとしての地位は確立されていて、私も名前は知っていました。会社の求人広告が出たのを、たまたま見たんですね。幸い、CEO直属のアシスタントのポジションを募集していました。
 最初の数カ月はオーナー兼CEOのアシスタントを務め、その後は技術文書の担当として約20人のメンバーを従える形で技術的なドキュメントの担当をしたり、工業用のポンプ以外のプロジェクトに携わったりしました。忙しかったですね。24時間、会社に貼り付いているような状況でした。
 プツマイスターには2年いて、いろいろな経験を積みましたが、大きな舞台で活躍したい考えは変わりませんでした。特にグローバルでチャレンジしたかった。そうなると大きな会社となりますが、メルセデス・ベンツのような最終製品の会社は考えませんでした。
 というのも、そういう会社にシステムや部品を供給するサプライヤーこそ、本当に革新的な技術を業界向けにつくっているということを知っていたからです。特にボッシュは、最新の技術を自動車メーカー向けに提供していました。ここだ、と考えたんです。

Chapter04会長から「技術をやってみなさい」とアドバイスされた

 ボッシュでは、技術以外の商業的な分野でミッションが与えられるところから始まりました。技術以外のことを専任で行うのは初めての経験で、これは視野や経験を広げる上でとても役立ちました。そんな折、経営トップの会長と話をする機会があったんです。会長は当時、若い才能ある人材と定期的にコミュニケーションをとっていました。そこで、会長に、技術の基礎がしっかりできているのだから、技術をやってみなさい、と言われたんです。
 会長から直接、声をかけてもらって、ABSなどの安全システムをどう車両に適合させていくか、といった純粋に技術的な仕事をすることになり、プロジェクトマネジメントを含めて担当することになりました。安全システムが関わるシャシー・システムよりも、さらに広い範囲で、エネルギー、ボディ、モーター、スターター、エレクトロニクスなどの技術的な担当もしました。
 事業分野ごとに違いはあっても、基本となる重要なビジネスの要素、契約、プロジェクトマネジメント、さらには技術的なアプリケーション、基礎開発、製造関連など、広く一通り経験できたのは、自分にとっては大きな収穫でした。やがて、個々のプロジェクトを担当するだけではなく、リーダーとして、まとめ役として、いろいろな人を統率する立場や、トップのアシスタントとして大所高所から見る経験も積むことになりました。

Chapter05ボッシュの価値観と自分の価値観がマッチした

 もうひとつ、重要な経験となったのが、グローバル経験です。同じ部門ではなかなか見えてこないものが、外に出て、国際的な視野が培われることで見えてくる。世界は広いんです。文化にしても、仕事のスタイルも、人も違う。それぞれ多様性を持っている。それに触れるのは、外に踏み出して初めてできる。大事な経験でした。
 こうした中で一介の担当者、一人の技術者という立場から、中間管理職、プロジェクトマネージャー、コーディネーター、マネージャーなど、会社の組織のいろいろな階層を経験できました。必要になるスキルは、それぞれ異なります。それを順番に経験できたことは貴重でした。今は、日本法人のトップを務めていますが、実は社長の立場でもこれでいい、ということはありません。人生はずっと勉強だと思っています。
 入社して30年の間には、ほかの会社からお誘いが来たこともあります。高い報酬を提示されたこともあります。でも、誘いに魅力があっても、自分として本当に何がやりたいのか、に立ち返り、いつも判断しました。
 やはり、人それぞれに価値観はあると思いますが、私の場合は、ボッシュの価値観と自分の価値観がマッチしたことが大きかったと思っています。「Invented for life」というスローガンは技術者として共鳴できます。また、ボッシュはグローバルな企業ですが、株式を上場しておらず、ボッシュ財団が全体を管理しています。
 とにかくお金、利益、という金銭志向の会社とは違い、人のため、社会のため、未来のため、という価値観を追求するだけの余裕や風土が十分にある。実際、「将来と収益への志向」「責任」「フェア」「多様性」などの「The Bosch Values」は、日々の仕事の中で実行するような企業風土になっているんです。

Chapter06事業活動と並行して社会貢献が組み入れられている

 会社が考えている価値観と、自分の価値観が一致していることは、とても大事だと思っています。そうでなければ、個人が会社に合わせようとしたり、会社が個人に合わせようとしなければいけなくなる。会社は社会的な責任を負っていて、単に言葉やストーリーだけではなく、思いを形で示すことが大事だと思います。
 日本の例を挙げれば、東日本大震災の年は、ボッシュが日本に上陸して100周年の年でした。いろいろな祝祭イベントを用意していたのですが、地震が起きてすぐ、それらの予算は東北の人たちへの支援、社会活動や寄付活動に使われました。また、社内でボランティアがたくさん名乗り出て、バスをチャーターして東松島市に向かいました。
私は3年間、チャリティでドイツ版サンタクロースを務めました。
300人ほどの子どもたちが集まる場所にサンタクロースとして登場するんです。これが、とても喜んでもらえて。もう毎年恒例の行事になっています。
 もちろん私は社長ですから、会社の事業面での責任者としてきちんと収益を上げ、将来のことを考えることが一番大切な仕事になりますが、ボッシュではそれと並行して社会貢献が基本的な考え方に組み入れられ、いろいろな活動をしています。

Chapter07ボッシュにできることは、たくさんある

 ボッシュの日本法人は、ボッシュの国際的なネットワークの一員です。活動のおおよそ8割くらいは、世界のボッシュと共有している部分ですが、日本には固有の強みもあります。特に、バイク用の安全システムは日本法人が中心になって開発しており、それを世界に発信していくことも重要な役割だと考えています。
 2013年末には、新しく開発されたモーターサイクル用の安定性制御システムが発表されました。これは、二輪関係のジャーナリストの方から非常に高い評価をいただきました。
 また現在、GSユアサと三菱商事と組み、合弁事業でリチウムイオンバッテリーに特化したジョイントベンチャーを展開しています。日本を含め、電気自動車の普及が始まっていますが、そのネックになるのがバッテリー。1回の充電で、どのくらい長く走れるか、いかにコストを下げられるか、技術開発を推し進めています。
 日本の自動車産業は、世界各地に進出しています。ボッシュは世界中に拠点や生産設備を持っていますので、日本以外でも現地で深いつながりを持っています。ボッシュにできることは、たくさんあると考えています。
 日本国内のみならず、世界どこで活動しても納得してもらえるようなグローバルなパートナーになっていく。それこそが私の希望であり、その推進が、私の役割です。

ヘルベルト・ヘミング 氏

マイナビエージェントが聞いた
社長の「座右の銘」

Don't be satisfied with a seemingly convenient and stable Lifetime. Build your own ambitious dreams and realize them step by step. Welcome changes as an opportunity. Never give up!

現状に満足してはいけません。見かけ上の快適な状況や、生活が安定していることに満足してしまうと、その先、伸びない。それは、実は未来に大きな危険を残すことを意味します。常に野心的な目標を立て、それに向かっていけば、人は進歩していきます。そして、変化やチャレンジは前向きに受け止める。なぜなら、そこには成長の種が潜んでいるから。目標到達は一朝一夕にはいきません。あきらめず、粘り強くやっていくことが必要です。

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