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「未来のお金のカタチとは?」【後編】--マネーフォワードトークセッション

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン
最終更新日:2019/01/23

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2018年9月、東京港区マネーフォワード本社において、「未来のお金のカタチとは?」と題したトークセッションが開催された。ゲストスピーカーは3人。アフリカで電子マネーを運営する日本植物燃料の合田真代表。飛騨高山で地域通貨を電子化した飛騨信用組合の古里圭史氏。そして仮想通貨ビジネスを構築中のマネーフォワードフィナンシャルの神田潤一代表。モデレーターはインクルージョン・ジャパンの吉沢康弘氏が務めた。後編では、モデレーターの吉沢康弘氏の司会によるゲストスピーカー3人のトークセッションを要約してご紹介する。

■「新しいお金のカタチ」は誰にとってメリットがあるのか!?

合田:モザンビークと日本では、同じ労働をしても得られる報酬に格差がある。新しいお金は、この格差を崩していくことになる。格差のある状態で、資源が枯渇をしていくと、虐げられている側は資源を得られなくなり、政情が不安定になっていく。今、格差を平準化していくことで、資源を公平に分かち合うことができ、結果として平和が保てるのではないか。日本の中にも格差があり、いちばん近い金融機関まで車で30分という地域もある。そういう格差を解消する手段になるかもしれない。

古里:地域通貨は、住民個人というよりも、コミュニティ全体を意識している。そのため、地域通貨をビジネスとして維持をするのはものすごく難しい。地域通貨がコミュニティ全体の利益になると住民が信じてくれないと、地域通貨を維持していくことができない。コミュニティにとってのわかりやすい利益は、外貨の獲得。観光客に地域通貨を利用してもらう、アリペイと提携して中国人観光客から外貨を獲得するなどをしている。

神田:新しいお金はコミュニティのため、お金を使う人のため。特に地方コミュニティのため。日本円というような同じ価値の通貨を全国で使っていると、必然的に物が集まる都市圏にお金も集まることになる。この仕組みを変えるのが地域通貨。

■仮想通貨によって得られる"自由"とは!?

マネーフォワードフィナンシャルは仮想通貨分野での金融サービスを構想している。神田氏は仮想通貨によって、法定通貨にはなかった自由が得られるという。例えば、多くの日本人にとって、中国人と取引をしたからといって、人民元で受け取るのは不自由さを感じる。そこで、日本円に両替をすることになるが、その場合は為替手数料などにより目減りをしてしまう。仮想通貨ではこのような不便さから解放される。

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また、神田氏は、仮想通貨の価格変動に対する見通し方の違いにより、トレードが活発になる可能性があると指摘する。例えば、あるホテルが、仮想通貨支払いであれば宿泊料を半額相当にするというサービスが実際に行われている。ホテル側は「将来仮想通貨の価格が上昇するので損にならない」と見ており、支払いをする利用者は「将来仮想通貨の価格はさほど上昇しないので得をする」と見ている。このような見方の違いによって、仮想通貨を活用することで取引が活性化する可能性があるのではないかという。

■価格変動はあった方がいいのか、ない方がいいのか

古里:地域通貨で言えば、価格変動はない方が望ましい。価格変動をするということは、相場で利益を得るという『ストック』行為のインセンティブになる可能性があるためである。地域通貨の本来の目的である地域経済の活性化ということを考えると、ストックされずにどんどん流通した方が望ましい。

神田:現在の仮想通貨は価値が大きく変動しているが、実際に使えるシーンが増えていくと、仮想通貨の形で中長期で持っておいてもいいという人が増えていき、仮想通貨の価格は田短期的には安定し、中長期的には徐々に上がっていく。これが理想的なシナリオ。地域通貨も、地域の魅力が増加すると、その地域通貨を持ちたいという人が増え、価値が徐々に上がっていくという好ましい循環が生まれる可能性がある。仮想通貨でも、地域通貨でも、価値が変動する通貨を発行するということは、その通貨あるいはその地域の魅力を継続的に高めていくという意思表示でもある。そういう仮想通貨、地域通貨を応援したいと思っている。

合田:日本円だって、実は日本でしか使えない地域通貨。他の通貨と比較して価値は常に変動している。通貨って宗教とよく似ている。日本円信者は、日本の社会に貢献することで日銀券というお札をもらうことができる。ドル信者は米国の社会に貢献することでドルというお札をもらうことができる。となると、仮想通貨というのは、今までとはまったく違う新興宗教ということになる。

神田:詭弁だと言われるかもしれないが、法定通貨と仮想通貨は似ているけど非なるニーズをそれぞれ満たすもの。ひとつの仮想通貨が世界を制するということはないだろうと思う。小さなコミュニティが自分たちの活動を活発にして、それを支えたいという人が利用するのが仮想通貨で、世界に小さな仮想通貨がたくさん誕生するのではないか。そのような仮想通貨を交換する場というのが取引所ということになる。普段の生活で使う日銀券も残る。普段は法定通貨を使いながら、特定のこと、例えば飛騨高山に遊びにいくのであれば、さるぼぼコインに換えて使おうということでいいのではないか。これは端から見れば乱立に見えるが、この併存はありなのではないかと考えている。

■投資をした経験がない人が仮想通貨を買っているという事実

ここでモデレーターの吉沢氏が、興味深いデータを提示した。ある広告代理店の調査データで、ポイントは、従来の一般投資商品を購入した人と、仮想通貨を購入した人はほとんどクロスしていないという点だ。つまり、投資をする人は仮想通貨は買わない。投資をした経験がない人が仮想通貨を買っているという事実。吉沢氏は、仮想通貨を今買っているのは、投機性を求めている人たちとテックに詳しい人たちだという。先ほどの「信者」のたとえで言うと、「仮想通貨を信奉する」というところまでまだ達していない。

神田:本来の仮想通貨の利用者になるべき人が入ってくるようにするには、仮想通貨で預けても安心、便利に使えるということが重要。銀行にあたる機関と、加盟店の環境を整えることが重要。マネーフォワードフィナンシャルは将来的に、仮想通貨の銀行の役割を果たそうと考えている。

ここで質疑応答となった。質問は、「日本でも都市の地方の経済環境は相当に違ってきている。それをひとつの通貨でまかなうというのは限界にきているのではないか」というもの。

神田:日本も例えば、北海道コイン、九州コインといったより広域の地域通貨を発行するという考え方はあるかと思う。しかし、ユーロは逆で、複数の主権を持った国がひとつのコインを使おうとした。異なる経済環境の地域が同じ通貨を使うと、富の公平な配分が難しくなる。ユーロのつまずきはそこにあるのではないかと見ている。日本の場合は、地方交付税などの富の配分の仕組みの評価による。それがうまく機能しているというのであれば、広域地域通貨は必要ないし、うまく機能していないというのであれば広域地域通貨の発行によって、その格差が是正される可能性がある。

この他、会場の使用時間いっぱいまで、さまざまな質疑応答が行われた。仮想通貨と地域通貨にまつわる議論は、経済論だけでなく社会論まで広がる大きなテーマだ。概念論に終わらず、モザンビークで電子マネーを運営する合田氏、飛騨高山で地域通貨を運営する古里氏の事例を中心に、具体的な議論が重ねられた。