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トップインタビュー

社長力―経営トップの仕事論

経営トップの仕事論

社長力 - 経営トップの仕事論

2013年11月29日掲載

誠意を持って取り組めば、 通じるんです

齊藤 裕 氏

日立製作所 情報・通信システム社

日立製作所 情報・通信システム社
社長

齊藤 裕 氏

PROFILE

1954年生まれ。東京大学工学部卒。79年、日立製作所 大みか工場 入社。大みか工場 電機制御システム設計部長、システムソリューショングループ情報制御システム事業部システム設計本部社会システム設計部長などを経て、09年、情報制御システム社社長。10年、執行役常務 情報制御システム社社長兼スマートシティ事業統括本部副統括本部長。12年、執行役専務 インフラシステムグループ長 兼 インフラシステム社社長。13年、執行役専務 情報・通信システムグループ 情報・通信システム社社長。

連結売上高9兆円、連結従業員数32万人。日本を代表する大企業、日立製作所。その中で、売上高1兆8000億円と日立製作所全体の約20%を占める最大事業を率いているのが、情報・通信システム社の齊藤裕社長だ。工場、電力、交通などの制御システム構築を手がける部門でキャリアを積んできた人物。その「仕事論」とは?

(取材・文/上阪徹 撮影/工藤ケイイチ)

Chapter01目の前で上司と部下が激しい言い争いをしていた

 もともと独立心がありましてね、いずれは一国一城の主になって自分で何かをやってみたいという気持ちを持っていたんです。大学の専攻は機械でしたが、機械だけではモノは動かないと思って、制御やシステムを学んでみたかった。日立は野武士というイメージが強くて、ここなら勉強ができると思ったんですね。
 ところが、入社してみると、とんでもない会社だった(笑)。和と誠と開拓者精神というのが日立創業の精神でしたが、これが半端なものではなくて。工場に配属になると、目の前で上司と部下が激しい言い争いをしていた。やろうとしている仕事で意見がぶつかっていたんですね。
 しかも上司に最初に言われたのは、こんな言葉でした。「日立は大企業だから、君たちが日立を変えるくらいにならなきゃダメだ」「業界に対して日立はメッセージを出さないといけない。これは自分たちの使命だ」。文献を読んでいたら、上司に叱られたこともありました。「そんな日本語の教科書を読んでどうする。読むなら英語のIEEEの学会誌を読め。俺たちが戦っているのはグローバル市場だ」。1979年のことです。
 仕事は大胆に任されました。とにかく、やってこい、と。でも、うまくいくときばかりではないわけです。そうすると、叱られるわけですね(笑)。悔しくて、いつか見返してやる、と思っていました(笑)。

Chapter0230代で世界のどこに行っても負けない自信がついていた

 担当していたのは、鉄鋼の制御システム。大手鉄鋼メーカーを顧客に、新しい機械を導入して、自動化を図る。モーター、変電システム、産業機器など、日立グループのさまざまな製品を組み入れ、ソフトウェアも入れて、電気や制御のシステム設計をとりまとめる仕事でした。
 数千キロワットのモーターを動かして、圧延機などの機械が動く。工場内には10メートル規模の機械がゴロゴロしていて、それを全自動で動かすんです。ボタンを押したら、すべての機械が動き出して必要な鉄を作り出す。大変なスケールの仕事でした。これが面白くないわけがない。
 現場はススだらけ、ホコリだらけ。電気室に寝泊まりして、現地で立ち上げまで手がける。顧客にも喜んでもらえます。簡単ではないですよ。でも、だからこそ燃えるわけです。しかも、顧客は常に新しいシステムを求めていた。それこそ、日立の開拓者精神以上に。鍛えられました。
 最初は国内で、後には中国、韓国、南アジア、インド、ブラジル、南アフリカ、スペイン、アメリカでもシステムを作りました。
 自分に実力がついていくのがよくわかりました。30代後半には、世界中どこに行っても、鉄鋼のシステムでは誰にも負けない、という自信を持っていましたね。

Chapter03顧客の褒め言葉に「お客さまのおかげです」と返答した上司

 印象的な出来事がたくさんありました。よく覚えているのが、最大手の鉄鋼メーカーで、21世紀に通用する圧延機の設備を作るプロジェクトが立ち上がったときのこと。すべて新しい製品を採用するという。このビッグプロジェクトを日立は受注するんですが、その決め手になったのが、当時の上司の一言だったんです。「日立は、誠(まこと)の心でやります」。自分の子どもを育てるような気持ちで向き合います、という思いだったんですね。
 この上司には、若い頃から厳しく指導してもらっていました。印象的なのは、設計図を持って行くと、こんなふうに言われたことです。「このシステムのコンセプトは何だ?君には設計フィロソフィはないのか?」。気持ちや心を、とても大事にする人でした。実際に、思いひとつで、競合を押しのけて受注をしてしまったんです。
 しかし、プロジェクトは案の定というべきか、苦労の連続でした。試験でどうにもうまくいかない。出荷後にトラブルが起きたら大変なことになる、と思いながらも出荷時期が来た。すると驚くべきことに、現地に行ったらまったくスムーズに動いたんです。
 こんなにうまくいったプロジェクトは初めてだ、と顧客からも褒めていただいたんですが、その場にいた上司の返答がまたすごかった。「お客さまのおかげです」と一言。なかなかできることではない。驚きました。

Chapter04共働きで大事なことは、お互いがいたわりの気持ちを持つこと

 若い頃から猛烈に仕事をしていましたが、結婚したのは、入社2年目。妻には苦労をかけたと思っていますが、ひとつの転機になったのが、20代後半で1年間、留学に出たことでした。女性が働くことが当たり前の姿を見て、妻も仕事を持つようになるんです。それもあって、以降も同じように猛烈に働くスタイルを継続させてもらうことができた。これには妻に感謝しています。
 今は夫婦で働くことが、ごく普通になってきています。共働きで大事なことは、お互いがお互いをいたわることしかないと思っています。真剣に向き合い、真剣に相手のことを考える。家族は自分がリードするんだ、という気持ちをきちんと持つ。そういうところから出てくるメッセージは、必ず相手に通じると私は思っています。
 そのうち、仕事で悩んだりしていると、「大したことないわよ」なんて声が飛んできたりする。ポジションが上がっていくと、喜んでくれたりする。自分のことを認めてくれるようになる。誠意は夫婦でも、やっぱり返ってくるんです。
 そのかわり、できることは全部やってあげる。私は自分がどんなに大変になっても、必要なときには子どもの面倒を見たし、家事もしました。寝る間を削ってでもやろうと思っていました。家族のために、という思いです。そのかわり、本当に仕事をしなければいけないときは我慢してもらった。こういうことは、かけひきではないんです。相手への思いから始まるんです。

Chapter05マネジメントに必要なことは、部下を好きになること

 やがてマネジメントのポジションになり、仕事の中身が変わっていきました。どうすれば、部下がうまくいくような仕掛けや仕組みが作れるか。部長になったときに思ったのは、任期は現場の仕事に比べて意外に短い、ということです。定年退職者を除くと、部長職で自分が最初に部から離れていく可能性が高いと思いました。
 となれば、部下に何を残せるか。自分がいなくても部下が組織を運営できるようにしなければいけない。部下を育てなければいけないという強い気持ちを持たないといけないということです。
 そして同時に気づいたのが、自分がこうして今いるのも、先輩たちのおかげだったということでした。そのことに改めて気が付いた。部長になり、本部長になり、事業部長になっていくと、そのたびに、自分が育てられたのだという思いを強くしました。
 マネジメントに必要なことは何か、と問われることがあります。私は、部下を好きになることだと思います。現場にあるのは、モノではないんですね。そこにあるのは、人なんです。だから、現場を知ることは人を知ることになる。人を知らないといけない。
 部下が好きになれば、何で苦労しているか、どんなサポートがしてやれるか、そこに頭が向かうようになる。実際に接すると、また意識が高まる。何かやってやりたくなる。そんな、わき出てくる気持ちこそが、大事なんです。

Chapter06誠心誠意やっていると、人はよく見ているもの

 偉くなろうと思ってきたわけではありません。目の前の仕事をとにかく精一杯やろうと思ってきただけです。それこそ、明日辞めてもいい、というくらいに。そんな気持ちでやっていたら、成果を出していくことができた。
 よく、ゴルフでボールをよく見て打て、と言われます。最初は顔を上げるな、と。その感覚は仕事でも正しいと思います。余計なことは考えず、目の前をちゃんと見る。そして一生懸命やる。顧客や同僚など、まわりの人のことを考えながら、自分でこれをやるんだと決めて、そこに集中する。
 私の場合は、それを見てくれていた人が評価してくれた。評価してくれる上司や顧客、まわりの人たち、慕ってくれる部下たちがいたからこそ、今のポジションにいるだけです。こうやったら出世できる、なんてものはないんです。
 ただ、私はその意味で本当に幸せだったと思っています。人に恵まれた。そして自分が幸せだと思うと、みんなも幸せになれるとも思っています。今は、自分がこんなに幸せになれた会社なんだから、そんなふうに思う部下をもっともっと作らないといけないと思っています。
 結果を出せたことには運も大きかった。先輩や部下にも救われました。誠心誠意やっていると、人はよく見ているものです。何か困ってるんじゃないか、と声がかかったりする。結果はどうあれ、自分でそうするんだと決めていたら、心は楽なんです。そうしないといけないと心は思っているのに、それができないと自分自身が辛くなる。
 自分はこうだ、と決める。それを、貫くことです。

齊藤 裕 氏

マイナビエージェントが聞いた
社長の「座右の銘」

至誠通天

まずは覚悟を決めて、決めたらぶれない。その代わり、覚悟を決めるまでは時間をかけていい。誠心誠意の行動は、きっと通じると私は思っています。嘘をついてはいけない、とよく言いますが、それは自分も傷つけることになるからです。正しいことは正しいし、間違っていることは間違っている。それを自分の中にはっきりさせられれば、逃げたり、ごまかしたりすることもなくなる。「人事を尽くして天命を待つ」ことです。

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